破鏡再び照らす
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3月6日 午前11時17分
総合病院 無間 魁人の診察室
「診察は"一か月後"と言ったはずだが、こんなに早く来るとは思わなかったよ」
顔色の悪い精神科医の言葉に、あたしは目をそらす。
「……あの後、椎名がどうなったか気になったんですよ」
「おや、もう先生とはつけないのかい?」
「……犯罪者に敬語を使ってどうするんですか」
無意味なことを聞かないでほしい。
「彼のことは詳しくはわからないよ。
私よりも警察の方が知っているだろう。
彼の代わりに医者をよそからよこしてもらったから、大きな問題はないよ。
ただ、事件があったせいで、診察に来る患者は減ったがね」
「えっ。じゃあ、経営がまずいんじゃ……」
せっかく相性の良い精神科の先生に会えたのに、病院がつぶれるのは困る。
「なーに。心配いらないさ。近くに病院がない限り、しばらくすれば患者の数も戻るさ」
「やっぱり……医者ってのは儲かるんですね」
普通の店だったら、経営がヤバイと思うはずなのに。
能天気な彼の返しに、安心したと同時に呆れもした。
いつものように10分間の瞑想のような昼寝をすれば、診察は終了する。
目を瞑りながら、裁判のときのことを思い出す。
赤い弁護士の目が忘れらなかった。
彼の目を思い出すと、胸の内にモヤモヤとしたわだかまりが湧いてくる。
彼と目が合ったとき、思った。
"あぁ、キレイな目"
濁ったどぶのような目ではない。
鋭く澄んだ黒い太陽のような瞳。
目をきつく細めていたのがわかり、すぐに瞼から力を抜く。
汚い本心を見透かされているような、不快な目。
違う生き物……別次元に生きているような人間とさえ思えた。
「ところで、君はボールペンが好きか?」
「はぁ?」
意味のわからない質問に変な声をあげてしまった。
「なんですかその唐突な質問は」
「いいから嫌いか好きか?」
「どっちでもないです」
「そうか嫌いではないか」
こいつ……都合のよいほうに解釈しやがった。
「実は、いらないボールペンを押し付けられてな。
よかったら一本貰ってくれないか」
「まぁ、あれば使うんで……いいですけど」
ボールペンを押し付けられるってどういう状況だよ。
彼からボディが赤いペンと青いペンを差し出される。
「それじゃ、そっちの青い方をください」
「青が好きなのか」
「……いいえ」
ちらっと赤いペンを見る。
「なんとなく、嫌いなんですよ。"赤色"って」
秋の紅葉を思わすその汚い色から目をそらし、青いペンを彼から受け取った。
総合病院 無間 魁人の診察室
「診察は"一か月後"と言ったはずだが、こんなに早く来るとは思わなかったよ」
顔色の悪い精神科医の言葉に、あたしは目をそらす。
「……あの後、椎名がどうなったか気になったんですよ」
「おや、もう先生とはつけないのかい?」
「……犯罪者に敬語を使ってどうするんですか」
無意味なことを聞かないでほしい。
「彼のことは詳しくはわからないよ。
私よりも警察の方が知っているだろう。
彼の代わりに医者をよそからよこしてもらったから、大きな問題はないよ。
ただ、事件があったせいで、診察に来る患者は減ったがね」
「えっ。じゃあ、経営がまずいんじゃ……」
せっかく相性の良い精神科の先生に会えたのに、病院がつぶれるのは困る。
「なーに。心配いらないさ。近くに病院がない限り、しばらくすれば患者の数も戻るさ」
「やっぱり……医者ってのは儲かるんですね」
普通の店だったら、経営がヤバイと思うはずなのに。
能天気な彼の返しに、安心したと同時に呆れもした。
いつものように10分間の瞑想のような昼寝をすれば、診察は終了する。
目を瞑りながら、裁判のときのことを思い出す。
赤い弁護士の目が忘れらなかった。
彼の目を思い出すと、胸の内にモヤモヤとしたわだかまりが湧いてくる。
彼と目が合ったとき、思った。
"あぁ、キレイな目"
濁ったどぶのような目ではない。
鋭く澄んだ黒い太陽のような瞳。
目をきつく細めていたのがわかり、すぐに瞼から力を抜く。
汚い本心を見透かされているような、不快な目。
違う生き物……別次元に生きているような人間とさえ思えた。
「ところで、君はボールペンが好きか?」
「はぁ?」
意味のわからない質問に変な声をあげてしまった。
「なんですかその唐突な質問は」
「いいから嫌いか好きか?」
「どっちでもないです」
「そうか嫌いではないか」
こいつ……都合のよいほうに解釈しやがった。
「実は、いらないボールペンを押し付けられてな。
よかったら一本貰ってくれないか」
「まぁ、あれば使うんで……いいですけど」
ボールペンを押し付けられるってどういう状況だよ。
彼からボディが赤いペンと青いペンを差し出される。
「それじゃ、そっちの青い方をください」
「青が好きなのか」
「……いいえ」
ちらっと赤いペンを見る。
「なんとなく、嫌いなんですよ。"赤色"って」
秋の紅葉を思わすその汚い色から目をそらし、青いペンを彼から受け取った。