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深夜にふと目が覚めて腕の中の温もりが消えている事に気付いた。
しばらく待ってみても一向に帰ってこない。
布団から抜け出して消えた温もりを探す。軋む廊下を歩いて行くと、縁側で一人煙草を吸う彼女の姿を見つけた。
スマートフォンの明かりが彼女の顔をぼうっと照らす。
「風邪引きますよ」
「起こしちゃった?」
困った様に笑う彼女の目尻が少し赤い。
また、上手に眠りにつく事が出来ていないのだろう。
「いいえ、」
「そう」
彼女の細い指先から煙草を奪って肺に煙を流し込む。
「やはり美味くはないですね」
「先生、煙草吸うんだ。意外」
「まぁこう見えてヘビースモーカーですから」
嘘ですけど、と呟けばまたかという呆れた風の彼女と目が合う。交わった視線はするりと解けて、逸らされた彼女の視線の先を辿るとそこにはまあるい月が寒空にぽっかりと浮かんでいた。
「寝れないの」
「だから煙草ですか?」
「うん、まぁ。そんなもんかな」
「小生が良いものを用意してあげましょう。少し待っていて下さい」
曖昧に答えた彼女の頭をそっと撫でて薄暗い廊下を行く。突き当たりを右に行けばそこは普段ほとんど使う事がない台所だ。
台所の小さな電気をつけて棚から小鍋を取り出し牛乳を注いで火にかけた。
「それなぁに?」
背後を付いて来た彼女が甘えた声を上げて細い腕がするりと腰に抱きついてくる。
「ホットミルクですよ」
「へぇ、」
「牛乳には安眠作用があるんですよ。それに温かい物を飲めば少しは落ち着くでしょう。戸棚の中に蜂蜜がありますから出して下さい」
はぁい、と間延びした返事と共に腰に回された腕は離れ戸棚の中を漁り出す。
「なんかジブリみたい」
「嗚呼、そんな話もありましたね」
赤い半魚人の少女を思い出す。
「ねー、クッキー見つけた!」
「この時間に食べたら太りますよ」
「えー」
頰を膨らませて上目遣いにおねだりをする彼女のいじらしさに負けて溜息をひとつ。
「…今日だけですよ」
嬉しそうにクッキーの缶をテーブルに出した彼女の前にホットミルクの入ったマグカップを置く。
「好きなだけどうぞ」
瓶の蓋を開けてスプーンと一緒に彼女の前に出してやれば、瓶から掬い出された琥珀色がキッチンの小さな蛍光灯にとろりと照らされる。
乳の海に落とされた蜂蜜は溶けて、彼女の身体の一部となる。
「おいしい」
「それは良かった」
それから、他愛も無い話をして2人きりの深夜のお茶会は続いた。
「眠れない時はこうしてホットミルクを入れてあげますから、1人で泣いたりしないで下さい」
「うん、ありがとう」
彼女の横顔が小窓から射し込む柔らかな光に照らされて、とても美しく愛おしく思った。
久々に感じるこの心の温かさはきっとホットミルクの所為だけでは無いはずだ。
しばらく待ってみても一向に帰ってこない。
布団から抜け出して消えた温もりを探す。軋む廊下を歩いて行くと、縁側で一人煙草を吸う彼女の姿を見つけた。
スマートフォンの明かりが彼女の顔をぼうっと照らす。
「風邪引きますよ」
「起こしちゃった?」
困った様に笑う彼女の目尻が少し赤い。
また、上手に眠りにつく事が出来ていないのだろう。
「いいえ、」
「そう」
彼女の細い指先から煙草を奪って肺に煙を流し込む。
「やはり美味くはないですね」
「先生、煙草吸うんだ。意外」
「まぁこう見えてヘビースモーカーですから」
嘘ですけど、と呟けばまたかという呆れた風の彼女と目が合う。交わった視線はするりと解けて、逸らされた彼女の視線の先を辿るとそこにはまあるい月が寒空にぽっかりと浮かんでいた。
「寝れないの」
「だから煙草ですか?」
「うん、まぁ。そんなもんかな」
「小生が良いものを用意してあげましょう。少し待っていて下さい」
曖昧に答えた彼女の頭をそっと撫でて薄暗い廊下を行く。突き当たりを右に行けばそこは普段ほとんど使う事がない台所だ。
台所の小さな電気をつけて棚から小鍋を取り出し牛乳を注いで火にかけた。
「それなぁに?」
背後を付いて来た彼女が甘えた声を上げて細い腕がするりと腰に抱きついてくる。
「ホットミルクですよ」
「へぇ、」
「牛乳には安眠作用があるんですよ。それに温かい物を飲めば少しは落ち着くでしょう。戸棚の中に蜂蜜がありますから出して下さい」
はぁい、と間延びした返事と共に腰に回された腕は離れ戸棚の中を漁り出す。
「なんかジブリみたい」
「嗚呼、そんな話もありましたね」
赤い半魚人の少女を思い出す。
「ねー、クッキー見つけた!」
「この時間に食べたら太りますよ」
「えー」
頰を膨らませて上目遣いにおねだりをする彼女のいじらしさに負けて溜息をひとつ。
「…今日だけですよ」
嬉しそうにクッキーの缶をテーブルに出した彼女の前にホットミルクの入ったマグカップを置く。
「好きなだけどうぞ」
瓶の蓋を開けてスプーンと一緒に彼女の前に出してやれば、瓶から掬い出された琥珀色がキッチンの小さな蛍光灯にとろりと照らされる。
乳の海に落とされた蜂蜜は溶けて、彼女の身体の一部となる。
「おいしい」
「それは良かった」
それから、他愛も無い話をして2人きりの深夜のお茶会は続いた。
「眠れない時はこうしてホットミルクを入れてあげますから、1人で泣いたりしないで下さい」
「うん、ありがとう」
彼女の横顔が小窓から射し込む柔らかな光に照らされて、とても美しく愛おしく思った。
久々に感じるこの心の温かさはきっとホットミルクの所為だけでは無いはずだ。