賽は投げられた
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3月21日 午前11時23分
成歩堂なんでも事務所 所長室
ふぅ。
成歩堂は所長用の黒いデスクチェアに背中を預ける。
手元の書類をデスクの上に放り投げ、誰もいない事務所の中を見回す。
なんだか、あのときを思い出しちまうな……
去年の12月に起きた事件。
王泥喜が事務所を抜け、心音も逮捕され、娘のみぬきと自分だけが残されたときの状況を、思い起こさせる。
しかし、あのときの状況と今の状況は心境がだいぶ違う。
王泥喜はみぬきの付き添いで、心音はアメリカの方に里帰り、しばらく辛抱すれば帰ってくる。
寂しくはあるが、帰ってくるとわかってるので、あのときほど辛くはない。
「一人で仕事するなんて、何年ぶりだろうな」
コンコン。
ドアをノックする音が聞こえ、そちらに振り向いた。
「どうぞ。開いてますよ」
扉の向こうにいる相手に声をかけると、扉が開いた。
見知った珍しい客に、成歩堂は目を見開く。
「なんだ。君か」
切れ上がった目に、黒縁眼鏡をかけた美青年が立っていた。
「こんにちは。弁護士さん」
青いシャツに黒のスーツを着た鬼の泥棒は微笑む。
「悪いけど、今日は彼はいないよ」
「……頼みがあって来たんだ」
「頼み?」
ゆっくりと鬼風が口を開く。
「弁護をして欲しい」
「……悪いけど、泥棒の弁護ならお断りだよ」
「あれ?もしかして私の弁護と勘違いしてる?」
「君じゃなければ、一体誰を弁護して欲しいんだ?」
「私の“お友だち”」
相手は狐のように目を細め、にっこりと笑った。
「君に友だちなんて居たのか」
成歩堂の言葉に、鬼の泥棒は黙ったまま肩をすくめる。
「それで、何の弁護だい?」
「殺人さ。
詳しい内容は留置所であいつが話してくれる」
鬼の泥棒は懐から弁護の紹介状を出し、成歩堂の机に置いた。
「名前は……黒谷 杏里
……あと、一つ頼みがある」
「頼み?」
「私があんたに依頼した事はこの子に内密にしてほしい
「なぜ?」
成歩堂がそう問いかけた瞬間。
大きな音と共に、相手の背景の色が反転する。
青白い不気味な空間が一瞬現れたかと思うと、すぐに真っ黒になった。
“ジャラッ”
金属のこすれるような音がしたあと、相手の周りに鉄色の鎖が張り巡らされる。
赤い錠前が鎖にブラ下がり、ガシャンッと錠前の閉まる音がした
成歩堂は鼻の上に皺をつくる。
(サイコロック……!)
「色々とあるんだ。それじゃよろしくな」
「あっ。おい!」
鬼の泥棒は窓を開け放つとそこから飛び降り、音もなく地面に着地して、そのまま走り去っていく。
「……なんなんだ」
成歩堂は窓に背を向け、机の上の紹介状を手に取った。
(言えない事情でもあるのだろうか?)
相手の秘密が錠前という形になって現れる『心理錠 』
それが、とある少女からもらった勾玉による彼の特殊な能力であった。
成歩堂はなぜサイコロックが出たか考えたが、今はまだ心理錠を砕く証拠品が圧倒的に足りなかった。
(あの胡散臭い泥棒のことだ。普通の事件ではないのかもしれない)
「……とりあえず、本人に会ってみるか」
弁護士の使命感がそうさせるのか、きな臭い事件だとわかっても成歩堂は気になった。
成歩堂なんでも事務所 所長室
ふぅ。
成歩堂は所長用の黒いデスクチェアに背中を預ける。
手元の書類をデスクの上に放り投げ、誰もいない事務所の中を見回す。
なんだか、あのときを思い出しちまうな……
去年の12月に起きた事件。
王泥喜が事務所を抜け、心音も逮捕され、娘のみぬきと自分だけが残されたときの状況を、思い起こさせる。
しかし、あのときの状況と今の状況は心境がだいぶ違う。
王泥喜はみぬきの付き添いで、心音はアメリカの方に里帰り、しばらく辛抱すれば帰ってくる。
寂しくはあるが、帰ってくるとわかってるので、あのときほど辛くはない。
「一人で仕事するなんて、何年ぶりだろうな」
コンコン。
ドアをノックする音が聞こえ、そちらに振り向いた。
「どうぞ。開いてますよ」
扉の向こうにいる相手に声をかけると、扉が開いた。
見知った珍しい客に、成歩堂は目を見開く。
「なんだ。君か」
切れ上がった目に、黒縁眼鏡をかけた美青年が立っていた。
「こんにちは。弁護士さん」
青いシャツに黒のスーツを着た鬼の泥棒は微笑む。
「悪いけど、今日は彼はいないよ」
「……頼みがあって来たんだ」
「頼み?」
ゆっくりと鬼風が口を開く。
「弁護をして欲しい」
「……悪いけど、泥棒の弁護ならお断りだよ」
「あれ?もしかして私の弁護と勘違いしてる?」
「君じゃなければ、一体誰を弁護して欲しいんだ?」
「私の“お友だち”」
相手は狐のように目を細め、にっこりと笑った。
「君に友だちなんて居たのか」
成歩堂の言葉に、鬼の泥棒は黙ったまま肩をすくめる。
「それで、何の弁護だい?」
「殺人さ。
詳しい内容は留置所であいつが話してくれる」
鬼の泥棒は懐から弁護の紹介状を出し、成歩堂の机に置いた。
「名前は……
……あと、一つ頼みがある」
「頼み?」
「私があんたに依頼した事はこの子に内密にしてほしい
「なぜ?」
成歩堂がそう問いかけた瞬間。
大きな音と共に、相手の背景の色が反転する。
青白い不気味な空間が一瞬現れたかと思うと、すぐに真っ黒になった。
“ジャラッ”
金属のこすれるような音がしたあと、相手の周りに鉄色の鎖が張り巡らされる。
赤い錠前が鎖にブラ下がり、ガシャンッと錠前の閉まる音がした
成歩堂は鼻の上に皺をつくる。
(サイコロック……!)
「色々とあるんだ。それじゃよろしくな」
「あっ。おい!」
鬼の泥棒は窓を開け放つとそこから飛び降り、音もなく地面に着地して、そのまま走り去っていく。
「……なんなんだ」
成歩堂は窓に背を向け、机の上の紹介状を手に取った。
(言えない事情でもあるのだろうか?)
相手の秘密が錠前という形になって現れる『
それが、とある少女からもらった勾玉による彼の特殊な能力であった。
成歩堂はなぜサイコロックが出たか考えたが、今はまだ心理錠を砕く証拠品が圧倒的に足りなかった。
(あの胡散臭い泥棒のことだ。普通の事件ではないのかもしれない)
「……とりあえず、本人に会ってみるか」
弁護士の使命感がそうさせるのか、きな臭い事件だとわかっても成歩堂は気になった。