焼け木杭に火がつく
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
同日 某時刻
人形屋敷 北部屋
オドロキたちはドアを開け、北の部屋へと足を踏み入れていた。
「ここも燃えて……ん?」
青い空が見える窓の下に、なにやら人がうずくまっている。
オドロキは窓の近くへと駆け寄り、声をかける。
「だっ大丈夫ですか?」
オドロキの声にその人物が顔をあげる。
左肩から結んだ髪が垂れていて、炭色の瞳がオドロキの顔を映しだす。
心音と年の変わらない少女が、目尻を下げ瞳を潤ませた。
オドロキはその反応に焦る。
「えっそのっ「いやぁああああああ!」
へ?
声を出す前に、下から突き上げられた拳がオドロキの顎を直撃した。
その衝撃にオドロキは白目になりながら、両足を地面から数センチ浮かせた。
「せっセンパイ!!」
「うっ……うわぁ!」
心音は猛ダッシュして、窓の外へと傾いたオドロキの腕をキャッチした。
「おっ落ちっ!」
顔面を真っ青にしながら、オドロキは死に物狂いで後輩の腕と窓枠を掴んだ。
火事場の馬鹿力で彼は自身の体を外から引き上げた。
ハァハァと速いテンポで呼吸を繰り返す。
オドロキは殴った少女に険しい目つきを向ける。
「なっなにするんだ!?」
彼は怒声をあげて、サイドテールの少女に詰め寄る。
「いっいきなりなんで殴ったんですか!?」
心音は目を吊り上げながら、少女を睨む。
淡い山吹色の作務衣に紅色の前掛けをつけている少女は目をウルウルとさせる。
「ごめんなさい!……でも!男の人がいきなり近づいてきたから!怖くて!」
えー……
げんなりした顔をしながら、オドロキたちはプルプルと小動物のように震える少女を見つめる。
今日は厄日なのだろうか?
オドロキは彼女を見ながら、遠い目をした。
顎をさすりながら、碌な目にあってないことを思い出し、泣きたくなった。
≪乱暴な少女……?≫
「えっと、あなたは?」
「私は御花散子(オハナ チルコ)と申します。ここでバイトとして働いています。
失礼ながら、あなたたちはどちら様でしょうか?」
「わたしたちは奈々子さんの弁護士です。」
「弁護士!?ずいぶんとお若いんですね。私と変わらない年だと思っておりました」
「あっこの子、希月さんは18で弁護の資格を取ったから君と年は変わらないよ」
そうオドロキが説明したが、オハナはすっと心音の後ろに隠れ、オドロキから顔をそらす。
その行動に、オドロキは固まる。
「……センパイ。わたしが話を聞きますから……だっ大丈夫です!」
露骨な態度に凹む先輩を心音はフォローしようと努力した。
「……ありがとう」
オドロキは乾いた笑いしか出てこなかった。
≪男性嫌い≫
「その、チルコちゃんは男の人が苦手なの?
その言葉にぴくっと体が震えた。
オハナが口を開く。
「男なんて……!男なんて野蛮で下品で不潔で変態で最悪な生き物なんです!」
「……えっとここで働いてるって言ってたけど……男の人もいるんだよね?」
心音が気になったことを尋ねる。
「ええ。でも、男性に関わるような仕事は基本的にないので大丈夫です」
「もしかしてだけど……唐井さんも殴ったりしたことある?」
「あぁ、唐井さんはおじいさんだからなんとか大丈夫だけど」
ちらっとオドロキの方に視線を向け、オハナは自分の手に視線を落とす。
「……私と年の変わらない男の子とかは怖くて」
その言葉がオドロキの胸をえぐった。
「オレはもう23だ!」
「えっ!?」
弾かれたように御花は顔を上げた。
オドロキのぶすっとした顔に、目を泳がせる。
「あっと、わっ若い男の人もダメですだよ!?」
不愉快だ……。
オドロキは自分の不満を心に留めつつ、少女にじとっとした目を向ける。
「あっ!あの!なっなにか事件のこと教えてくれないかな!?」
心音が空気を変えようと、御花に事件のことを尋ねた。
「あっはい。知ってることであれば、お話いたします」
≪事件について≫
「事件についてはなにか聞いてる?」
「詳しいことは私も教えてはもらっていませんが、お嬢様がタダノ様を殺したということしか聞いておりません」
「放火については?」
「いいえ。知りません。」
警察の調査のせいか、八百谷の殺人の方が多く広まっているようだった。
それなら、なんで依頼の男は放火の弁護を頼んできたのだろうか?
オドロキはそんな疑問を頭に浮かべながら、オハナの話に耳を傾けていた。
「まだ勤めて短いので、お嬢様が本当に人を殺したかどうかは、お恥ずかしながら私は判断できないでおります。出来れば、人を殺すようなお人でなければ良いと思っている程度ですわ」
それに……殺したくなる理由もわからないでもないですの」
オハナはふっと顔を伏せて、自分の手首をぎゅっと握りしめる。
「その、お嬢様には伊次郎さまという婚約者がいるのですが、元カノであるタダノ様が伊次郎さまに復縁を迫っていたらしいんですの。
伊次郎さまも未練があるようでしたから、お嬢様が嫉妬から犯行に及んだのではないかと使用人たちの間でも囁かれています」
オハナは手首を握る手に力をさらに加える。
「……もし、独占欲が暴走した結果が事実なら、愚かな主人だと言わざるを得ません」
オハナの雰囲気と台詞のせいで、心音たちは言葉を返せなかった。
ふと、オハナは左の腕時計に視線を向ける。
「あっすみません!私、仕事に戻りますね!」
「うん。ありがとう。色々とお話聞かせてくれて」
「それでは、私はこれで」
山吹色のバイトはオドロキと心音の間を通り抜け、部屋から退出した。
「さて、それじゃ北部屋を色々と調べてみましょうか」
「さっきの部屋ほど重要な証拠は出てこないかもしれないけど……なにかあるかもしれないしな」
オドロキたちは先ほどの部屋と同様に、隈なく証拠品を探すが、事件現場ほど有力な証拠は見つからなかった。
「やっぱり事件に関係ない部屋は、証拠品になりそうなものありませんね」
「そうだな……」
しゃがんでいた心音は、立ち上がり腰を伸ばす。
ふと窓の光景に目を引かれ、窓へと歩み寄る。
「この部屋の窓は下が崖になってるんですね。ひええ。落ちたらひとたまりもなさそう」
「希月さん。あんまり覗くと危ないよ」
「あっ!見てください!センパイ!」
「なっなに?」
なるだけ窓に近づかないようにしていたオドロキだが、後輩の声に恐る恐る窓へと近づく。
そっと顔を少しだけ覗かせ、意を決して下を見る。
「あっ」
オドロキの目に緑と赤が飛び込んでくる。
窓から数十メートルほど下に突き出ている岩があり、そこに椿の花が咲いている木が生えていた。
「そうか。ナナツバキはここにあったんだな」
「でも、大野さんのライトを当ててみたんですけど、窓枠にはあんまり花粉はついてませんよ?」
心音がライトで窓枠を照らすが、青い光しかなかった。
「うーん。やっぱり花の下にでもいないと花粉なんてつかないんじゃないか」
「だったら、大野さんの花粉症はどうしてひどくなったんですか?」
「ただの風邪なんじゃない。ナナツバキはあんなところにあるんだから、花粉なんて飛ぶはずないよ」
「それもそうですね。やっぱり風邪なのかもしれませんね」
椿を見つけ、二人は北部屋の調査を終了した。
「とりあえず、留置場に戻ろうか。」
「奈々子さん元気になってますかね?」
「だっ大丈夫だよ!(……たぶん)」
人形屋敷 北部屋
オドロキたちはドアを開け、北の部屋へと足を踏み入れていた。
「ここも燃えて……ん?」
青い空が見える窓の下に、なにやら人がうずくまっている。
オドロキは窓の近くへと駆け寄り、声をかける。
「だっ大丈夫ですか?」
オドロキの声にその人物が顔をあげる。
左肩から結んだ髪が垂れていて、炭色の瞳がオドロキの顔を映しだす。
心音と年の変わらない少女が、目尻を下げ瞳を潤ませた。
オドロキはその反応に焦る。
「えっそのっ「いやぁああああああ!」
へ?
声を出す前に、下から突き上げられた拳がオドロキの顎を直撃した。
その衝撃にオドロキは白目になりながら、両足を地面から数センチ浮かせた。
「せっセンパイ!!」
「うっ……うわぁ!」
心音は猛ダッシュして、窓の外へと傾いたオドロキの腕をキャッチした。
「おっ落ちっ!」
顔面を真っ青にしながら、オドロキは死に物狂いで後輩の腕と窓枠を掴んだ。
火事場の馬鹿力で彼は自身の体を外から引き上げた。
ハァハァと速いテンポで呼吸を繰り返す。
オドロキは殴った少女に険しい目つきを向ける。
「なっなにするんだ!?」
彼は怒声をあげて、サイドテールの少女に詰め寄る。
「いっいきなりなんで殴ったんですか!?」
心音は目を吊り上げながら、少女を睨む。
淡い山吹色の作務衣に紅色の前掛けをつけている少女は目をウルウルとさせる。
「ごめんなさい!……でも!男の人がいきなり近づいてきたから!怖くて!」
えー……
げんなりした顔をしながら、オドロキたちはプルプルと小動物のように震える少女を見つめる。
今日は厄日なのだろうか?
オドロキは彼女を見ながら、遠い目をした。
顎をさすりながら、碌な目にあってないことを思い出し、泣きたくなった。
≪乱暴な少女……?≫
「えっと、あなたは?」
「私は御花散子(オハナ チルコ)と申します。ここでバイトとして働いています。
失礼ながら、あなたたちはどちら様でしょうか?」
「わたしたちは奈々子さんの弁護士です。」
「弁護士!?ずいぶんとお若いんですね。私と変わらない年だと思っておりました」
「あっこの子、希月さんは18で弁護の資格を取ったから君と年は変わらないよ」
そうオドロキが説明したが、オハナはすっと心音の後ろに隠れ、オドロキから顔をそらす。
その行動に、オドロキは固まる。
「……センパイ。わたしが話を聞きますから……だっ大丈夫です!」
露骨な態度に凹む先輩を心音はフォローしようと努力した。
「……ありがとう」
オドロキは乾いた笑いしか出てこなかった。
≪男性嫌い≫
「その、チルコちゃんは男の人が苦手なの?
その言葉にぴくっと体が震えた。
オハナが口を開く。
「男なんて……!男なんて野蛮で下品で不潔で変態で最悪な生き物なんです!」
「……えっとここで働いてるって言ってたけど……男の人もいるんだよね?」
心音が気になったことを尋ねる。
「ええ。でも、男性に関わるような仕事は基本的にないので大丈夫です」
「もしかしてだけど……唐井さんも殴ったりしたことある?」
「あぁ、唐井さんはおじいさんだからなんとか大丈夫だけど」
ちらっとオドロキの方に視線を向け、オハナは自分の手に視線を落とす。
「……私と年の変わらない男の子とかは怖くて」
その言葉がオドロキの胸をえぐった。
「オレはもう23だ!」
「えっ!?」
弾かれたように御花は顔を上げた。
オドロキのぶすっとした顔に、目を泳がせる。
「あっと、わっ若い男の人もダメですだよ!?」
不愉快だ……。
オドロキは自分の不満を心に留めつつ、少女にじとっとした目を向ける。
「あっ!あの!なっなにか事件のこと教えてくれないかな!?」
心音が空気を変えようと、御花に事件のことを尋ねた。
「あっはい。知ってることであれば、お話いたします」
≪事件について≫
「事件についてはなにか聞いてる?」
「詳しいことは私も教えてはもらっていませんが、お嬢様がタダノ様を殺したということしか聞いておりません」
「放火については?」
「いいえ。知りません。」
警察の調査のせいか、八百谷の殺人の方が多く広まっているようだった。
それなら、なんで依頼の男は放火の弁護を頼んできたのだろうか?
オドロキはそんな疑問を頭に浮かべながら、オハナの話に耳を傾けていた。
「まだ勤めて短いので、お嬢様が本当に人を殺したかどうかは、お恥ずかしながら私は判断できないでおります。出来れば、人を殺すようなお人でなければ良いと思っている程度ですわ」
それに……殺したくなる理由もわからないでもないですの」
オハナはふっと顔を伏せて、自分の手首をぎゅっと握りしめる。
「その、お嬢様には伊次郎さまという婚約者がいるのですが、元カノであるタダノ様が伊次郎さまに復縁を迫っていたらしいんですの。
伊次郎さまも未練があるようでしたから、お嬢様が嫉妬から犯行に及んだのではないかと使用人たちの間でも囁かれています」
オハナは手首を握る手に力をさらに加える。
「……もし、独占欲が暴走した結果が事実なら、愚かな主人だと言わざるを得ません」
オハナの雰囲気と台詞のせいで、心音たちは言葉を返せなかった。
ふと、オハナは左の腕時計に視線を向ける。
「あっすみません!私、仕事に戻りますね!」
「うん。ありがとう。色々とお話聞かせてくれて」
「それでは、私はこれで」
山吹色のバイトはオドロキと心音の間を通り抜け、部屋から退出した。
「さて、それじゃ北部屋を色々と調べてみましょうか」
「さっきの部屋ほど重要な証拠は出てこないかもしれないけど……なにかあるかもしれないしな」
オドロキたちは先ほどの部屋と同様に、隈なく証拠品を探すが、事件現場ほど有力な証拠は見つからなかった。
「やっぱり事件に関係ない部屋は、証拠品になりそうなものありませんね」
「そうだな……」
しゃがんでいた心音は、立ち上がり腰を伸ばす。
ふと窓の光景に目を引かれ、窓へと歩み寄る。
「この部屋の窓は下が崖になってるんですね。ひええ。落ちたらひとたまりもなさそう」
「希月さん。あんまり覗くと危ないよ」
「あっ!見てください!センパイ!」
「なっなに?」
なるだけ窓に近づかないようにしていたオドロキだが、後輩の声に恐る恐る窓へと近づく。
そっと顔を少しだけ覗かせ、意を決して下を見る。
「あっ」
オドロキの目に緑と赤が飛び込んでくる。
窓から数十メートルほど下に突き出ている岩があり、そこに椿の花が咲いている木が生えていた。
「そうか。ナナツバキはここにあったんだな」
「でも、大野さんのライトを当ててみたんですけど、窓枠にはあんまり花粉はついてませんよ?」
心音がライトで窓枠を照らすが、青い光しかなかった。
「うーん。やっぱり花の下にでもいないと花粉なんてつかないんじゃないか」
「だったら、大野さんの花粉症はどうしてひどくなったんですか?」
「ただの風邪なんじゃない。ナナツバキはあんなところにあるんだから、花粉なんて飛ぶはずないよ」
「それもそうですね。やっぱり風邪なのかもしれませんね」
椿を見つけ、二人は北部屋の調査を終了した。
「とりあえず、留置場に戻ろうか。」
「奈々子さん元気になってますかね?」
「だっ大丈夫だよ!(……たぶん)」