Candy(ラビ編)
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Candy(ラビ編)
中庭に差し込む光は弱いのに、
ミナミが本を手に立っている場所だけ
ほんのり明るく見えた。
昨日、ラビが渡した飴。
あの包み紙が本の端からひょこっと覗いてる。
それを見つけた瞬間、
胸の奥がキュッと甘く跳ねた。
(……昨日の、まだ取ってんの?
捨てねぇの……?)
ミナミはラビに気づくと、
柔らかく微笑んだ。
(……あぁもう……可愛いとかそういう次元じゃねぇな……見るだけで胸が溶けんだよ)
「ラビくん、おはよう」
「おはよ、ミナミちゃん。
本、読んでたの?」
(カーッ!!この“くん”付けがたまらねえ……ミナミちゃんなんて俺の好みのタイプじゃなかったのに!!)
「うん……ちょっとね」
本のページをそっと閉じる。
すると──
本の間から
“昨日の飴の包み紙”が
綺麗に半分に折られたまま落ちかけた。
ミナミが慌てて押さえる。
頬が赤い。
(……待てよ……なんでこんな丁寧に折ってんだよ……しかも、しおり代わりに……?)
ただの飴の紙だ。
なのに宝物みたいな扱い。
ラビの胸の奥が
ゆっくり熱く甘く満たされていく。
「……大事にしてんだ?」
声が自然と低くなる。
「っ……! ち、違……っ……!
ただ……かわいかったから……」
(嘘下手すぎ……そんなの理由になるわけないじゃん……)
ミナミは目をそらす。
でも手は、その包み紙を指でそっと撫でてる。
(……はぁ……もう……こりゃ確定だわ……
この子、俺のこと好きじゃん……)
胸が跳ねすぎて、
息が浅くなる。
「ねぇミナミちゃん」
「な、なぁに……?」
「俺からもらったやつ……そんなに大事?」
ミナミは顔中真っ赤にして、
しばらく黙ったあと……
そっと包み紙を撫でた。
「……すごく……嬉しかったから……」
その声が陽だまりより柔らかで甘かった。
(……やべぇ……可愛い……
好きすぎてどうにかなりそう……)
ラビはそっとミナミの手元に視線を落としながら、優しく笑った。
「そんなに気に入ってくれたならさ──
もうひとつ、あげるよ」
そう言って、
上着のポケットから
昨日と同じ飴を取り出す。
ミナミが目を丸くした。
「まだ持ってたの……?」
「さっき、ミランダから貰ってきた」
ラビは飴をひとつミナミの手に乗せて、
自分もひとつ取り出した。
包み紙をゆっくり開く音が
陽だまりの中に小さく響く。
「せーの、で食べよっか」
「うん……」
二人同時に、飴を口に含む。
甘い、優しい味。
胸の奥まで温かくなって、顔を上げると──
ミナミと目が合った。
同じ飴の匂い。
同じ甘さが胸に広がってる。
まるでひとつの気持ちを共有してるみたいな。
(……あぁ……これはもう……恋ってやつだ……
君と同じ味で、同じ息で、
同じ世界にいる感じ……
やべぇ……幸せすぎる……)
ミナミも、少し照れたように笑った。
(……この子の笑顔が
キャンディみたいに甘いって、
やっと理解したよ)
ラビはそっと、
飴越しに甘く囁いた。
「ねぇミナミちゃん……
これ、きっと……同じ気持ちだよね?」
ミナミはぱちりと瞬きをした。
「……え……?」
まるで“何のこと…?”と言いたげに
首を小さく傾ける。
(……あぁ……そう来るか……
ほんっと、可愛い……
けど……マジでわかんないの…?)
ラビは思わず頭をかいた。
「……困ったな」
ぽりぽり。
飴の甘さよりも
胸の奥がくすぐったくて、息が詰まる。
(どう言えばいいんさ……
“好き”って……
“君が可愛すぎて毎日しんどい”って……
そんな簡単に言えるわけないじゃん……)
ミナミはただキョトンと
ラビの顔を見つめていて、
その無自覚なまなざしが
さらにラビを追い詰めた。
(……やべぇ……
言わなきゃもっとヤバくなる……
けど、言ったらもっとヤバい……)
ラビの指先がわずかに震えた。
胸が甘くて痛くて、でも逃げたくなくて──
「……ほんと、困ったさ……
ミナミちゃん……」
優しい苦笑いの裏で、
飴より甘い気持ちが
ラビの喉までせり上がっていた。
ミナミはまだ不思議そうに
こちらを見上げてくる。
(……この子ほんっとうに……
なんでわかんないんだよ……
もう胸がはち切れそうなんだよ……俺……)
飴の甘さじゃ抑えられないくらい、
胸の奥が熱くなっていく。
ラビはゆっくり息を吸った。
けれど声が喉の途中で引っかかる。
「……あのさ、ミナミちゃん……」
……言えない。
言えば全部変わる。
だけど言わなきゃもっと苦しい。
「……あー……もう……!」
ラビは両手で自分の顔を覆った。
耳まで真っ赤なのが、
指の隙間からでもわかる。
(これ以上誤魔化したら、
ほんとに男として終わってる……
腹括れよラビ……言え……!)
深呼吸。
顔を隠したまま、
震える声で続けた。
「……ごめん、ちょっとだけ待って……
ほんと……
恥ずかしすぎて死にそう……」
ミナミがそっと近づく足音。
「ラビくん……?大丈夫?」
その呼び方ひとつで、
ラビの胸がさらに熱くなる。
(……あぁ……もうダメだ……
この子の声で、全部崩れる……)
ラビは意を決して、
覆っていた手をゆっくり下ろした。
真っ赤な顔。
潤んだ瞳。
でも逃げてはいない。
「……ミナミちゃん」
飴より甘い声で名前を呼ぶ。
(言え……言え……!)
ぎゅっと拳を握る。
「……好き」
息が触れそうな距離で、
まるで飴を口に含む時みたいに
そっと、慎重に。
「たぶん俺……
お前のこと、ずっと前からずっと……
どうしようもないくらい……好きなんだよ……」
ミナミは目を丸くし、
ほんの少し口を開けた。
その反応が
ラビの胸を一気に甘くする。
「……返事は今じゃなくていいよ」
照れ隠しのように苦笑しながら続ける。
「けど……どうしても言いたかった。
だって……俺、もう無理だったんさ……
言わずにいられるほど、
君への気持ち……軽くないんだよ……」
飴の甘さと
胸の甘さが入り混じって、
ラビの声は震えていた。
「……好きだよ、ミナミちゃん」
言った瞬間、
世界が一拍遅れて静かになった。
ミナミは返事をしない。
ただ、じっとラビを見つめて……
瞳の奥が、ゆっくり潤んでいく。
(あ……やばい……泣かせちゃった……?
そんなに嫌だった?……でも……どうすれば……)
ラビが一歩近づこうとした、その時──
ぽすんっ
ミナミが、小さく息を呑んだかと思うと、
そのまま胸元に勢いよく飛び込んできた。
「っ……!」
抱きしめられたというより、
しがみつかれた。
顔をごそっと胸元に埋めて。
腕の中で小さく震えてる。
ラビは何も言えなくなった。
代わりにミナミの背中をそっとポンポンしてあげる。
胸の奥が痛いくらい甘くなる。
ミナミが泣いてるのは、
悲しみじゃない。
“気持ちが溢れて止まらない涙”だって
わかってしまうから。
胸元に当たる呼吸が熱い。
(……なんでこんな……
可愛いことすんの……?
俺……ほんとにどうすればいいんさ……)
そっと、
ミナミの背中に腕を回す。
抱きしめ返すなんて簡単なはずなのに、
胸がいっぱいでうまく力が入らない。
「ミナミちゃん……」
名前を呼ぶ声が震える。
彼女は顔を上げないまま、ぎゅっと服を握ってくる。
(あぁ……泣いてる……
こんな子……好きにならないわけないだろ……)
ゆっくり背中を撫でながら、
耳元にそっと囁く。
「……泣いてもいいよ。見ないから」
そう言うと、
ラビの背中のミナミの指先が
少しだけ力を緩めた。
「……ラビくんのせいだよ……」
かすれた声。
涙を抱えた声。
胸が甘く、熱く、じんと満ちる。
(……うん。知ってる。
君の涙の理由……全部俺だ……)
「ごめんさ」
そう言いながら、
ラビは自分でも驚くほど優しい手つきで
ミナミの頭を撫でた。
「……でも、嬉しいよ」
ぎゅっと抱きしめ返す。
(離したくない……
ずっとこのままでいたい…)
ミナミが胸元に顔を埋めて泣いてしまってから、ラビはしばらく動けなかった。
(……こんなんズルいさ……
泣くほど……嬉しかったって……
じゃあもう……聞くしかないじゃん……
これ以上我慢できるわけないじゃん……)
ミナミの小さな手がまだラビの服を握ってる。
その温度が、答えを全部教えているくせに、
それでも
“言葉でも欲しい”って思ってしまう。
喉が熱くなる。
心臓が甘く痛い。
「……ねぇ、ミナミちゃん」
ラビの声で、胸に埋まってた頭がびくっと揺れた。
「……俺のこと……好き?」
少しの沈黙。
息が詰まる。
そして──
「……うん」
かすれた、ふるえた小さな声。
胸の奥が一瞬で溶けた。
(……あぁ……ダメだ……
嬉しすぎて死ねる……)
もっと聞きたい。
もっと確かめたい。
この子が俺をどれだけ想ってるか。
欲が止まらない。
「すっごく好き?」
「……うん」
答えるたびに声が熱を帯びていく。
(……可愛い……どんだけ好きなんさ……
俺こんな幸せでいいの……?)
気づけば、
ラビの腕の力が自然と強まっていた。
「じゃあさ、三度のご飯より好き?」
「……うん」
(ご飯より!?
ご飯って結構大事なやつだよ!?)
胸が跳ねて、笑いそうになる。
「チョコパフェよりも?」
ミナミは小さく息を吸って、
胸元でこくりと頷いた。
「……うん」
(チョコパフェより…
じゃあもう勝ち確じゃん……
好きすぎだろ……)
そして最後に、
ずっと聞きたかったやつ。
「……俺があげた飴より?」
少し間があった。
背中に回された彼女の指がぎゅっとラビの服をつまむ。
「……うん」
その“うん”は、
今まででいちばん甘かった。
(……やられた……
これ以上の告白ある……?
飴よりって……
そんなこと言われたら……)
「……まじか……」
声が勝手に震えた。
もう我慢できない。
「……ミナミちゃん……」
腕の中の小さな体を
ぎゅぅううっと抱きしめる。
飴の香りと、陽だまりの温度と、
胸を満たす“好き”が混ざり合う。
(……やばい……
幸せすぎて……泣きそう……)
ミナミもぎゅっとしがみついてきた。
その瞬間、
ラビは完全に恋に落ちた。
いや……
ずっと前から落ちてたけど、
今ので決定的になった。
「……うん」
ミナミが胸の中でそう呟いた瞬間。
ラビの頭の中で
“どーーん”
って、何かが弾けた。
(やった……!?
これ……やった……!?
よし……よし……よしっ……!!!)
感情が爆発して、
気がついたらミナミの腰に腕を回していた。
「やったぁぁぁぁぁぁーーーっ!」
くるっ。
くるくるっ。
勢いでそのまま
ミナミを抱え上げて回転していた。
「きゃっ……!?ラビくん!?」
陽だまりの中で、
二人がわぁぁって笑いながら回って──
その瞬間。
「……ふがっ」
ラビの喉の奥で、
コロッ、と乾いた音。
(え……?ちょ……これ……
今食ってた飴……!?)
ごくっ──
「……っっ!?!?」
飴が変な方向に入った。
「ラビくん!?!?
ちょっ、ラビくん!?どうしたの!?」
(どうしたもこうしたもねぇ!!!
飴が……飴が…気管に…詰まった……!!!!
……死因:窒息死……!?)
「ラビーー!!やだ!!吐いて!!
ちょっと!!お水!水どこ!?!?」
背中をばんばん叩いてくるミナミ。
「ごほっ……ごっ……!!はっ……!!
……ちょ……ミナミちゃん……
み、水……いら……な……」
「死なないでーーー!!」
陽だまりの中で
ラビは飴にむせながら
必死に息を整えて──
最終的に
「……っはぁ……生還……」
と大きく息を吐いた。
ミナミは涙目で
ラビの頬を両手で掴む。
「もうっ……!
急に回るから!!
ほんと、心臓止まるかと思ったんだから!!」
「ご、ごめん……
あまりにも……
ミナミちゃんが……好きすぎて……
気持ちが、飛んでった……」
そう言うと、
ミナミはまた顔を真っ赤にして俯いた。
「……もう……
飴……ちゃんと噛んで食べてよ……」
「う、うん……
また一緒に」
二人のポケットの中には、
同じ飴の包み紙が
そっとしまわれていた。
Candyみたいに甘い恋が、
今日ひとつ、始まった。
終わり
20251207
中庭に差し込む光は弱いのに、
ミナミが本を手に立っている場所だけ
ほんのり明るく見えた。
昨日、ラビが渡した飴。
あの包み紙が本の端からひょこっと覗いてる。
それを見つけた瞬間、
胸の奥がキュッと甘く跳ねた。
(……昨日の、まだ取ってんの?
捨てねぇの……?)
ミナミはラビに気づくと、
柔らかく微笑んだ。
(……あぁもう……可愛いとかそういう次元じゃねぇな……見るだけで胸が溶けんだよ)
「ラビくん、おはよう」
「おはよ、ミナミちゃん。
本、読んでたの?」
(カーッ!!この“くん”付けがたまらねえ……ミナミちゃんなんて俺の好みのタイプじゃなかったのに!!)
「うん……ちょっとね」
本のページをそっと閉じる。
すると──
本の間から
“昨日の飴の包み紙”が
綺麗に半分に折られたまま落ちかけた。
ミナミが慌てて押さえる。
頬が赤い。
(……待てよ……なんでこんな丁寧に折ってんだよ……しかも、しおり代わりに……?)
ただの飴の紙だ。
なのに宝物みたいな扱い。
ラビの胸の奥が
ゆっくり熱く甘く満たされていく。
「……大事にしてんだ?」
声が自然と低くなる。
「っ……! ち、違……っ……!
ただ……かわいかったから……」
(嘘下手すぎ……そんなの理由になるわけないじゃん……)
ミナミは目をそらす。
でも手は、その包み紙を指でそっと撫でてる。
(……はぁ……もう……こりゃ確定だわ……
この子、俺のこと好きじゃん……)
胸が跳ねすぎて、
息が浅くなる。
「ねぇミナミちゃん」
「な、なぁに……?」
「俺からもらったやつ……そんなに大事?」
ミナミは顔中真っ赤にして、
しばらく黙ったあと……
そっと包み紙を撫でた。
「……すごく……嬉しかったから……」
その声が陽だまりより柔らかで甘かった。
(……やべぇ……可愛い……
好きすぎてどうにかなりそう……)
ラビはそっとミナミの手元に視線を落としながら、優しく笑った。
「そんなに気に入ってくれたならさ──
もうひとつ、あげるよ」
そう言って、
上着のポケットから
昨日と同じ飴を取り出す。
ミナミが目を丸くした。
「まだ持ってたの……?」
「さっき、ミランダから貰ってきた」
ラビは飴をひとつミナミの手に乗せて、
自分もひとつ取り出した。
包み紙をゆっくり開く音が
陽だまりの中に小さく響く。
「せーの、で食べよっか」
「うん……」
二人同時に、飴を口に含む。
甘い、優しい味。
胸の奥まで温かくなって、顔を上げると──
ミナミと目が合った。
同じ飴の匂い。
同じ甘さが胸に広がってる。
まるでひとつの気持ちを共有してるみたいな。
(……あぁ……これはもう……恋ってやつだ……
君と同じ味で、同じ息で、
同じ世界にいる感じ……
やべぇ……幸せすぎる……)
ミナミも、少し照れたように笑った。
(……この子の笑顔が
キャンディみたいに甘いって、
やっと理解したよ)
ラビはそっと、
飴越しに甘く囁いた。
「ねぇミナミちゃん……
これ、きっと……同じ気持ちだよね?」
ミナミはぱちりと瞬きをした。
「……え……?」
まるで“何のこと…?”と言いたげに
首を小さく傾ける。
(……あぁ……そう来るか……
ほんっと、可愛い……
けど……マジでわかんないの…?)
ラビは思わず頭をかいた。
「……困ったな」
ぽりぽり。
飴の甘さよりも
胸の奥がくすぐったくて、息が詰まる。
(どう言えばいいんさ……
“好き”って……
“君が可愛すぎて毎日しんどい”って……
そんな簡単に言えるわけないじゃん……)
ミナミはただキョトンと
ラビの顔を見つめていて、
その無自覚なまなざしが
さらにラビを追い詰めた。
(……やべぇ……
言わなきゃもっとヤバくなる……
けど、言ったらもっとヤバい……)
ラビの指先がわずかに震えた。
胸が甘くて痛くて、でも逃げたくなくて──
「……ほんと、困ったさ……
ミナミちゃん……」
優しい苦笑いの裏で、
飴より甘い気持ちが
ラビの喉までせり上がっていた。
ミナミはまだ不思議そうに
こちらを見上げてくる。
(……この子ほんっとうに……
なんでわかんないんだよ……
もう胸がはち切れそうなんだよ……俺……)
飴の甘さじゃ抑えられないくらい、
胸の奥が熱くなっていく。
ラビはゆっくり息を吸った。
けれど声が喉の途中で引っかかる。
「……あのさ、ミナミちゃん……」
……言えない。
言えば全部変わる。
だけど言わなきゃもっと苦しい。
「……あー……もう……!」
ラビは両手で自分の顔を覆った。
耳まで真っ赤なのが、
指の隙間からでもわかる。
(これ以上誤魔化したら、
ほんとに男として終わってる……
腹括れよラビ……言え……!)
深呼吸。
顔を隠したまま、
震える声で続けた。
「……ごめん、ちょっとだけ待って……
ほんと……
恥ずかしすぎて死にそう……」
ミナミがそっと近づく足音。
「ラビくん……?大丈夫?」
その呼び方ひとつで、
ラビの胸がさらに熱くなる。
(……あぁ……もうダメだ……
この子の声で、全部崩れる……)
ラビは意を決して、
覆っていた手をゆっくり下ろした。
真っ赤な顔。
潤んだ瞳。
でも逃げてはいない。
「……ミナミちゃん」
飴より甘い声で名前を呼ぶ。
(言え……言え……!)
ぎゅっと拳を握る。
「……好き」
息が触れそうな距離で、
まるで飴を口に含む時みたいに
そっと、慎重に。
「たぶん俺……
お前のこと、ずっと前からずっと……
どうしようもないくらい……好きなんだよ……」
ミナミは目を丸くし、
ほんの少し口を開けた。
その反応が
ラビの胸を一気に甘くする。
「……返事は今じゃなくていいよ」
照れ隠しのように苦笑しながら続ける。
「けど……どうしても言いたかった。
だって……俺、もう無理だったんさ……
言わずにいられるほど、
君への気持ち……軽くないんだよ……」
飴の甘さと
胸の甘さが入り混じって、
ラビの声は震えていた。
「……好きだよ、ミナミちゃん」
言った瞬間、
世界が一拍遅れて静かになった。
ミナミは返事をしない。
ただ、じっとラビを見つめて……
瞳の奥が、ゆっくり潤んでいく。
(あ……やばい……泣かせちゃった……?
そんなに嫌だった?……でも……どうすれば……)
ラビが一歩近づこうとした、その時──
ぽすんっ
ミナミが、小さく息を呑んだかと思うと、
そのまま胸元に勢いよく飛び込んできた。
「っ……!」
抱きしめられたというより、
しがみつかれた。
顔をごそっと胸元に埋めて。
腕の中で小さく震えてる。
ラビは何も言えなくなった。
代わりにミナミの背中をそっとポンポンしてあげる。
胸の奥が痛いくらい甘くなる。
ミナミが泣いてるのは、
悲しみじゃない。
“気持ちが溢れて止まらない涙”だって
わかってしまうから。
胸元に当たる呼吸が熱い。
(……なんでこんな……
可愛いことすんの……?
俺……ほんとにどうすればいいんさ……)
そっと、
ミナミの背中に腕を回す。
抱きしめ返すなんて簡単なはずなのに、
胸がいっぱいでうまく力が入らない。
「ミナミちゃん……」
名前を呼ぶ声が震える。
彼女は顔を上げないまま、ぎゅっと服を握ってくる。
(あぁ……泣いてる……
こんな子……好きにならないわけないだろ……)
ゆっくり背中を撫でながら、
耳元にそっと囁く。
「……泣いてもいいよ。見ないから」
そう言うと、
ラビの背中のミナミの指先が
少しだけ力を緩めた。
「……ラビくんのせいだよ……」
かすれた声。
涙を抱えた声。
胸が甘く、熱く、じんと満ちる。
(……うん。知ってる。
君の涙の理由……全部俺だ……)
「ごめんさ」
そう言いながら、
ラビは自分でも驚くほど優しい手つきで
ミナミの頭を撫でた。
「……でも、嬉しいよ」
ぎゅっと抱きしめ返す。
(離したくない……
ずっとこのままでいたい…)
ミナミが胸元に顔を埋めて泣いてしまってから、ラビはしばらく動けなかった。
(……こんなんズルいさ……
泣くほど……嬉しかったって……
じゃあもう……聞くしかないじゃん……
これ以上我慢できるわけないじゃん……)
ミナミの小さな手がまだラビの服を握ってる。
その温度が、答えを全部教えているくせに、
それでも
“言葉でも欲しい”って思ってしまう。
喉が熱くなる。
心臓が甘く痛い。
「……ねぇ、ミナミちゃん」
ラビの声で、胸に埋まってた頭がびくっと揺れた。
「……俺のこと……好き?」
少しの沈黙。
息が詰まる。
そして──
「……うん」
かすれた、ふるえた小さな声。
胸の奥が一瞬で溶けた。
(……あぁ……ダメだ……
嬉しすぎて死ねる……)
もっと聞きたい。
もっと確かめたい。
この子が俺をどれだけ想ってるか。
欲が止まらない。
「すっごく好き?」
「……うん」
答えるたびに声が熱を帯びていく。
(……可愛い……どんだけ好きなんさ……
俺こんな幸せでいいの……?)
気づけば、
ラビの腕の力が自然と強まっていた。
「じゃあさ、三度のご飯より好き?」
「……うん」
(ご飯より!?
ご飯って結構大事なやつだよ!?)
胸が跳ねて、笑いそうになる。
「チョコパフェよりも?」
ミナミは小さく息を吸って、
胸元でこくりと頷いた。
「……うん」
(チョコパフェより…
じゃあもう勝ち確じゃん……
好きすぎだろ……)
そして最後に、
ずっと聞きたかったやつ。
「……俺があげた飴より?」
少し間があった。
背中に回された彼女の指がぎゅっとラビの服をつまむ。
「……うん」
その“うん”は、
今まででいちばん甘かった。
(……やられた……
これ以上の告白ある……?
飴よりって……
そんなこと言われたら……)
「……まじか……」
声が勝手に震えた。
もう我慢できない。
「……ミナミちゃん……」
腕の中の小さな体を
ぎゅぅううっと抱きしめる。
飴の香りと、陽だまりの温度と、
胸を満たす“好き”が混ざり合う。
(……やばい……
幸せすぎて……泣きそう……)
ミナミもぎゅっとしがみついてきた。
その瞬間、
ラビは完全に恋に落ちた。
いや……
ずっと前から落ちてたけど、
今ので決定的になった。
「……うん」
ミナミが胸の中でそう呟いた瞬間。
ラビの頭の中で
“どーーん”
って、何かが弾けた。
(やった……!?
これ……やった……!?
よし……よし……よしっ……!!!)
感情が爆発して、
気がついたらミナミの腰に腕を回していた。
「やったぁぁぁぁぁぁーーーっ!」
くるっ。
くるくるっ。
勢いでそのまま
ミナミを抱え上げて回転していた。
「きゃっ……!?ラビくん!?」
陽だまりの中で、
二人がわぁぁって笑いながら回って──
その瞬間。
「……ふがっ」
ラビの喉の奥で、
コロッ、と乾いた音。
(え……?ちょ……これ……
今食ってた飴……!?)
ごくっ──
「……っっ!?!?」
飴が変な方向に入った。
「ラビくん!?!?
ちょっ、ラビくん!?どうしたの!?」
(どうしたもこうしたもねぇ!!!
飴が……飴が…気管に…詰まった……!!!!
……死因:窒息死……!?)
「ラビーー!!やだ!!吐いて!!
ちょっと!!お水!水どこ!?!?」
背中をばんばん叩いてくるミナミ。
「ごほっ……ごっ……!!はっ……!!
……ちょ……ミナミちゃん……
み、水……いら……な……」
「死なないでーーー!!」
陽だまりの中で
ラビは飴にむせながら
必死に息を整えて──
最終的に
「……っはぁ……生還……」
と大きく息を吐いた。
ミナミは涙目で
ラビの頬を両手で掴む。
「もうっ……!
急に回るから!!
ほんと、心臓止まるかと思ったんだから!!」
「ご、ごめん……
あまりにも……
ミナミちゃんが……好きすぎて……
気持ちが、飛んでった……」
そう言うと、
ミナミはまた顔を真っ赤にして俯いた。
「……もう……
飴……ちゃんと噛んで食べてよ……」
「う、うん……
また一緒に」
二人のポケットの中には、
同じ飴の包み紙が
そっとしまわれていた。
Candyみたいに甘い恋が、
今日ひとつ、始まった。
終わり
20251207