一郎と彼女が夕食の買い出しに出掛けている山田家で事件は起こった。

「ぎゃあ⁉︎ゴキ●リぃぃぃぃぃ⁉︎⁉︎⁉︎」
「その名前を口にするな‼︎低脳ぉ‼︎早く何とかしろよぉ‼︎‼︎」
テーブルの上でぶるぶると震える二郎・三郎。

「ただいま〜〜二郎、三郎帰ったぞ〜！」
「お邪魔しまぁす」

「「いちにい‼︎（にいちゃん‼︎）助けて‼︎‼︎」」

タイミングよく帰って来た救世主、否、神の名を泣きながら呼ぶ。
「お前ら‼︎どうした⁉︎」
その声に慌てた一郎がドアを開けると、目の前を通り過ぎる黒い塊。

硬直する一郎。

（あれはGだ…Gがこの家に居る…）
（そうなんだよ、にいちゃん…）
（その名を口にするのも忌まわしいアイツがいるんです…）

脳内に直接語りかけてくる様な弟達の視線。

何を隠そう、三兄弟…Gが大の苦手である。

この緊急事態に弟達はお互いに抱き着きながら泣き喚いているし、彼女は一郎の背後で立ち尽くしている。

（この状況、俺が何とかするしかないのか…）

しかし、一郎が決心を固めるよりも早く、すぱぁん！！といい音を立ててGを仕留めたのは〇〇だった。

その手には丸められた紙束。（ポストから受け取って来た通販のダイレクトメールだろう）

「ほら！片付けるからあっち行って‼︎」
テキパキと片付ける彼女。
「も〜〜‼︎ちゃんとホイホイ設置しとかなきゃだめだよ‼︎」
1匹居たら何匹も…って言うんだから、と悪戯っ子みたいな顔でニヒルに笑う彼女に弟達が小さな悲鳴を上げた。

「ま、次出ても私が退治するから大丈夫だよ。安心して」

「はわわ…〇〇つよい……しゅき……」
「いちにい、キャラがブレてます」

彼女の男前すぎる笑顔にときめいて恋する乙女みたいな反応になってしまう山田一郎（好きなタイプ:強い女性）であった。