下手の横好き
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警察を出てしばらく歩いてから、モミジは貼り付けていた笑顔の仮面を取り去り、下に隠していた憤怒の表情をさらす。
「犯人は鬼風ですって?
ふざけんじゃねえわよ!」
鬼風が完全にモテナイ男の僻み人間じゃねえか!
そんなケツの穴の小せえ男に思われるなんて冗談じゃねえ!!
「あの、」
盛大な独り言を叫んでいた彼女は、背後からかけられた声に思わず固まる。
ヤッバ。今思いっきり叫んじゃったんですけど!?
ドキドキしながら鬼風が背後を振り返る。
そこに居たのは、和装束を着た小柄な少女だった。
相手は特徴的な髪型をしており、左のこめかみから垂れる一房の髪束に紫のトンボ玉のようなものがつけられている。
前髪から覗く丸くて綺麗なおデコが知的な雰囲気を漂わせる。
幼く見えるが、品のあるしっかりとした立ち振る舞いから見た目よりも少し大人に見える。
「あなたさまも大事なチョコを盗まれたのですよね?」
「ええ、そうよ」
自分を追いかけてきた理由がよくわからず、モミジは警戒しながらその和装束の少女を見つめる。
「もしや、犯人とお知り合いなのですか?」
「えっ!?と……」
知り合いというかチョー本人デース。なんて言えるわけもなく、鬼風はそれをごまかすように笑顔を浮かべる。
「いいえ。別に知り合いではないわ」
「では、なぜ警察を出て行かれたのですか。このままではあなたのチョコは戻ってきませんよ」
「はっ話をしてみたけど、警察はきっと真面目に捜査なんてしてくれないわ。だから、私が犯人を見つけだしてやろうと思ってね」
余計な真実を教えず、今実行しようとしたことだけを口に出す。
「私は伊呂波モミジ。あなたも自分のチョコを盗まれたのかしら?」
少女はその言葉にしゅんっと顔を俯かせた。
鬼風は少女の仕草に首を傾げる。
「わたくしではなく、マヨイさまのチョコが奪われたのです!!」
「それで、どうしてあなたがそんな悲しい顔をするの?自分のチョコではないのでしょう?」
「実は、実は、わたくし、マヨイさまから頼まれたのです。ナルホドくんにチョコを届けるように」」
ナルホドくん?
よく知る人物の名前が出て、内心動揺した。
「えっと……もしかして……渡しに行く途中で盗まれちゃったの?」
ううっと地面に額をつけそうな勢いで和装束の少女が項垂れる。
「えっと、その、あなたのお名前は?」
「あっ申し遅れました。わたくし綾里春美と申します」
春美という少女がぺこりっと丁寧にお辞儀をする。
「よろしく。それでそのマヨイさまってあなたの大事な人なの?」
「はい。わたくしの従姉なのですが、綾里家の家元になるお方です」
あるフレーズに鬼風は首を傾げる。
「綾里家……」
「わたくしがしっかりしていなかったばかりに、マヨイさまがナルホドくんに差し上げるはずだったチョコを盗られてしまったのです!」
可憐な顔立ちに似合わない険しい表情を浮かべる少女。
ぐっと和装束の裾をまくりあげ、細く白い二の腕をさらす。
「わたくし必ず取り返して引っぱたいてやるつもりです!」
「偉い!」
モミジが賞賛の声を思わず上げた。
「私も泥棒をコテンパンにしてやろうと思ってたところなの!」
「モミジさまも大事なチョコを盗られたのですね」
「そう。片思いの子にあげるはずのチョコを盗まれてしまったのよ。
だから、なんとしてでもあの泥棒から奪い返したいのよ!」
そう宣言して、モミジは少女の目を見つめる。
少女も強い意志のこもった目で見つめ返す。
少女と女性姿の泥棒は無言で互いの手を取り合い、熱く固い握手を交わす。
「協力させてください!」
「ありがとう!」
こうして打倒チョコ泥棒同盟が誕生した。
「それではまずは被害があった現場を調査いたしましょう!」
「待て待て待って」
駆け出していきそうな少女の両肩を掴んで引き止める。
「泥棒を探さなくても、今夜また現れてくれるわよ」
「え?」
きょとんとする春美に向けてモミジは一枚のカードを取り出す。
「≪19時の 聖なる乙女の日に
氷室デパートの"ピンクダイヤモンド"を頂き仕る≫
泥棒はどうやら、13日に女性のチョコを奪っただけでなく、
14日にこのダイヤモンドを盗もうとしているみたいね」
春美は顔を真っ赤にしながら、目を鋭く吊り上げる。
「あれだけ大量のチョコを奪っておきながらまだ盗もうというのですか!?
なんて恥知らずな方なのでしょう!」
「けど、これはチャンスよ」
「どういうことですか?」
「警察と一緒にあのデパートで待っていれば、
こっちから探しにいかなくてもチョコ泥棒がやってきてくれる」
「なるほど、そのときに泥棒をとっ捕まえるのですね!」
「話が早くて助かるわ。
泥棒を血祭……捕まえるために、さっそくデパートへ行きましょうか」
「はいっ!」
ふと春美は浮かんだ疑問を口にする。
「ですが、モミジさまはなぜ鬼風の予告状を持っていたのですか?」
内心ギクッと肩を跳ねさせながら、表面は涼しい顔で答える。
「警察に行ったとき、落ちていたのを拾ったのよ。
返そうとしてたらつい忘れちゃって。きっと抜けてる刑事さんが落としたのね」
本当は先ほど牙琉検事のジャケットから拝借しただけである。
胡散臭い言い訳であったが、純粋な少女はその言葉に納得してしまった。
……自分が言うのもなんだが、こんな簡単に納得してしまって大丈夫かな。この子。
「あと、今回の泥棒は鬼風ではないわ」
「なぜ、わかるのですか?」
「よく出来ているけど、この予告状は偽物だし、
鬼風は高価なとある職人の人形しか盗まないって聞いたから、
乙女の大事なチョコを盗むなんておかしいのよ」
「そうなのですか」
「そうなのですよ。それより早くデパートに行きましょう」
「犯人は鬼風ですって?
ふざけんじゃねえわよ!」
鬼風が完全にモテナイ男の僻み人間じゃねえか!
そんなケツの穴の小せえ男に思われるなんて冗談じゃねえ!!
「あの、」
盛大な独り言を叫んでいた彼女は、背後からかけられた声に思わず固まる。
ヤッバ。今思いっきり叫んじゃったんですけど!?
ドキドキしながら鬼風が背後を振り返る。
そこに居たのは、和装束を着た小柄な少女だった。
相手は特徴的な髪型をしており、左のこめかみから垂れる一房の髪束に紫のトンボ玉のようなものがつけられている。
前髪から覗く丸くて綺麗なおデコが知的な雰囲気を漂わせる。
幼く見えるが、品のあるしっかりとした立ち振る舞いから見た目よりも少し大人に見える。
「あなたさまも大事なチョコを盗まれたのですよね?」
「ええ、そうよ」
自分を追いかけてきた理由がよくわからず、モミジは警戒しながらその和装束の少女を見つめる。
「もしや、犯人とお知り合いなのですか?」
「えっ!?と……」
知り合いというかチョー本人デース。なんて言えるわけもなく、鬼風はそれをごまかすように笑顔を浮かべる。
「いいえ。別に知り合いではないわ」
「では、なぜ警察を出て行かれたのですか。このままではあなたのチョコは戻ってきませんよ」
「はっ話をしてみたけど、警察はきっと真面目に捜査なんてしてくれないわ。だから、私が犯人を見つけだしてやろうと思ってね」
余計な真実を教えず、今実行しようとしたことだけを口に出す。
「私は伊呂波モミジ。あなたも自分のチョコを盗まれたのかしら?」
少女はその言葉にしゅんっと顔を俯かせた。
鬼風は少女の仕草に首を傾げる。
「わたくしではなく、マヨイさまのチョコが奪われたのです!!」
「それで、どうしてあなたがそんな悲しい顔をするの?自分のチョコではないのでしょう?」
「実は、実は、わたくし、マヨイさまから頼まれたのです。ナルホドくんにチョコを届けるように」」
ナルホドくん?
よく知る人物の名前が出て、内心動揺した。
「えっと……もしかして……渡しに行く途中で盗まれちゃったの?」
ううっと地面に額をつけそうな勢いで和装束の少女が項垂れる。
「えっと、その、あなたのお名前は?」
「あっ申し遅れました。わたくし綾里春美と申します」
春美という少女がぺこりっと丁寧にお辞儀をする。
「よろしく。それでそのマヨイさまってあなたの大事な人なの?」
「はい。わたくしの従姉なのですが、綾里家の家元になるお方です」
あるフレーズに鬼風は首を傾げる。
「綾里家……」
「わたくしがしっかりしていなかったばかりに、マヨイさまがナルホドくんに差し上げるはずだったチョコを盗られてしまったのです!」
可憐な顔立ちに似合わない険しい表情を浮かべる少女。
ぐっと和装束の裾をまくりあげ、細く白い二の腕をさらす。
「わたくし必ず取り返して引っぱたいてやるつもりです!」
「偉い!」
モミジが賞賛の声を思わず上げた。
「私も泥棒をコテンパンにしてやろうと思ってたところなの!」
「モミジさまも大事なチョコを盗られたのですね」
「そう。片思いの子にあげるはずのチョコを盗まれてしまったのよ。
だから、なんとしてでもあの泥棒から奪い返したいのよ!」
そう宣言して、モミジは少女の目を見つめる。
少女も強い意志のこもった目で見つめ返す。
少女と女性姿の泥棒は無言で互いの手を取り合い、熱く固い握手を交わす。
「協力させてください!」
「ありがとう!」
こうして打倒チョコ泥棒同盟が誕生した。
「それではまずは被害があった現場を調査いたしましょう!」
「待て待て待って」
駆け出していきそうな少女の両肩を掴んで引き止める。
「泥棒を探さなくても、今夜また現れてくれるわよ」
「え?」
きょとんとする春美に向けてモミジは一枚のカードを取り出す。
「≪19時の 聖なる乙女の日に
氷室デパートの"ピンクダイヤモンド"を頂き仕る≫
泥棒はどうやら、13日に女性のチョコを奪っただけでなく、
14日にこのダイヤモンドを盗もうとしているみたいね」
春美は顔を真っ赤にしながら、目を鋭く吊り上げる。
「あれだけ大量のチョコを奪っておきながらまだ盗もうというのですか!?
なんて恥知らずな方なのでしょう!」
「けど、これはチャンスよ」
「どういうことですか?」
「警察と一緒にあのデパートで待っていれば、
こっちから探しにいかなくてもチョコ泥棒がやってきてくれる」
「なるほど、そのときに泥棒をとっ捕まえるのですね!」
「話が早くて助かるわ。
泥棒を血祭……捕まえるために、さっそくデパートへ行きましょうか」
「はいっ!」
ふと春美は浮かんだ疑問を口にする。
「ですが、モミジさまはなぜ鬼風の予告状を持っていたのですか?」
内心ギクッと肩を跳ねさせながら、表面は涼しい顔で答える。
「警察に行ったとき、落ちていたのを拾ったのよ。
返そうとしてたらつい忘れちゃって。きっと抜けてる刑事さんが落としたのね」
本当は先ほど牙琉検事のジャケットから拝借しただけである。
胡散臭い言い訳であったが、純粋な少女はその言葉に納得してしまった。
……自分が言うのもなんだが、こんな簡単に納得してしまって大丈夫かな。この子。
「あと、今回の泥棒は鬼風ではないわ」
「なぜ、わかるのですか?」
「よく出来ているけど、この予告状は偽物だし、
鬼風は高価なとある職人の人形しか盗まないって聞いたから、
乙女の大事なチョコを盗むなんておかしいのよ」
「そうなのですか」
「そうなのですよ。それより早くデパートに行きましょう」