今日は日付が変わる前に帰って来れた。
部屋の電気は消えていた。
テーブルの上には一枚のメモ。


《どっぽくんへ おかえりなさい。
お疲れ様です。
疲れちゃったので先に寝ます。
ごめんね。 晩御飯冷蔵庫に入っています。
チンして食べてね。》


着替える為にネクタイを緩めながら寝室をそっと覗く。
俺が帰ってきた事には気付かずにベッドの中で健やかな寝息を立てる彼女。

いつものシャンプーの香りとは違う甘く優しいミルクの香りがふわりと香った。
彼女は仕事に疲れたり、いやな事があると寝る前にこの香水をつける。
「洗いたてのシーツとお気に入りの香水の匂いに包まれれば幸せ」
そう言ってふわりと笑った彼女の笑顔を思い出した。

最近はお互いに忙しくて、起きているタイミングで顔を合わせるのは朝の短い時間のみだった。
恋人らしい触れ合いも、まともな会話すらも出来ていない日々が彼女にストレスを与えてしまったのかも知れない。
「ごめんな」
彼女の頰に触れる。
「ん…、どっぽくん？」
おかえり、寝惚けた彼女の髪をそっと撫でてキスを落とす。
「ただいま」
安心しきった顔で俺の手に頬擦りをする彼女。
髪や頰を撫でてやれば、すうすうと健やかな寝息を立て始める彼女にもう一度キスをした。