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唯、なんとなく無性に煙草を吸ってみたくなって初めて煙草を買った。
彼の吸っているのと迷って、結局目に入ったピンクのパッケージの物にした。
お会計の間、年齢確認をされるのではと免許証にずっと指が触れていた。
レジの店員さんは気怠げな表情のまま何も言わず商品を袋に詰めていた。
コンビニを出てすぐに買った煙草を鞄の奥にしまい込んだ。
罪悪感に胸が高鳴った。
もう煙草もお酒も許される歳なのに。
礼儀正しく大人達の言う事を訊いて「良い子だね」と言われて育った優等生のちょっとした反抗のつもりだった。
家に帰っても部屋は暗いままで彼の姿は無かった。
買った物を冷蔵庫に仕舞って鞄の中に隠した煙草をテーブルの上に置いた。
しばらく眺めて、ビニールの包装を外してパッケージを嗅いでみる。
嗅ぎ慣れない苦い香り。
その辺にあった彼のライターを握り締めてベランダへ出て彼の姿を思い浮かべて煙草を咥えた。
ただ咥えること数分。
思い切って火をつけた。
ぼう、と燃える煙草の先。
ゆるりと煙が空へと昇る。
咥えて恐る恐る吸い込んでみる。
上手く吸い込めない。
彼の真似をして煙草を持つ指先は震えて、灰すら上手に落とせない。
煙草の味は可愛いピンクのパッケージと程遠く唯々苦いだけだった。
2cm程灰にしてまだ長く残るそれをどうしようかと考えていると背後から声がした。
「何してンだよ」
「あ、」
彼が来た事に気付かずに私の秘密の反逆行為はすぐにバレてしまった。
不機嫌そうな彼がベランダへと出て来る。
「あ、じゃねぇよ。何吸ってんだよ」
「…左馬刻の真似」
私の額に軽くデコピンを喰らわせた彼の指先が煙草を奪って見慣れた姿で紫煙を吐き出す。
夜風になびく髪を耳に掛けて、彼が吐き出す煙をぼんやりと眺めていた。
周りの時間が止まっている様な気さえした。
「吸うなとは言わねぇけどよ」
ジリジリと紅く燃える先端。
吐き出されては夜に消える紫煙。
「別に楽しかねぇだろ」
静かに燃える彼の紅い瞳が私を見詰める。
「うん。喉と胸の奥がスースーする…」
「吸うのが下手くそなんだよ」
クククと喉を震わせて彼が笑った。
「お前にゃこれがお似合いだ」
彼がポケットから出したのはキャンディーだった。
ママの味が謳い文句の私の好きなヤツ。
煙草を咥えたまま彼の指先がフィルムを外して、裸になった白い飴玉を私の口の中へ放り込んで、優しい甘さが煙草の味を消していく。
「ありがと」
彼の指先が煙草の灰を灰皿に押し付けて揉み消した。
不意に唇を奪われて飴玉を追う様に舌が絡んで口内で甘さと苦さが交じり合う。
「こっちにしとけ」
彼の骨張った手が髪に触れる。
「うん」
染み付いた彼の香りの中に馴染み切らない私の買った煙草の匂い。
買ったばかりのソレは既に彼のポケットに仕舞われて、
もう私が吸う事は2度とないだろう。
煙草の匂いは彼の腕の中だけで十分。
そう思った。
彼の吸っているのと迷って、結局目に入ったピンクのパッケージの物にした。
お会計の間、年齢確認をされるのではと免許証にずっと指が触れていた。
レジの店員さんは気怠げな表情のまま何も言わず商品を袋に詰めていた。
コンビニを出てすぐに買った煙草を鞄の奥にしまい込んだ。
罪悪感に胸が高鳴った。
もう煙草もお酒も許される歳なのに。
礼儀正しく大人達の言う事を訊いて「良い子だね」と言われて育った優等生のちょっとした反抗のつもりだった。
家に帰っても部屋は暗いままで彼の姿は無かった。
買った物を冷蔵庫に仕舞って鞄の中に隠した煙草をテーブルの上に置いた。
しばらく眺めて、ビニールの包装を外してパッケージを嗅いでみる。
嗅ぎ慣れない苦い香り。
その辺にあった彼のライターを握り締めてベランダへ出て彼の姿を思い浮かべて煙草を咥えた。
ただ咥えること数分。
思い切って火をつけた。
ぼう、と燃える煙草の先。
ゆるりと煙が空へと昇る。
咥えて恐る恐る吸い込んでみる。
上手く吸い込めない。
彼の真似をして煙草を持つ指先は震えて、灰すら上手に落とせない。
煙草の味は可愛いピンクのパッケージと程遠く唯々苦いだけだった。
2cm程灰にしてまだ長く残るそれをどうしようかと考えていると背後から声がした。
「何してンだよ」
「あ、」
彼が来た事に気付かずに私の秘密の反逆行為はすぐにバレてしまった。
不機嫌そうな彼がベランダへと出て来る。
「あ、じゃねぇよ。何吸ってんだよ」
「…左馬刻の真似」
私の額に軽くデコピンを喰らわせた彼の指先が煙草を奪って見慣れた姿で紫煙を吐き出す。
夜風になびく髪を耳に掛けて、彼が吐き出す煙をぼんやりと眺めていた。
周りの時間が止まっている様な気さえした。
「吸うなとは言わねぇけどよ」
ジリジリと紅く燃える先端。
吐き出されては夜に消える紫煙。
「別に楽しかねぇだろ」
静かに燃える彼の紅い瞳が私を見詰める。
「うん。喉と胸の奥がスースーする…」
「吸うのが下手くそなんだよ」
クククと喉を震わせて彼が笑った。
「お前にゃこれがお似合いだ」
彼がポケットから出したのはキャンディーだった。
ママの味が謳い文句の私の好きなヤツ。
煙草を咥えたまま彼の指先がフィルムを外して、裸になった白い飴玉を私の口の中へ放り込んで、優しい甘さが煙草の味を消していく。
「ありがと」
彼の指先が煙草の灰を灰皿に押し付けて揉み消した。
不意に唇を奪われて飴玉を追う様に舌が絡んで口内で甘さと苦さが交じり合う。
「こっちにしとけ」
彼の骨張った手が髪に触れる。
「うん」
染み付いた彼の香りの中に馴染み切らない私の買った煙草の匂い。
買ったばかりのソレは既に彼のポケットに仕舞われて、
もう私が吸う事は2度とないだろう。
煙草の匂いは彼の腕の中だけで十分。
そう思った。