ジョジョ短編
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ギアッチョとペアを組み、初めての任務が終わった。結果はそう悪くない。ターゲットは始末したし、目撃者もすべて消した。少しの傷は負ったが想定内のこと。任務の内容を鑑みれば上出来の部類に入るだろう。
だがギアッチョの表情は明るくはない。
任務を遂行し、アジトへ撤退するまでの間、こちらから投げた言葉には一度たりとも返答がなかった。いや、あるにはあったがすべて舌打ちだった。とにかく機嫌が悪いらしく、足は踏み鳴らすように歩くわ、手はぐちゃぐちゃと髪の毛をかき回してみるわ、数秒おきに舌打ちを漏らすわりに私のことはガン無視するわ。もう散々だ。せめて原因に心当たりがあればよかったのだが、生憎そんなものは微塵もない。
何故、彼はこんなにもいらだっているのだろう。
この短い道中で私を悩ませ続けた原因は、アジトに足を踏み入れた瞬間に判明した。任務中、私がギアッチョのことを庇い怪我を負ったことが気に食わなかったらしい。
「テメー、なんであのとき庇いやがった」
「だってギアッチョ、あのスナイパーに気づいてなかったでしょ?」
「だとしても庇う理由にはならねェだろうが」
「え、なんで?」
「いいか、俺たちは暗殺者だ」
「瞳の中の?」
「あ?」
「ごめん、なんでもない、どうぞ続けて」
「……暗殺者にとって一番大事なことはなんだ? 任務の遂行だ。ターゲット仕留めるためなら自分が死のうが仲間が死のうが関係ねェ。どんだけ被害出そうが、ターゲットさえ殺ればこっちの勝ちってことだ。それをよォ、テメーときたら……」
「? なに?」
「なに? なに、だと? 分かってねェってことか? テメー、このチームに配属されておいて、しかもこのオレとペア組んどいて、そのくせ何一つ分かってねェまま任務に出てたって、そういうことか? ふざけんじゃねェ!」
ブツブツとつぶやくようだった声音が一変。まるで突如爆弾が爆発したかのような怒声に、びくりと肩が揺れる。それまで私たちのことなど視界に入れていなかった他のメンバーの視線もこちらに集まる。ギアッチョの言わんとするところは未だよく理解できていなかったが、他のメンバーの手前、慌てて口を開いた。
「え、えっと、ごめんギアッチョ、つまり、えっと……どういうこと?」
「懇切丁寧に説明してやったっつーのにまだ分かんねェのかこのすっとこどっこい! その頭は飾りか!? それとも脳みそ入ってねェのか!? 振ったらカラコロ良い音すんだろテメー!」
「わ、すごいねギアッチョ。それこの間、プロシュートにも言われた」
「うるせェェエよ! そういう話じゃねェだろうがッ! 仲間を庇うってことがどれだけバカで無価値でクソみてェな行動か分かってねェやつは暗殺者失格だって言ってんだよ!」
「……え、なんで? 仲間は助けるでしょ、普通」
「話聞こえてねェのかこのバカは! 耳までバカか!」
「耳はバカじゃない! ……と思う。……だってギアッチョ、それって仲間が死にそうでも見捨てろってことでしょ?」
「ずっとそう言ってんだろッ!」
「そんなことできないよ。だってかっこ悪いもん」
「……」
「……」
「……いらねェ」
「え?」
「テメーみてェな反吐が出るほど甘々の甘ちゃんなんぞいらねェっつったんだよ!」
「……は?」
思いのほか低い声が口の端から漏れた。
いらない。
私をいらないと言ったのか、この男。
この、私を。
それまでの戸惑いが一気に冷える。代わりに湧いてきたのは、もっと熱く、燃え滾るような感情。これは、怒りだ。
「……いらない? 今、いらないって言ったの? この私を? この名字名前を……いらないって言ったのか貴様ァ!」
「!」
ぼうと、聞きなれた音が耳元で鳴った。同時に感じる熱は、腹の底の怒りよりもずっと熱い。私以外が触れれば火傷では済まない灼熱。紅蓮の炎が、自分の背後で揺らめいた。怒りのあまりスタンドが発動されたのだ。
ギアッチョが一瞬だけぎょっと目を剥く。しかしすぐにギロリと私をにらみ、あちらはあちらでスタンドを発動させた。ホワイト・アルバム。氷を操る能力。私が圧倒的優位を取れる、すばらしいスタンド。
「許さない、許さないぞ、ギアッチョ……この私を侮辱するなんて、そんなの絶対に許さない!」
「その前もさんざん侮辱しただろうがッ! テメーのキレるタイミングおかしすぎるぞ!」
「それ、ギアッチョだけは言っちゃダメだろ」
ぼそりとつぶやかれたホルマジオの正論はガン無視された。
ギアッチョは本気で身の危険を感じているらしく、すでにスタンドで全身を覆っている。彼の足元ではピシリピシリと音を立てながら、氷が広がり始めていた。しかし凍るそばから私の炎が水へと戻してしまうからまるで意味がない。ギアッチョがほんの少し後退する。
「ふん、偉そうなこと言っておいて、情けないんじゃない?」
「……もう勝ったつもりってか? だからテメーは甘ちゃんだっつてんだよ。このオレが、そう簡単に負けるとでも思ってんのか!?」
「思ってるよ!」
「テメッ」
「くらえ、かつてメチャつよスタンド使いが使ったという大技のパクリ、クロス・ファイヤー・ハリケ」
「名前、アジトを燃やすのは禁止だ」
「……ガーネット・スプラッシュ!」
「いてっ! なんだこれ! ちょっとだけいてェ!」
リゾットの静かな制止に従い、大技はやめて小技を出してみる。スタンドが放出した赤い小さな塊が、ギアッチョの額にコツコツと当たって床に落ちた。
「くっそ、地味に痛くてムカつくじゃねぇか! なんだその技!」
「よくわかんないけど練習したら出た」
「なんで練習しようと思ったんだよ!」
「なんとなく……じゃなくて! 取り消してよ! いらないって言ったの取り消して!」
「はぁ!? 取り消すわけねェだろ! テメーみてェなアホでバカで甘ちゃんの化身、暗殺チームにはいらねェんだよ!」
「それ言うならギアッチョみたいにうるさい人もいらなくない!? 一緒に転職先探してあげようか!? リクルートスーツ見繕って、髪の毛も染めてあげようか!? 就活中の量産型大学生にしてあげようか!? お前の個性を1から100まで殺してやるからな!!!!!」
「おちょくってんじゃねェぞテメー! 氷像にして砕いて地中海に捨ててやる……!」
「その前に私のスタンドが全部溶かしちゃうんだから、そんなことできませ~ん! バーカバーカ!」
「リゾット! こんなバカ、この世に生かして置いとく理由はねェよなァ!? 殺すからな!」
「それは許可できない」
「んでだよ!」
「チームだからだ」
「ッ……」
「確かに名前は挙動に多少おかしなところはある。しかし戦力であることは間違いない。もちろん任務についてはギアッチョの言うことが正しいが、だからと言って仲間を殺す理由にはならない。挙動はおかしいがな」
「ほーらね! 私いらない子じゃないって!」
「いらねェよ!」
「いらなくないもん!」
「いらねェ! いらねェいらねェいらねェいらねェいらねェいらねェいらねェいらねェいらねェいらねェいらねェいらねェいらねェいらねェいらねェ、心の底から! マジで! いらねェ!」
喉が枯れるのではないかと思うほどの声量。時折ひっくり返るような声で、しかし確実に言葉を紡ぐギアッチョに、ぐっと拳を握る。
いらない。
それは私にとって禁句中の禁句。今まで私に向かってそれを言い放った人間はすべて闇に葬ってきたし、そのあといつもちょっとだけ泣いてきた。それをこんなにも、力の限り叫ばれれば、さすがの私もこみ上げてくるものがある。しかし泣いたりするのは絶対に嫌で、じわりと熱くなった目頭にぎゅっと力をこめた。
「そ、そんなに言わなくても……」
「あ!?」
「う……そんなに言わなくたっていいじゃん! ギ、ギアッチョの……ギアッチョの、人でなし! 悪魔の実! 猫耳! アンポンタン! おもしろスケート野郎! えーとそれから、それから、えーと……バカァ!」
ギアッチョの剣幕にたじろぎながら、お返しと言わんばかりに思いつく限りの罵倒を並べてみる。ギアッチョの周囲の気温がさらに下がった気がしたが、そのまま部屋を飛び出し、廊下を駆けた。
だってひどい。あまりにひどい。大切な仲間だから助けたのに、いらないだなんて。あんなに何度も言わなくたっていいじゃないか。グスリと鼻を鳴らし、肩越しに後ろを振り返る。誰かが追ってくる気配はない。
……あれ、おかしいな。誰か1人くらい、例えばギアッチョが追ってきてくれるはずだったのに。
少し立ち止まって待ってみる。開け放したままのドアから誰かが出てくる様子はない。それどころか半開きのドアは、パタンと静かに閉じられてしまった。
……あれ? おかしくない?
思わずドアの前まで戻り、力の限りドアを開く。室内では先ほどと変わらず、メンバーがそれぞれ、悠々自適に自由時間を過ごしていた。私の再登場にかすかに動揺を示したのはギアッチョとペッシだけで、他は誰一人として表情すら変えていない。
あれれ? おかしくない?
「ねえ、なんで今ドア閉めたの!? 追ってきてよ!」
「お呼びだぜ、メローネ」
「ようし、いいだろう。じゃあ捕まえたら母体にするから、そのつもりでよろしく頼む」
「頼まれないしホルマジオはいつか殴る! もっと普通に追いかけてきて慰めて……イルーゾォ、鏡の中に逃げるの禁止!」
「いや、オレ関係ないし」
「あるよ! ……あるよね!? 仲間だもんね!」
「いやぁ……」
「え、待ってそれ一番傷つく……ていうか、そう、ドア閉めたの誰!? 残酷極まってない!?」
「ペッシだ」
「ペェェェッシ!!!!! ちょっと私とあっちでお話でも」
「ペッシだが、閉めろと言ったのはオレだ」
「……へ、へー、そうなんだ、プロシュートが……へー……ペッシ、ドア閉めてくれてありがとう!」
「い、いや……うん……」
「じゃあそういうことだから、ギアッチョ!」
「あ?」
「ちゃんと追ってきてよ! そういう展開だからね! ものすごく傷ついた私を追ってきて謝る展開なんだから、ペッシがドア閉める前に来なきゃダメだからね! じゃあ行くから!」
「お、おお……」
「ギアッチョのバーカ! もう知らない!」
やけくそのように言って、私は再びドアの向こう側へと足を踏み出した。理由はひとつ。ギアッチョではなく、プロシュートから逃げるため。彼のスタンドと私のスタンドの相性は驚くほど悪い。人間性自体の相性もびっくりするほど悪いから、まあそういうことなのだろう。危ない危ない。おばあちゃんになって死ぬところだった。数歩進んだところで立ち止まり、額の冷や汗をぬぐう。
なんだかギアッチョに対する怒りもすっかり削がれてしまった。傷ついたことは事実だが、だからと言って謝罪を強く望んでいるわけではない。私が仲間を見捨てることをかっこ悪いと考えているように、彼もまた、彼の美学に従って私をいらないと言ったのだ。
それを簡単に覆されてしまえば、ちょっと幻滅すらするかもしれない。
(まあ、追ってきたらきたでおもしろいけど……)
それはそれ、これはこれ。もし本当に来てくれたら力いっぱいおちょくってやろうと心に決めた、ちょうどその瞬間。
「名前!」
背後から、私の名前を呼ぶ声が聞こえた。やだ、本当に来ちゃった。うれしさ半分、おもしろさ半分の微妙な半笑いとともに振り返る。
「ギアッ……ペッ……ッッッッッッッシかよッッ!!!!!!」
そこにいたのは水色のぐるぐる頭ではなく、ミルク大好きマンモーニのペッシだった。
「ご、ごめん、でも誰も追いかける気配なかったから……」
「みんなひどくない? 紅一点だよ? もうちょっとかわいがろ?」
「う、うーん……? よく分かんないけど……でもオレは名前が言ってたことも分かるっていうか……兄貴には叱られると思うけど……かっこいいなって思って」
「え……」
「仲間を見捨てるのはかっこ悪いって、あんなにはっきり言えるの、かっこいいなって思ったんだ。オレはそう思ってもあんなふうに言い返せないし、すぐに兄貴に従っちまうと思うから……」
ペッシは視線を泳がせながら、最後の方はもごもごと早口にそう言った。彼は気が強い方ではない。いつも兄貴分であるプロシュートに厳しく指導されながら、暗殺者のなんたるかを仕込まれている。しかし生来の気弱なのか、なかなか彼が尊敬する兄貴分のようにはなれないでいた。
そんな彼が、私をかっこいいと言う。
暗殺者としては間違いなく、ギアッチョの方が正しいのに。ペッシとてそれは理解しているだろうに、わざわざこうして追ってきてくれたばかりか、隠しておくべき本心を教えてくれた。
(普通にうれしい……)
ささくれ立っていた心が、少しだけ落ち着いたのが分かった。我ながら単純だが、それでもうれしいものはうれしい。
「ペッ……」
ペッシありがとう、と続くはずだった言葉はしかし、すっと喉の奥に吸い込まれていった。
見えたのだ。
見えてしまった。
ペッシが閉じることを忘れてきたドアの向こう。薄暗い陰の向こうに見える、数多の瞳。たくさんの人間がいるわけではない。ひとつの頭部に所狭しと並んだ眼球が、ギロリとこちらの様子をうかがっている。
私は、あれの名前を知っている。
ザ・グレイトフル・デッド。
プロシュートのスタンドだ。
「……」
「なあ、名前、今のはみんなには秘密にしてくれよ? きっとまたプロシュート兄貴に叱られちまうから」
「……」
「……名前?」
「……ペッシ」
「うん?」
「ペェェェッシ!!!!」
「ぎゃ!?」
油断しきりだったペッシの脳天に、思いきりチョップを振り下ろす。しかし悲しいかな、意外な身長差のせいで、渾身のチョップは彼の鼻っ柱に叩き込むこととなった。ペッシは痛みのためか、鋭い手刀が命中した鼻を押さえ、ゴロゴロと床に転がる。その姿に耐えがたいほどの罪悪感を抱いたが、私はまだ死にたくはない。涙を呑んでビシッと、チームきってのマンモーニを指さした。
「甘ったれたこと言ってるんじゃあない!」
「え!?」
「いい、私たちは暗殺者! 分かる!? 一番大事なのは任務遂行! そのためにはたとえ仲間が死にかけてたって見捨てて、ターゲットを殺さなきゃならないの!」
「え、さ、さっきと言ってることが……」
「うるさーい! 確かに仲間を見捨てるのはかっこ悪いけど! でもでも、えっと、任務完遂できない方がかっこ悪いの! だってほら、仲間は守ったけどターゲットには逃げられましたーなんてそんな、そんなの……ほら……そこでターゲット逃がしちゃったら、他の仲間まで、全員を危険にさらすことにもなるんだよ!」
「!」
「そんなのかっこ悪いでしょ!」
「そ、そっか……確かにそうだな……」
「でもまあ私は絶対に仲間を見捨てたりとかしないから、えっと、そのためには……えっと……あれだね、強くならなきゃならないってことだね!」
「強く……?」
「任務は遂行する、仲間も守る……私は両方やらなくちゃならないの。何故なら、一番が好きだから! ナンバー1が大好きだから! ナンバー1にできないことなんてないから! そしてどっちもやるためには強くなるのが最短!」
「名前はすごいな……オレは、どっちもなんて絶対に選べないよ」
「まあ私クラスだから言えることだよね……ペッシも精進なさい。そして分かったら森へお帰り」
「森?」
「いいからいいから」
ペッシの背中をぐいぐいと押して、元いた部屋の中へと押し込む。いつの間にか「グレイトフル・デッド」は姿を消し、プロシュートは1人グラスを煽っていた。一応ペッシの教育に悪い発言はせずに済んだ、ということらしい。
それでもちょっと怖かったので私もさっと室内に戻り、呆然としていたギアッチョのそばにささっと寄る。眼鏡の向こう側から不可解極まりないとでも言いたげな視線がグサグサと飛んできたが、これは致し方ないことだ。だって「グレイトフル・デッド」の鬼門はギアッチョのスタンド「ホワイト・アルバム」だ。ここにいるのが一番安全だ。
「やっぱ持つべきものは仲間だよね、ギアッチョ」
「……」
「思ったんだけど、ギアッチョは私のこといらなくても、私はギアッチョのこと必要なんだよね。だからギアッチョがどう思ってようが、特に関係なかったね」
「人間の心がねェのかテメーは……」
「暗殺者に何言ってるの? そしてギアッチョも暗殺者だから、特に気持ちを慮ったりする必要ないよね? 良かったぁ、解決解決」
「……」
「あーあ、なんかお腹空いちゃったね! ピッツァ食べに行こ!」
「……」
「ええー、無視? 無視は良くないよ、ギアッチョ」
「名前、君、絶対すごいベビーを産み出すと思うんだけど、今晩どう?」
「死へのお誘いに乗るバカはいないよね!」
「でも君、大馬鹿サイコパスガールじゃないか」
「え、ひどい。リゾットがちょっと挙動がおかしいだけだって言ってたじゃん」
「ちょっととは言っていない」
「つーか挙動がおかしいのはいいのかよ」
「普通と違うってことでしょ? 褒め言葉じゃん。ていうかホルマジオ、今晩左頬の予定はどう? 私の拳と過ごしてみない?」
「お前はオレにはイイ女すぎる。とてもじゃないが、恐れ多くてな……」
「そんなこと言われちゃ仕方ないか~。じゃあ行こうか、ギアッチョ。私をリストランテに連れていって~」
「……はぁあぁああ……」
「幸せ逃げるよ」
「……次に俺に歯向かったらプロシュートの刑だからな、大馬鹿サイコパス女」
「待って待って、それはひどすぎ」
「うるせェ、さっさと行くぞ」
「はぁい」
すっかり毒気が抜けた様子のギアッチョの後ろに続き、アジトを出る。基本的にどのメンバーも私への当たりは厳しい。挙動がおかしいから――ではなく、まだ信頼されていないから、だろう。早くチームの信頼を勝ち取りたいところだが、まだまだ先は長い。まずはこの相性が悪いようで最高な相棒、ギアッチョからだ。なんだかんだと彼は私を見捨てたりはしない。本当に私を殺すつもりならば、わざわざリゾットの許可を取るわけがない。それをわざわざああやってみんなの前で喚きたてたということは、まあ、そういうことなのだろう。
なんとなく足取りが軽くなったような気がしてスキップをひとつ。ギアッチョは呆れた顔をしながらも、舌打ちをひとつ漏らすくらいにして、私を置いていったりはしなかった。
***
ペッシめちゃくちゃかわいそう
だがギアッチョの表情は明るくはない。
任務を遂行し、アジトへ撤退するまでの間、こちらから投げた言葉には一度たりとも返答がなかった。いや、あるにはあったがすべて舌打ちだった。とにかく機嫌が悪いらしく、足は踏み鳴らすように歩くわ、手はぐちゃぐちゃと髪の毛をかき回してみるわ、数秒おきに舌打ちを漏らすわりに私のことはガン無視するわ。もう散々だ。せめて原因に心当たりがあればよかったのだが、生憎そんなものは微塵もない。
何故、彼はこんなにもいらだっているのだろう。
この短い道中で私を悩ませ続けた原因は、アジトに足を踏み入れた瞬間に判明した。任務中、私がギアッチョのことを庇い怪我を負ったことが気に食わなかったらしい。
「テメー、なんであのとき庇いやがった」
「だってギアッチョ、あのスナイパーに気づいてなかったでしょ?」
「だとしても庇う理由にはならねェだろうが」
「え、なんで?」
「いいか、俺たちは暗殺者だ」
「瞳の中の?」
「あ?」
「ごめん、なんでもない、どうぞ続けて」
「……暗殺者にとって一番大事なことはなんだ? 任務の遂行だ。ターゲット仕留めるためなら自分が死のうが仲間が死のうが関係ねェ。どんだけ被害出そうが、ターゲットさえ殺ればこっちの勝ちってことだ。それをよォ、テメーときたら……」
「? なに?」
「なに? なに、だと? 分かってねェってことか? テメー、このチームに配属されておいて、しかもこのオレとペア組んどいて、そのくせ何一つ分かってねェまま任務に出てたって、そういうことか? ふざけんじゃねェ!」
ブツブツとつぶやくようだった声音が一変。まるで突如爆弾が爆発したかのような怒声に、びくりと肩が揺れる。それまで私たちのことなど視界に入れていなかった他のメンバーの視線もこちらに集まる。ギアッチョの言わんとするところは未だよく理解できていなかったが、他のメンバーの手前、慌てて口を開いた。
「え、えっと、ごめんギアッチョ、つまり、えっと……どういうこと?」
「懇切丁寧に説明してやったっつーのにまだ分かんねェのかこのすっとこどっこい! その頭は飾りか!? それとも脳みそ入ってねェのか!? 振ったらカラコロ良い音すんだろテメー!」
「わ、すごいねギアッチョ。それこの間、プロシュートにも言われた」
「うるせェェエよ! そういう話じゃねェだろうがッ! 仲間を庇うってことがどれだけバカで無価値でクソみてェな行動か分かってねェやつは暗殺者失格だって言ってんだよ!」
「……え、なんで? 仲間は助けるでしょ、普通」
「話聞こえてねェのかこのバカは! 耳までバカか!」
「耳はバカじゃない! ……と思う。……だってギアッチョ、それって仲間が死にそうでも見捨てろってことでしょ?」
「ずっとそう言ってんだろッ!」
「そんなことできないよ。だってかっこ悪いもん」
「……」
「……」
「……いらねェ」
「え?」
「テメーみてェな反吐が出るほど甘々の甘ちゃんなんぞいらねェっつったんだよ!」
「……は?」
思いのほか低い声が口の端から漏れた。
いらない。
私をいらないと言ったのか、この男。
この、私を。
それまでの戸惑いが一気に冷える。代わりに湧いてきたのは、もっと熱く、燃え滾るような感情。これは、怒りだ。
「……いらない? 今、いらないって言ったの? この私を? この名字名前を……いらないって言ったのか貴様ァ!」
「!」
ぼうと、聞きなれた音が耳元で鳴った。同時に感じる熱は、腹の底の怒りよりもずっと熱い。私以外が触れれば火傷では済まない灼熱。紅蓮の炎が、自分の背後で揺らめいた。怒りのあまりスタンドが発動されたのだ。
ギアッチョが一瞬だけぎょっと目を剥く。しかしすぐにギロリと私をにらみ、あちらはあちらでスタンドを発動させた。ホワイト・アルバム。氷を操る能力。私が圧倒的優位を取れる、すばらしいスタンド。
「許さない、許さないぞ、ギアッチョ……この私を侮辱するなんて、そんなの絶対に許さない!」
「その前もさんざん侮辱しただろうがッ! テメーのキレるタイミングおかしすぎるぞ!」
「それ、ギアッチョだけは言っちゃダメだろ」
ぼそりとつぶやかれたホルマジオの正論はガン無視された。
ギアッチョは本気で身の危険を感じているらしく、すでにスタンドで全身を覆っている。彼の足元ではピシリピシリと音を立てながら、氷が広がり始めていた。しかし凍るそばから私の炎が水へと戻してしまうからまるで意味がない。ギアッチョがほんの少し後退する。
「ふん、偉そうなこと言っておいて、情けないんじゃない?」
「……もう勝ったつもりってか? だからテメーは甘ちゃんだっつてんだよ。このオレが、そう簡単に負けるとでも思ってんのか!?」
「思ってるよ!」
「テメッ」
「くらえ、かつてメチャつよスタンド使いが使ったという大技のパクリ、クロス・ファイヤー・ハリケ」
「名前、アジトを燃やすのは禁止だ」
「……ガーネット・スプラッシュ!」
「いてっ! なんだこれ! ちょっとだけいてェ!」
リゾットの静かな制止に従い、大技はやめて小技を出してみる。スタンドが放出した赤い小さな塊が、ギアッチョの額にコツコツと当たって床に落ちた。
「くっそ、地味に痛くてムカつくじゃねぇか! なんだその技!」
「よくわかんないけど練習したら出た」
「なんで練習しようと思ったんだよ!」
「なんとなく……じゃなくて! 取り消してよ! いらないって言ったの取り消して!」
「はぁ!? 取り消すわけねェだろ! テメーみてェなアホでバカで甘ちゃんの化身、暗殺チームにはいらねェんだよ!」
「それ言うならギアッチョみたいにうるさい人もいらなくない!? 一緒に転職先探してあげようか!? リクルートスーツ見繕って、髪の毛も染めてあげようか!? 就活中の量産型大学生にしてあげようか!? お前の個性を1から100まで殺してやるからな!!!!!」
「おちょくってんじゃねェぞテメー! 氷像にして砕いて地中海に捨ててやる……!」
「その前に私のスタンドが全部溶かしちゃうんだから、そんなことできませ~ん! バーカバーカ!」
「リゾット! こんなバカ、この世に生かして置いとく理由はねェよなァ!? 殺すからな!」
「それは許可できない」
「んでだよ!」
「チームだからだ」
「ッ……」
「確かに名前は挙動に多少おかしなところはある。しかし戦力であることは間違いない。もちろん任務についてはギアッチョの言うことが正しいが、だからと言って仲間を殺す理由にはならない。挙動はおかしいがな」
「ほーらね! 私いらない子じゃないって!」
「いらねェよ!」
「いらなくないもん!」
「いらねェ! いらねェいらねェいらねェいらねェいらねェいらねェいらねェいらねェいらねェいらねェいらねェいらねェいらねェいらねェいらねェ、心の底から! マジで! いらねェ!」
喉が枯れるのではないかと思うほどの声量。時折ひっくり返るような声で、しかし確実に言葉を紡ぐギアッチョに、ぐっと拳を握る。
いらない。
それは私にとって禁句中の禁句。今まで私に向かってそれを言い放った人間はすべて闇に葬ってきたし、そのあといつもちょっとだけ泣いてきた。それをこんなにも、力の限り叫ばれれば、さすがの私もこみ上げてくるものがある。しかし泣いたりするのは絶対に嫌で、じわりと熱くなった目頭にぎゅっと力をこめた。
「そ、そんなに言わなくても……」
「あ!?」
「う……そんなに言わなくたっていいじゃん! ギ、ギアッチョの……ギアッチョの、人でなし! 悪魔の実! 猫耳! アンポンタン! おもしろスケート野郎! えーとそれから、それから、えーと……バカァ!」
ギアッチョの剣幕にたじろぎながら、お返しと言わんばかりに思いつく限りの罵倒を並べてみる。ギアッチョの周囲の気温がさらに下がった気がしたが、そのまま部屋を飛び出し、廊下を駆けた。
だってひどい。あまりにひどい。大切な仲間だから助けたのに、いらないだなんて。あんなに何度も言わなくたっていいじゃないか。グスリと鼻を鳴らし、肩越しに後ろを振り返る。誰かが追ってくる気配はない。
……あれ、おかしいな。誰か1人くらい、例えばギアッチョが追ってきてくれるはずだったのに。
少し立ち止まって待ってみる。開け放したままのドアから誰かが出てくる様子はない。それどころか半開きのドアは、パタンと静かに閉じられてしまった。
……あれ? おかしくない?
思わずドアの前まで戻り、力の限りドアを開く。室内では先ほどと変わらず、メンバーがそれぞれ、悠々自適に自由時間を過ごしていた。私の再登場にかすかに動揺を示したのはギアッチョとペッシだけで、他は誰一人として表情すら変えていない。
あれれ? おかしくない?
「ねえ、なんで今ドア閉めたの!? 追ってきてよ!」
「お呼びだぜ、メローネ」
「ようし、いいだろう。じゃあ捕まえたら母体にするから、そのつもりでよろしく頼む」
「頼まれないしホルマジオはいつか殴る! もっと普通に追いかけてきて慰めて……イルーゾォ、鏡の中に逃げるの禁止!」
「いや、オレ関係ないし」
「あるよ! ……あるよね!? 仲間だもんね!」
「いやぁ……」
「え、待ってそれ一番傷つく……ていうか、そう、ドア閉めたの誰!? 残酷極まってない!?」
「ペッシだ」
「ペェェェッシ!!!!! ちょっと私とあっちでお話でも」
「ペッシだが、閉めろと言ったのはオレだ」
「……へ、へー、そうなんだ、プロシュートが……へー……ペッシ、ドア閉めてくれてありがとう!」
「い、いや……うん……」
「じゃあそういうことだから、ギアッチョ!」
「あ?」
「ちゃんと追ってきてよ! そういう展開だからね! ものすごく傷ついた私を追ってきて謝る展開なんだから、ペッシがドア閉める前に来なきゃダメだからね! じゃあ行くから!」
「お、おお……」
「ギアッチョのバーカ! もう知らない!」
やけくそのように言って、私は再びドアの向こう側へと足を踏み出した。理由はひとつ。ギアッチョではなく、プロシュートから逃げるため。彼のスタンドと私のスタンドの相性は驚くほど悪い。人間性自体の相性もびっくりするほど悪いから、まあそういうことなのだろう。危ない危ない。おばあちゃんになって死ぬところだった。数歩進んだところで立ち止まり、額の冷や汗をぬぐう。
なんだかギアッチョに対する怒りもすっかり削がれてしまった。傷ついたことは事実だが、だからと言って謝罪を強く望んでいるわけではない。私が仲間を見捨てることをかっこ悪いと考えているように、彼もまた、彼の美学に従って私をいらないと言ったのだ。
それを簡単に覆されてしまえば、ちょっと幻滅すらするかもしれない。
(まあ、追ってきたらきたでおもしろいけど……)
それはそれ、これはこれ。もし本当に来てくれたら力いっぱいおちょくってやろうと心に決めた、ちょうどその瞬間。
「名前!」
背後から、私の名前を呼ぶ声が聞こえた。やだ、本当に来ちゃった。うれしさ半分、おもしろさ半分の微妙な半笑いとともに振り返る。
「ギアッ……ペッ……ッッッッッッッシかよッッ!!!!!!」
そこにいたのは水色のぐるぐる頭ではなく、ミルク大好きマンモーニのペッシだった。
「ご、ごめん、でも誰も追いかける気配なかったから……」
「みんなひどくない? 紅一点だよ? もうちょっとかわいがろ?」
「う、うーん……? よく分かんないけど……でもオレは名前が言ってたことも分かるっていうか……兄貴には叱られると思うけど……かっこいいなって思って」
「え……」
「仲間を見捨てるのはかっこ悪いって、あんなにはっきり言えるの、かっこいいなって思ったんだ。オレはそう思ってもあんなふうに言い返せないし、すぐに兄貴に従っちまうと思うから……」
ペッシは視線を泳がせながら、最後の方はもごもごと早口にそう言った。彼は気が強い方ではない。いつも兄貴分であるプロシュートに厳しく指導されながら、暗殺者のなんたるかを仕込まれている。しかし生来の気弱なのか、なかなか彼が尊敬する兄貴分のようにはなれないでいた。
そんな彼が、私をかっこいいと言う。
暗殺者としては間違いなく、ギアッチョの方が正しいのに。ペッシとてそれは理解しているだろうに、わざわざこうして追ってきてくれたばかりか、隠しておくべき本心を教えてくれた。
(普通にうれしい……)
ささくれ立っていた心が、少しだけ落ち着いたのが分かった。我ながら単純だが、それでもうれしいものはうれしい。
「ペッ……」
ペッシありがとう、と続くはずだった言葉はしかし、すっと喉の奥に吸い込まれていった。
見えたのだ。
見えてしまった。
ペッシが閉じることを忘れてきたドアの向こう。薄暗い陰の向こうに見える、数多の瞳。たくさんの人間がいるわけではない。ひとつの頭部に所狭しと並んだ眼球が、ギロリとこちらの様子をうかがっている。
私は、あれの名前を知っている。
ザ・グレイトフル・デッド。
プロシュートのスタンドだ。
「……」
「なあ、名前、今のはみんなには秘密にしてくれよ? きっとまたプロシュート兄貴に叱られちまうから」
「……」
「……名前?」
「……ペッシ」
「うん?」
「ペェェェッシ!!!!」
「ぎゃ!?」
油断しきりだったペッシの脳天に、思いきりチョップを振り下ろす。しかし悲しいかな、意外な身長差のせいで、渾身のチョップは彼の鼻っ柱に叩き込むこととなった。ペッシは痛みのためか、鋭い手刀が命中した鼻を押さえ、ゴロゴロと床に転がる。その姿に耐えがたいほどの罪悪感を抱いたが、私はまだ死にたくはない。涙を呑んでビシッと、チームきってのマンモーニを指さした。
「甘ったれたこと言ってるんじゃあない!」
「え!?」
「いい、私たちは暗殺者! 分かる!? 一番大事なのは任務遂行! そのためにはたとえ仲間が死にかけてたって見捨てて、ターゲットを殺さなきゃならないの!」
「え、さ、さっきと言ってることが……」
「うるさーい! 確かに仲間を見捨てるのはかっこ悪いけど! でもでも、えっと、任務完遂できない方がかっこ悪いの! だってほら、仲間は守ったけどターゲットには逃げられましたーなんてそんな、そんなの……ほら……そこでターゲット逃がしちゃったら、他の仲間まで、全員を危険にさらすことにもなるんだよ!」
「!」
「そんなのかっこ悪いでしょ!」
「そ、そっか……確かにそうだな……」
「でもまあ私は絶対に仲間を見捨てたりとかしないから、えっと、そのためには……えっと……あれだね、強くならなきゃならないってことだね!」
「強く……?」
「任務は遂行する、仲間も守る……私は両方やらなくちゃならないの。何故なら、一番が好きだから! ナンバー1が大好きだから! ナンバー1にできないことなんてないから! そしてどっちもやるためには強くなるのが最短!」
「名前はすごいな……オレは、どっちもなんて絶対に選べないよ」
「まあ私クラスだから言えることだよね……ペッシも精進なさい。そして分かったら森へお帰り」
「森?」
「いいからいいから」
ペッシの背中をぐいぐいと押して、元いた部屋の中へと押し込む。いつの間にか「グレイトフル・デッド」は姿を消し、プロシュートは1人グラスを煽っていた。一応ペッシの教育に悪い発言はせずに済んだ、ということらしい。
それでもちょっと怖かったので私もさっと室内に戻り、呆然としていたギアッチョのそばにささっと寄る。眼鏡の向こう側から不可解極まりないとでも言いたげな視線がグサグサと飛んできたが、これは致し方ないことだ。だって「グレイトフル・デッド」の鬼門はギアッチョのスタンド「ホワイト・アルバム」だ。ここにいるのが一番安全だ。
「やっぱ持つべきものは仲間だよね、ギアッチョ」
「……」
「思ったんだけど、ギアッチョは私のこといらなくても、私はギアッチョのこと必要なんだよね。だからギアッチョがどう思ってようが、特に関係なかったね」
「人間の心がねェのかテメーは……」
「暗殺者に何言ってるの? そしてギアッチョも暗殺者だから、特に気持ちを慮ったりする必要ないよね? 良かったぁ、解決解決」
「……」
「あーあ、なんかお腹空いちゃったね! ピッツァ食べに行こ!」
「……」
「ええー、無視? 無視は良くないよ、ギアッチョ」
「名前、君、絶対すごいベビーを産み出すと思うんだけど、今晩どう?」
「死へのお誘いに乗るバカはいないよね!」
「でも君、大馬鹿サイコパスガールじゃないか」
「え、ひどい。リゾットがちょっと挙動がおかしいだけだって言ってたじゃん」
「ちょっととは言っていない」
「つーか挙動がおかしいのはいいのかよ」
「普通と違うってことでしょ? 褒め言葉じゃん。ていうかホルマジオ、今晩左頬の予定はどう? 私の拳と過ごしてみない?」
「お前はオレにはイイ女すぎる。とてもじゃないが、恐れ多くてな……」
「そんなこと言われちゃ仕方ないか~。じゃあ行こうか、ギアッチョ。私をリストランテに連れていって~」
「……はぁあぁああ……」
「幸せ逃げるよ」
「……次に俺に歯向かったらプロシュートの刑だからな、大馬鹿サイコパス女」
「待って待って、それはひどすぎ」
「うるせェ、さっさと行くぞ」
「はぁい」
すっかり毒気が抜けた様子のギアッチョの後ろに続き、アジトを出る。基本的にどのメンバーも私への当たりは厳しい。挙動がおかしいから――ではなく、まだ信頼されていないから、だろう。早くチームの信頼を勝ち取りたいところだが、まだまだ先は長い。まずはこの相性が悪いようで最高な相棒、ギアッチョからだ。なんだかんだと彼は私を見捨てたりはしない。本当に私を殺すつもりならば、わざわざリゾットの許可を取るわけがない。それをわざわざああやってみんなの前で喚きたてたということは、まあ、そういうことなのだろう。
なんとなく足取りが軽くなったような気がしてスキップをひとつ。ギアッチョは呆れた顔をしながらも、舌打ちをひとつ漏らすくらいにして、私を置いていったりはしなかった。
***
ペッシめちゃくちゃかわいそう
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