破鏡再び照らす
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同日 午後4時55分
地方裁判所 医務室
ぼんやりとした視界に、目を細める。
「気がついたかい?」
ガバッと身を起こす。
だが、視界がぼやけて、相手の顔が見えない。
「むま……先生」
聞き覚えのある声だったので、誰かはすぐにわかった。
きょろきょろとあたりを見回し、手探りで眼鏡を探す。
ベッドの横のサイドテーブルに手を這わすと、眼鏡の感触がして、それを掴んだ。
そして、眼鏡を顔にかける。
視界が鮮明になった。
「あの、私……どうして……」
「極度の緊張状態からの過呼吸だ
命に別状はない。今のところは大丈夫だ」
今のところ……か。
ムマ先生が立ち上がり、あたしの荷物を手渡す。
「あの検事から許可をもらった。君の証言は終わったから、病院に行っていいそうだ」
その言葉にあたしは眉間に力をいれた。
「嫌です……」
ムマ先生が真剣な表情でこちらを見る。
「言ったはずだ。ダメだと判断したら、やめさせると」
「私……ちゃんと知りたい」
ぐっと拳を握る。
「あの男が殺したのでないなら……。
イザヨイ先生を、誰が殺したのか……!」
顔を上げて、ムマ先生の顔を見上げる。
「お願いです。もう法廷には立たないんですよね。
裁判を見るだけだったら、大丈夫でしょ?」
「……ダメだと言っても、君のことだから隠れて行くつもりだろ」
うっと首を引っ込めた。
断られたときの方法を考えていたことまでお見通しだったようだ。
「……緊張するような状況でなければ、大丈夫だろう。
君の好きなようにしなさい」
ムマ先生はそう言って、扉を閉めて出て行った。
呆れられたかな。
それでも、こんな中途半端なままでいるのは気持ちが悪かった。
ふと、先ほど法廷に立ったときのことを思い出す。
ただ一度。
普通にしゃべることができた瞬間が、脳裏によみがえる。
「『どうせ、本気で思ってなかった』……『力で支配する人が嫌い』……か」
自分の口からすんなり出てきた言葉に、苦いものが喉からこみあげる。
「笑える……」
はっと短い笑い声を出し続ける。
医務室に乾いた声が響く。
地方裁判所 医務室
ぼんやりとした視界に、目を細める。
「気がついたかい?」
ガバッと身を起こす。
だが、視界がぼやけて、相手の顔が見えない。
「むま……先生」
聞き覚えのある声だったので、誰かはすぐにわかった。
きょろきょろとあたりを見回し、手探りで眼鏡を探す。
ベッドの横のサイドテーブルに手を這わすと、眼鏡の感触がして、それを掴んだ。
そして、眼鏡を顔にかける。
視界が鮮明になった。
「あの、私……どうして……」
「極度の緊張状態からの過呼吸だ
命に別状はない。今のところは大丈夫だ」
今のところ……か。
ムマ先生が立ち上がり、あたしの荷物を手渡す。
「あの検事から許可をもらった。君の証言は終わったから、病院に行っていいそうだ」
その言葉にあたしは眉間に力をいれた。
「嫌です……」
ムマ先生が真剣な表情でこちらを見る。
「言ったはずだ。ダメだと判断したら、やめさせると」
「私……ちゃんと知りたい」
ぐっと拳を握る。
「あの男が殺したのでないなら……。
イザヨイ先生を、誰が殺したのか……!」
顔を上げて、ムマ先生の顔を見上げる。
「お願いです。もう法廷には立たないんですよね。
裁判を見るだけだったら、大丈夫でしょ?」
「……ダメだと言っても、君のことだから隠れて行くつもりだろ」
うっと首を引っ込めた。
断られたときの方法を考えていたことまでお見通しだったようだ。
「……緊張するような状況でなければ、大丈夫だろう。
君の好きなようにしなさい」
ムマ先生はそう言って、扉を閉めて出て行った。
呆れられたかな。
それでも、こんな中途半端なままでいるのは気持ちが悪かった。
ふと、先ほど法廷に立ったときのことを思い出す。
ただ一度。
普通にしゃべることができた瞬間が、脳裏によみがえる。
「『どうせ、本気で思ってなかった』……『力で支配する人が嫌い』……か」
自分の口からすんなり出てきた言葉に、苦いものが喉からこみあげる。
「笑える……」
はっと短い笑い声を出し続ける。
医務室に乾いた声が響く。