破鏡再び照らす
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同日 午後5時17分
地方裁判所 第4法廷
傍聴席にたどり着くと、法廷の様子が予想と違っていた。
これはどういうこと……?
ムマ先生の姿を見つけて、思わずその隣まで行き、すぐに尋ねる。
「せっ先生。どうなってるんですか」
「面白いことになってきたよ」
「不謹慎ですよ!面白いなんて!」
「あの弁護士が色々と指摘して、本当の凶器が判明したところだ」
「判明した?」
凶器ってたしか……
あたしはコメカミを人刺し指の腹で押しながら、目を閉じる。
「えっと、凶器は置き物で、死因は撲殺で……」
状況を理解するのが難しいので、わかりやすく整理しようと頭を回転させる。
ムマ先生があたしの言葉に、首を横に振った。
「正確には殴ったあとの、"コメカミへの刺し傷"が主な死因だ。
最初は、その"刺殺"の決め手となる"凶器"が被告人の"万年筆"だった。
だが、本当はそうではなかった」
「え?ナイフでも発見されたんですか?」
「そうではない。
……イザヨイ先生の診察室に置かれていたランプがあっただろ?」
「あぁ、あの先端の尖ったランプが……」
そこであっとひらめく。
「まさか!?」
「君にしては鋭いな」
どういう意味だ。コラ。
「そう。犯人は置き物で殴り、被害者はランプの方に倒れこんだ。
あとは……わかるかい?」
「……倒れたときにランプが刺さったってことですか?」
「あぁ、そうだ。
その証拠にランプの先と傷口の形状が一致したそうだ」
ムマ先生が前髪から覗く隻眼をこちらに向ける。
「君は誰が殺したか知りたいと言っていたな」
「はいっ。言いました」
「今、椎名先生が第一発見者として証言していた。
だが、彼から怪しい発言がでてきたんだ」
「怪しい?」
「彼は先ほど凶器の置き物のことを、"ウサギの置き物"と言ってしまったんだよ」
「え?でも、それって私の証言を聞いてたからじゃないんですか?」
「前に証言した人の内容は、伝わらない。
裁判に影響するからな。
君だって私の証言は知らなかっただろう」
「あっいや、私は検事さんに教えてもらったんです。
椎名先生も検事さんに教えてもらったんじゃ?」
「それなら、検事が何か言うはずだが、そんな様子は見えないな」
「えっと、それが……どうかするんですか?」
はぁーとムマ先生は頭を抱えながらため息を吐いた。
「君もさっき疑われただろ。"犯人"だと」
「えっじゃあ……いや、でも、あの人は……」
「ちなみに、彼には犯行当時にアリバイもない。……決まりだろうな」
あたしの治療をしてくれた気の良い人だと思ったのに……そんなはずない。
そう思ったが、法廷に立っている彼の姿を見て、彼が犯人かもしれないという気がしてきた。
今、法廷で証言している彼は、とても凶悪な顔つきで、口調も乱暴なものに豹変していたからだ。
「あれ?だったら、なんで逮捕しないんですか?
検事も弁護士も……裁判長もただあの人を見ているだけですけど」
「"証拠"がないんだ」
「はっ!?そんな理由!?
だって犯人がわかってて、しかもその本人も犯人だって言ってるようなものなのに!?」
「それが法曹の悪いところだ。"証拠"がなければ捕まえることはできない」
「そんなバカな!?」
でも、あたしは証拠の大事さをすでに知っていた。
証拠とかアリバイがあったおかげで、先ほどの証言もあたしが犯人にされることはなかったのだから。
人の感情だけで逮捕するのは恐ろしいことである。
だが、裁くべき人を裁けないなんてもどかしいにも程がある。
地方裁判所 第4法廷
傍聴席にたどり着くと、法廷の様子が予想と違っていた。
これはどういうこと……?
ムマ先生の姿を見つけて、思わずその隣まで行き、すぐに尋ねる。
「せっ先生。どうなってるんですか」
「面白いことになってきたよ」
「不謹慎ですよ!面白いなんて!」
「あの弁護士が色々と指摘して、本当の凶器が判明したところだ」
「判明した?」
凶器ってたしか……
あたしはコメカミを人刺し指の腹で押しながら、目を閉じる。
「えっと、凶器は置き物で、死因は撲殺で……」
状況を理解するのが難しいので、わかりやすく整理しようと頭を回転させる。
ムマ先生があたしの言葉に、首を横に振った。
「正確には殴ったあとの、"コメカミへの刺し傷"が主な死因だ。
最初は、その"刺殺"の決め手となる"凶器"が被告人の"万年筆"だった。
だが、本当はそうではなかった」
「え?ナイフでも発見されたんですか?」
「そうではない。
……イザヨイ先生の診察室に置かれていたランプがあっただろ?」
「あぁ、あの先端の尖ったランプが……」
そこであっとひらめく。
「まさか!?」
「君にしては鋭いな」
どういう意味だ。コラ。
「そう。犯人は置き物で殴り、被害者はランプの方に倒れこんだ。
あとは……わかるかい?」
「……倒れたときにランプが刺さったってことですか?」
「あぁ、そうだ。
その証拠にランプの先と傷口の形状が一致したそうだ」
ムマ先生が前髪から覗く隻眼をこちらに向ける。
「君は誰が殺したか知りたいと言っていたな」
「はいっ。言いました」
「今、椎名先生が第一発見者として証言していた。
だが、彼から怪しい発言がでてきたんだ」
「怪しい?」
「彼は先ほど凶器の置き物のことを、"ウサギの置き物"と言ってしまったんだよ」
「え?でも、それって私の証言を聞いてたからじゃないんですか?」
「前に証言した人の内容は、伝わらない。
裁判に影響するからな。
君だって私の証言は知らなかっただろう」
「あっいや、私は検事さんに教えてもらったんです。
椎名先生も検事さんに教えてもらったんじゃ?」
「それなら、検事が何か言うはずだが、そんな様子は見えないな」
「えっと、それが……どうかするんですか?」
はぁーとムマ先生は頭を抱えながらため息を吐いた。
「君もさっき疑われただろ。"犯人"だと」
「えっじゃあ……いや、でも、あの人は……」
「ちなみに、彼には犯行当時にアリバイもない。……決まりだろうな」
あたしの治療をしてくれた気の良い人だと思ったのに……そんなはずない。
そう思ったが、法廷に立っている彼の姿を見て、彼が犯人かもしれないという気がしてきた。
今、法廷で証言している彼は、とても凶悪な顔つきで、口調も乱暴なものに豹変していたからだ。
「あれ?だったら、なんで逮捕しないんですか?
検事も弁護士も……裁判長もただあの人を見ているだけですけど」
「"証拠"がないんだ」
「はっ!?そんな理由!?
だって犯人がわかってて、しかもその本人も犯人だって言ってるようなものなのに!?」
「それが法曹の悪いところだ。"証拠"がなければ捕まえることはできない」
「そんなバカな!?」
でも、あたしは証拠の大事さをすでに知っていた。
証拠とかアリバイがあったおかげで、先ほどの証言もあたしが犯人にされることはなかったのだから。
人の感情だけで逮捕するのは恐ろしいことである。
だが、裁くべき人を裁けないなんてもどかしいにも程がある。