「左馬刻は来世も私の彼氏になってくれる？」

隣で文庫本を読んでいた彼女がこちらをジッと見詰めている。

「ンだよ急に」
「何となく、聞きたかっただけ」

眉を少し下げた困り顔を作ってみせる。
俺はコイツのこの顔に弱い。
サイドテーブルの煙草を引き寄せて火をつける。かちりと音を立ててカプセルが割れて効き出すメンソール。
ゆるりとのぼる紫煙を彼女の目がぼんやりと追った。

「…ヤクザの彼氏なんざ今だけで十分だろ」
「そう？」

純粋な疑問だけを孕んだ彼女の瞳。
その真っ直ぐな眼差しから視線を逸らし、天井へと消える煙を見詰める俺が続ける話を唯黙って聞いていた。

「来世は俺の知らねぇ所でいい男に出逢って目一杯愛されてろや。お前が幸せになりゃ俺はそれでいい」

それを静かに聞いていた彼女が口を開く。

「私は現世も来世も、碧棺左馬刻っていう最高にカッコいい男に出逢って目一杯に愛されて、一緒に幸せになれたら嬉しいけどなぁ」

それって我が儘かな？
犬っころみたく甘えた顔で彼女は笑った。