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深夜、と言っていい時間に私は彼を待っている。
しかも玄関で。
我ながら随分と健気な女だと思う。
もうどれ位の時間が経ったのだろう。暇を持て余すあまり、シューズボックスの上に飾られたスノードームを振ってみる。
ドームの中にはシロクマとペンギンが仲良く並んでいてなんとも現実味のない不可思議なデザイン。
これは彼が付き合う少し前にくれたプレゼントで何処かで買ったのか貰ったのかは知らないけれど「女はこういうキラキラしたモン好きだろ」と半ば押し付ける様に渡されたものだ。
どうしたらいいかわからずに貰ったその日から今日までずっと玄関に飾ってある。
昨日から彼と連絡が取れない。
彼はああ見えて意外とマメな所があるから、こまめに連絡をくれるし私が入れたメッセージには必ず返信をくれる。
そんな彼と連絡が取れないと言うのは結構な一大事なのだ。
前回、連絡が取れなくなった時は逆恨みだかなんだかでお腹をぶすりと包丁で刺されて入院していた。(入院から3日目には飽きたからと病室を抜け出して家に帰って来た。短気な彼にしてはよく耐えたと思う。)
以前の様な事は正直勘弁して欲しいけれど、彼の仕事柄いつ最後の別れが来るかなんてわからない。
私の元に帰って来なくてもいいからどうか生きていて、と彼の無事を祈る事しか私には出来ないのだ。
スマートフォンを何度開いても彼からの返信はないし既読すらつかない。
不安に打ち拉がれているはずなのに眠気が襲って来た。こんな時でもお腹は減るし眠たくなるのだから人間って不思議だ。
ガチャガチャとドアに金属が当たる音が目が醒める。どれくらい眠っていただろう。ほんの少しの時間な気もするし、随分と眠ってしまった様な気もする。そんな事を考えているうちにドアが開く。
「左馬刻さん…!」
「お前…、んな所で何してんだよ」
「何って、左馬刻さんを待ってたんです!」
相変わらずぶっきらぼうな彼の反応にほんのちょっとの怒りと生きていたという安堵の気持ちがごちゃ混ぜになって目頭が熱くなる。
「何度連絡しても返信がないし、心配したんですよ!てっきり死んじゃったのかと…も〜‼︎馬鹿ッ!」
「馬鹿ってなんだよ、勝手に殺すなや」
一通りの文句を述べてぽかぽかと彼の胸板を叩く私の腕を彼は易々とひとまとめにしてしまう。
「〜〜〜!だってぇ」
「野良バトルでスマホお釈迦にしちまって、そのあとすぐ呼び出されて、まぁ色々あってお前に連絡する暇も無かったんだよ」
「本当に、心配したんですよ」
「連絡出来なかったのは悪かった…おい、泣くなって」
彼に腕を掴まれたままで溢れる涙を拭うことも出来ずにぼろぼろと泣く私は弱い女だと思う。
いつか訪れるかもしれない別れの覚悟は出来ているつもりでいたって、本当は彼の声や体温が傍に居ないと不安で不安で仕方がないのだから。
「泣いてません」
「嘘吐け」
骨張った彼の手が頰に触れる。
頰を寄せたその手からは少しだけ血の匂いがした。
「…怪我、してませんか?」
「こんなん大した事ねぇよ」
心配すんな、と彼は言うけれど私はいつも不安で仕方がない。彼の負った傷がいつか彼をむしばんで私の知らない遠く暗い所に彼を連れて行ってしまうのではないかと。
その度、私は静かに願う。
いたいの、いたいの、飛んでいけ。
どうか彼がこれ以上傷付くこと無くずっと私の隣に居てくれます様に。
誰にも届かず、きっと叶いもしない事を私は心の中でスノードームに願う。
スノードームの中を静かに漂うラメがキラキラと微かに輝いていた。
しかも玄関で。
我ながら随分と健気な女だと思う。
もうどれ位の時間が経ったのだろう。暇を持て余すあまり、シューズボックスの上に飾られたスノードームを振ってみる。
ドームの中にはシロクマとペンギンが仲良く並んでいてなんとも現実味のない不可思議なデザイン。
これは彼が付き合う少し前にくれたプレゼントで何処かで買ったのか貰ったのかは知らないけれど「女はこういうキラキラしたモン好きだろ」と半ば押し付ける様に渡されたものだ。
どうしたらいいかわからずに貰ったその日から今日までずっと玄関に飾ってある。
昨日から彼と連絡が取れない。
彼はああ見えて意外とマメな所があるから、こまめに連絡をくれるし私が入れたメッセージには必ず返信をくれる。
そんな彼と連絡が取れないと言うのは結構な一大事なのだ。
前回、連絡が取れなくなった時は逆恨みだかなんだかでお腹をぶすりと包丁で刺されて入院していた。(入院から3日目には飽きたからと病室を抜け出して家に帰って来た。短気な彼にしてはよく耐えたと思う。)
以前の様な事は正直勘弁して欲しいけれど、彼の仕事柄いつ最後の別れが来るかなんてわからない。
私の元に帰って来なくてもいいからどうか生きていて、と彼の無事を祈る事しか私には出来ないのだ。
スマートフォンを何度開いても彼からの返信はないし既読すらつかない。
不安に打ち拉がれているはずなのに眠気が襲って来た。こんな時でもお腹は減るし眠たくなるのだから人間って不思議だ。
ガチャガチャとドアに金属が当たる音が目が醒める。どれくらい眠っていただろう。ほんの少しの時間な気もするし、随分と眠ってしまった様な気もする。そんな事を考えているうちにドアが開く。
「左馬刻さん…!」
「お前…、んな所で何してんだよ」
「何って、左馬刻さんを待ってたんです!」
相変わらずぶっきらぼうな彼の反応にほんのちょっとの怒りと生きていたという安堵の気持ちがごちゃ混ぜになって目頭が熱くなる。
「何度連絡しても返信がないし、心配したんですよ!てっきり死んじゃったのかと…も〜‼︎馬鹿ッ!」
「馬鹿ってなんだよ、勝手に殺すなや」
一通りの文句を述べてぽかぽかと彼の胸板を叩く私の腕を彼は易々とひとまとめにしてしまう。
「〜〜〜!だってぇ」
「野良バトルでスマホお釈迦にしちまって、そのあとすぐ呼び出されて、まぁ色々あってお前に連絡する暇も無かったんだよ」
「本当に、心配したんですよ」
「連絡出来なかったのは悪かった…おい、泣くなって」
彼に腕を掴まれたままで溢れる涙を拭うことも出来ずにぼろぼろと泣く私は弱い女だと思う。
いつか訪れるかもしれない別れの覚悟は出来ているつもりでいたって、本当は彼の声や体温が傍に居ないと不安で不安で仕方がないのだから。
「泣いてません」
「嘘吐け」
骨張った彼の手が頰に触れる。
頰を寄せたその手からは少しだけ血の匂いがした。
「…怪我、してませんか?」
「こんなん大した事ねぇよ」
心配すんな、と彼は言うけれど私はいつも不安で仕方がない。彼の負った傷がいつか彼をむしばんで私の知らない遠く暗い所に彼を連れて行ってしまうのではないかと。
その度、私は静かに願う。
いたいの、いたいの、飛んでいけ。
どうか彼がこれ以上傷付くこと無くずっと私の隣に居てくれます様に。
誰にも届かず、きっと叶いもしない事を私は心の中でスノードームに願う。
スノードームの中を静かに漂うラメがキラキラと微かに輝いていた。