ツリーの下で
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『ツリーの下で』
教団の廊下は、夜になってもざわついていた。
クリスマス前日。パーティ準備で皆が走り回る中、
ミナミが任されたのは――巨大ツリーの飾り付け。
高い枝の飾りは届かず、
箱は重く、上向きで腕が震えてくる。
「うわ……これ、一人は無理じゃない……?」
そんなミナミの背後から、
ふわっと明るい声が落ちてきた。
「やっぱりいた!
おつかれ~、手伝うさ~」
振り向くと、ラビが飾り箱を片手で軽々と持って立っていた。
笑ってるのに、どこか優しい目をして。
「ラビ……なんでここに?」
「ん?なんとなく。
……ミナミが困ってる気がしたんだよね~」
さらっと言うけど、
言葉の端にだけ甘さがひそんでいる。
胸が少し熱くなる。
「ありがとう…。じゃあ一緒にやろう」
「ああ」
ニカッとラビが笑う。
ミナミが足台に乗って、背伸びして飾りをつけようとすると、
ラビは後ろからスッと手を伸ばし、
「危ない危ない。俺が支えてやるって」
そのまま、肩ごと優しく包むように支えてきた。
腕がミナミの腕を覆い、胸がすぐ後ろにある。
近い。
甘い。
息が耳の後ろに触れる。
「ち、近くない……?」
「え、だめ?
落ちたら怪我すっからさ~……ってのもあるけど」
声のトーンがふっと低くなる。
「……近いの、好きだから」
耳が熱くなる。
返事をする前に、ラビはミナミの手ごと飾りを包む。
二人の指が重なる。
手の温度がゆっくり溶けあっていく。
「ほら、こうやって……一緒につけると綺麗さ」
「……なんでそんなに優しいの……?」
「ん~?
優しくしたくなるからじゃないか?」
即答。
心臓が跳ねる。
「ほ、他の子にも同じこと言ってそう…」
「そんなことないさ。ミナミだから優しくしてんだよ?」
「それって、どういう…」
「あ!」
ミナミの言葉をラビが遮った。
ミナミの頬に光るラメを見つけると、
親指で優しく触れて、
そのまま頬をなでるように払う。
「ここ……光ってた。
……可愛いなぁ、ミナミって」
触れる指が熱い。
距離がどんどん近くなる。
“カーッ”と熱くなる頬を誤魔化すように、ミナミが話題を変えた。
「今日はみんな忙しいね」
「そうさね~。みんな明日のために仕事してんじゃね?」
ラビはミナミの髪を耳にかけてあげる。
その仕草が妙に優しくて、くすぐったい。
「あのさ…ミナミ…明日のパーティー、他の男とこんな近くになるなよ?」
「え……どうして?」
「もー!ミナミはニブちん!」
そう言ってミナミの頬をつまんでくるラビ。
笑いながら言うのに、
目だけがまっすぐで、少しだけ寂しそう。
その顔を見た瞬間、
胸の奥がきゅっと締めつけられた。
「ちょっとこっち来てさ」
ラビに手を握られツリーの陰に移動させられた。
そしてラビはミナミの頬に触れ、
指を滑らせて顎にそっと添える。
きゅん。と喉の奥が鳴りそうでミナミは熱を帯びた目でラビを見つめ返す。
「なぁ……今日だけでいいからさ」
声がふわっと落ちる。
「俺を見て。
お前に誰よりも近いの……俺がいい」
「ラビ……」
ラビの額がミナミのおでこに触れる。
ゆっくり。
急かさない。
けれど逃がさない。
「……嫌なら突き飛ばして」
ミナミは小さく首を横に振った。
その様子を見て、
ラビの目がふっと細く優しくなる。
そして――
唇が、そっと触れた。
軽く触れるだけのキス。
でも、胸が苦しいほど甘い。
ラビは離れず、
少しずつ深さを変えるように、
ゆっくり、息を合わせるように触れてくる。
“ちゅっ”と音を立てて、
一度、唇が離れた瞬間、
ラビは困ったように微笑んだ。
「……やばいな。離したくないかも」
腰を支える手が少し力をこめる。
「……もっと、していい?」
ミナミは小さく頷いた。
ラビは嬉しそうに息を吸い、
今度はより深く、より甘く――
けれど丁寧に触れるキスをくれた。
そしてラビが最後にそっと唇を離すと、
やけに静けさがうるさくて、お互い恥ずかしそうに笑った。
「……なあ。点くかどうか、これ点けてみよ?」
そう言ったラビの声は、
さっきまでの甘さの余韻を残したままかすかに低い。
ミナミはうまく返事ができなくて、
ただこくん、と小さく頷いた。
ラビがコンセントを差し込むと色とりどりのライトがピカピカと光った。その光が2人の頬に映る。
「キレイだね」
とミナミが言うとラビが
「綺麗だ」と言う。
そのラビの視線の先はもちろんミナミ。
目が合えば恥ずかしそうに笑う。
そんな君が堪らなく好きだ。とラビは笑みを零した。
+.・ꊛᱸ❄︎ꊛᱸ❄︎ ꊛᱸ.・ꊛᱸ❄︎ꊛᱸ❄︎ ꊛ.・ꊛᱸ❄︎ꊛᱸ❄︎ ꊛᱸ.+・
部屋を出ると、
人気のない長い廊下が静まり返っていた。
窓の外から雪の白さが差し込み、
足音だけが響く。
歩き出して数歩。
ラビの視線が横からそっと覗いてくる。
「……なぁ」
それだけで胸が跳ねる。
「…これって。夢じゃないよな?」
からかうようで、
少しだけ、本気で不安そう。
「……夢じゃ、ないよ……」
言葉はそれだけなのに、
ラビの肩からスッと力が抜けた。
「そっか。よかった」
ふっと笑ったその横顔に、
胸がきゅうっと締めつけられる。
しばらく沈黙が続いたあと。
ラビの手が、
そっとミナミの手の近くまで降りてきた。
触れそうで、触れない距離。
(……手…繋ぎたいな… でも……)
勇気が出せずに指先が小さく震える。
その小さな反応を
ラビは一瞬で拾った。
「…繋いでいい…?」
言いながら、
ゆっくり、ためらいなくミナミの手を包んだ。
冷たい廊下に似合わないくらい、
ラビの手はあたたかかった。
指が絡む。
掌同士がぴたりと重なる。
「……なんか。俺、照れる」
歩くスピードが自然と揃っていく。
「……ラビ、誰かに見られたら……」
「いいよ、別に。
俺が誰の手繋いでんのか、
みんな知っといてほしいぐらいだし?」
耳の奥がじん、と熱くなる。
ラビはミナミの横顔を見て、
くすっと笑った。
「ほら、また赤い。
……可愛いなぁ。
さっきのキスの時より赤いじゃん」
「ちょ、ちが……」
「違わないって。
俺、ちゃんと見てた」
その言葉に心臓が暴れそうになる。
「みっ見てたの!?」
“ふふん”と得意げなラビ。
廊下の分かれ道に差し掛かる頃、
ラビはミナミの手をぎゅっと強く握った。
離す気なんて、最初からなかったみたいに。
「今日はさ……
もうちょい一緒にいたいんだけど。
ダメ?」
視線はまっすぐ。
照れも混ざっていて、
でもミナミの返事を本気で待っている。
ミナミの胸に、
さっきより一段深い温度が灯った。
「……ダメじゃないよ」
ラビは嬉しそうに息をこぼし、
ミナミの手を引いて歩き出した。
繋いだ手は、
どこまでも温かかった。
おわり
教団の廊下は、夜になってもざわついていた。
クリスマス前日。パーティ準備で皆が走り回る中、
ミナミが任されたのは――巨大ツリーの飾り付け。
高い枝の飾りは届かず、
箱は重く、上向きで腕が震えてくる。
「うわ……これ、一人は無理じゃない……?」
そんなミナミの背後から、
ふわっと明るい声が落ちてきた。
「やっぱりいた!
おつかれ~、手伝うさ~」
振り向くと、ラビが飾り箱を片手で軽々と持って立っていた。
笑ってるのに、どこか優しい目をして。
「ラビ……なんでここに?」
「ん?なんとなく。
……ミナミが困ってる気がしたんだよね~」
さらっと言うけど、
言葉の端にだけ甘さがひそんでいる。
胸が少し熱くなる。
「ありがとう…。じゃあ一緒にやろう」
「ああ」
ニカッとラビが笑う。
ミナミが足台に乗って、背伸びして飾りをつけようとすると、
ラビは後ろからスッと手を伸ばし、
「危ない危ない。俺が支えてやるって」
そのまま、肩ごと優しく包むように支えてきた。
腕がミナミの腕を覆い、胸がすぐ後ろにある。
近い。
甘い。
息が耳の後ろに触れる。
「ち、近くない……?」
「え、だめ?
落ちたら怪我すっからさ~……ってのもあるけど」
声のトーンがふっと低くなる。
「……近いの、好きだから」
耳が熱くなる。
返事をする前に、ラビはミナミの手ごと飾りを包む。
二人の指が重なる。
手の温度がゆっくり溶けあっていく。
「ほら、こうやって……一緒につけると綺麗さ」
「……なんでそんなに優しいの……?」
「ん~?
優しくしたくなるからじゃないか?」
即答。
心臓が跳ねる。
「ほ、他の子にも同じこと言ってそう…」
「そんなことないさ。ミナミだから優しくしてんだよ?」
「それって、どういう…」
「あ!」
ミナミの言葉をラビが遮った。
ミナミの頬に光るラメを見つけると、
親指で優しく触れて、
そのまま頬をなでるように払う。
「ここ……光ってた。
……可愛いなぁ、ミナミって」
触れる指が熱い。
距離がどんどん近くなる。
“カーッ”と熱くなる頬を誤魔化すように、ミナミが話題を変えた。
「今日はみんな忙しいね」
「そうさね~。みんな明日のために仕事してんじゃね?」
ラビはミナミの髪を耳にかけてあげる。
その仕草が妙に優しくて、くすぐったい。
「あのさ…ミナミ…明日のパーティー、他の男とこんな近くになるなよ?」
「え……どうして?」
「もー!ミナミはニブちん!」
そう言ってミナミの頬をつまんでくるラビ。
笑いながら言うのに、
目だけがまっすぐで、少しだけ寂しそう。
その顔を見た瞬間、
胸の奥がきゅっと締めつけられた。
「ちょっとこっち来てさ」
ラビに手を握られツリーの陰に移動させられた。
そしてラビはミナミの頬に触れ、
指を滑らせて顎にそっと添える。
きゅん。と喉の奥が鳴りそうでミナミは熱を帯びた目でラビを見つめ返す。
「なぁ……今日だけでいいからさ」
声がふわっと落ちる。
「俺を見て。
お前に誰よりも近いの……俺がいい」
「ラビ……」
ラビの額がミナミのおでこに触れる。
ゆっくり。
急かさない。
けれど逃がさない。
「……嫌なら突き飛ばして」
ミナミは小さく首を横に振った。
その様子を見て、
ラビの目がふっと細く優しくなる。
そして――
唇が、そっと触れた。
軽く触れるだけのキス。
でも、胸が苦しいほど甘い。
ラビは離れず、
少しずつ深さを変えるように、
ゆっくり、息を合わせるように触れてくる。
“ちゅっ”と音を立てて、
一度、唇が離れた瞬間、
ラビは困ったように微笑んだ。
「……やばいな。離したくないかも」
腰を支える手が少し力をこめる。
「……もっと、していい?」
ミナミは小さく頷いた。
ラビは嬉しそうに息を吸い、
今度はより深く、より甘く――
けれど丁寧に触れるキスをくれた。
そしてラビが最後にそっと唇を離すと、
やけに静けさがうるさくて、お互い恥ずかしそうに笑った。
「……なあ。点くかどうか、これ点けてみよ?」
そう言ったラビの声は、
さっきまでの甘さの余韻を残したままかすかに低い。
ミナミはうまく返事ができなくて、
ただこくん、と小さく頷いた。
ラビがコンセントを差し込むと色とりどりのライトがピカピカと光った。その光が2人の頬に映る。
「キレイだね」
とミナミが言うとラビが
「綺麗だ」と言う。
そのラビの視線の先はもちろんミナミ。
目が合えば恥ずかしそうに笑う。
そんな君が堪らなく好きだ。とラビは笑みを零した。
+.・ꊛᱸ❄︎ꊛᱸ❄︎ ꊛᱸ.・ꊛᱸ❄︎ꊛᱸ❄︎ ꊛ.・ꊛᱸ❄︎ꊛᱸ❄︎ ꊛᱸ.+・
部屋を出ると、
人気のない長い廊下が静まり返っていた。
窓の外から雪の白さが差し込み、
足音だけが響く。
歩き出して数歩。
ラビの視線が横からそっと覗いてくる。
「……なぁ」
それだけで胸が跳ねる。
「…これって。夢じゃないよな?」
からかうようで、
少しだけ、本気で不安そう。
「……夢じゃ、ないよ……」
言葉はそれだけなのに、
ラビの肩からスッと力が抜けた。
「そっか。よかった」
ふっと笑ったその横顔に、
胸がきゅうっと締めつけられる。
しばらく沈黙が続いたあと。
ラビの手が、
そっとミナミの手の近くまで降りてきた。
触れそうで、触れない距離。
(……手…繋ぎたいな… でも……)
勇気が出せずに指先が小さく震える。
その小さな反応を
ラビは一瞬で拾った。
「…繋いでいい…?」
言いながら、
ゆっくり、ためらいなくミナミの手を包んだ。
冷たい廊下に似合わないくらい、
ラビの手はあたたかかった。
指が絡む。
掌同士がぴたりと重なる。
「……なんか。俺、照れる」
歩くスピードが自然と揃っていく。
「……ラビ、誰かに見られたら……」
「いいよ、別に。
俺が誰の手繋いでんのか、
みんな知っといてほしいぐらいだし?」
耳の奥がじん、と熱くなる。
ラビはミナミの横顔を見て、
くすっと笑った。
「ほら、また赤い。
……可愛いなぁ。
さっきのキスの時より赤いじゃん」
「ちょ、ちが……」
「違わないって。
俺、ちゃんと見てた」
その言葉に心臓が暴れそうになる。
「みっ見てたの!?」
“ふふん”と得意げなラビ。
廊下の分かれ道に差し掛かる頃、
ラビはミナミの手をぎゅっと強く握った。
離す気なんて、最初からなかったみたいに。
「今日はさ……
もうちょい一緒にいたいんだけど。
ダメ?」
視線はまっすぐ。
照れも混ざっていて、
でもミナミの返事を本気で待っている。
ミナミの胸に、
さっきより一段深い温度が灯った。
「……ダメじゃないよ」
ラビは嬉しそうに息をこぼし、
ミナミの手を引いて歩き出した。
繋いだ手は、
どこまでも温かかった。
おわり