下手の横好き
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2月11日 午後3時23分
鬼風アジト
ソファで濡れ落ち葉のような醜女――――モミジが女性雑誌を読んでいた。
パソコンの前で作業をしていた白衣に眼鏡の女―――杏里が椅子を回す。
「なにを読んでんだ?モミジ」
「ん?あぁ、これだよ」
モミジは読んでいた雑誌のページを杏里に見せる。
「氷室デパートで売れてる人気ショコラ?」
大きく写真に写っているのは桜の花弁を溶かしたようなピンク色の輝きを放つダイヤモンド。
どこから見てもジュエリーにしか見えないそれだが、正真正銘のショコラである。
バレンタイン特集のページを見せながら、鬼風が語る。
「雑誌で話題なんだとさ。氷室デパートに展示されてるピンクダイヤ。
なんでも愛の女神の涙と呼ばれるピンクダイヤらしくてこのデパートのウリなんだって。
それで、このピンクダイヤに似せたショコラが、人気らしいんだ」
「なになに?
"両想いになりたいあなた。
このショコラを送って、意中のあの人の心を奪ってみませんか?"」
杏里は鼻の上に皺をつくる。
「うさんくせぇー」
「けど、このショコラを送って恋が成就した人が多いんだとさ。
たくっ。こんなチョコ送って思いが通じ合うなら苦労しねえっつうの」
「それで。お前の持ってる物はなんだ?」
「ピンクダイヤのショコラ」
「まんまと掌の上で転がされてるじゃねえか」
「いいだろ!もしかしたら奇跡が落ちてくるかもしれねえじゃねえか!」
「あーあ。商業戦略にまんまと踊らされやがって」
「うっさい!会いたくて会いたくて震える乙女の気持ちがお前にわかってたまるものか!」
「半分男みてぇな気色悪い両性具モドキが乙女とか言うな」
「体はそうでも、心は乙女だから問題ない!」
杏里がため息を吐きつつ、パソコンの方に視線を戻した。
「泥棒が簡単に心を盗まれてどうするんだか……」
「雨の日の濡れた捨て犬の瞳に抗えなかったのさ」
「犬ねえ。あれは……雑種犬だろうな」
「うーんそうだね……オドロキくんは……豆柴とダックスフンドのミックスかな」
「見事にチビと短足の種類だな」
「あのプチッと潰せそうなところがカワイイんじゃないか」
「歪み切った偏愛だな。
……そういや、昔バレンタインに本命チョコをあげる女はすべて阿呆だと公言していた奴がいたんだがな」
「うわあ可哀想だね。その人。今まで一度も恋をしたことがなかったんだろうね」
「ちなみにこれ、三年前のお前のセリフな」
「全く覚えはございません」
鬼風は清々しい笑顔でそう言い切った。
パソコンのデータを入力し終わると、杏理は背もたれに頬杖をつき椅子に跨る。
「けど、グッドタイミングだ。それなら氷空デパートの下見はバッチリだな」
「……ってことは次のターゲットは」
杏里はタブレットの画面を鬼風に差し出す。
「そこに展示されている牡丹の梅姫だ」
画面の中から美しい艶姿の人形が鬼風に向かって微笑んでいる。
「……愛にうつつをぬかすのは良いが、肝心の本業をドジるなよ」
「そこまで腑抜けちゃいねえよ」
言いにくそうに、モミジが口を開く。
「あのさ、実行が13日の夜ならさ、そのまま……」
「盗んだあとは好きにしていいぜ。捨て犬の保護でもなんでも」
杏里がククッと笑う。
モミジは顔を伏せ、手元の包装された箱を見下ろした。
鬼風アジト
ソファで濡れ落ち葉のような醜女――――モミジが女性雑誌を読んでいた。
パソコンの前で作業をしていた白衣に眼鏡の女―――杏里が椅子を回す。
「なにを読んでんだ?モミジ」
「ん?あぁ、これだよ」
モミジは読んでいた雑誌のページを杏里に見せる。
「氷室デパートで売れてる人気ショコラ?」
大きく写真に写っているのは桜の花弁を溶かしたようなピンク色の輝きを放つダイヤモンド。
どこから見てもジュエリーにしか見えないそれだが、正真正銘のショコラである。
バレンタイン特集のページを見せながら、鬼風が語る。
「雑誌で話題なんだとさ。氷室デパートに展示されてるピンクダイヤ。
なんでも愛の女神の涙と呼ばれるピンクダイヤらしくてこのデパートのウリなんだって。
それで、このピンクダイヤに似せたショコラが、人気らしいんだ」
「なになに?
"両想いになりたいあなた。
このショコラを送って、意中のあの人の心を奪ってみませんか?"」
杏里は鼻の上に皺をつくる。
「うさんくせぇー」
「けど、このショコラを送って恋が成就した人が多いんだとさ。
たくっ。こんなチョコ送って思いが通じ合うなら苦労しねえっつうの」
「それで。お前の持ってる物はなんだ?」
「ピンクダイヤのショコラ」
「まんまと掌の上で転がされてるじゃねえか」
「いいだろ!もしかしたら奇跡が落ちてくるかもしれねえじゃねえか!」
「あーあ。商業戦略にまんまと踊らされやがって」
「うっさい!会いたくて会いたくて震える乙女の気持ちがお前にわかってたまるものか!」
「半分男みてぇな気色悪い両性具モドキが乙女とか言うな」
「体はそうでも、心は乙女だから問題ない!」
杏里がため息を吐きつつ、パソコンの方に視線を戻した。
「泥棒が簡単に心を盗まれてどうするんだか……」
「雨の日の濡れた捨て犬の瞳に抗えなかったのさ」
「犬ねえ。あれは……雑種犬だろうな」
「うーんそうだね……オドロキくんは……豆柴とダックスフンドのミックスかな」
「見事にチビと短足の種類だな」
「あのプチッと潰せそうなところがカワイイんじゃないか」
「歪み切った偏愛だな。
……そういや、昔バレンタインに本命チョコをあげる女はすべて阿呆だと公言していた奴がいたんだがな」
「うわあ可哀想だね。その人。今まで一度も恋をしたことがなかったんだろうね」
「ちなみにこれ、三年前のお前のセリフな」
「全く覚えはございません」
鬼風は清々しい笑顔でそう言い切った。
パソコンのデータを入力し終わると、杏理は背もたれに頬杖をつき椅子に跨る。
「けど、グッドタイミングだ。それなら氷空デパートの下見はバッチリだな」
「……ってことは次のターゲットは」
杏里はタブレットの画面を鬼風に差し出す。
「そこに展示されている牡丹の梅姫だ」
画面の中から美しい艶姿の人形が鬼風に向かって微笑んでいる。
「……愛にうつつをぬかすのは良いが、肝心の本業をドジるなよ」
「そこまで腑抜けちゃいねえよ」
言いにくそうに、モミジが口を開く。
「あのさ、実行が13日の夜ならさ、そのまま……」
「盗んだあとは好きにしていいぜ。捨て犬の保護でもなんでも」
杏里がククッと笑う。
モミジは顔を伏せ、手元の包装された箱を見下ろした。