ずっと好きだった。
この気持ちは絶対に嘘じゃない。

別れを告げられた時、
嗚呼、やっぱりと言う気持ちと共にその言葉に傷付いている自分に嫌気がした。
彼に甘えて傷付けていたのは私の方なのに。

その後の彼の話なんてとても頭に入ってこなくて、聴こえているフリをしていた。

「これで最後にするから。ちゃんと忘れるから…」
そんな事出来る筈がないと分かっていながら、煙の残る唇にキスをした。
嘘に慣れてしまった私たちは今更、素直になんてなれなくて。

嘘でも愛して欲しかった。
貴方の記憶に残して欲しかった。
貴方の当たり前を教えて欲しかった。

悲しみなんていつかは忘れる、と唄った歌があった気がするけれど、今の私にはこれが世界の終わりみたく思えた。
たかが世界の終わり。
されど世界の終わり。

「じゃあ、行くわ…」
元気でな、と少し乱暴に撫でられた頭。目頭がじんと熱くなって泣かないように必死で、うん。としか答える事が出来なかった。
これで最後だと言うのに未練がましいこの気持ちが邪魔をして別れの言葉ひとつすら出てこないのだ。

去っていく彼がもし此方を振り返ったら、彼の元へ走って行ってこの気持ちを素直に伝えよう。
そう心に決めて、彼の背を見詰めた。
どんどん遠退く背中。
淡い望みなんて打ち砕く様に彼が雑踏に紛れて消えた。
私は最後まで彼に甘えてばかりで、そんな自分が嫌になる。
どうせならずっと夢見る少女のままで居たかった。

「バイバイ、ずっと好きだったよ」

伝えられなかった言葉と一緒に堪えていた涙が堰を切ったように溢れるだす。
この涙を拭ってくれる人はもう居ない。