親の心子知らず
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2月4日 午後6時58分
富士井屋敷 庭園
黒装束の鬼風は、最後の黒服のみぞおちを蹴りあげた。
呻き声をあげ、黒服は気を失って地面に倒れる。
地面に倒れ伏せた黒服たちを見回しながら、1人残された妙子を鬼はその切れ長の眸で見据える。
「さぁ、王手だ。もうお山の大将を気取ることもできねえよ」
「待ちなさい。鬼風」
メイド長が鬼風の前に立ちふさがる。
彼女は拾った銃を妙子に向ける。
モミジはその行動に目を見開く。
「おい」
「あなたは……浩太様の障害です」
「殺してみなさいよ。できるものならね」
妙子はメイド長に勝ち誇った笑みを浮かべる。
「あんたは犯罪者になろうが構わないかもしれないけど、こっちの坊ちゃんはどうなるでしょうね」
その言葉にメイド長が凍り付く。
「なにを……言って……」
「私が知らないとでも思ってたの?」
妙子はせせら笑うように、艶やかな唇を弓なりに歪める。
「あなた……まさか知って……」
「アッハハ!計画は狂ったけど、修正ならいくらだってできるわ」
「あー……奥さん。あまりあんたしゃべらない方がいいぜ」
「あらっ。さっきとはずいぶん弱気ね?なに今更怖くなったの?」
「いや……今のセリフ、警察に丸聞こえだから」
妙子の表情から血の気が失せた。
鬼風が地面に放っておかれた赤い鬼の面を拾い上げる。
「いやー、なんで外の警察に聞こえるように、仮面に盗聴器なんか仕込んであるんだろうねー。
不思議だなー」
白々しい泥棒の言葉に、妙子が鬼のような形相を浮かべる。
鬼風が地面に仮面を投げ捨てると、妙子はヒールの踵によって鬼の面をブチッとつぶす。
声にすらならないヒステリックな喚き声をあげて、妙子は鬼風に突っ込む。
般若のような顔立ちの女を見ても眉一つ動かず、鬼風はすっと滑らかに動く。
「欲に囚われた哀れな奴だ」
青年はダンッと女の首に手刀を決め、彼女の意識を奪った。
女がその場に崩れ落ちる。
「さて――――」
鬼風は縛られている浩太の紐を握り、黒く光るクナイを子どもの首に当てる。
「それじゃ、お姫様を交換しようか」
鬼風はメイド長に右手を差し出す。
メイド長が眉を動かしたが、すぐに鉄仮面を被った。
「……わかりました」
メイド長が赤と白の着物の人形を青年に手渡した。
右手に乗せられた人形を見て、鬼は唇を釣り上げる。
「それじゃ、もう用はねえ」
「坊ちゃんを返しなさい」
青年はククッと喉に詰まった笑みを口からこぼす。
「嫌だね」
「なっ!?」
「悪党が約束を守る義理はない」
そう言った瞬間、メイド長が突進した。
それを鬼風はひらりと避ける。
「別に他人の子どもだろ?面倒なことなんて放り出してしまえよ」
鬼風が嘲笑しているような声をあげる。
だが、メイド長はそれでも浩太を取り戻そうと突進してくる。
メイド服が泥だらけになるのも構わず、泥棒から屋敷の主人を取り返そうと、突進をやめない。
突進を繰り返しているうちに、足がもつれメイド長は地面に転がった。
「あきらめろよ。アンタには関係ないだろ」
「…しな…さい」
メイド長はゆらりと立ち上がり、キッと目尻を大きく釣り上げる。
「坊ちゃんを……浩太を……私の子どもを返しなさい!」