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もしも、王泥喜くんがクラインに残って革命派のメンバーだったらの設定です。
どうも、皆様。ごきげんよう。
わたしは上司の成歩堂さんを迎えに、この異国の地クラインにやってきました。
海外旅行だひゃっほいと内心浮かれながら、成歩堂さんたちと合流しようと考えていました。
…………10分前までは。
「待てぇえええ!」
「革命軍の女ぁああああ!」
「どういうことですかぁあああああ!!!!」
弁護士の私はただ今クラインの兵隊さんから逃走中です。
訳がわからないよ!?!?
【童顔兵士と喪女弁護士】
「ハァハァ……ハァハァ……」
三十路の喪女になんて無体を強いるんだこの国の兵隊は。
この国は山の高いところにあるせいで酸素がすごく薄い。
そのためすぐに息が切れる。
決して年のせいではない。
年のせいではない!
あぁ、なんとか奇跡的に撒くことができたけど、応援の人員が加わったら捕まるのは時間の問題だ。
せめてどこか隠れられそうな安全な場所を探さなきゃ。
というか、そもそもなんで私は兵隊に追いかけられるんだ?
この国で犯罪を犯した覚えはないはずだ。
あっでも、あの会話がまずかったのかな。
10分前ほどに成歩堂さんのことをこの国の人に尋ねたのだ。
“青いスーツでトンガリ頭の男の人を見かけませんでしたか?”と。知らないと言われたあと、あんたとはどういう関係なんだい?と訊かれたんだっけ。
だから“私の上司です”と言ってさらにお嬢さんは何の仕事をしていると質問されたから“弁護士です”と答えた。
あっそうだ。
それだ。
だって、そう言ったあと悲鳴あげられて、兵隊を呼ばれたんだから。
でも、泥棒ですとか殺人犯ですとか告白したならわかるけど、なんで『弁護士です』と答えた瞬間、怖がられるんだ?
「おい!居たか!?」
ギュッと身体中の筋肉が固まる。
まずいまずいまずい!!
まだ隠れるところなんて見つけてないのに!
どうしようどうしよう!
「っ!!」
背後から口を手で押さえられ、内臓に冷気が零れ落ちる。
じたばたと暴れるが、耳元でしっと鋭い声がした。
「静かに。このままじゃ見つかる」
声の主の言葉通り兵隊の声がだんだんと近づいてきていた。
「こっちだ」
私が大人しくなった瞬間、二の腕を掴まれ体を引っ張られる。
地獄に仏か。
地獄に鬼か。
私はゴーグルの少年に黙ってついていくしかできなかった。
路地裏を抜け、マンホールに入り、下水道を通り、たどり着いた場所は
「……事務所?」
ゴーグルの少年に続いて穴から這い上がるとそこは接客用のソファとテーブルが置かれ、窓に板が打ち付けられている部屋だった。ゴーグルの少年がゴーグルを額にずり上げる。
冬の夜空のような澄んだ黒瞳がこちらを見据える。
彼は左手にナイフを握り。銀色に光る刃をこちらに向ける。
ひっと体がすくみ上がった。
そして、彼は右手に赤く丸い物体を取り出す。
「リンゴ?」
シュルシュルと器用にナイフで皮を向き、八つほどに切り分ける。テーブルの上に出しっぱなしだった皿にそれをのせる。
「食べますか?」
「あっありがとう」
って!
ちがう!
シャクッとなかなか歯ごたえのある酸味の効いたリンゴをかじっているバヤイではない。
「助けてくれてありがとう。けど、君は一体何者?」
軍服の少年はもう一個のリンゴに手を伸ばし、皮がついたままかじる。
シャクシャクとリンゴを食べながら、夜色の双眸をこちらに向ける。
一挙一動を観察されているような隙のない視線に思わずドキリとする。
なんだ、この子。
なんとも言えない緊張が体に走る。
「まず、人に尋ねるときは自分から名乗ったらどうですか」
粗暴そうに見えて案外礼儀正しいことを言う子だな。
年下に言われてなんとなくむっとするが、その通りなので素直に名乗る。
「……私は弁護士の」
「弁護士!?!?」
キーン!!とバカデカイ音量に耳鳴りがする。
この子どんな声量してるんだよ。
あちゃーと額に手を当てながらのけぞる少年に、私は困惑した。「べっ弁護士だとなんかマズイの?」
「“マズイの?”だって!?あんた何も知らずに来たのかよ。この国では弁護士は大罪人なんだよ」
「えええええええええええええ!?」
なにそれ!
「あっじゃあ成歩堂さんマズイんじゃないの!?」
「ナルホドウ?」
「私の上司で同じ弁護士で……あぁ、あの人結構な受難体質だからな……」
「あんた、今すぐにこの国から出た方がいいですよ」
「うっうん。成歩堂さんを見つけたらそうするよ。だけど、どうして君は私を助けてくれたの?もしかして、君も弁護士?」
そう尋ねると苦虫を噛み潰したような顔をしたあと、少年が口を開く。
「違いますよ。オレはホースケ・サードマディ。革命派『反逆の龍』の一員です」
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