土器土器体育祭

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「それから。Zクラスと親衛隊を利用して騒ぎを起こすことについては想定通りではありますが、…こればかりは人数が厳しいところですね…。」
「陽動とは言え、無視するわけにいかないもんねぇ」
俺もそう思う。
風紀の2人が顔を見合わせて困ったように溜め息をついた。

悩む俺達に加賀屋先輩が手を打つ。
「ま、そこは変わらず風紀に頑張ってもらおーかな!その為に狼谷くんを呼んだワケだし」
反応した惶を見た加賀屋先輩。
「狼谷くんには制裁対象である神庭くんをマークしてもらうつもりダヨ。昨日の一件でも狼谷くんが堂々と騒ぎを止められなかったように、今日もし騒ぎを起こされても出番は無いデショ?」
確かに、と渋く塩島委員長が頷いた。
「…もし、昨日のことすら計画の内なのであれば、Zクラスと親衛隊とのわだかまりを作ったことになり、今日騒ぎを起こすのに……流れとしてはスムーズだな」
そう呟く塩島委員長の内容に、もしそうなら、大層用意周到な人物らしい、と苦く思う。

風紀が話すように、昨日のことが計画の内であり、主犯の鯨岡が用意周到な人物であるのなら、隠れ風紀である惶の出方を伺っていたとも考えられたからだ。

簡単に邪魔させてくれなさそうだ。

「…俺は問題ねェよ。
が、柚木をなんでここに呼んだんだ。何させるつもりだ」
「え」
惶に突然混ぜられて思わず声が漏れた。
視線が集まって大層居心地が悪い。

でも実は俺も思ってました。
なんで俺この場にいんだろ。

「グ…ゆずき…とか…ッッッ」
「私も確かに気になっていました。加賀屋さん進めてください。」
拳を机に置いて恨めしそうに惶を見る加賀屋先輩を塩島委員長がサクッと流した。
感謝。
加賀屋先輩の対処にそろそろ塩島委員長も慣れてきたらしくテンポが良い。
流石っす。

項垂れ、渋々加賀屋先輩が口を開いた。
「も〜燕クンたら…。」
「やめろ」
「うーたんがこの場にいるのは〜、単純に、どこにも属さず、脳筋の事情を知っていて、Zクラスに物怖じせず、頭がキレるから。ダヨ」
後半に並べられた言葉をすぐに理解できず固まる。
そんな俺を置いて場は話を進めてくる。
「確かに、その条件においては柴さんが現状適任ではありますね」
「それで何をさせるつもりだ」
「柴くんすごいんだねぇ」

いやいやいやいや。

「ちょ、ちょっと待ってください。俺だってZクラスは怖いし、過大評価ですって」
この中で発言するのは気後れしたが、手を前に出して控え目に俺は頑張って主張した。
頑張った。
が、
「…うーたんかわいい…。で、今回のように少数精鋭部隊として必要なのは、起こった事に対して自分で対処が出来る人物なのサ。」
スルー。
おい。
他の面々も俺を気に留めることなく加賀屋先輩の話を聞いていることに切なくなる。

そっすか…。
なにやらされんのか知らねえけどやれば良いんだろやれば。
行き場を失った手を机に置いて加賀屋先輩を半目で見た。話を続ける加賀屋先輩はそんな俺をにこにこと見ていた。

「だから、うーたんにしてもらうことは、主にボクらのサポート」
「…サポート」
「うん!制裁対象が危ない状況になった時に、もし風紀や狼谷くん、ボクら写真部が動くのが難しくなった場合の、その万が一のセーフティーネット。それがうーたんだよ」
セーフティーネット。
それってつまり。

…責任重大じゃね…?

立場がこわくなってきて顔が引き攣る。

「お前に出番が来ねェようにすれば良いんだろ」
いつも通りの無表情で俺を見た惶にときめいた。

惶……!!
お前、そういえばかっこよかったんだよな…!!日頃共有スペースのリビングでDSやSwitchに勤しむ姿か、キッチンに立つ姿しか見てないから忘れてたぜ…!!

「ヘヘーン脳筋め!言ってろ!」
「テメェこそ」
懲りずにちょっかいをかける加賀屋先輩に呆れる前に惶が応戦したことに驚く。
なんつーか。
相性が悪いようで?

変な空気となった場を破ったのは、やはり塩島委員長だ。
「では、一先ず今日の動きとしては、私達風紀は変わらず風紀として動かせていただきます。
念の為、私や翠は何かあった際にいつでも動けるようにさせていただきますが、
基本的には今回の肝で、制裁対象である神庭さんや主犯の鯨岡さんについては"写真部率いる加賀屋さん、狼谷、セーフティーネットの柴さん"にお任せいたします」
「はーい」
「ああ」
「オッケー!」
「…はい」
まとめた塩島委員長に、全員異論は無いと頷いた。

予鈴まで時間が近くなっていることを知らせた塩島委員長の言葉に全員が立ち上がり、部屋を出ようとしたところ、1番先頭で廊下に出た加賀屋先輩が「ジャ!このあと状況の連携をそれぞれに送るから確認よろしくネ!」と言って駆け足で颯爽とその場から離れたのを見送った。

俺は部屋の前に貼ってある紙を見た後、無言で塩島委員長を伺う。
加賀屋先輩の進行方向を見たまま、口を開くこともしていなかった。

部屋を出た真ん前に貼ってあった紙には、「廊下は走らないように」と書いてあった。



「行きますよ、翠」
「はーい」
「えーと、じゃあ…惶もまた後で」
「ああ」
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