1日遅れの特等席
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. ꙳ ⢁ᐧ ᐧ1日遅れの特等席. ꙳ ⢁ᐧ ᐧ
「……で?ミナミ 、これは一体何なんだ……?」
8月11日の夜。誰もいない図書室の奥で、ミナミは抱えてきた箱を「はいっ!」とラビの前の机の上に差し出した。
「昨日……ラビの誕生日、ちゃんとお祝いできなかったでしょ? だから、1日遅れちゃったんだけど……お誕生日おめでとう!」
「えっ、マジで!? ミナミ、俺にプレゼントくれんの? サンキュ〜!」
思いがけないサプライズにラビはパッと顔をほころばせ、「開けていいか?」とウキウキで箱のフタをパカッと開けた。
――そして、盛大に引きつった声を上げた。
「…… ミナミ、これは一体何さ……?」
箱の中に収まっているのは、一応ケーキのような形をした……何か。
だが、全体に妙な歪みが生じており、まるで視覚的・空間的にモザイク処理が施されているかのように輪郭がぼやけている。
「いや待って!? お祝いの気持ちはめちゃくちゃ嬉しいけど、なんで食べ物にモザイクがかかってんの!? ケーキ作りでどんな現象起こしたらそうなるわけ!?」
「あのね! 最初はちゃんとレシピ本通りに作ってたの!」
「途中から何があった!?」
「途中でね、『ラビはもっと甘い方が好きかも!』ってお砂糖を足して、『彩りも華やかな方がラビっぽい!』ってハーブと果汁を入れて……『隠し味に隠し味を重ねたらもっと美味しくなるはず!』って混ぜ続けてたら……なんか空間が歪んじゃって……」
「アレンジの癖が強すぎる!! 『自論』で突っ走るな!! 本を信じろ、本を!!」
絶叫するラビに、ミナミはしょんぼりと肩を落とした。
昨日の当日は、大勢に囲まれているラビになかなか近づけず、声をかけるタイミングをずっと逃してしまっていたのだ。
「だって……ケーキ作ってる時、ラビのことばかり考えてたら、あれもこれもって……ラビに喜んでほしくて……っ」
「うぐっ……!」
不器用なりに自分のことを考えて奔走してくれたのだと知り、ラビの胸がドクンと跳ねる。
「こんな不格好なの……ごめんね。来年は、もっとまともなものになるように頑張るね……?」
(来年……!? 未来もずっと一緒にいる前提……!?)
無自覚すぎる殺し文句に、ラビの胸が激しく締め付けられた。キュン死寸前である。
ミナミは大きな瞳にポロポロと涙を溜め、ぽつりと呟いた。
「ラビのこと、ちゃんとお祝いしたかったの……っ。……だって、いつもラビのことばかり考えてるもん。私、ラビが……いちばん大事なんだよ……? ずっと一緒にいようね……?」
涙をポツリとこぼしながら、上目遣いに紡がれる真っ直ぐな言葉。
その瞬間、ラビの中で何かがパチンと弾けた。
「……はぁー、もう。いいよ」
「え……?」
「モザイクかかってても、1日遅れでも、ミナミが俺のために一生懸命作ってくれたんだから、全部いーの」
ラビは深いため息をつくと、謎のモザイクケーキを躊躇なくフォークですくい、口へ運んだ。
「……うわ、味も次元超えてるわ!」
「ラビ……!」
味の次元は超えていたが、毒ではない。ミナミは嬉しさと安心感で、パッと表情を輝かせた。
……だが。
その弾けるような、あまりにも可愛すぎる笑顔を見た瞬間。
ラビの理性を繋ぎ止めていた最後の糸が、完全にぶち切れた。
「……あー、ごめん、ミナミ。もう無理」
「え……??」
ラビの目からすーっと光が消えたかと思えば、次の瞬間には、両目が綺麗なハートマークに変わっていた。
「ミナミがッッッ、無意識に可愛すぎんのが悪い!!!」
「キャッ!? ラ、ラビ!?」
ガバッ!!!!
野獣のような勢いで押し倒され、ミナミは図書室の長いすの上へと組み敷かれる。
「『ずっと一緒にいる』とか『大事』とか、そんな顔で言われて耐えられるわけねーだろ!! ケーキの前に、ミナミを美味しくいただきます!!!」
1日遅れの誕生日祝いは、こうして甘くて激しい、朝までの宴へと突入していくのだった。
(おわり)
「……で?ミナミ 、これは一体何なんだ……?」
8月11日の夜。誰もいない図書室の奥で、ミナミは抱えてきた箱を「はいっ!」とラビの前の机の上に差し出した。
「昨日……ラビの誕生日、ちゃんとお祝いできなかったでしょ? だから、1日遅れちゃったんだけど……お誕生日おめでとう!」
「えっ、マジで!? ミナミ、俺にプレゼントくれんの? サンキュ〜!」
思いがけないサプライズにラビはパッと顔をほころばせ、「開けていいか?」とウキウキで箱のフタをパカッと開けた。
――そして、盛大に引きつった声を上げた。
「…… ミナミ、これは一体何さ……?」
箱の中に収まっているのは、一応ケーキのような形をした……何か。
だが、全体に妙な歪みが生じており、まるで視覚的・空間的にモザイク処理が施されているかのように輪郭がぼやけている。
「いや待って!? お祝いの気持ちはめちゃくちゃ嬉しいけど、なんで食べ物にモザイクがかかってんの!? ケーキ作りでどんな現象起こしたらそうなるわけ!?」
「あのね! 最初はちゃんとレシピ本通りに作ってたの!」
「途中から何があった!?」
「途中でね、『ラビはもっと甘い方が好きかも!』ってお砂糖を足して、『彩りも華やかな方がラビっぽい!』ってハーブと果汁を入れて……『隠し味に隠し味を重ねたらもっと美味しくなるはず!』って混ぜ続けてたら……なんか空間が歪んじゃって……」
「アレンジの癖が強すぎる!! 『自論』で突っ走るな!! 本を信じろ、本を!!」
絶叫するラビに、ミナミはしょんぼりと肩を落とした。
昨日の当日は、大勢に囲まれているラビになかなか近づけず、声をかけるタイミングをずっと逃してしまっていたのだ。
「だって……ケーキ作ってる時、ラビのことばかり考えてたら、あれもこれもって……ラビに喜んでほしくて……っ」
「うぐっ……!」
不器用なりに自分のことを考えて奔走してくれたのだと知り、ラビの胸がドクンと跳ねる。
「こんな不格好なの……ごめんね。来年は、もっとまともなものになるように頑張るね……?」
(来年……!? 未来もずっと一緒にいる前提……!?)
無自覚すぎる殺し文句に、ラビの胸が激しく締め付けられた。キュン死寸前である。
ミナミは大きな瞳にポロポロと涙を溜め、ぽつりと呟いた。
「ラビのこと、ちゃんとお祝いしたかったの……っ。……だって、いつもラビのことばかり考えてるもん。私、ラビが……いちばん大事なんだよ……? ずっと一緒にいようね……?」
涙をポツリとこぼしながら、上目遣いに紡がれる真っ直ぐな言葉。
その瞬間、ラビの中で何かがパチンと弾けた。
「……はぁー、もう。いいよ」
「え……?」
「モザイクかかってても、1日遅れでも、ミナミが俺のために一生懸命作ってくれたんだから、全部いーの」
ラビは深いため息をつくと、謎のモザイクケーキを躊躇なくフォークですくい、口へ運んだ。
「……うわ、味も次元超えてるわ!」
「ラビ……!」
味の次元は超えていたが、毒ではない。ミナミは嬉しさと安心感で、パッと表情を輝かせた。
……だが。
その弾けるような、あまりにも可愛すぎる笑顔を見た瞬間。
ラビの理性を繋ぎ止めていた最後の糸が、完全にぶち切れた。
「……あー、ごめん、ミナミ。もう無理」
「え……??」
ラビの目からすーっと光が消えたかと思えば、次の瞬間には、両目が綺麗なハートマークに変わっていた。
「ミナミがッッッ、無意識に可愛すぎんのが悪い!!!」
「キャッ!? ラ、ラビ!?」
ガバッ!!!!
野獣のような勢いで押し倒され、ミナミは図書室の長いすの上へと組み敷かれる。
「『ずっと一緒にいる』とか『大事』とか、そんな顔で言われて耐えられるわけねーだろ!! ケーキの前に、ミナミを美味しくいただきます!!!」
1日遅れの誕生日祝いは、こうして甘くて激しい、朝までの宴へと突入していくのだった。
(おわり)