焼け木杭に火がつく
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同日 某時刻
人形屋敷 入口
「待てや!ここは関係者以外立ち入り禁止や!
学生はさっさと帰りぃ!!」
剛毛の角刈りに無精ひげを生やした男性が彼らの前に立ちふさがる。
「おっオレたちは学生じゃありません!」
「はぁ?どっからどう見てもガキやないか。
ほらっ、学生がこんなとこで油売ってないでさっさと家帰って勉強でもしてろや」
カチンッとくる言い方にオドロキが顔をしかめる。
「学生じゃありません!わたしたちは弁護士です!」
心音が男性をきっと睨み、胸元の弁護士バッジをつきつける。
「ほらっ!この胸元のバッジ!」
「…………。」
突如黙った男性にオドロキは首をかしげた。
だが、彼の顔を見て、オドロキは気づいた。
「もうちょっと近寄らんとわからんなぁー」
こっこいつっ!!
男は鼻の下を通常より伸ばし、いやらしく目尻がさがっていた。
男性の視線は心音のバッジよりかなりずれ、首元のシャツから覗く谷間へと向いていた。
「もっとよく見てください!」
心音がバッジをつけた胸元を男性につきつけようとする前に、さっとオドロキが後輩の前に立ちふさがる。
「なっあぶないやんけ!せっかく良いおっ……バッジ見てたのに!」
「ほらっ!オレも同じの持ってます!」
「はっ?知らん。野郎の胸元なんて誰が見るか。」
なっなんだこいつは……!
「おっオレたちは学生じゃなくて八百谷奈々子さんの弁護人です!」
「あぁ、あのお嬢ちゃんの弁護士な。わかった。わかった。
でも警察関係者じゃないんやからさっさと帰りぃ」
しっしっと手で払われ、邪険にされる。
「あなたは刑事なんですよね?」
「そうやでぇ~。」
心音がオドロキの背中から出て、刑事に尋ねる。
オドロキのときと打って変わり、後輩に対しては優しい声にデレデレの顔になった。
「この事件の担当なんですか?」
オドロキが尋ねるが、後輩に顔を向けたまま返事がない。
露骨に変わる態度に、オドロキは胡乱な目を向ける。
こいつ……。
「それじゃ、色々とお話聞かせてもらえますか?」
「うーん……本当はいけないんやけど。弁護士なら特別に教えたるわ。
あっ、けどわいが言ったんは内緒にしてな。」
さっきと言ってること違ぇ。
この刑事から情報が引き出せそうなので、とりあえずオドロキは後輩に任せた。
「えっと、あなたの名前は?」
「わい?わいの名前は紗針 若(サハリ ワカシ)!"サッパリ爽やか若くん"とはわいのことや!」
親指で自分の顔を示しながら、ドヤ顔する刑事にげんなりした顔で弁護士たちは見つめる。
「えっと、わたしは希月心音です。よろしくお願いします」
「心音ちゃんなぁ。うんうん」
「オレは王泥喜法介です!」
「お前には聞いてない」
この野郎……。
拳をプルプルと震わせながら、オドロキは感情を抑えた。
≪事件について≫
「あの、昨日ここで火事が起こったんですよね」
「あぁ、そうやで。」
「殺人も起きたって聞いたんですけど」
「なんや。お嬢ちゃん!ニュース見てへんの?
しょうがない。わいが特別に教えたるわ。
昨日の夕方5時30分頃に火災が発生したっていう通報があってな
消防が駆け付けて、次にわいら警察がきたんや。
火は幸い他の屋敷に燃え広がらずにこの人形屋敷一つ燃えただけで済んだ。
けど、その屋敷から死体が発見されたんや。」
「死体!?」
「半分焦げてたけど、焼けていない部分からなんとか身元を割り出したんや。」
≪被害者について≫
「被害者は只野 純子(25)元美人プロレスラーで今は無職らしい。
刃物で胸を一突きされて、ショック死だったそうや」
「被告人とはどういう関係だったんですか?」
「それも聞いてないんか!?
被害者はあれや。被告人のいわゆる……"恋敵"ってやつや」
「ええ!?」
心音が頬に両手を当て、飛び上がる。
「被害者は男顔負けのええ体しはってたみたいやけど
やっぱり心は恋する乙女やったんやなぁ。
そんなムキムキの女が恋敵だとしても、よっぽど憎かったんやろうなぁ。
ドスで刺しただけでなく、屋敷ごと燃やして死体を焼いてしまおう思うくらいなんやから」
≪八百谷について≫
「なんで八百谷さんを逮捕されたんですか?」
「火が上がってる屋敷の前で、その子がボケーッと逃げもせず火災現場眺めてたんや。
普通、火事を見てぼーっとしてるなんて怪しいやろ」
確かに。
刑事のまともな言葉にオドロキは不本意だが、納得した。
「それで、わいら警察はそのぼんやりしてたお嬢ちゃんをそのまま逮捕。
さらに調査した結果、凶器らしきドスには被害者の指紋が付着。」
「うっ」
「その上、目撃証言もほぼ完ぺき。」
「ううっ」
「はっきり言って、ちょろい事件やな」
「ううう」
紗針の言葉に弁護士二人の顔がどんどん暗くなっていく。
心音の顔を見て、紗針は困ったように眉を下げる。
「……この事件の弁護するんはそうとうきついと思うで」
オドロキと心音は同時に明後日の方向へ目をそらした。
「つーか、なんで自分ら被告人のこと知らへんのや」
呆れた視線で刑事は弁護士たちを見た。
「はぁー……八百谷奈々子はこの家の一人娘や。
両親は小さい頃に亡くなってて、一生遊んで暮らせる財産を持ってたお嬢様や。
婚約者もできて結婚も控えてたのに、この事件。」
紗針が顔をよこにそらすと、おどけた表情が消えていた。
「……さすがに同情したくなるわ」
その真率な横顔に微かに悲しみの影が差す。
しんみりとした空気に、オドロキたちはなんとなく言葉を発することを控えた。
紗針が顔を心音たちに戻すと、締まりのない顔に戻っていた。
「まぁ、わいが話せるのわ。これくらいやな」
「現場を調べることってできますか?」
「ええでー。あっけど、触っちゃダメやで?わいがおっかない検事にどやされてまうからな。」
「おっかない検事?」
「えっと、担当検事って誰なんですか?」
「なんつったかなゆっゆゅ……野郎の検事なのは確かや」
「もしかしてユガミ検事ですか?」
「おお!そうや!それそれ!」
ユガミ検事か……。
今回も手ごわい検事が相手だとわかり、オドロキは緊張で体が強張った。
紗針はハァーと重いため息を吐き出す。
「……わいとしてはもうっとこうムチッとしたムチムチの女検事ならテンションもあがるんやけどなぁ」
フハハと妄想に鼻の穴を膨らませる刑事を無視して、二人は現場へ向かった。
人形屋敷 入口
「待てや!ここは関係者以外立ち入り禁止や!
学生はさっさと帰りぃ!!」
剛毛の角刈りに無精ひげを生やした男性が彼らの前に立ちふさがる。
「おっオレたちは学生じゃありません!」
「はぁ?どっからどう見てもガキやないか。
ほらっ、学生がこんなとこで油売ってないでさっさと家帰って勉強でもしてろや」
カチンッとくる言い方にオドロキが顔をしかめる。
「学生じゃありません!わたしたちは弁護士です!」
心音が男性をきっと睨み、胸元の弁護士バッジをつきつける。
「ほらっ!この胸元のバッジ!」
「…………。」
突如黙った男性にオドロキは首をかしげた。
だが、彼の顔を見て、オドロキは気づいた。
「もうちょっと近寄らんとわからんなぁー」
こっこいつっ!!
男は鼻の下を通常より伸ばし、いやらしく目尻がさがっていた。
男性の視線は心音のバッジよりかなりずれ、首元のシャツから覗く谷間へと向いていた。
「もっとよく見てください!」
心音がバッジをつけた胸元を男性につきつけようとする前に、さっとオドロキが後輩の前に立ちふさがる。
「なっあぶないやんけ!せっかく良いおっ……バッジ見てたのに!」
「ほらっ!オレも同じの持ってます!」
「はっ?知らん。野郎の胸元なんて誰が見るか。」
なっなんだこいつは……!
「おっオレたちは学生じゃなくて八百谷奈々子さんの弁護人です!」
「あぁ、あのお嬢ちゃんの弁護士な。わかった。わかった。
でも警察関係者じゃないんやからさっさと帰りぃ」
しっしっと手で払われ、邪険にされる。
「あなたは刑事なんですよね?」
「そうやでぇ~。」
心音がオドロキの背中から出て、刑事に尋ねる。
オドロキのときと打って変わり、後輩に対しては優しい声にデレデレの顔になった。
「この事件の担当なんですか?」
オドロキが尋ねるが、後輩に顔を向けたまま返事がない。
露骨に変わる態度に、オドロキは胡乱な目を向ける。
こいつ……。
「それじゃ、色々とお話聞かせてもらえますか?」
「うーん……本当はいけないんやけど。弁護士なら特別に教えたるわ。
あっ、けどわいが言ったんは内緒にしてな。」
さっきと言ってること違ぇ。
この刑事から情報が引き出せそうなので、とりあえずオドロキは後輩に任せた。
「えっと、あなたの名前は?」
「わい?わいの名前は紗針 若(サハリ ワカシ)!"サッパリ爽やか若くん"とはわいのことや!」
親指で自分の顔を示しながら、ドヤ顔する刑事にげんなりした顔で弁護士たちは見つめる。
「えっと、わたしは希月心音です。よろしくお願いします」
「心音ちゃんなぁ。うんうん」
「オレは王泥喜法介です!」
「お前には聞いてない」
この野郎……。
拳をプルプルと震わせながら、オドロキは感情を抑えた。
≪事件について≫
「あの、昨日ここで火事が起こったんですよね」
「あぁ、そうやで。」
「殺人も起きたって聞いたんですけど」
「なんや。お嬢ちゃん!ニュース見てへんの?
しょうがない。わいが特別に教えたるわ。
昨日の夕方5時30分頃に火災が発生したっていう通報があってな
消防が駆け付けて、次にわいら警察がきたんや。
火は幸い他の屋敷に燃え広がらずにこの人形屋敷一つ燃えただけで済んだ。
けど、その屋敷から死体が発見されたんや。」
「死体!?」
「半分焦げてたけど、焼けていない部分からなんとか身元を割り出したんや。」
≪被害者について≫
「被害者は只野 純子(25)元美人プロレスラーで今は無職らしい。
刃物で胸を一突きされて、ショック死だったそうや」
「被告人とはどういう関係だったんですか?」
「それも聞いてないんか!?
被害者はあれや。被告人のいわゆる……"恋敵"ってやつや」
「ええ!?」
心音が頬に両手を当て、飛び上がる。
「被害者は男顔負けのええ体しはってたみたいやけど
やっぱり心は恋する乙女やったんやなぁ。
そんなムキムキの女が恋敵だとしても、よっぽど憎かったんやろうなぁ。
ドスで刺しただけでなく、屋敷ごと燃やして死体を焼いてしまおう思うくらいなんやから」
≪八百谷について≫
「なんで八百谷さんを逮捕されたんですか?」
「火が上がってる屋敷の前で、その子がボケーッと逃げもせず火災現場眺めてたんや。
普通、火事を見てぼーっとしてるなんて怪しいやろ」
確かに。
刑事のまともな言葉にオドロキは不本意だが、納得した。
「それで、わいら警察はそのぼんやりしてたお嬢ちゃんをそのまま逮捕。
さらに調査した結果、凶器らしきドスには被害者の指紋が付着。」
「うっ」
「その上、目撃証言もほぼ完ぺき。」
「ううっ」
「はっきり言って、ちょろい事件やな」
「ううう」
紗針の言葉に弁護士二人の顔がどんどん暗くなっていく。
心音の顔を見て、紗針は困ったように眉を下げる。
「……この事件の弁護するんはそうとうきついと思うで」
オドロキと心音は同時に明後日の方向へ目をそらした。
「つーか、なんで自分ら被告人のこと知らへんのや」
呆れた視線で刑事は弁護士たちを見た。
「はぁー……八百谷奈々子はこの家の一人娘や。
両親は小さい頃に亡くなってて、一生遊んで暮らせる財産を持ってたお嬢様や。
婚約者もできて結婚も控えてたのに、この事件。」
紗針が顔をよこにそらすと、おどけた表情が消えていた。
「……さすがに同情したくなるわ」
その真率な横顔に微かに悲しみの影が差す。
しんみりとした空気に、オドロキたちはなんとなく言葉を発することを控えた。
紗針が顔を心音たちに戻すと、締まりのない顔に戻っていた。
「まぁ、わいが話せるのわ。これくらいやな」
「現場を調べることってできますか?」
「ええでー。あっけど、触っちゃダメやで?わいがおっかない検事にどやされてまうからな。」
「おっかない検事?」
「えっと、担当検事って誰なんですか?」
「なんつったかなゆっゆゅ……野郎の検事なのは確かや」
「もしかしてユガミ検事ですか?」
「おお!そうや!それそれ!」
ユガミ検事か……。
今回も手ごわい検事が相手だとわかり、オドロキは緊張で体が強張った。
紗針はハァーと重いため息を吐き出す。
「……わいとしてはもうっとこうムチッとしたムチムチの女検事ならテンションもあがるんやけどなぁ」
フハハと妄想に鼻の穴を膨らませる刑事を無視して、二人は現場へ向かった。