親の心子知らず
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「やーっと本性だしたな。アバズレ女」
ピッと妙子の手首に痛みが走る。
彼女の手から銃が再び落ちた。
痛みの原因を知ろうと、妙子は当てられた物体を確認すると、それは小石だった。
彼女は石が飛んできた方向に振り向くと、目を見張り顔を強張らせた。
「っ!?鬼風!!」
赤鬼の面を取り去り、ツリ目の美青年がこめかみに血を散らして立っていた。
「なんだなんだ?幽霊でも見たような顔しちゃって」
「死んだはずじゃ……!」
「"鬼"がそんなオモチャで死ぬかよ」
秋波のような目元の優男が、月の影のように薄い笑みを浮かべる。
恐ろしい鬼の面をつけていたときよりも、目の前の柔らかい美貌の方に妙子は寒気を感じた。
異形の雰囲気を漂わせる不気味な青年に、奥方は怯む。
だが、自分の戦況を思い出し、すぐに冷徹な笑みを浮かべる。
「どっちにしろ、お前さえ捕まえれば
アンタのせいにしてこの坊ちゃんを殺すことは可能。
この泥棒を捕まえなさい」
頭から血を垂らす泥棒と女子供に、黒服たちが一歩詰め寄る。
「鬼風!」
「あぁん?なんだメイド長?」
「あなた、どうやってこの人数に勝つつもりですか」
「はぁ?んなもん無理だよ」
あっさりと負けを認める泥棒に、メイド長は怒りを通り越して呆れる。
「こんな団体様に泥棒1人が敵うわきゃねえだろう」
周囲を敵に囲まれ、勝ち目どころか逃げ場のない状況。
メイド長が文句を口にしかけた瞬間、怪盗は秋風のような涼しい笑みを唇に描く。
「悪党は団体には勝てない。だから卑怯な手を使うんだよ」
その瞬間、パンッと庭園に暗闇のカーテンが降ろされた。
…………。
泥棒を照らす投光器および、屋敷全土の電気がすべてストップしたのだ。
突然のアクシデントに屋敷にいる人々は動揺した。
ただ1人を除いて。
「ぎゃっ」
「うわっ」
短い悲鳴が続く。
静寂の煤色の空間で、無音で蠢く闇の者に男たちが戦慄した。
「鬼風だっ!相手は1人!怯むな!」
勇気あるものが腹に力を入れ、喝を入れる。
だが、それは無意味に終わった。
なぜなら、敵に怯むなと言われても、
男たちにはその敵がどこにいるのかさえわからなかったのだから。
それどころか、敵はおろか味方さえ見えない状態なのであった。
敵は暗闇をものともせず、こちらの位置を正確に捕らえて攻撃を繰り出している。
「安心しろ!すぐに電気がつく!」
一人が思い出したかのように叫ぶと、その通り庭園が明るくなる。
庭園には黒服の半分以上が地面に倒れこんでいた。
「冷静になれ!半分減らされたとはいえ数ならこちらが圧倒的に有利だ!」
その言葉に黒服たちの士気が戻る。
メイド長と子どもの姿はなく、はぁはぁと肩を上下して息を切らす泥棒だけがその場に立っていた。
鬼風はくっと苦渋の顔を浮かべる。
「くそっ。暗闇で倒せるかと思ったんだが……」
「残念だったな」
「お願いだ。っ、もう一度灯りを消してくれ」
顔を俯かせた怪盗のそんな戯言などもちろん耳を貸さず、黒服たちが一斉に息を切らす泥棒へと飛びかかる。
顔を伏せていた鬼風が顔をあげる。
「あーあ。せっかく忠告してやったのに……」
呆れたような表情で、鬼が肩をすくめる。
パパパン!!!
連続した発砲音とともに、鬼風に襲い掛かろうとした黒服たちが倒れていく。
「なんだっ!?」
「言ったろ。灯りを消してくれって」
「銃撃!?一体どこから!?」
警備員がその場を見回すが、銃を持った相手はどこにも見えなかった。
その1人がある方向へ顔を上げた。
「まさか、狙撃!?」
「バカ言うな!狙撃できる高いところ、この近くにはないぞ!」
「一番近いビルだって最低2kmは離れてる!」
それができちゃうんだよなぁー。
モミジは黒服の会話にほくそ笑む。
「安心しな。殺しちゃいねえよ」
よく通る泥棒の男の声が、その場に風のように広がる。
「ちょっとしたサービスで臨死体験をさせてやってるけどな。
詳しいことはわからんが、神経に着弾すると脳が"死"を確認するらしい」
鬼の泥棒が腰に手を当て、黒服たちを見回す。
「要するに、体に当たったら"死ぬ"ほど痛い。それだけだ」
闇の住人の言葉と、その影のある笑みに、黒服たちはたじろぐ。
…………
同日 午後6時23分
ウミノビル 屋上
「くっくっくっ。風もない絶好の狙撃日和だぜ~」
『頼むぞ"杏理"』
いつもの厚底眼鏡を頭にひっかけ、スコープなしでライフル銃を構える細見の女性。
杏里はイヤホンマイクから聞こえた声に、喉元で笑いながら口を開く。
「ククッ。了解ぃ~」
『あと……当てるなよ。頼むから当てるなよ。絶対だぞ』
チャキッと杏里がライフル銃を構え直す。
「もしもしアタシ、アンリさん。今あなたの頭を見つめているわ」
『フリじゃねえよ』
機械越しにモミジの上擦った声が杏里の耳に届く。
杏里は弾の入っていないライフル銃を放り捨て、近くのライフル銃を構える。
「それならアタシの計画通りに動くことだな。モミジ」
『わかってるよ。相棒』
通信を切り、杏里は鬼の居る場所を見据える。
「よく言うぜぇー。アンタの場合、当てる方が難しいっつーの」
杏里はククッと口の片端を吊り上げる。
ピッと妙子の手首に痛みが走る。
彼女の手から銃が再び落ちた。
痛みの原因を知ろうと、妙子は当てられた物体を確認すると、それは小石だった。
彼女は石が飛んできた方向に振り向くと、目を見張り顔を強張らせた。
「っ!?鬼風!!」
赤鬼の面を取り去り、ツリ目の美青年がこめかみに血を散らして立っていた。
「なんだなんだ?幽霊でも見たような顔しちゃって」
「死んだはずじゃ……!」
「"鬼"がそんなオモチャで死ぬかよ」
秋波のような目元の優男が、月の影のように薄い笑みを浮かべる。
恐ろしい鬼の面をつけていたときよりも、目の前の柔らかい美貌の方に妙子は寒気を感じた。
異形の雰囲気を漂わせる不気味な青年に、奥方は怯む。
だが、自分の戦況を思い出し、すぐに冷徹な笑みを浮かべる。
「どっちにしろ、お前さえ捕まえれば
アンタのせいにしてこの坊ちゃんを殺すことは可能。
この泥棒を捕まえなさい」
頭から血を垂らす泥棒と女子供に、黒服たちが一歩詰め寄る。
「鬼風!」
「あぁん?なんだメイド長?」
「あなた、どうやってこの人数に勝つつもりですか」
「はぁ?んなもん無理だよ」
あっさりと負けを認める泥棒に、メイド長は怒りを通り越して呆れる。
「こんな団体様に泥棒1人が敵うわきゃねえだろう」
周囲を敵に囲まれ、勝ち目どころか逃げ場のない状況。
メイド長が文句を口にしかけた瞬間、怪盗は秋風のような涼しい笑みを唇に描く。
「悪党は団体には勝てない。だから卑怯な手を使うんだよ」
その瞬間、パンッと庭園に暗闇のカーテンが降ろされた。
…………。
泥棒を照らす投光器および、屋敷全土の電気がすべてストップしたのだ。
突然のアクシデントに屋敷にいる人々は動揺した。
ただ1人を除いて。
「ぎゃっ」
「うわっ」
短い悲鳴が続く。
静寂の煤色の空間で、無音で蠢く闇の者に男たちが戦慄した。
「鬼風だっ!相手は1人!怯むな!」
勇気あるものが腹に力を入れ、喝を入れる。
だが、それは無意味に終わった。
なぜなら、敵に怯むなと言われても、
男たちにはその敵がどこにいるのかさえわからなかったのだから。
それどころか、敵はおろか味方さえ見えない状態なのであった。
敵は暗闇をものともせず、こちらの位置を正確に捕らえて攻撃を繰り出している。
「安心しろ!すぐに電気がつく!」
一人が思い出したかのように叫ぶと、その通り庭園が明るくなる。
庭園には黒服の半分以上が地面に倒れこんでいた。
「冷静になれ!半分減らされたとはいえ数ならこちらが圧倒的に有利だ!」
その言葉に黒服たちの士気が戻る。
メイド長と子どもの姿はなく、はぁはぁと肩を上下して息を切らす泥棒だけがその場に立っていた。
鬼風はくっと苦渋の顔を浮かべる。
「くそっ。暗闇で倒せるかと思ったんだが……」
「残念だったな」
「お願いだ。っ、もう一度灯りを消してくれ」
顔を俯かせた怪盗のそんな戯言などもちろん耳を貸さず、黒服たちが一斉に息を切らす泥棒へと飛びかかる。
顔を伏せていた鬼風が顔をあげる。
「あーあ。せっかく忠告してやったのに……」
呆れたような表情で、鬼が肩をすくめる。
パパパン!!!
連続した発砲音とともに、鬼風に襲い掛かろうとした黒服たちが倒れていく。
「なんだっ!?」
「言ったろ。灯りを消してくれって」
「銃撃!?一体どこから!?」
警備員がその場を見回すが、銃を持った相手はどこにも見えなかった。
その1人がある方向へ顔を上げた。
「まさか、狙撃!?」
「バカ言うな!狙撃できる高いところ、この近くにはないぞ!」
「一番近いビルだって最低2kmは離れてる!」
それができちゃうんだよなぁー。
モミジは黒服の会話にほくそ笑む。
「安心しな。殺しちゃいねえよ」
よく通る泥棒の男の声が、その場に風のように広がる。
「ちょっとしたサービスで臨死体験をさせてやってるけどな。
詳しいことはわからんが、神経に着弾すると脳が"死"を確認するらしい」
鬼の泥棒が腰に手を当て、黒服たちを見回す。
「要するに、体に当たったら"死ぬ"ほど痛い。それだけだ」
闇の住人の言葉と、その影のある笑みに、黒服たちはたじろぐ。
…………
同日 午後6時23分
ウミノビル 屋上
「くっくっくっ。風もない絶好の狙撃日和だぜ~」
『頼むぞ"杏理"』
いつもの厚底眼鏡を頭にひっかけ、スコープなしでライフル銃を構える細見の女性。
杏里はイヤホンマイクから聞こえた声に、喉元で笑いながら口を開く。
「ククッ。了解ぃ~」
『あと……当てるなよ。頼むから当てるなよ。絶対だぞ』
チャキッと杏里がライフル銃を構え直す。
「もしもしアタシ、アンリさん。今あなたの頭を見つめているわ」
『フリじゃねえよ』
機械越しにモミジの上擦った声が杏里の耳に届く。
杏里は弾の入っていないライフル銃を放り捨て、近くのライフル銃を構える。
「それならアタシの計画通りに動くことだな。モミジ」
『わかってるよ。相棒』
通信を切り、杏里は鬼の居る場所を見据える。
「よく言うぜぇー。アンタの場合、当てる方が難しいっつーの」
杏里はククッと口の片端を吊り上げる。