土器土器体育祭

作戦会議



作戦会議。始まりません。

加賀屋先輩の"うーたん"発言に引っ掛かりを覚えた惶が眉を顰めて俺と加賀屋先輩とを往復して見てくるから。

「コレのこと、狼谷に話してなかったんですか?」
塩島委員長が加賀屋先輩を指差して俺を見てくるのに汗が吹き出る。
「えっと、その、話す必要性が無いと…思ってまして…。」
なんで俺が言い訳のようなことを。

無言で睨んでくる惶に、お前までなんだよ。と内心八つ当たりした。

部屋の中の面々を見て、口元に笑みを浮かべて手を叩いた塩島委員長。目が笑ってません。
「はい。3年Bクラス写真部部長の加賀屋さんは柴さんのストーカーです。
では進めます。加賀屋さん、掴んでる情報をお願いします」
雑。

早く進めたかったらしく、この話は終わりと言わんばかりに携帯を開いて加賀屋に話を振り出した。

惶が俺を見て「…あとで寮で聞くからな」言った後、塩島委員長の方に向き直った。
…ウス。

…だって、こんなの別に言う必要無いだろ…。

内心独り言つ間に話は進む。
話を振られた加賀屋先輩が再度席に着いて話し始めたのを聞くことにした。

概要はこうだ。

掴んでいる情報として、今回の行事に乗じて制裁対象として恐らく狙われているのはご存知転入生の"神庭"。
計画しているのは、新入生歓迎会から変わらず親衛隊。また、その主犯は恐らく生徒会親衛隊総括である"鯨岡"であること。
計画としては、Zクラスを利用して騒ぎを起こし、風紀の人数をそこに割いている間に制裁対象を狙うつもりであること。

話し終えた加賀屋に塩島委員長が感心した。
「先に軽くは聞いていましたが、よくここまで詳細に調べましたね」
「ふふん、ボクらにかかればこれぐらい、ネ」
俺にウインクすんのやめろ。
素直に凄いと思ったけど。

に、してもだ。

…ここまで詳細に話していいのか?
疑惑がある人物に、視線だけチラッと向けて様子を伺う。
夏目副委員長も塩島委員長と同じように感心しているようで加賀屋先輩に拍手を送っていた。
気に留めている者は誰もいない。

「…主犯が分かってんならそいつ縛っとけばいいじゃねェか」
話を聞き終えた惶が口を開いた。
確かに。
ただ、な…。

思う所があり、俺が口元に手を持っていくと同時に、加賀屋先輩が惶に反応した。

「ふふん、脳筋め。そんな簡単に収まるワケないじゃない」
ただの悪口。
「あ"?」
加賀屋先輩を睨みながら腰を上げようとするのを慌てて止める。

「ストップストップ!全面的に加賀屋先輩が悪いけど、取り敢えず聞こうぜ」
「そうですよ。そう簡単に済む話では無いので皆さんに集まってもらったんです。席に着いていてください。全面的に加賀屋さんが悪いですが」
「エ…うーたん…?塩島くん…??」
塩島委員長にも応戦してもらい、一先ず惶を席に着かせることに成功した。

ぴえんの顔をする加賀屋先輩は無視した。

不貞腐れたように肘を机に付く惶に、加賀屋先輩が話を続けた。
「さて、脳筋くんが言った通りに主犯である"鯨岡"くんを捕縛したとして、今回の計画は止まらない筈だヨ」
まだ宣う加賀屋先輩に惶の反応が気になり目を向けたが、もう煽る言葉に乗る気はないようで、机に肘をついたまま動かない惶に安心した。
惶をチラッと見て加賀屋先輩がつまらなそうな顔をしたが、続ける。

「確かに、計画を進めたのは鯨岡くんではあるけど、計画に携わる人らに今日初めて連携を取るワケじゃないからネ。だから、今日捕縛したところで計画は止まることなく進んでいくサ」
だよな。
想定していたことを話す加賀屋先輩に残念に思う。

「マァ、計画にイレギュラーが発生した場合の対処を抑える為に捕縛しても良いけど、それだと現行犯ってやつができないからボクは反対カナ!」
なるべく泳がしておきたいしぃ〜。と加賀屋先輩が口をへの字に曲げた。
迷っているところではあるらしい。

塩島委員長はどう思ってんだろ。
見ると、腕を組み少し考えた後、口を開いた。
「私も、まだ泳がしておく方が今後の対策が練りやすいものと考えますね。加賀屋さん率いる写真部が主犯を監視してくださり、もし変わった動きを察知した際に連携を取っていただければこちらも動きやすくなるでしょうし」
そのまま周りを見渡して意見を求めた。
夏目副委員長は特に意見は無いらしく指で丸を作った。
惶も特に無いらしく無言。
俺も2人の話に賛成だったので頷いて返事をした。
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