賽は投げられた
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同日 某時刻
留置所 面会室
厚いガラス越しに向こう側を見つめながら、成歩堂は今回弁護する被告人のことを考えていた。
殺人の弁護をしてくれと頼まれたが、泥棒の友だちでは正直無実かどうか怪しいところであった。
(……悪いけど、会うだけ会って断るか)
「入れ」
看守の声によって、成歩堂は思考の海から現実へと意識を浮上させた。
看守と一緒に扉から入ってきたのは、白衣の女性だった。
青白い肌に紫の唇、瓶底の眼鏡をかけている。
色素の薄い髪は無造作にうなじで束ねられていた。
ハッキリ言って、不気味な雰囲気の女性だった。
「弁護士……」
「黒谷 杏里さんですね」
「あぁ。そうだ」
「あなたの友人から依頼を受けた弁護士の成歩堂 龍一です」
「友人?」
杏里は訝しげな目で成歩堂をじろじろと見る。
「その友人の名前を教えてくれませんかね?」
「……すみませんが、それは言えないんです」
成歩堂は少し迷ったが、鬼風の要望通りに名を伏せた。
杏里は黙って成歩堂を見つめる。
「そう、か……」
「あの、あなたは一体何の罪でここに入れられたんですか?」
彼女はククッと特徴的な笑い声をあげる。
「アタシのお友達から聞いてるんじゃないのかよ?」
「……彼は、あなたの弁護を頼んで出て行ってしまったので。
その、詳しく聞かせてくれませんか」
「……アタシが知ってる限りでよければな」
≪事件について≫
「えっと、黒谷さん。とりあえず、まずはなにがあったか聞かせてもらえますか?」
「昨日の夕方。
低柄 駅のホームでアタシは藪下 壮太 っていう爺さんを突き落とした」
「え?」
成歩堂は声をあげてしまう。
「突き落とした相手はそのまま電車に引かれた」
あっさりと殺人を認めた依頼人に言葉がでてこない。
「……犯行を認めてるんだ。弁護は必要ないぞ。センセイ」
「…………」
≪被害者について≫
「えっと、被害者とどういった関係だったんですか?」
「職場の元上司だ」
「“元”?」
「……数か月前に辞めさせられて、その腹いせに突き飛ばしてやったのさ」
成歩堂は顔をしかめた。
「聞きたいことは終わったかい?」
「今のところは」
もっと調査すれば聞きたいことも増えるだろう。
とりあえずは事件の簡単な全体像はつかめた。
「最後に確認をしてもいいですか」
「いいぜ」
成歩堂はスーツのポケットに手を入れ、中のモノをぎゅっと握る。
「……本当にあなたがやったんですか?」
「あぁ。やった」
彼の前には瓶底眼鏡の女性が変わらず映っている。
「そう、ですか」
彼女の返答に成歩堂の返す言葉は決まっていた
―――――はずだった。
「……弁護を引き受けた以上、僕なりに調査はさせてもらいます。
それから、弁護をするかどうか考えさせてください」
成歩堂から返ってきた言葉に、杏里は両眉をあげる。
「……言ったはずだぞ。アタシが“落とした”と。あんた目を開けたまま寝てたのか?」
もちろん、成歩堂は居眠りなどしていないし、相手の話を聴いていた。
だが、なんとなく腑に落ちなかったのだ。
サイコロックも反応しないし、動機もある。
確実にクロなはずなのに、被告人の様子に彼は違和感を覚えた。
泥棒である鬼風の知り合い。
そう簡単な相手じゃない。
経験からくる直感でそう判断した成歩堂は、あえてこの事件に関わることにした。
「あなたが罪を認めているのなら、それ相応の弁護をします」
このモヤモヤを晴らすためにも、詳しい情報が欲しかった。
留置所 面会室
厚いガラス越しに向こう側を見つめながら、成歩堂は今回弁護する被告人のことを考えていた。
殺人の弁護をしてくれと頼まれたが、泥棒の友だちでは正直無実かどうか怪しいところであった。
(……悪いけど、会うだけ会って断るか)
「入れ」
看守の声によって、成歩堂は思考の海から現実へと意識を浮上させた。
看守と一緒に扉から入ってきたのは、白衣の女性だった。
青白い肌に紫の唇、瓶底の眼鏡をかけている。
色素の薄い髪は無造作にうなじで束ねられていた。
ハッキリ言って、不気味な雰囲気の女性だった。
「弁護士……」
「黒谷 杏里さんですね」
「あぁ。そうだ」
「あなたの友人から依頼を受けた弁護士の成歩堂 龍一です」
「友人?」
杏里は訝しげな目で成歩堂をじろじろと見る。
「その友人の名前を教えてくれませんかね?」
「……すみませんが、それは言えないんです」
成歩堂は少し迷ったが、鬼風の要望通りに名を伏せた。
杏里は黙って成歩堂を見つめる。
「そう、か……」
「あの、あなたは一体何の罪でここに入れられたんですか?」
彼女はククッと特徴的な笑い声をあげる。
「アタシのお友達から聞いてるんじゃないのかよ?」
「……彼は、あなたの弁護を頼んで出て行ってしまったので。
その、詳しく聞かせてくれませんか」
「……アタシが知ってる限りでよければな」
≪事件について≫
「えっと、黒谷さん。とりあえず、まずはなにがあったか聞かせてもらえますか?」
「昨日の夕方。
「え?」
成歩堂は声をあげてしまう。
「突き落とした相手はそのまま電車に引かれた」
あっさりと殺人を認めた依頼人に言葉がでてこない。
「……犯行を認めてるんだ。弁護は必要ないぞ。センセイ」
「…………」
≪被害者について≫
「えっと、被害者とどういった関係だったんですか?」
「職場の元上司だ」
「“元”?」
「……数か月前に辞めさせられて、その腹いせに突き飛ばしてやったのさ」
成歩堂は顔をしかめた。
「聞きたいことは終わったかい?」
「今のところは」
もっと調査すれば聞きたいことも増えるだろう。
とりあえずは事件の簡単な全体像はつかめた。
「最後に確認をしてもいいですか」
「いいぜ」
成歩堂はスーツのポケットに手を入れ、中のモノをぎゅっと握る。
「……本当にあなたがやったんですか?」
「あぁ。やった」
彼の前には瓶底眼鏡の女性が変わらず映っている。
「そう、ですか」
彼女の返答に成歩堂の返す言葉は決まっていた
―――――はずだった。
「……弁護を引き受けた以上、僕なりに調査はさせてもらいます。
それから、弁護をするかどうか考えさせてください」
成歩堂から返ってきた言葉に、杏里は両眉をあげる。
「……言ったはずだぞ。アタシが“落とした”と。あんた目を開けたまま寝てたのか?」
もちろん、成歩堂は居眠りなどしていないし、相手の話を聴いていた。
だが、なんとなく腑に落ちなかったのだ。
サイコロックも反応しないし、動機もある。
確実にクロなはずなのに、被告人の様子に彼は違和感を覚えた。
泥棒である鬼風の知り合い。
そう簡単な相手じゃない。
経験からくる直感でそう判断した成歩堂は、あえてこの事件に関わることにした。
「あなたが罪を認めているのなら、それ相応の弁護をします」
このモヤモヤを晴らすためにも、詳しい情報が欲しかった。