料理を終えて、掃除をしようと思い立つ。
しかし、物がほとんどない彼の部屋の掃除はあっと言う間に終わってしまう。
彼の部屋では時間になればお掃除ロボットが忙しなく動いて床を綺麗にしてくれるし、洗濯物はほとんどがクリーニングだ。洗濯物を専用のバッグに詰め込んで回収に来たクリーニング業者に出すと綺麗に洗濯され畳まれて戻って来る。
彼の着ているもののほとんどが私には手が出せない様なブランド品なので洗濯するのはとても怖い。縮んだり色移りなどしてしまっても多分弁償など出来ない。
そんな事をぼんやりと考えながら次は何をしようかと考える。

そういえば、先程の買い物でバースデーカードを買ったのを思い出す。鞄からバースデーカードを取り出してお気に入りの万年筆を握り何て書こうか、暫く考えてありふれた祝いの言葉を書き綴る。
「これじゃあ、つまらないかな？」
ふと、鞄の中のハードカバーが目に付いた。
物語の中で使われていたちょっとしたお遊びを思い出す。
手紙の中の指示に従って行動すると新たな手紙を手に入れる事が出来て、それを進めて行くとお宝の在り処に辿り着くというもので、プレゼントを隠すには打って付けだ。
「面白いかも…」
捻くれ者な割に律儀な彼が私の思い通りに動いてくれる可能性は半分位だけれど時間を持て余している今、余興には丁度いいかもしれない。
バースデーカードと一緒に買ったレターセットを取り出す。シンプルなデザインの空色の封筒と真っ白な便箋。
帰って来た彼がするであろう行動を考えながら一枚ずつ指示を書き入れる。