1️⃣
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朝日が眩しい。
残業、というより後輩のミスの対応により職場で朝を迎えた寝不足の身体にはとてつもなく暴力的だ。
仕事を終え始発で帰ってきた私は、これから仕事や学校へ向かう人々とは反対方向へと歩く。
「はぁ~~疲れた・・・早く寝たい」
疲れ切った脳みそからは考えている事が駄々漏れで、既にHPは残り僅か。
早くぼぼ溶け切った化粧を落としてベッドに横になりたい。
「あれ、〇〇姉?」
目の前の家から出てきたのは山田家の三男、三郎だった。
「あれ、さぶちゃん」
睡眠も食事も十分な規則正しい生活を送っているであろう中学生の肌ツヤはすごい。
睡眠も食事もまともに摂れていない不摂生OLの目に痛いほど輝いて見える。
あ、なんか泣きそう・・・。
「ちょっと、なんで泣きそうなの?大丈夫?」
「だいじょばない」
「僕はもう行くけど、一兄と二郎はまだ居るからウチで朝ごはん食べて行けば?」
涙ぐむ私を憐みの目で見詰める三郎くん。
昨日の夜十秒チャージして以降食事を口にしていない私にとって朝食のお誘いはとても魅力的だった。
「いやっそれは悪いから大丈夫!」
ぐぅ・・・。
十代の男の子達にお世話になるまいと口から出た言葉とは裏腹に空気を読まない素直過ぎる自分の腹の虫を恨んだ。
クスクス笑う三郎君が玄関のドアを開けて、家の中に居るのであろう長男の一郎を呼ぶ。
「一兄ぃ~!!」
どうした、忘れものか?と心配そうに玄関へ出てきた一郎が私を見て驚いた顔をする。
「すみません、〇〇姉を保護したので朝ごはんを食べさせてあげて下さい」
「おう、良いぜ!」
「すみません・・・」
「じゃあ僕は行きます!」
「「いってらっしゃい!」」
一つ返事で私を迎え入れてくれた一郎に感謝と申し訳なさを感じながら、一仕事終えたかの如く清々しい顔で学校へと向かう三郎を共に見送った。
一郎に引きずられる様にして向かった食卓には朝が弱い次男の二郎がぽやぽやとした空気を纏って朝食を摂っていた。
「二郎くんおはよ」
「〇〇姉ェ!?え、なんで!?俺まだ着替えてねぇんだけど!!」
「二郎、まだ食ってる途中だろ!」
「ごめん兄ちゃん!すぐ戻るから!」
バタバタと自室へと逃げ込む二郎の姿に私が呆然としていると、呆れながら一郎は台所へと入って行く。
「これから出社か?」
にしては顔色悪いけど。台所から一郎が問いかけてくる。
台所からは美味しそうなお味噌汁の匂いがする。
窓から差し込む朝日がさながら朝ドラの朝食シーンの様だ。
平和過ぎる山田家の食卓に先程までの地獄の様な業務の事を思い出して苦笑いが浮かぶ。
「いや、退社したとこ・・・」
「はぁ!?超ブラックじゃん!!」
着替えを終えた二郎が大きな声で叫ぶ。
向かいに座り直して再び朝食を食べ始めた制服姿の二郎についついぼやく。
「だよねぇ・・・」
「やばくね?」
「うん、まぁ月に数回位だし、今日はこのまま休みだから・・・」
「ほら!早く食ってとりあえず寝ろ!」
台所から出てきた一郎が湯気が上がる温かな食事を並べていく。
具沢山の豚汁、だし巻き卵、蓮根のきんぴら、焼き鮭、米粒が輝く白いご飯。
目の前に出された完璧な和定食に思わず腹の虫がぐうと小さく鳴き出した。
「ふわぁ~~!なにこれ!定食!?」
「そんなに喜ばれると嬉しいな」
「〇〇姉、兄ちゃんの豚汁マジで絶品だぜ!?」
恥ずかしそうに笑う一郎と自分の事の様に目を輝かせる二郎。
「いただきます!」
二郎絶賛の豚汁に口を付ける。
ふんわりと香る味噌の香りに、野菜と豚肉から出た脂が空っぽのお腹に染みわたっていくのが分かる。
「はぁ、染みる・・・」
「だろ!?」
「うん、美味しい」
二郎と二人で朝食に舌鼓を打っていると、一郎が台所から再び顔を出す。
「二郎、お前時間は大丈夫か?」
「やっべ!!もう行かねぇと!」
時間に余裕を持てと小言を言う一郎は兄というより母親か父親の様で、小さな頃から三兄弟を見てきた私はついつい笑ってしまう。
バタバタと家の中を走り回って準備を終えた二郎が廊下から顔を出して、
「兄ちゃん、〇〇姉!行ってきます!」
「「いってらっしゃい」」
嵐の様に玄関を出て行く二郎を一郎と二人で見送った。
学生二人が居なくなった食卓はとても静かで控えめな音量で流れるニュースをぼんやりと眺めながら一郎と二人で朝食を食べた。
「朝から大変だねぇ」
「まぁな」
「山田家の豚汁は具沢山だね」
「あいつらの好きなモン入れたら自然とこうなったんだよ」
二郎は里芋、三郎はゴボウ。肉は皆好きだから多めだな!そう言って笑う一郎の幸せそうな笑顔にホッとする。
高校時代、手を付ける事が出来ない位荒れていた彼が弟たちの為に働いて朝食を作って、こうして幸せそうに笑っているのだ。
人生何が起こるかわからない。
そんなに歳は変わらない筈の私は三兄弟の姉の様な母親の様な親戚のおばちゃんの様な不思議な気持ちで三兄弟を見守っている。
これは母性か、はたまた愛情か・・・なんて考えながら。
「なんかこういうのいいね」
「ん?」
少し甘めの卵焼きを頬張った一郎が小首を傾げる。
「結婚して子供が出来たらこんな感じなのかな~なんて思ったり・・・って、何言ってんだろ私!ごめん!忘れてっ!!」
寝不足の脳みそが正直すぎる胸の内をするりと吐き出すものだから自分の発言に慌ててしまう。
赤と緑の瞳をまあるく見開いた一郎が悪戯っぽく笑って見せる。
「じゃあ、俺と結婚するか?」
「へッ?」
「お前は俺の事、昔のまんまガキとしてしか見てないかもしれねーけど、俺は抱きしめたいとかキスしたいとか付き合いたいとか、そういう意味でお前が好きだ」
「それマジで言ってるの?年上をからかってるでしょ」
「マジで言ってる」
柄にもなく耳まで真っ赤にした一郎の赤と緑の瞳が私をジッと見詰める。
真っ直ぐ過ぎる瞳に見詰められて、目を逸らせずにいる私に一郎の力強い声が届く。
「結婚を前提に俺とお付き合いしてくれませんか?」
「ず、ズルい!待って!そんな風に思われてるなんて知らなかった!」
「言ってねぇもんな」
クスリと笑う一郎の顔は十代とは思えない色気を放っていて、自分の感情が母性ではなく恋愛感情だったと思い知り、心臓が痛い程高鳴って顔が火照るのが分かる。
「まだ十代のコの事、好きになるなんて思ってなかったから私だって隠してたのに。そんな事言われたら・・・!」
しどろもどろな私の話を真っ直ぐ過ぎる色違いの瞳の彼が静かに聞いている。
彼の余裕は何処から来ているのだろうか、人生経験が上な私の方が確実に余裕がない。
「一郎にお似合いの若い子とこれから出会うかもよ?」
「かもしれねぇな」
「私、我儘だしネガティブだよ?」
「知ってる」
「私の方がすぐにお婆ちゃんになるし、先に死んじゃうかもしれないよ?」
「先の事はその時に考えようぜ?」
「歳の差なんて後五十年もすれば無いに等しいし、お前が我儘でネガティブなのも知ってる。もし今後お前に好きなヤツが出来たなら悔しいけどそれはしょうがねぇ。でも俺は後にも先にもお前しか居ないって思ってる。未来なんて分かんねぇけどさ、大事なのは今の気持ちじゃねぇの?」
真っ直ぐ過ぎる彼の瞳が隠していた私の気持ちをひとつずつ晒していく。
この瞳に見詰められたら嘘は吐けない。
「ズルい」
「ズルかねぇよ。これが俺の素直な気持ち。」
私の左手の甲を撫でる一郎の大きな手。
するりと手をとられて指先にそっとキスを落とされる。
「なぁ、お前は?」
どうしたい?なんて優しく問いかけられて心臓が爆発しそうになる。
「ふ、」
「ふ?」
小首を傾げる悪戯っぽい瞳に、言葉が上手に出てこなくて口がパクパクと空回りする。
「不束者ですが、よろしくお願いいたします・・・」
私の言葉に一郎の瞳が幸せそうな弧を描いてつられて私も笑った。
寝不足と状況把握で精一杯でキャパオーバーな私の脳みそでは、二人のこれからがどうなるかなんてまだ分からないけれど、いつか家族になった一郎と二郎くんと三郎くん、四人で食卓を囲めたら幸せだと思う。
窓から差し込む朝日がとても暖かくて、きっとこれからの未来は素敵なものになるように私は心から願った。
二人で食べた朝食は幸せの味がした。
金曜日、山田家の豚汁
《材料(4人前)》
豚バラ肉薄切り 100g
ニンジン 二分の一本
大根 5㎝
里芋 5個
ゴボウ 三分の一本
玉ねぎ 二分の一個
こんにゃく 三分の一袋
木綿豆腐 二分の一丁
ネギ 5㎝
生姜 すりおろしまたはチューブのもの1㎝位
味噌 大さじ二と二分の一
水 3カップ
出汁の素 小さじ三分の二
サラダ油 大さじ二分の一
《作り方》
1. 野菜は全て食べやすい大きさに切っておく。
豚肉は3㎝幅、里芋は半分又は3等分、ニンジン・大根は4mm幅程度のいちょう切り、ゴボウはささがきにして5分程水にさらして水気を切る、玉ねぎはくし切り、ネギは小口切り、豆腐は水切りをして一口大に切る、こんにゃくは短冊切り。
2. 鍋にサラダ油と生姜を入れて熱し豚肉が白っぽくなるまで炒める。
3. 里芋、ニンジン、大根、ゴボウ、玉ねぎを加えて玉ねぎが透き通るくらいまで炒める。コンニャクを加えてサッと炒める。
4. 水と出汁の素を加え、煮立ったらアクを取り蓋をして中火から弱火で十分煮る。
5. 味噌を加えて最後に豆腐とネギを入れて完成。
・里芋はジャガイモ・サツマイモ・カボチャ等に変えても美味しく頂けます。(一郎はサツマイモの甘さが好き。二郎は本当はジャガイモ派。ほくほく感が好き。三郎は里芋のねっとり感が好き。)
・生姜を入れる事で寒い冬も身体ぽかぽかになれます。
・山田家は野菜ゴロゴロ豚汁派
・お好みで七味を入れるのが一郎流
残業、というより後輩のミスの対応により職場で朝を迎えた寝不足の身体にはとてつもなく暴力的だ。
仕事を終え始発で帰ってきた私は、これから仕事や学校へ向かう人々とは反対方向へと歩く。
「はぁ~~疲れた・・・早く寝たい」
疲れ切った脳みそからは考えている事が駄々漏れで、既にHPは残り僅か。
早くぼぼ溶け切った化粧を落としてベッドに横になりたい。
「あれ、〇〇姉?」
目の前の家から出てきたのは山田家の三男、三郎だった。
「あれ、さぶちゃん」
睡眠も食事も十分な規則正しい生活を送っているであろう中学生の肌ツヤはすごい。
睡眠も食事もまともに摂れていない不摂生OLの目に痛いほど輝いて見える。
あ、なんか泣きそう・・・。
「ちょっと、なんで泣きそうなの?大丈夫?」
「だいじょばない」
「僕はもう行くけど、一兄と二郎はまだ居るからウチで朝ごはん食べて行けば?」
涙ぐむ私を憐みの目で見詰める三郎くん。
昨日の夜十秒チャージして以降食事を口にしていない私にとって朝食のお誘いはとても魅力的だった。
「いやっそれは悪いから大丈夫!」
ぐぅ・・・。
十代の男の子達にお世話になるまいと口から出た言葉とは裏腹に空気を読まない素直過ぎる自分の腹の虫を恨んだ。
クスクス笑う三郎君が玄関のドアを開けて、家の中に居るのであろう長男の一郎を呼ぶ。
「一兄ぃ~!!」
どうした、忘れものか?と心配そうに玄関へ出てきた一郎が私を見て驚いた顔をする。
「すみません、〇〇姉を保護したので朝ごはんを食べさせてあげて下さい」
「おう、良いぜ!」
「すみません・・・」
「じゃあ僕は行きます!」
「「いってらっしゃい!」」
一つ返事で私を迎え入れてくれた一郎に感謝と申し訳なさを感じながら、一仕事終えたかの如く清々しい顔で学校へと向かう三郎を共に見送った。
一郎に引きずられる様にして向かった食卓には朝が弱い次男の二郎がぽやぽやとした空気を纏って朝食を摂っていた。
「二郎くんおはよ」
「〇〇姉ェ!?え、なんで!?俺まだ着替えてねぇんだけど!!」
「二郎、まだ食ってる途中だろ!」
「ごめん兄ちゃん!すぐ戻るから!」
バタバタと自室へと逃げ込む二郎の姿に私が呆然としていると、呆れながら一郎は台所へと入って行く。
「これから出社か?」
にしては顔色悪いけど。台所から一郎が問いかけてくる。
台所からは美味しそうなお味噌汁の匂いがする。
窓から差し込む朝日がさながら朝ドラの朝食シーンの様だ。
平和過ぎる山田家の食卓に先程までの地獄の様な業務の事を思い出して苦笑いが浮かぶ。
「いや、退社したとこ・・・」
「はぁ!?超ブラックじゃん!!」
着替えを終えた二郎が大きな声で叫ぶ。
向かいに座り直して再び朝食を食べ始めた制服姿の二郎についついぼやく。
「だよねぇ・・・」
「やばくね?」
「うん、まぁ月に数回位だし、今日はこのまま休みだから・・・」
「ほら!早く食ってとりあえず寝ろ!」
台所から出てきた一郎が湯気が上がる温かな食事を並べていく。
具沢山の豚汁、だし巻き卵、蓮根のきんぴら、焼き鮭、米粒が輝く白いご飯。
目の前に出された完璧な和定食に思わず腹の虫がぐうと小さく鳴き出した。
「ふわぁ~~!なにこれ!定食!?」
「そんなに喜ばれると嬉しいな」
「〇〇姉、兄ちゃんの豚汁マジで絶品だぜ!?」
恥ずかしそうに笑う一郎と自分の事の様に目を輝かせる二郎。
「いただきます!」
二郎絶賛の豚汁に口を付ける。
ふんわりと香る味噌の香りに、野菜と豚肉から出た脂が空っぽのお腹に染みわたっていくのが分かる。
「はぁ、染みる・・・」
「だろ!?」
「うん、美味しい」
二郎と二人で朝食に舌鼓を打っていると、一郎が台所から再び顔を出す。
「二郎、お前時間は大丈夫か?」
「やっべ!!もう行かねぇと!」
時間に余裕を持てと小言を言う一郎は兄というより母親か父親の様で、小さな頃から三兄弟を見てきた私はついつい笑ってしまう。
バタバタと家の中を走り回って準備を終えた二郎が廊下から顔を出して、
「兄ちゃん、〇〇姉!行ってきます!」
「「いってらっしゃい」」
嵐の様に玄関を出て行く二郎を一郎と二人で見送った。
学生二人が居なくなった食卓はとても静かで控えめな音量で流れるニュースをぼんやりと眺めながら一郎と二人で朝食を食べた。
「朝から大変だねぇ」
「まぁな」
「山田家の豚汁は具沢山だね」
「あいつらの好きなモン入れたら自然とこうなったんだよ」
二郎は里芋、三郎はゴボウ。肉は皆好きだから多めだな!そう言って笑う一郎の幸せそうな笑顔にホッとする。
高校時代、手を付ける事が出来ない位荒れていた彼が弟たちの為に働いて朝食を作って、こうして幸せそうに笑っているのだ。
人生何が起こるかわからない。
そんなに歳は変わらない筈の私は三兄弟の姉の様な母親の様な親戚のおばちゃんの様な不思議な気持ちで三兄弟を見守っている。
これは母性か、はたまた愛情か・・・なんて考えながら。
「なんかこういうのいいね」
「ん?」
少し甘めの卵焼きを頬張った一郎が小首を傾げる。
「結婚して子供が出来たらこんな感じなのかな~なんて思ったり・・・って、何言ってんだろ私!ごめん!忘れてっ!!」
寝不足の脳みそが正直すぎる胸の内をするりと吐き出すものだから自分の発言に慌ててしまう。
赤と緑の瞳をまあるく見開いた一郎が悪戯っぽく笑って見せる。
「じゃあ、俺と結婚するか?」
「へッ?」
「お前は俺の事、昔のまんまガキとしてしか見てないかもしれねーけど、俺は抱きしめたいとかキスしたいとか付き合いたいとか、そういう意味でお前が好きだ」
「それマジで言ってるの?年上をからかってるでしょ」
「マジで言ってる」
柄にもなく耳まで真っ赤にした一郎の赤と緑の瞳が私をジッと見詰める。
真っ直ぐ過ぎる瞳に見詰められて、目を逸らせずにいる私に一郎の力強い声が届く。
「結婚を前提に俺とお付き合いしてくれませんか?」
「ず、ズルい!待って!そんな風に思われてるなんて知らなかった!」
「言ってねぇもんな」
クスリと笑う一郎の顔は十代とは思えない色気を放っていて、自分の感情が母性ではなく恋愛感情だったと思い知り、心臓が痛い程高鳴って顔が火照るのが分かる。
「まだ十代のコの事、好きになるなんて思ってなかったから私だって隠してたのに。そんな事言われたら・・・!」
しどろもどろな私の話を真っ直ぐ過ぎる色違いの瞳の彼が静かに聞いている。
彼の余裕は何処から来ているのだろうか、人生経験が上な私の方が確実に余裕がない。
「一郎にお似合いの若い子とこれから出会うかもよ?」
「かもしれねぇな」
「私、我儘だしネガティブだよ?」
「知ってる」
「私の方がすぐにお婆ちゃんになるし、先に死んじゃうかもしれないよ?」
「先の事はその時に考えようぜ?」
「歳の差なんて後五十年もすれば無いに等しいし、お前が我儘でネガティブなのも知ってる。もし今後お前に好きなヤツが出来たなら悔しいけどそれはしょうがねぇ。でも俺は後にも先にもお前しか居ないって思ってる。未来なんて分かんねぇけどさ、大事なのは今の気持ちじゃねぇの?」
真っ直ぐ過ぎる彼の瞳が隠していた私の気持ちをひとつずつ晒していく。
この瞳に見詰められたら嘘は吐けない。
「ズルい」
「ズルかねぇよ。これが俺の素直な気持ち。」
私の左手の甲を撫でる一郎の大きな手。
するりと手をとられて指先にそっとキスを落とされる。
「なぁ、お前は?」
どうしたい?なんて優しく問いかけられて心臓が爆発しそうになる。
「ふ、」
「ふ?」
小首を傾げる悪戯っぽい瞳に、言葉が上手に出てこなくて口がパクパクと空回りする。
「不束者ですが、よろしくお願いいたします・・・」
私の言葉に一郎の瞳が幸せそうな弧を描いてつられて私も笑った。
寝不足と状況把握で精一杯でキャパオーバーな私の脳みそでは、二人のこれからがどうなるかなんてまだ分からないけれど、いつか家族になった一郎と二郎くんと三郎くん、四人で食卓を囲めたら幸せだと思う。
窓から差し込む朝日がとても暖かくて、きっとこれからの未来は素敵なものになるように私は心から願った。
二人で食べた朝食は幸せの味がした。
金曜日、山田家の豚汁
《材料(4人前)》
豚バラ肉薄切り 100g
ニンジン 二分の一本
大根 5㎝
里芋 5個
ゴボウ 三分の一本
玉ねぎ 二分の一個
こんにゃく 三分の一袋
木綿豆腐 二分の一丁
ネギ 5㎝
生姜 すりおろしまたはチューブのもの1㎝位
味噌 大さじ二と二分の一
水 3カップ
出汁の素 小さじ三分の二
サラダ油 大さじ二分の一
《作り方》
1. 野菜は全て食べやすい大きさに切っておく。
豚肉は3㎝幅、里芋は半分又は3等分、ニンジン・大根は4mm幅程度のいちょう切り、ゴボウはささがきにして5分程水にさらして水気を切る、玉ねぎはくし切り、ネギは小口切り、豆腐は水切りをして一口大に切る、こんにゃくは短冊切り。
2. 鍋にサラダ油と生姜を入れて熱し豚肉が白っぽくなるまで炒める。
3. 里芋、ニンジン、大根、ゴボウ、玉ねぎを加えて玉ねぎが透き通るくらいまで炒める。コンニャクを加えてサッと炒める。
4. 水と出汁の素を加え、煮立ったらアクを取り蓋をして中火から弱火で十分煮る。
5. 味噌を加えて最後に豆腐とネギを入れて完成。
・里芋はジャガイモ・サツマイモ・カボチャ等に変えても美味しく頂けます。(一郎はサツマイモの甘さが好き。二郎は本当はジャガイモ派。ほくほく感が好き。三郎は里芋のねっとり感が好き。)
・生姜を入れる事で寒い冬も身体ぽかぽかになれます。
・山田家は野菜ゴロゴロ豚汁派
・お好みで七味を入れるのが一郎流