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数日前まで違法マイクの影響で赤い糸が視えていた。
今は効果が消えて以前とほとんど変わらない生活が送れる様になった。赤い糸で結ばれた後輩カップルは愛を育んでいるようだし良い事だ。
以前と変わった点と言えば俺と同期の〇〇との関係についてだ。
俺の運命の糸の先を手繰ると犬猿の仲であり良き(?)相棒である彼女だった。
元々、同期の中でも頭が冴えて賢いが何処か危なっかしい奴で気に掛けては居たが恋愛感情とは程遠かった。
しかし、赤い糸の一件から赤い糸で繋がれていた後輩達は仲睦まじくしている。俺と〇〇もああなるのか?という意味で〇〇の事が気掛かりだった。
そのタイミングで上司から「良い人は居ないのか?」「そろそろ身を固めたらどうだ?」と有り難迷惑なお言葉。
29歳独身。周りを見れば既婚者、子持ちも多い。今のご時世結婚しなくても生きていくには何一つ困りはしないが世間からの目は煩わしい。
かと言って今は恋人と呼べる関係の相手は居ない。以前と違うのは気になる相手が居ると言う事位だ。
そして、タイミングというものは重なるもので〇〇の住むマンションが燃えた。
正確には彼女の上の階で火災が発生した。幸い火は消火され大事にはならなかったのだが、下の階の彼女の部屋は上からの浸水で水浸し…部屋の清掃や壁紙の張り替えなどに1ヶ月は掛かるらしい。
更に不運は重なり社員寮は満室。地方から出て来てこちらに身を寄せられる場所もない彼女はホテル住まいを決断したが、師も走る師走。イベント事も多い今の時期に1ヶ月の長期が可能な宿の確保は中々難しい。
激務に追われ浅黒い隈を瞼にこさえ、巡回中の助手席で宿探しに明け暮れる〇〇があまりにも憐れで「ウチに来るか?」と声を掛けてしまった。どうせ断られるだろうと思いながらの提案を彼女はすんなりと受け入れた。
仕事柄、自分の居場所を明確にしておく必要があり彼女が我が家に身を寄せる事を上に報告しなくてはならない。署内でも名コンビ・名物カップル(付き合っていない)と噂される二人が同じ屋根の下で暮らすのだ男女の関係を疑われるのは避けて通れない。
「入間は今恋人居るの?」
「居たらお前に家に来るか?なんて声掛けると思うか?」
「だよね〜」
「そう言うお前はどうなんだよ」
「彼氏が居るなら宿探ししてない」
「まぁ、そうだな」
「もう結婚を前提に付き合ってることにする?」
「銃兎だって上から結婚はまだか〜!とか色々言われてるでしょ?」
「…そりゃな」
その提案は悪くない。相手が周りに知れて居る以上、相手はどんな人なんだと詮索もされないし何か詮索されたとしてもお互いに上手く躱す自信はある。
「じゃあ丁度良いじゃん!」
折角だし、期間限定カップル成立って事でちゃんと恋人らしくしてみる?なんて彼女の提案で俺たちはめでたく(期間限定で)付き合う事になった。
一緒に暮らすのはあの赤い糸の真偽を確かめるには手っ取り早い方法かも知れない。
「署内名物カップル遂に結婚⁉︎って社内報に載るんじゃない?」
「それは勘弁してくれ…」
巡回中の車内から数時間後には必要最低限の荷物をまとめた彼女が我が家に転がり込んで来た。物置がわりにして居た一室を開けてそこを彼女の部屋とした。
一つ屋根の下で恋人として暮らし始めて一週間。まあ、なんの問題も無い。食の好みはお互いに知って居るし、変な気を使う必要も無い。お互いに空き時間に家事をこなしたりと、むしろ都合が良い位だ。
しかし、恋人らしい事など何一つして居ない事に気付き焦る。折角の赤い糸の真偽を確かめるチャンスなのだ。普段知らない彼女の一面を見て一気に幻滅するかも知れないのだ。まだ知らない…コイツの一面…。
そうだ!寝て居る姿は見た事が無い!もしかしたらめちゃくちゃ寝相が悪くていびきもうるさいかも知れない!連勤と激務で思考がおかしな方向へと向かう脳内はそう思い立ってからの行動は早かった。
「おい、寝るぞ」
「先に寝ればいいじゃん。おやすみ〜」
同じく連勤明けの彼女はソファーに座ってニュースをチェックしている。
明日は休みだと言うのに律儀なものだ。
「一緒に寝るんだよ!仮とは言え付き合ってるんだから普通そのくらいするだろう」
「え、そんなムードも無く抱かれるの⁉︎今までの彼女達にもそうしてたの⁉︎」
自分の肩を抱くように大袈裟に身構えたリアクションを取る彼女の目の前に仁王立ちする。
「んな訳あるか‼︎違ぇわ!いきなり抱こうなんて思ってねぇわ!そのまんまの意味で一緒に寝るんだよ‼︎」
「同じベッドで?」
「嗚呼」
「私と銃兎が…?」
「そうだよ」
そう冷静に状況把握をされると自分から誘っておいてなんだが恥ずかしい。顔面が熱を持ちだしたのが自分でもよく分かる。
俺の顔を見た彼女がにやりと笑う。
「入間顔真っ赤、童貞?」
「違うつってんだろ、マジで抱き潰すぞ?」
「ちょっ、何すんの!離せヘンタイ‼︎」
「はい、テレビ終了〜〜電気消して寝るぞ〜〜」
騒ぐ彼女を俵担ぎにしてリビングから廊下へと抜ける。リビングから数歩左の扉が俺の寝室だ。
「ぎゃあ!降ろせ馬鹿‼︎」
脚をバタつかせる彼女の言い分を聞き入れてキングサイズのベッドの上に降ろす。
そしてアイアンクロー(手加減はしている)で彼女をベッドに寝かせる。
「いった!!何すんのさ⁉︎」
今日の銃兎本当に意味分かんない!きゃんきゃんと子犬の様に吠える彼女の横に大の字で寝転んで空いている隣の空間をポンポンと叩く。
「ほら、来いよ」
「…やだ」
「諦めろって」
「……」
再度布団を軽く叩くと〇〇が呆れ顔で溜息を吐く。
「分かった。でも腕枕はやだ」
巡査部長様の腕が使い物にならなくなって犯人取り逃がされても困るなんて仕事馬鹿な彼女らしい理由で腕枕は却下された。ぽすり、と隣に倒れ込んだ彼女はばつが悪そうにこう呟いた。
「…どうせバレるから先に言っておくけど、私人と一緒に寝られないから」
「はぁ?」
思わず上体を起こして彼女の顔を覗き込んだ。
「怖いと言うか、気配が気になってちゃんと寝られないの」
「お前、今まで男と寝る時どうしてたんだよ…」
「相手が寝たらベッドから抜け出して朝方戻ったり、翌朝仕事だからって寝ずに帰ったり…?てか普通そんな事聞く?」
「それバレねぇのかよ」
「バレる。だから恋愛は嫌なの」
布団を引き寄せて彼女が潜り込んでしまう。
「…別に嫌なら部屋に戻っていいんだぞ」
羽毛布団越しに彼女の頭を撫でてみても、感じるのは羽毛布団の柔らかさであの艶やかな髪の柔らかさは分かるはずもない。
「ん、でも銃兎とは一緒に居過ぎて気にならないかもね。なんか眠くなってきたし…」
布団から顔を出した彼女がふにゃりと笑う。
「お前なぁ…、それは殺し文句か?って本当に寝るのか?」
「おやすみ」
「…おやすみ」
暫くすると彼女は小さな寝息を立て始めた。彼女の横で出来るだけ息を潜めて気配を消す。俺が寝たら彼女は部屋へ戻るのだろうか…さっき言っていた俺の隣なら大丈夫かもしれないと言うのも彼女なりの気遣いなのか、真意は分からない。
これ以上、連勤で酷使した脳で考えた所で答えが出る訳もないので銃兎は考えるのを辞めて目を閉じた。
ふと目が覚め無意識にスマートフォンで時間を確認する。深夜3時を過ぎた頃だった。
隣にいた筈の彼女が居ない。
「部屋に戻ったのか」
寂しい訳ではないが何となく虚しさを感じるのは何故だろうか。
まぁ理由も分かって居る事だし、暖かな布団から出て探しに行く必要もないだろう。
もう一度寝ようと布団に潜り込むのとほぼ同時に寝室のドアが開く。
「お前、」
「あれ…起こしちゃった?」
「部屋に戻ったんじゃ無かったのか?」
「喉乾いちゃったから水飲みに行ってただけだけど、なんで?」
「お前が人の横じゃ寝れねーって言ったからだろ」
「銃兎の横は大丈夫みたい。良かったね」
「何がだ?」
「結婚しても一緒に寝れないって中々に問題じゃない?」
「まぁそうかもしれないな」
「でしょ?人と寝れない私と性格に難有りな銃兎の相性がいいなんて運命の赤い糸とかで繋がってたりするのかもね」
「性格に難有りなのはお互い様だろ」
ケラケラと彼女は笑うが俺は全く笑えない。
「ほら、寝るんだろ?」
布団を捲るとひんやりとした空気と一緒に彼女が潜り込んで来る。
「ねぇ、銃兎…」
「なんだよ」
「ギュってして?」
「お前なぁ…!ちょっとは危機感を持て」
「彼氏に甘えちゃダメなの?」
「…ったく。明日起きてからキレるなよ」
恐る恐る触れた肩は骨が目立ち、背中も腹も薄く胴回りはくびれていた。
紛れも無い、女のしなやかな身体だった。
「くすぐったい」
俺の腕の中で笑う〇〇は、普段かっちりとスーツを着込んだ彼女からは想像出来ない無防備さだ。
「お前また痩せただろ…?」
「なんで分かるの?」
「なんでだろーな。明日昼に中華街でも行くか」
「どっちが奢るかジャンケンね」
「どうせお前が負けるだろ…ってまた寝てんのかよ」
俺の腕の中ですやすやと健やかな寝息を立てる、彼女の桜色の柔らかな唇に触れるだけのキスを落とす。
彼女が起きる気配は全くない。
「無防備過ぎンだろ…」
他人と一緒に寝られないと言うのが嘘なのではと疑いたくなる。
これが運命なのだろうか?
俺だけが特別だって自惚れても良いのだろうか?
赤い糸が繋がっていた左手を見詰める。
赤い糸はもう視えない。
今は効果が消えて以前とほとんど変わらない生活が送れる様になった。赤い糸で結ばれた後輩カップルは愛を育んでいるようだし良い事だ。
以前と変わった点と言えば俺と同期の〇〇との関係についてだ。
俺の運命の糸の先を手繰ると犬猿の仲であり良き(?)相棒である彼女だった。
元々、同期の中でも頭が冴えて賢いが何処か危なっかしい奴で気に掛けては居たが恋愛感情とは程遠かった。
しかし、赤い糸の一件から赤い糸で繋がれていた後輩達は仲睦まじくしている。俺と〇〇もああなるのか?という意味で〇〇の事が気掛かりだった。
そのタイミングで上司から「良い人は居ないのか?」「そろそろ身を固めたらどうだ?」と有り難迷惑なお言葉。
29歳独身。周りを見れば既婚者、子持ちも多い。今のご時世結婚しなくても生きていくには何一つ困りはしないが世間からの目は煩わしい。
かと言って今は恋人と呼べる関係の相手は居ない。以前と違うのは気になる相手が居ると言う事位だ。
そして、タイミングというものは重なるもので〇〇の住むマンションが燃えた。
正確には彼女の上の階で火災が発生した。幸い火は消火され大事にはならなかったのだが、下の階の彼女の部屋は上からの浸水で水浸し…部屋の清掃や壁紙の張り替えなどに1ヶ月は掛かるらしい。
更に不運は重なり社員寮は満室。地方から出て来てこちらに身を寄せられる場所もない彼女はホテル住まいを決断したが、師も走る師走。イベント事も多い今の時期に1ヶ月の長期が可能な宿の確保は中々難しい。
激務に追われ浅黒い隈を瞼にこさえ、巡回中の助手席で宿探しに明け暮れる〇〇があまりにも憐れで「ウチに来るか?」と声を掛けてしまった。どうせ断られるだろうと思いながらの提案を彼女はすんなりと受け入れた。
仕事柄、自分の居場所を明確にしておく必要があり彼女が我が家に身を寄せる事を上に報告しなくてはならない。署内でも名コンビ・名物カップル(付き合っていない)と噂される二人が同じ屋根の下で暮らすのだ男女の関係を疑われるのは避けて通れない。
「入間は今恋人居るの?」
「居たらお前に家に来るか?なんて声掛けると思うか?」
「だよね〜」
「そう言うお前はどうなんだよ」
「彼氏が居るなら宿探ししてない」
「まぁ、そうだな」
「もう結婚を前提に付き合ってることにする?」
「銃兎だって上から結婚はまだか〜!とか色々言われてるでしょ?」
「…そりゃな」
その提案は悪くない。相手が周りに知れて居る以上、相手はどんな人なんだと詮索もされないし何か詮索されたとしてもお互いに上手く躱す自信はある。
「じゃあ丁度良いじゃん!」
折角だし、期間限定カップル成立って事でちゃんと恋人らしくしてみる?なんて彼女の提案で俺たちはめでたく(期間限定で)付き合う事になった。
一緒に暮らすのはあの赤い糸の真偽を確かめるには手っ取り早い方法かも知れない。
「署内名物カップル遂に結婚⁉︎って社内報に載るんじゃない?」
「それは勘弁してくれ…」
巡回中の車内から数時間後には必要最低限の荷物をまとめた彼女が我が家に転がり込んで来た。物置がわりにして居た一室を開けてそこを彼女の部屋とした。
一つ屋根の下で恋人として暮らし始めて一週間。まあ、なんの問題も無い。食の好みはお互いに知って居るし、変な気を使う必要も無い。お互いに空き時間に家事をこなしたりと、むしろ都合が良い位だ。
しかし、恋人らしい事など何一つして居ない事に気付き焦る。折角の赤い糸の真偽を確かめるチャンスなのだ。普段知らない彼女の一面を見て一気に幻滅するかも知れないのだ。まだ知らない…コイツの一面…。
そうだ!寝て居る姿は見た事が無い!もしかしたらめちゃくちゃ寝相が悪くていびきもうるさいかも知れない!連勤と激務で思考がおかしな方向へと向かう脳内はそう思い立ってからの行動は早かった。
「おい、寝るぞ」
「先に寝ればいいじゃん。おやすみ〜」
同じく連勤明けの彼女はソファーに座ってニュースをチェックしている。
明日は休みだと言うのに律儀なものだ。
「一緒に寝るんだよ!仮とは言え付き合ってるんだから普通そのくらいするだろう」
「え、そんなムードも無く抱かれるの⁉︎今までの彼女達にもそうしてたの⁉︎」
自分の肩を抱くように大袈裟に身構えたリアクションを取る彼女の目の前に仁王立ちする。
「んな訳あるか‼︎違ぇわ!いきなり抱こうなんて思ってねぇわ!そのまんまの意味で一緒に寝るんだよ‼︎」
「同じベッドで?」
「嗚呼」
「私と銃兎が…?」
「そうだよ」
そう冷静に状況把握をされると自分から誘っておいてなんだが恥ずかしい。顔面が熱を持ちだしたのが自分でもよく分かる。
俺の顔を見た彼女がにやりと笑う。
「入間顔真っ赤、童貞?」
「違うつってんだろ、マジで抱き潰すぞ?」
「ちょっ、何すんの!離せヘンタイ‼︎」
「はい、テレビ終了〜〜電気消して寝るぞ〜〜」
騒ぐ彼女を俵担ぎにしてリビングから廊下へと抜ける。リビングから数歩左の扉が俺の寝室だ。
「ぎゃあ!降ろせ馬鹿‼︎」
脚をバタつかせる彼女の言い分を聞き入れてキングサイズのベッドの上に降ろす。
そしてアイアンクロー(手加減はしている)で彼女をベッドに寝かせる。
「いった!!何すんのさ⁉︎」
今日の銃兎本当に意味分かんない!きゃんきゃんと子犬の様に吠える彼女の横に大の字で寝転んで空いている隣の空間をポンポンと叩く。
「ほら、来いよ」
「…やだ」
「諦めろって」
「……」
再度布団を軽く叩くと〇〇が呆れ顔で溜息を吐く。
「分かった。でも腕枕はやだ」
巡査部長様の腕が使い物にならなくなって犯人取り逃がされても困るなんて仕事馬鹿な彼女らしい理由で腕枕は却下された。ぽすり、と隣に倒れ込んだ彼女はばつが悪そうにこう呟いた。
「…どうせバレるから先に言っておくけど、私人と一緒に寝られないから」
「はぁ?」
思わず上体を起こして彼女の顔を覗き込んだ。
「怖いと言うか、気配が気になってちゃんと寝られないの」
「お前、今まで男と寝る時どうしてたんだよ…」
「相手が寝たらベッドから抜け出して朝方戻ったり、翌朝仕事だからって寝ずに帰ったり…?てか普通そんな事聞く?」
「それバレねぇのかよ」
「バレる。だから恋愛は嫌なの」
布団を引き寄せて彼女が潜り込んでしまう。
「…別に嫌なら部屋に戻っていいんだぞ」
羽毛布団越しに彼女の頭を撫でてみても、感じるのは羽毛布団の柔らかさであの艶やかな髪の柔らかさは分かるはずもない。
「ん、でも銃兎とは一緒に居過ぎて気にならないかもね。なんか眠くなってきたし…」
布団から顔を出した彼女がふにゃりと笑う。
「お前なぁ…、それは殺し文句か?って本当に寝るのか?」
「おやすみ」
「…おやすみ」
暫くすると彼女は小さな寝息を立て始めた。彼女の横で出来るだけ息を潜めて気配を消す。俺が寝たら彼女は部屋へ戻るのだろうか…さっき言っていた俺の隣なら大丈夫かもしれないと言うのも彼女なりの気遣いなのか、真意は分からない。
これ以上、連勤で酷使した脳で考えた所で答えが出る訳もないので銃兎は考えるのを辞めて目を閉じた。
ふと目が覚め無意識にスマートフォンで時間を確認する。深夜3時を過ぎた頃だった。
隣にいた筈の彼女が居ない。
「部屋に戻ったのか」
寂しい訳ではないが何となく虚しさを感じるのは何故だろうか。
まぁ理由も分かって居る事だし、暖かな布団から出て探しに行く必要もないだろう。
もう一度寝ようと布団に潜り込むのとほぼ同時に寝室のドアが開く。
「お前、」
「あれ…起こしちゃった?」
「部屋に戻ったんじゃ無かったのか?」
「喉乾いちゃったから水飲みに行ってただけだけど、なんで?」
「お前が人の横じゃ寝れねーって言ったからだろ」
「銃兎の横は大丈夫みたい。良かったね」
「何がだ?」
「結婚しても一緒に寝れないって中々に問題じゃない?」
「まぁそうかもしれないな」
「でしょ?人と寝れない私と性格に難有りな銃兎の相性がいいなんて運命の赤い糸とかで繋がってたりするのかもね」
「性格に難有りなのはお互い様だろ」
ケラケラと彼女は笑うが俺は全く笑えない。
「ほら、寝るんだろ?」
布団を捲るとひんやりとした空気と一緒に彼女が潜り込んで来る。
「ねぇ、銃兎…」
「なんだよ」
「ギュってして?」
「お前なぁ…!ちょっとは危機感を持て」
「彼氏に甘えちゃダメなの?」
「…ったく。明日起きてからキレるなよ」
恐る恐る触れた肩は骨が目立ち、背中も腹も薄く胴回りはくびれていた。
紛れも無い、女のしなやかな身体だった。
「くすぐったい」
俺の腕の中で笑う〇〇は、普段かっちりとスーツを着込んだ彼女からは想像出来ない無防備さだ。
「お前また痩せただろ…?」
「なんで分かるの?」
「なんでだろーな。明日昼に中華街でも行くか」
「どっちが奢るかジャンケンね」
「どうせお前が負けるだろ…ってまた寝てんのかよ」
俺の腕の中ですやすやと健やかな寝息を立てる、彼女の桜色の柔らかな唇に触れるだけのキスを落とす。
彼女が起きる気配は全くない。
「無防備過ぎンだろ…」
他人と一緒に寝られないと言うのが嘘なのではと疑いたくなる。
これが運命なのだろうか?
俺だけが特別だって自惚れても良いのだろうか?
赤い糸が繋がっていた左手を見詰める。
赤い糸はもう視えない。