2️⃣
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「にいちゃんと喧嘩した…」
ソファーの上でクッションを抱えたまま呟く俺に彼女が苦笑いを浮かべる。
「あー、さっき会った時機嫌悪かったのはそれかぁ」
にいちゃんは仕事が入ったと出て行った所だから、彼女とは入れ違いになったのだろう。
「一郎、帰り遅くなるっていってたよ」
「…ふぅん」
提げていたスーパーの袋から食材を取り出しながら冷蔵庫やストック棚にしまっていた彼女の視線が食卓に置き去りにされたペットボトルにいく。
「コーラ、蓋開いたままだけど」
二郎の?と小首を傾げる。
「にいちゃんの。でも多分口は付けてないと思う」
しゅわしゅわと炭酸が現在進行形で抜け続けるコーラはにいちゃんが飲もうとしてた所で言い合いになってしまったから、このまま行けば飲まれないまま甘くて緩い汁になるだけだ。
「丁度いいし、コーラ煮作る?」
「コーラ煮?」
「そ、手羽元のコーラ煮」
どう?と言いたげな表情で《広告の品》のシールが付いた大きなパック肉を嬉しそうに掲げる。
なんか滅茶苦茶甘そう。
うげぇ、と顔を歪ませる俺を見て彼女が笑う。
「コーラの味想像したでしょ。大丈夫だよ、味は普通の照り焼きみたいなものだから。二郎が作ってみよっか!」
「俺、おじやとチャーハンくらいしか作れねぇけど大丈夫?」
「大丈夫!大丈夫!おじや作れれば充分!」
彼女が風邪引いたら作ってあげれるね、と俺の背を押す彼女が笑うから「〇〇が風邪引いたら俺が作ってあげるね…!」勇気を出して言ったのに、
「あ、私身体だけは丈夫だから大丈夫‼︎」
そう言ってバサリと切り捨てられてしまった。
にいちゃんとの喧嘩に付け加え、淡い恋心が傷付いて完全に傷心中の俺にエプロンを被せた彼女に言われるがまま、気付いた時には手洗いを済ませてフライパンと菜箸握っていた。
「はい!フライパンに油ひいて、温まったら手羽元を皮目から焼きまーす!塩胡椒して〜、両面こんがり焼きます!」
「え?う、うん」
テキパキと出される指示に従って、俺がフライパンの番をしている間に彼女はぱぱっとほうれん草の胡麻和えを作り終え、味噌汁に取り掛かっていた。
「ねぇ、こんがりってこのくらい?」
「うん、完璧!そこにコーラ一本入れまーす」
「うぇえっ⁉︎」
「はい、次生姜チューブ入れて」
「どんくらい?」
「はい、ストップ!次はお醤油大さじ四」
ドバドバと投入されたコーラ500㎖に不安と動揺を隠せないままぷるぷる震える手で醤油を計量していく。
「これ、本当に大丈夫なのかよ」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ‼︎だってもうほぼ完成だよ?」
「え?これで…⁉︎」
フライパンの中でぐつぐつと煮立つコーラの海を漂う手羽元。
「あとは煮汁がなくなる位まで煮るだけ」
お肉、時々ひっくり返してね、と味噌汁の鍋にネギを散らしながら彼女が言う。
ぐつぐつと煮えたぎるコーラの甘い香りと醤油の香ばしい香りが混じり合うキッチン。
ほうれん草の胡麻和えを小鉢に盛り付ける彼女がぽつりと呟く。
「二郎ちゃんはさ、一郎に危険な事して欲しくないんでしょ?」
「え、…うん」
「なんで一郎が二郎に危険な事させないかわかる?」
「俺がまだ高校生でガキだから…?」
「うーん、高校生ってのも多少はあるかもしれないけど子供とか大人とかじゃなくて、大切な家族を危険な目に合わせたくないって感じじゃないかな?」
「それは二郎だって同じでしょう?」
彼女が優しく微笑んだ。
「でも…ッ‼︎」
玄関から三郎の声がして、彼女がおかえりを投げ掛ける。
「ご飯もうすぐできるよ!」
「はぁい、着替えたらすぐに行きます」
三郎が帰ってきたからこれ以上うじうじと彼女に愚痴る事は出来ない。
「……」
「納得行かない?」
「ううん…」
「あ、コーラ煮そろそろいい感じじゃない?」
フライパンの中のコーラはほぼなくなって黒い海を漂っていた手羽元は美味しそうにテラテラと輝く普通の照り焼きになっていた。
「うわッ!旨そう‼︎」
「一本味見してごらん?」
「いいの?」
いつもつまみ食いをすると怒る彼女からの甘い誘惑に恐る恐る彼女の顔色を伺う。
「これは作った人の特権!ほら、さぶちゃんきちゃうよ」
小皿に取り分けられた手羽元にかぶりつく。
じゅわりと溢れる肉汁と口の中に広がる甘じょっぱいタレの味。
「…うまっ!」
「よかった」
「コーラってすげえな‼︎絶対ヤバいモン出来ると思ってたのに…!」
肯定から入るより否定から入った方が上手く行く事もあるんだよ。と彼女が笑う。
「…俺とにいちゃんも上手くいくかな…?」
「多分ね。まだ言いたい事沢山あるんでしょう?それはちゃんと一郎に言いな?私からもちゃんと話聞いてあげてって言っておくからさ」
ね?、と彼女が優しい声色で告げる。
「うん…ありがと」
大人はずるい。
何もない振りが上手いのだ。
彼女も、にいちゃんも。
ずるい。
この感情を吞み込めるほど大人でも、上手くいかないと泣き喚く子供でもない俺は彼女に礼を言う事しか出来なかった。
《喧嘩した日のコーラ煮》
材料(四人分)
・手羽元…16本
・コーラ…500㎖
・生姜…2㎝
・醤油…大さじ4
・塩胡椒…適量
作り方
①フライパンに油をひき、塩胡椒をした手羽元を皮目から両面に焼き色が付くまで焼く。
②コーラ・生姜・醤油を入れ中火で煮る。(30分程度)
③手羽元が浸るくらいだった煮汁が1/3程度になったら味見をして必要があれば醤油・砂糖を足す。
④タレと良く絡めて完成。
ポイント
・③のあたりから焦げやすいので悩む彼の話を聞きすぎて焦がさないように注意
・だいぶ煮詰まるので醤油と砂糖を足す必要は無いかと思いますがお好みで…
・大根を一緒に煮ても美味しいです。
・盛り付ける際にレタスやキャベツを敷くと美味しいです。
ソファーの上でクッションを抱えたまま呟く俺に彼女が苦笑いを浮かべる。
「あー、さっき会った時機嫌悪かったのはそれかぁ」
にいちゃんは仕事が入ったと出て行った所だから、彼女とは入れ違いになったのだろう。
「一郎、帰り遅くなるっていってたよ」
「…ふぅん」
提げていたスーパーの袋から食材を取り出しながら冷蔵庫やストック棚にしまっていた彼女の視線が食卓に置き去りにされたペットボトルにいく。
「コーラ、蓋開いたままだけど」
二郎の?と小首を傾げる。
「にいちゃんの。でも多分口は付けてないと思う」
しゅわしゅわと炭酸が現在進行形で抜け続けるコーラはにいちゃんが飲もうとしてた所で言い合いになってしまったから、このまま行けば飲まれないまま甘くて緩い汁になるだけだ。
「丁度いいし、コーラ煮作る?」
「コーラ煮?」
「そ、手羽元のコーラ煮」
どう?と言いたげな表情で《広告の品》のシールが付いた大きなパック肉を嬉しそうに掲げる。
なんか滅茶苦茶甘そう。
うげぇ、と顔を歪ませる俺を見て彼女が笑う。
「コーラの味想像したでしょ。大丈夫だよ、味は普通の照り焼きみたいなものだから。二郎が作ってみよっか!」
「俺、おじやとチャーハンくらいしか作れねぇけど大丈夫?」
「大丈夫!大丈夫!おじや作れれば充分!」
彼女が風邪引いたら作ってあげれるね、と俺の背を押す彼女が笑うから「〇〇が風邪引いたら俺が作ってあげるね…!」勇気を出して言ったのに、
「あ、私身体だけは丈夫だから大丈夫‼︎」
そう言ってバサリと切り捨てられてしまった。
にいちゃんとの喧嘩に付け加え、淡い恋心が傷付いて完全に傷心中の俺にエプロンを被せた彼女に言われるがまま、気付いた時には手洗いを済ませてフライパンと菜箸握っていた。
「はい!フライパンに油ひいて、温まったら手羽元を皮目から焼きまーす!塩胡椒して〜、両面こんがり焼きます!」
「え?う、うん」
テキパキと出される指示に従って、俺がフライパンの番をしている間に彼女はぱぱっとほうれん草の胡麻和えを作り終え、味噌汁に取り掛かっていた。
「ねぇ、こんがりってこのくらい?」
「うん、完璧!そこにコーラ一本入れまーす」
「うぇえっ⁉︎」
「はい、次生姜チューブ入れて」
「どんくらい?」
「はい、ストップ!次はお醤油大さじ四」
ドバドバと投入されたコーラ500㎖に不安と動揺を隠せないままぷるぷる震える手で醤油を計量していく。
「これ、本当に大丈夫なのかよ」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ‼︎だってもうほぼ完成だよ?」
「え?これで…⁉︎」
フライパンの中でぐつぐつと煮立つコーラの海を漂う手羽元。
「あとは煮汁がなくなる位まで煮るだけ」
お肉、時々ひっくり返してね、と味噌汁の鍋にネギを散らしながら彼女が言う。
ぐつぐつと煮えたぎるコーラの甘い香りと醤油の香ばしい香りが混じり合うキッチン。
ほうれん草の胡麻和えを小鉢に盛り付ける彼女がぽつりと呟く。
「二郎ちゃんはさ、一郎に危険な事して欲しくないんでしょ?」
「え、…うん」
「なんで一郎が二郎に危険な事させないかわかる?」
「俺がまだ高校生でガキだから…?」
「うーん、高校生ってのも多少はあるかもしれないけど子供とか大人とかじゃなくて、大切な家族を危険な目に合わせたくないって感じじゃないかな?」
「それは二郎だって同じでしょう?」
彼女が優しく微笑んだ。
「でも…ッ‼︎」
玄関から三郎の声がして、彼女がおかえりを投げ掛ける。
「ご飯もうすぐできるよ!」
「はぁい、着替えたらすぐに行きます」
三郎が帰ってきたからこれ以上うじうじと彼女に愚痴る事は出来ない。
「……」
「納得行かない?」
「ううん…」
「あ、コーラ煮そろそろいい感じじゃない?」
フライパンの中のコーラはほぼなくなって黒い海を漂っていた手羽元は美味しそうにテラテラと輝く普通の照り焼きになっていた。
「うわッ!旨そう‼︎」
「一本味見してごらん?」
「いいの?」
いつもつまみ食いをすると怒る彼女からの甘い誘惑に恐る恐る彼女の顔色を伺う。
「これは作った人の特権!ほら、さぶちゃんきちゃうよ」
小皿に取り分けられた手羽元にかぶりつく。
じゅわりと溢れる肉汁と口の中に広がる甘じょっぱいタレの味。
「…うまっ!」
「よかった」
「コーラってすげえな‼︎絶対ヤバいモン出来ると思ってたのに…!」
肯定から入るより否定から入った方が上手く行く事もあるんだよ。と彼女が笑う。
「…俺とにいちゃんも上手くいくかな…?」
「多分ね。まだ言いたい事沢山あるんでしょう?それはちゃんと一郎に言いな?私からもちゃんと話聞いてあげてって言っておくからさ」
ね?、と彼女が優しい声色で告げる。
「うん…ありがと」
大人はずるい。
何もない振りが上手いのだ。
彼女も、にいちゃんも。
ずるい。
この感情を吞み込めるほど大人でも、上手くいかないと泣き喚く子供でもない俺は彼女に礼を言う事しか出来なかった。
《喧嘩した日のコーラ煮》
材料(四人分)
・手羽元…16本
・コーラ…500㎖
・生姜…2㎝
・醤油…大さじ4
・塩胡椒…適量
作り方
①フライパンに油をひき、塩胡椒をした手羽元を皮目から両面に焼き色が付くまで焼く。
②コーラ・生姜・醤油を入れ中火で煮る。(30分程度)
③手羽元が浸るくらいだった煮汁が1/3程度になったら味見をして必要があれば醤油・砂糖を足す。
④タレと良く絡めて完成。
ポイント
・③のあたりから焦げやすいので悩む彼の話を聞きすぎて焦がさないように注意
・だいぶ煮詰まるので醤油と砂糖を足す必要は無いかと思いますがお好みで…
・大根を一緒に煮ても美味しいです。
・盛り付ける際にレタスやキャベツを敷くと美味しいです。