1️⃣ 腕の中に飛び込む
「そのままの格好でいてね？」
ジリジリとにじり寄ってくる彼女。
「大丈夫か？無理するなよ？」
「だ、だいじょぶ…」
少しずつ近づいて来て漸くぽすっと腕の中に収まる🚺。
「いちろ…ッ、ぎゅうってして…？」
「怖くねぇか？」
「うん、だいじょぶ…」
ふるふると震えているから優しくそっと背中に触れる。
添えただけの掌に感じる彼女の体温。
腕の中で震える肩を本当は強く抱き締めたいけど、彼女にこれ以上無理はさせられない。
「ごめん。怖ぇよな」
「だいじょぶ…」
怖くないよ、と作り笑いを浮かべる彼女。
「…ッ、ごめんな」
次はちゃんと俺がお前を守るから
だから、もう少しだけ
このままでいさせて…

2️⃣ 裾を掴む
家まで送るけど微妙な距離感。
前方から車が来たので彼女の方へ少し避けると、手がぶつかってしまう。
「ワリッ！」
パシンッ、
乾いた音が響いて避けるより前に払い除けられた手。
指先に微かな痛みが生まれる。
恐怖に揺れる彼女の瞳。
分かっているけどやっぱりキツイ。
「ご、ごめっ！」
「いや、大丈夫…ごめんな？」
「二郎、ごめん…」
「謝んなって」
「ごめん」
謝る彼女を見ていられなくて再び距離を置いて歩き出そうとした瞬間。
きゅっ、と後ろから服を引かれた。
「ごめん…」
泣きそうな彼女の震える指先が服の裾を掴む。
嗚呼、今すぐ抱き締めて大丈夫だって言ってやりたい。
「〇〇は悪くないよ」

悪いのは全部違法マイクだ。



3️⃣ 手を握る
おどおどしながら3️⃣の前に座る彼女。
「何？まだ、マイクの効果切れてないんでしょ？怖いならあっち行きなよ」
彼女に拒絶されるのが怖くて自分から遠ざけた。
「だ、だいじょぶ…！あのねっ、お願いがあるんだけどね…？」
「何？」
退くに退けず天邪鬼な態度を取ると、申し訳なさそうに笑う彼女。
そんな顔しないでよ。
「ごめんね…手、出してくれる？」
すぐ終わるからと、言う彼女の前に手を出す。
「こう？」
「うん…」
少し躊躇しながら僕の掌にそっと触れた彼女の小さな手は微かに震えていた。
「ほらね？私さぶちゃんの事怖くないよ」
震える指先で強がって見せる彼女。
そうだ、君はそういう人だった。

「手…握ってもいい？」
「うん」
ゆっくりと震える掌を包み込むとビクリと肩が揺れる。
それを誤魔化すようにへにゃりと笑う彼女。
「ほらね？」

馬鹿だなぁ、本当はまだ怖い癖に。
僕の為に頑張る必要なんてないのに
「ありがとう」
ごめんね、
もうこれ以上君を傷付けるものは近付けないから。


🐴 隣で眠る
「こ、来ないでッ！」
パニックを起こした彼女の怯えた瞳が幼い頃の母や妹のそれに似ていた。
俺の事が怖い訳じゃないと涙目で弁解する彼女が痛々しくて近くに居ない方がマシだろうと2日程家を空けると泣きながら「帰って来て」と電話があった。
それからは同じ部屋に帰るも触れない程度のぎこちない距離感を保っている。
「先、寝るわ」
「うん…おやすみなさい」
疲れもありすぐに眠った。

微睡みの中、寝室のドアが開きゆっくりと近付いてくる気配を察知した。
脳が覚醒する前にギジリとベッドに上がって来た気配は、俺の横に横たわって震える手で背中に縋る。
「さまときさん…、」
彼女を抱き締めたいけれど、抱き締める事も出来ずに背中で泣く彼女の啜り泣く声を聴きながら寝たフリを続けた。
聴こえなくなった泣き声。
彼女の方を向くと、泣き疲れて眠っていた。
「これ以上、怖い思いなんて絶対ェさせねぇからな…」
泣き腫らした瞼にキスを落として、縋り付く小さな背中をそっと抱き締めて眠りについた。

🐰 背後から抱きつく
バルコニーで一服しているとリビングにいたはずの彼女が背後に立っていた。
「何しに来たんですか」
何か固い意志を持った瞳でこちらを見詰める彼女。
「…後ろ向いてて下さい」
「こうですか？」
言われるがままに背後を向くと少し躊躇する様に時間を空けて彼女が抱き着いてきた。
「おいっ、」
「このまま！…このままで居て下さい」
腰に回される細い腕は震えていて、今すぐその腕を引いて自分の腕の中に閉じ込めてしまいたいけれどグッと堪えてされるがままの状態。背後から微かな泣き声がする。
「泣いてるのか？」
「グスッ、泣いてません」
「泣く程怖いなら離れればいいだろう」
「違います…ッ、悔しいんです！」
こうでもしないと貴方に触れられないのが、
「悔しいんです…」
「嗚呼、そうだな…」
俺だって、と言いかけて呑み込んだ。
かわりに吐き出した紫煙がゆるりと昇る。

嗚呼、早く抱き締めてやりたい。

🐦 キスをする
座っている🐦の股座に🐦の肩を抑えて向かい合う姿勢で収まる🚺ちゃん

「〇〇、無理はするな」
「だいじょぶです…！」
下手くそな作り笑い。
肩に置かれた小さな掌は震えていて、頭上より少し上にある彼女の顔は不安と恐怖を混ぜた色をしていて、瞳には涙の膜が張っている。
「理鶯さん、大好きです」
「貴方の事、怖くなんてないです」
本当ですよ、と震える声で精一杯の虚勢を張る彼女の小さな掌が視界を遮る。
「〇〇、」

彼女の名を紡いだ唇に触れる柔らかな感覚。
ぽろぽろと涙を流してその場に蹲る彼女を抱き締めていいものかと悩んで、そっと背中に触れた。
びくりと揺れる柔らかな髪
「〇〇、大丈夫だ」
大丈夫、と言い聞かせたいのは彼女なのか、自分自身なのか。
「大丈夫」
何も怖いものなんてない。
次こそは必ず守ってみせよう。

だから早く、嘘のない笑顔を見せてくれ