🐰
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「気を張りすぎだ」
帰宅するや否や、ネクタイを外しながら溜息を吐く彼に座っていたソファーから軽々と担ぎ上げられて男と女の力の差を嫌でも目の当たりにする。
悔しい。
「ちょっと何するの!」
抵抗も虚しく連れて来られたのはお風呂場で、
帰宅直後に彼がお湯を張ったのだろう、目一杯に捻られた蛇口から出たお湯が浴槽のギリギリまで迫ってきていた。
私を担いだままの彼が蛇口を反対に捻り、大洪水は免れた。
「降ろして!」
暴れて彼の腕から抜け出したのもつかの間、私の頭上から降り注ぐ温水。
「えっ、な何、すんの…?」
ぽたぽたと着たままの服や髪から滴れる水滴に状況把握が追いつかない。
思わず間抜けな声が出てしまう。
濡れたまま風呂場のタイルに座り込む私を彼が嘲るように見下す。
彼の手にはシャワーヘッド。
「お前が暴れるからだろう」
ニヒルな笑みを浮かべた彼の表情に苛立って、近くに転がった風呂桶で湯船のお湯を彼目掛けてぶっかけた。
「ハッ、水も滴るいい男?」
「てんめぇ…ッ」
水撃によって乱れた髪を掻き上げながら、眼鏡を外す彼の額には青筋が立っていて。
そこから数分、年甲斐もなく本気の水撃戦が勃発した。
お互いに体力の限界と並々溢れそうだった湯船が半分程減った辺りで、濡れて肌に張り付いた衣服を彼にひん剥かれ私は湯船に落とされた。
濡れた服をそのまま洗濯機にぶち込んで乱暴に洗濯をスタートした彼が洗面所から持って来た半透明なボトルを湯船の上でひっくり返す。
「何すんの!?」
湯船から上がろうとする私の頭を抑えて、湯船を搔き回す彼。
段々と湯船が白く濁っていき、立ち込める柔らかなミルクの香り。
それは私の好きな入浴剤だった。
彼が白濁した湯船の私と反対側に浸かる。長い脚が私のお腹を掠めた。
「こっち来いよ」
「やだ」
「何、拗ねてんだよ」
私の頭を包む彼の大きな手。
ぐい、と引き寄せられて堅い胸板が頰に触れた。頭の天辺に優しいリップ音を落とされて、目の前にあった彼の無駄な脂肪のない二の腕に噛み付いた。
「痛えな」
あぐあぐと甘噛みを続ける私の頭を軽く小突くから、歯型の残った彼の腕を恨めしそうに睨んでぽつりと呟く。
「悔しい…」
「何がだよ」
汗と湿気で濡れた前髪を鬱陶しそうに掻き上げた彼が問う。
「銃兎の方が強い…」
「当たり前だろう」
何が当たり前か彼は口にしない。
それは女である私が1番わかっている事、「女だから」と性を言い訳に使われるのを私が嫌う事も彼は知っている。
「なんでだろ」
「さぁな、」
今回の事件で私はヘマをして犯人の人質となってしまった。
警察官である私を人質に取り油断した犯人を銃兎が取り押さえてくれたおかげで人質の任は一瞬で解かれた。
それでも警察官としてのプライドが気付かない訳がない。
男と女の力の差は埋まらない。
女はそれを埋めるために知恵と技量を磨くしかないのだ。
一瞬の気の緩みが命取りになる。
一瞬だって気は抜けない。
「お前は気を張り過ぎなんだよ」
頭を撫でる彼の大きな手。
脳内で繰り広げられていた論争は彼の言葉によって終わりを告げた。
「お前が男でも女でも、そこらの野良猫だろうとお前は俺のライバルで相棒だろ」
「うん、」
するりと頸を撫でた優しい手は零れ落ちる涙を拭い、頰に触れて、私の唇を弄ぶ。
「そして、恋人だ」
「うん」
「滅多にない誰にも邪魔されない2人きりの時間位、甘えてみたってバチは当たらねェだろう?」
触れるだけの優しいキス。
彼は優しくて強くて、とても狡い男だ。
私がどれだけ努力をしたって一生彼に敵う事はないだろう。
「銃兎が敵じゃなくて良かった」
なんだよそれ、と笑う彼の堅い胸板に頭を預けて湯船に浸かる。
張っていた緊張の糸が少しずつ、解れていく気がした。
帰宅するや否や、ネクタイを外しながら溜息を吐く彼に座っていたソファーから軽々と担ぎ上げられて男と女の力の差を嫌でも目の当たりにする。
悔しい。
「ちょっと何するの!」
抵抗も虚しく連れて来られたのはお風呂場で、
帰宅直後に彼がお湯を張ったのだろう、目一杯に捻られた蛇口から出たお湯が浴槽のギリギリまで迫ってきていた。
私を担いだままの彼が蛇口を反対に捻り、大洪水は免れた。
「降ろして!」
暴れて彼の腕から抜け出したのもつかの間、私の頭上から降り注ぐ温水。
「えっ、な何、すんの…?」
ぽたぽたと着たままの服や髪から滴れる水滴に状況把握が追いつかない。
思わず間抜けな声が出てしまう。
濡れたまま風呂場のタイルに座り込む私を彼が嘲るように見下す。
彼の手にはシャワーヘッド。
「お前が暴れるからだろう」
ニヒルな笑みを浮かべた彼の表情に苛立って、近くに転がった風呂桶で湯船のお湯を彼目掛けてぶっかけた。
「ハッ、水も滴るいい男?」
「てんめぇ…ッ」
水撃によって乱れた髪を掻き上げながら、眼鏡を外す彼の額には青筋が立っていて。
そこから数分、年甲斐もなく本気の水撃戦が勃発した。
お互いに体力の限界と並々溢れそうだった湯船が半分程減った辺りで、濡れて肌に張り付いた衣服を彼にひん剥かれ私は湯船に落とされた。
濡れた服をそのまま洗濯機にぶち込んで乱暴に洗濯をスタートした彼が洗面所から持って来た半透明なボトルを湯船の上でひっくり返す。
「何すんの!?」
湯船から上がろうとする私の頭を抑えて、湯船を搔き回す彼。
段々と湯船が白く濁っていき、立ち込める柔らかなミルクの香り。
それは私の好きな入浴剤だった。
彼が白濁した湯船の私と反対側に浸かる。長い脚が私のお腹を掠めた。
「こっち来いよ」
「やだ」
「何、拗ねてんだよ」
私の頭を包む彼の大きな手。
ぐい、と引き寄せられて堅い胸板が頰に触れた。頭の天辺に優しいリップ音を落とされて、目の前にあった彼の無駄な脂肪のない二の腕に噛み付いた。
「痛えな」
あぐあぐと甘噛みを続ける私の頭を軽く小突くから、歯型の残った彼の腕を恨めしそうに睨んでぽつりと呟く。
「悔しい…」
「何がだよ」
汗と湿気で濡れた前髪を鬱陶しそうに掻き上げた彼が問う。
「銃兎の方が強い…」
「当たり前だろう」
何が当たり前か彼は口にしない。
それは女である私が1番わかっている事、「女だから」と性を言い訳に使われるのを私が嫌う事も彼は知っている。
「なんでだろ」
「さぁな、」
今回の事件で私はヘマをして犯人の人質となってしまった。
警察官である私を人質に取り油断した犯人を銃兎が取り押さえてくれたおかげで人質の任は一瞬で解かれた。
それでも警察官としてのプライドが気付かない訳がない。
男と女の力の差は埋まらない。
女はそれを埋めるために知恵と技量を磨くしかないのだ。
一瞬の気の緩みが命取りになる。
一瞬だって気は抜けない。
「お前は気を張り過ぎなんだよ」
頭を撫でる彼の大きな手。
脳内で繰り広げられていた論争は彼の言葉によって終わりを告げた。
「お前が男でも女でも、そこらの野良猫だろうとお前は俺のライバルで相棒だろ」
「うん、」
するりと頸を撫でた優しい手は零れ落ちる涙を拭い、頰に触れて、私の唇を弄ぶ。
「そして、恋人だ」
「うん」
「滅多にない誰にも邪魔されない2人きりの時間位、甘えてみたってバチは当たらねェだろう?」
触れるだけの優しいキス。
彼は優しくて強くて、とても狡い男だ。
私がどれだけ努力をしたって一生彼に敵う事はないだろう。
「銃兎が敵じゃなくて良かった」
なんだよそれ、と笑う彼の堅い胸板に頭を預けて湯船に浸かる。
張っていた緊張の糸が少しずつ、解れていく気がした。