焼け木杭に火がつく
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同日 某時刻
人形屋敷付近 管理小屋
「えっと確かここをまっすぐ行けば」
わんわんわんわん!!!!!
「うっわああああああ!」
「ひゃあああああ!」
突然の吠え声にオドロキと心音の心臓が飛び跳ねた。
恐ろしい吠え声の方を見ると、黒い中型犬の赤い口内から鋭い牙が並んでいるのが見える。
「なんでぃなんでぃ!」
犬の鳴き声を聞き、小屋から小柄な老人が飛び出してくる。
額にはねじり鉢巻きをして、てっぺんはハゲているが、サイドには白いフワフワの毛が生えている。
「ぐるるるる」
「またポリ公かぁ!てめえらに話すことはすべて出したわい!
とっとと帰れ!」
「あっあなたはその……」
「わし?わしはこの人形屋敷の番人しとる唐井翔賀(カライ ショウガ)じゃ!」
「オレたちはですね!弁護士で……」
「べんごしだぁ?"はしご"だが"はんこ"だが知らねえが一昨日来やがれ!!」
「……どうします?先輩?」
うんざりした顔で心音はオドロキの顔を見た。
「……訊くしかないだろうな。話を」
≪事件について≫
「あの、オレたち八百谷奈々子さんの弁護士なんです」
「ん?なんでぃ、オジョウサンの知り合いかい?」
「はい、一応」
老人に詳しく説明すると話が進みそうにないと思ったオドロキは、適当に頷いた。
「ところで、事件についてなにか知ってますか?」
「放火のことじゃな」
さきほどの大野とは違う言葉に彼らはに首をかしげた。
「殺人ではなくてですか?」
「さつじん?……なんだい!?あのオジョウサマ誰かをヤッちまったのかい!?」
その言い方に、オドロキは微かに眉を跳ねあげた。
だが、事件の情報を聞き出すことを優先して、思ったことを飲み込んだ。
「オレたちもまだ事件について詳しいことはわかってないんです」
「オジョウサンからなんか聞いてねえのかい?」
「放火をしたことだけは聞いたんですが、殺人については本人は何もおっしゃってませんでした」
「まぁ、そっちはポリ公にでも聞きな。わしは放火の方しか話せんよ」
「もしかして火事を見たんですか?」
「あぁ、火事を屋敷のもんに知らせたのはわしじゃからな」
「え!?そうなんですか!?」
心音が驚きの声をあげる。
「あったりまえじゃ!人形屋敷の管理人をやってんじゃぞ!
異変に気づいてすぐに知らせに行ったわい!」
「火を消そうとは思わなかったんですか?」
心音がなにげなく質問した。
「バカタレぃ!わしが気づいたときにはもう屋敷がゴーゴーと燃えて
わしが消火できる火じゃなかったわい!」
もっと早く気づけよ。
オドロキは心の中でそうつぶやいた。
≪奈々子について≫
「火災のとき、奈々子さんはどこに?」
「わしが知らせに行って、屋敷に戻ってきたとき
オジョウサンは屋敷を見上げながら、つっ立っておったよ」
「放火したのに、逃げなかったんですか?」
「カラシ色の嬢ちゃん。」
「かっカラシ!?」
心音のショック顔も気にせず、唐井は続けた。
「放火犯ってのはな、必ず現場に戻るって相場が決まってるんでぃ」
「えっそうなんですか?」
彼女は納得いかないように首をかしげる。
そんな後輩にオドロキが説明する。
「放火犯ってのは何かが燃えてるのを見たくて
火をつける奴が多いらしいから
放火犯は火災現場に戻るって言われてるんだ」
「へぇーそうなんですか」
唐井はガシガシと後頭部をかいた。
「しっかし、放火はまだわかるが、あのオジョウサンが殺人ってのがちょっとピンとこないわい。」
「どうしてですか?」
「いやなに。うちのオジョウサンは見た目通りなよなよしたよわっちいお嬢様でな。
吹けば飛んじまうようなあのオジョウサンが、人を殺す力があるとは思えんよ
むしろ、逆に襲われそうじゃわい」
「確かにお人形さんみたいなカワイイ人でしたね」
「一応、わしの手伝いなんかもしてくれたんだが
重い物持たせてもフラフラしちまって
とても仕事を任せられるようなお人じゃねえのさ」
≪犬について≫
「あのところで、その犬は?」
唐井の命令で吠えるのをやめたが、唸り声をあげながらオドロキたちを睨んでいる。
「こいつはタロウと言ってな、わしの相棒で、ここの番犬じゃ。」
「あれ?番犬って家の入口に置くものじゃないんですか?」
心音が首を傾げる。
「こいつの担当はこの人形屋敷じゃ。オジョウサンの大事な人形を守ってるんじゃよ。」
「確かに、頼もしい番犬ですね」
唸り声がさらに大きくなり、オドロキがじりじり後退する。
「こいつは優秀でな。オジョウサンとわしとボッチャン以外が屋敷に近づいたらすぐ吠えて
相手を知らせてくれるんじゃ。
だが、夕方頃に昼寝をしちまうモノグサなとこもあるがな。
まぁほんの10分ぐらいじゃからその間はわしが見張っとるんじゃ」
「このタロウのおかげか、あのふざけた泥棒は来なかったしな!」
その言葉にピクリッと二人が反応する。
≪……泥棒?≫
泥棒って……まさか…
オドロキはダラダラと全身に嫌な汗を流す。
「あの!もしかしてその泥棒って!……ズバリ怪盗鬼風ですね!」
「よく知ってるなぁ。お嬢ちゃん」
オドロキは額に手を当て、顔を俯かせた。
パンッと膝を叩き、唐井はしゃべり始めた。
「ことは一週間前よ。この屋敷に奴の予告状が届いたのは」
「その予告状って持ってますか!?」
「本物は警察が持ってっちまったが、模写したやつなら小屋にあるから待ってな」
そう言って、唐井は小屋の方へ駆けていき、すぐに戻ってくる。
「ほらよ。これがあの野郎が寄越したやつだ」
「“大寒 天和の大火の日
天照潜め 天津甕星現るとき
高台の人形屋敷から
恋炎囚われし 本郷の七姫を
頂き参上仕る
【鬼風】”」
「……相変わらず何が書いてあるかわかりませんね。
天照潜めの次なんて読めませんし」
心音が冷や汗を垂らしながら、その予告状を見た。
「これは天津甕星(あまつみかぼし)と読むんでぃ!
日本の神様の一人じゃ!」
「神様?」
「星の神様で、金星のことを表しとるんじゃ!
まったく、これだから最近の若いもんはっ!」
「あっあのそれでこの≪本郷の七姫≫がここのお宝ですか?」
オドロキは気が進まないが、念のため宝について尋ねた。
「ああ。この人形屋敷にある大事な人形さ」
「あれ?鬼風が来るなら火事の時に屋敷を警察が警備していたはずですよね?なんで警察は火事に気付かなかったんですか?」
オドロキの指摘に唐井は顔をしかめた。
「……警察に知らせなかったからさ」
「「え?」」
「ここのオジョウサンが警察に知らせるなと伝えたんだ。
警察みたいな外部の人間に自分の大事な屋敷を歩き回られるのが嫌だったらしい」
「そっそれで?七姫は?鬼風に盗られなかったんですか?」
「あぁ。あの日起こったことと言えば、屋敷の火事ぐれぇだ。
盗られたものはない……と言いてぇが、屋敷のものはほとんど焼けちまって、盗られたんだか盗られていないんだかわからん状況さ。だがあの泥棒が欲しがってた七姫は盗られず燃え尽きちまった。残骸もあったし、確かだろうよ」
「七姫ってどんな人形なんですか?」
「オジョウサマの姿は知ってるんだよな?」
「あっはい。」
「どんな人形と言われたら、オジョウサマと同じ格好した人形だ」
「え?」
「オジョウサマは七姫のことが大好きでな、あの人形の真似をするぐらいに」
「ってことは、あれは七姫のコスプレ!?」
「そうじゃ。そのこすぷれというやつじゃ」
≪ボッチャンについて≫
「さっき言ってた“ボッチャン”って八百谷さんのご兄弟ですか?」
「ちがうちがう。オジョウサンの婚約者じゃ」
そういう唐井の表情は、なんだか浮かない顔をしていた。
「わしが話せるのはこのくらいじゃ。」
「あの、屋敷の方を調べることってできませんか?」
「調べてもいいが、今はポリ公で追い返されるのがオチじゃよ。
わしも追い返されたからな」
お礼を言い、オドロキたちは屋敷へと足を向ける。
人形屋敷付近 管理小屋
「えっと確かここをまっすぐ行けば」
わんわんわんわん!!!!!
「うっわああああああ!」
「ひゃあああああ!」
突然の吠え声にオドロキと心音の心臓が飛び跳ねた。
恐ろしい吠え声の方を見ると、黒い中型犬の赤い口内から鋭い牙が並んでいるのが見える。
「なんでぃなんでぃ!」
犬の鳴き声を聞き、小屋から小柄な老人が飛び出してくる。
額にはねじり鉢巻きをして、てっぺんはハゲているが、サイドには白いフワフワの毛が生えている。
「ぐるるるる」
「またポリ公かぁ!てめえらに話すことはすべて出したわい!
とっとと帰れ!」
「あっあなたはその……」
「わし?わしはこの人形屋敷の番人しとる唐井翔賀(カライ ショウガ)じゃ!」
「オレたちはですね!弁護士で……」
「べんごしだぁ?"はしご"だが"はんこ"だが知らねえが一昨日来やがれ!!」
「……どうします?先輩?」
うんざりした顔で心音はオドロキの顔を見た。
「……訊くしかないだろうな。話を」
≪事件について≫
「あの、オレたち八百谷奈々子さんの弁護士なんです」
「ん?なんでぃ、オジョウサンの知り合いかい?」
「はい、一応」
老人に詳しく説明すると話が進みそうにないと思ったオドロキは、適当に頷いた。
「ところで、事件についてなにか知ってますか?」
「放火のことじゃな」
さきほどの大野とは違う言葉に彼らはに首をかしげた。
「殺人ではなくてですか?」
「さつじん?……なんだい!?あのオジョウサマ誰かをヤッちまったのかい!?」
その言い方に、オドロキは微かに眉を跳ねあげた。
だが、事件の情報を聞き出すことを優先して、思ったことを飲み込んだ。
「オレたちもまだ事件について詳しいことはわかってないんです」
「オジョウサンからなんか聞いてねえのかい?」
「放火をしたことだけは聞いたんですが、殺人については本人は何もおっしゃってませんでした」
「まぁ、そっちはポリ公にでも聞きな。わしは放火の方しか話せんよ」
「もしかして火事を見たんですか?」
「あぁ、火事を屋敷のもんに知らせたのはわしじゃからな」
「え!?そうなんですか!?」
心音が驚きの声をあげる。
「あったりまえじゃ!人形屋敷の管理人をやってんじゃぞ!
異変に気づいてすぐに知らせに行ったわい!」
「火を消そうとは思わなかったんですか?」
心音がなにげなく質問した。
「バカタレぃ!わしが気づいたときにはもう屋敷がゴーゴーと燃えて
わしが消火できる火じゃなかったわい!」
もっと早く気づけよ。
オドロキは心の中でそうつぶやいた。
≪奈々子について≫
「火災のとき、奈々子さんはどこに?」
「わしが知らせに行って、屋敷に戻ってきたとき
オジョウサンは屋敷を見上げながら、つっ立っておったよ」
「放火したのに、逃げなかったんですか?」
「カラシ色の嬢ちゃん。」
「かっカラシ!?」
心音のショック顔も気にせず、唐井は続けた。
「放火犯ってのはな、必ず現場に戻るって相場が決まってるんでぃ」
「えっそうなんですか?」
彼女は納得いかないように首をかしげる。
そんな後輩にオドロキが説明する。
「放火犯ってのは何かが燃えてるのを見たくて
火をつける奴が多いらしいから
放火犯は火災現場に戻るって言われてるんだ」
「へぇーそうなんですか」
唐井はガシガシと後頭部をかいた。
「しっかし、放火はまだわかるが、あのオジョウサンが殺人ってのがちょっとピンとこないわい。」
「どうしてですか?」
「いやなに。うちのオジョウサンは見た目通りなよなよしたよわっちいお嬢様でな。
吹けば飛んじまうようなあのオジョウサンが、人を殺す力があるとは思えんよ
むしろ、逆に襲われそうじゃわい」
「確かにお人形さんみたいなカワイイ人でしたね」
「一応、わしの手伝いなんかもしてくれたんだが
重い物持たせてもフラフラしちまって
とても仕事を任せられるようなお人じゃねえのさ」
≪犬について≫
「あのところで、その犬は?」
唐井の命令で吠えるのをやめたが、唸り声をあげながらオドロキたちを睨んでいる。
「こいつはタロウと言ってな、わしの相棒で、ここの番犬じゃ。」
「あれ?番犬って家の入口に置くものじゃないんですか?」
心音が首を傾げる。
「こいつの担当はこの人形屋敷じゃ。オジョウサンの大事な人形を守ってるんじゃよ。」
「確かに、頼もしい番犬ですね」
唸り声がさらに大きくなり、オドロキがじりじり後退する。
「こいつは優秀でな。オジョウサンとわしとボッチャン以外が屋敷に近づいたらすぐ吠えて
相手を知らせてくれるんじゃ。
だが、夕方頃に昼寝をしちまうモノグサなとこもあるがな。
まぁほんの10分ぐらいじゃからその間はわしが見張っとるんじゃ」
「このタロウのおかげか、あのふざけた泥棒は来なかったしな!」
その言葉にピクリッと二人が反応する。
≪……泥棒?≫
泥棒って……まさか…
オドロキはダラダラと全身に嫌な汗を流す。
「あの!もしかしてその泥棒って!……ズバリ怪盗鬼風ですね!」
「よく知ってるなぁ。お嬢ちゃん」
オドロキは額に手を当て、顔を俯かせた。
パンッと膝を叩き、唐井はしゃべり始めた。
「ことは一週間前よ。この屋敷に奴の予告状が届いたのは」
「その予告状って持ってますか!?」
「本物は警察が持ってっちまったが、模写したやつなら小屋にあるから待ってな」
そう言って、唐井は小屋の方へ駆けていき、すぐに戻ってくる。
「ほらよ。これがあの野郎が寄越したやつだ」
「“大寒 天和の大火の日
天照潜め 天津甕星現るとき
高台の人形屋敷から
恋炎囚われし 本郷の七姫を
頂き参上仕る
【鬼風】”」
「……相変わらず何が書いてあるかわかりませんね。
天照潜めの次なんて読めませんし」
心音が冷や汗を垂らしながら、その予告状を見た。
「これは天津甕星(あまつみかぼし)と読むんでぃ!
日本の神様の一人じゃ!」
「神様?」
「星の神様で、金星のことを表しとるんじゃ!
まったく、これだから最近の若いもんはっ!」
「あっあのそれでこの≪本郷の七姫≫がここのお宝ですか?」
オドロキは気が進まないが、念のため宝について尋ねた。
「ああ。この人形屋敷にある大事な人形さ」
「あれ?鬼風が来るなら火事の時に屋敷を警察が警備していたはずですよね?なんで警察は火事に気付かなかったんですか?」
オドロキの指摘に唐井は顔をしかめた。
「……警察に知らせなかったからさ」
「「え?」」
「ここのオジョウサンが警察に知らせるなと伝えたんだ。
警察みたいな外部の人間に自分の大事な屋敷を歩き回られるのが嫌だったらしい」
「そっそれで?七姫は?鬼風に盗られなかったんですか?」
「あぁ。あの日起こったことと言えば、屋敷の火事ぐれぇだ。
盗られたものはない……と言いてぇが、屋敷のものはほとんど焼けちまって、盗られたんだか盗られていないんだかわからん状況さ。だがあの泥棒が欲しがってた七姫は盗られず燃え尽きちまった。残骸もあったし、確かだろうよ」
「七姫ってどんな人形なんですか?」
「オジョウサマの姿は知ってるんだよな?」
「あっはい。」
「どんな人形と言われたら、オジョウサマと同じ格好した人形だ」
「え?」
「オジョウサマは七姫のことが大好きでな、あの人形の真似をするぐらいに」
「ってことは、あれは七姫のコスプレ!?」
「そうじゃ。そのこすぷれというやつじゃ」
≪ボッチャンについて≫
「さっき言ってた“ボッチャン”って八百谷さんのご兄弟ですか?」
「ちがうちがう。オジョウサンの婚約者じゃ」
そういう唐井の表情は、なんだか浮かない顔をしていた。
「わしが話せるのはこのくらいじゃ。」
「あの、屋敷の方を調べることってできませんか?」
「調べてもいいが、今はポリ公で追い返されるのがオチじゃよ。
わしも追い返されたからな」
お礼を言い、オドロキたちは屋敷へと足を向ける。