破鏡再び照らす
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同日 午前12時23分
総合病院 廊下
「あの、とりあえずは様子を見るだけで、手を出すまでは乱入するつもりはないですから」
「わかっているよ。男が彼女に暴力を働いたら止めることだけはしたいのだろう」
「そうです。あまり大事にすることはしないようにしたいんです」
「しかし、手を出してくれれれば、私たちの証言を元に男を捕まえることができるかもしれない」
「やめてくださいよ。そういうこと言うの」
それも方法としてはありかもしれない。
けど、人を傷つくのを見るなんて気分のいいものじゃない。
出来たらそれは最後の手段にしたい。
「ん?」
ムマ先生が足を止める。
「どうしたんですか?」
そう尋ねた瞬間
「人殺しだぁあああああ!」
叫び声がした方に、バッと顔を向ける。
あたしたちの目的の場所である十六夜先生の診察室から、叫んで出てきたのは……
……椎名先生!?
状況が理解できないが、足元がぐらついた。
心臓が早鐘を打つ。
頭は理解が追いついていないが、体はひしひしと嫌な状況を感じ取っていた。
椎名先生を押しのけて、背広の男が飛び出してきた。
「ぐっ!」
「ムマ先生!?」
背広の男はこちらまで駆けてきたかと思うと、ムマ先生を突き飛ばして去っていく。
思わず、先生の体を受け止める。
男が走り抜けていく途中、男が脇に抱えている、耳の短いウサギの置物と目が合う。
「十六夜先生が、死んで、あの男が…殺してて…!
椎名先生がこちらに走ってくるのを視界の端に捕らえた。
「ムマ先生!お怪我は?って枯山さん?」
あたしは去った男の方角に顔を向ける。
ヤロウ…………!!
ギリッと奥歯を砕く勢いで、噛みしめた。
足が動く。
廊下を走り、記憶の中の背広を人込みから探る。
階段の柵から下を覗く。
……居た!!
階段の段差をすべてすっ飛ばし、飛び降りながら追いかける。
「待て!!」
金切り声のような音域が出たが、今はどうでもいい。
ちらっと背広の男が後ろを見たが、すぐに前を向く。
くそっ人が邪魔で追いつかない!
男に追いつきたくても患者や職員があたしの行く手を阻んで、男の背を捕らえられない。
男の向こう側から、紺色の服の男たちがやってくる。
……警察!
見覚えのある恰好を見て、反射的に叫んだ。
「捕まえてぇっ!!」
キンっと嫌な高音が自分の喉から鳴った。
紺色の制服を着た警官たちは、あたしが指さした男を捕まえる。
二人がかりで背広の男が床に押さえこまれた。
男の近くまで来てから、足を止める。
ハァハァと肺が萎んだり膨らんだりをするたびに、肩が激しく上下する。
警官に手錠をかけられる男が、口を開く。
「オレじゃない!オレは殺してない!」
ふと、男の目がこちらに向いた。
「やってない!!オレはやってない!」
その図々しい物言いに、脳の毛細血管が線香花火のようにぷつぷつと破裂していくような感覚がした。
警官に押さえつけられていなければ、喚き散らす男の首を両手で締めてしまいそうだった。
バカなやつ。
"殺してない"なんて、"オレが殺した"って白状してるようなものじゃないか。
仮に殺してなかったとしても、あんな男の言う事なんて誰が信じるもんか。
「枯山」
名を呼ばれ、ハッとして振り返る。
「ムマ先生」
ふと、掌の痛みに手を開く。
手相に弓なりの小さな赤い跡が四つほどくっきりとついていた。
やり場のない怒りを拳に託していたようだ。
「あとはこちらに任せて、君はすぐに帰りなさい」
その言葉にえっと声が洩れた。
「でっでも、」
「いいから早く!このことは私と椎名先生で対応する」
そう言い残し、彼は十六夜先生の診察室へ戻っていった。
総合病院 廊下
「あの、とりあえずは様子を見るだけで、手を出すまでは乱入するつもりはないですから」
「わかっているよ。男が彼女に暴力を働いたら止めることだけはしたいのだろう」
「そうです。あまり大事にすることはしないようにしたいんです」
「しかし、手を出してくれれれば、私たちの証言を元に男を捕まえることができるかもしれない」
「やめてくださいよ。そういうこと言うの」
それも方法としてはありかもしれない。
けど、人を傷つくのを見るなんて気分のいいものじゃない。
出来たらそれは最後の手段にしたい。
「ん?」
ムマ先生が足を止める。
「どうしたんですか?」
そう尋ねた瞬間
「人殺しだぁあああああ!」
叫び声がした方に、バッと顔を向ける。
あたしたちの目的の場所である十六夜先生の診察室から、叫んで出てきたのは……
……椎名先生!?
状況が理解できないが、足元がぐらついた。
心臓が早鐘を打つ。
頭は理解が追いついていないが、体はひしひしと嫌な状況を感じ取っていた。
椎名先生を押しのけて、背広の男が飛び出してきた。
「ぐっ!」
「ムマ先生!?」
背広の男はこちらまで駆けてきたかと思うと、ムマ先生を突き飛ばして去っていく。
思わず、先生の体を受け止める。
男が走り抜けていく途中、男が脇に抱えている、耳の短いウサギの置物と目が合う。
「十六夜先生が、死んで、あの男が…殺してて…!
椎名先生がこちらに走ってくるのを視界の端に捕らえた。
「ムマ先生!お怪我は?って枯山さん?」
あたしは去った男の方角に顔を向ける。
ヤロウ…………!!
ギリッと奥歯を砕く勢いで、噛みしめた。
足が動く。
廊下を走り、記憶の中の背広を人込みから探る。
階段の柵から下を覗く。
……居た!!
階段の段差をすべてすっ飛ばし、飛び降りながら追いかける。
「待て!!」
金切り声のような音域が出たが、今はどうでもいい。
ちらっと背広の男が後ろを見たが、すぐに前を向く。
くそっ人が邪魔で追いつかない!
男に追いつきたくても患者や職員があたしの行く手を阻んで、男の背を捕らえられない。
男の向こう側から、紺色の服の男たちがやってくる。
……警察!
見覚えのある恰好を見て、反射的に叫んだ。
「捕まえてぇっ!!」
キンっと嫌な高音が自分の喉から鳴った。
紺色の制服を着た警官たちは、あたしが指さした男を捕まえる。
二人がかりで背広の男が床に押さえこまれた。
男の近くまで来てから、足を止める。
ハァハァと肺が萎んだり膨らんだりをするたびに、肩が激しく上下する。
警官に手錠をかけられる男が、口を開く。
「オレじゃない!オレは殺してない!」
ふと、男の目がこちらに向いた。
「やってない!!オレはやってない!」
その図々しい物言いに、脳の毛細血管が線香花火のようにぷつぷつと破裂していくような感覚がした。
警官に押さえつけられていなければ、喚き散らす男の首を両手で締めてしまいそうだった。
バカなやつ。
"殺してない"なんて、"オレが殺した"って白状してるようなものじゃないか。
仮に殺してなかったとしても、あんな男の言う事なんて誰が信じるもんか。
「枯山」
名を呼ばれ、ハッとして振り返る。
「ムマ先生」
ふと、掌の痛みに手を開く。
手相に弓なりの小さな赤い跡が四つほどくっきりとついていた。
やり場のない怒りを拳に託していたようだ。
「あとはこちらに任せて、君はすぐに帰りなさい」
その言葉にえっと声が洩れた。
「でっでも、」
「いいから早く!このことは私と椎名先生で対応する」
そう言い残し、彼は十六夜先生の診察室へ戻っていった。