親の心子知らず
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2月4日 午後6時
富士井屋敷 庭園
夕日が沈み、夜になった。
屋敷の庭園で投光器が光る。
奥方である富士井 妙子とメイド長がその中心で相手が来るのを待っていた。
薄闇の中から赤い般若の面が浮き上がり、彼女たちの前に異形の泥棒が現れる。
「約束のお姫様は?」
「実は、「―――ご心配なく。こちらに」
奥方は背後を振り返り、目を剥く。
話し始めようとした奥方の言葉を遮り、後ろに控えていたメイド長が赤と白の着物を着た人形を抱えていた。
「よし。それなら同時に交換だ。前に出ろ」
坊ちゃんのぐるぐる巻きから垂れた縄を持ちながら、赤い面の泥棒がゆっくりと足を進める。
それに合わせて、メイド長も泥棒に向かって足を踏み出す。
お互いあと数歩という距離まで近づいた瞬間
フライングで鬼風が先に動いた。
メイド長の肩を抱き、横に倒れようとした瞬間
パァンと重く乾いた音と共に、鬼風のこめかみから彼岸花のような赤い花が咲きこぼれる。
赤い仮面が宙を舞い、地面に落下した。
メイド長の顔に鬼のこめかみから溢れた赤い液体が飛び散る。
彼女が背後を振り返ると、微かに煙を燻らせた銃口を妙子が彼女たちに向けていた。
胸の谷間に隠し持っていた拳銃で奥方が発砲したのだ。
そこには目を吊り上げ悪鬼のような形相をしながら、荒々しい息遣いをしている女が居た。
「散々、邪魔しやがって。このクソ泥!」
妙子は鬼の泥棒に近寄り、動かない鬼をゴミ袋のように蹴飛ばす。
ぐったりとして物と化した鬼をメイド長が呆然と目で追っていると、奥方から銃口を突きつけられた。
「なっなんのつもりで「あんたも余計なことしてくれたわね」
邪魔者を始末したおかげか、奥方の顔から怒りによる赤味が引いていた。
「全部こいつのせいにする計画だったのに、あんたが人形なんか持ってくるから計画が狂ったじゃない」
「どういうことですか!?相手は人形を渡せば浩太様を返すと」
「それが余計なのよ」
妙子は撃鉄を起こし、引き鉄に指をかける。
「やっやめて、ママ」
妙子が銃身の先を鬼の泥棒に向けていると、浩太が制止の声をあげる。
だが、彼女のの目はいつもの息子を見る眼差しではなかった。
「あぁ、アンタから先でいいわ」
感情の消えた声色で、女は銃口を浩太の額に突きつける。
「ま……マ」
「ママ、ママってうざったかったのよ」
浩太の前にメイド長が飛び出る。
「あなた……やっぱり旦那様の遺産が目当てで浩太様を!」
「そりゃそうよ。こいつに気に入られれば好きなように買い物ができるのよ。
しかも、あれには子どもはこいつだけ。
相続権はこいつと私の二人なら、こいつを殺せばお金は私のもの」
メイド長が奥方の手から銃を奪い、それを素早く遠くへ蹴とばす。
「浩太様!早くお逃げください!外に出れば警察がいるはずです!」
「うっうそ……だ……だって……ママ……もとにもどってよ」
「だーかーらー、全部嘘なんだってば」
「うそだ……」
子どもの顔から血の気が引き、声が潤む。
愕然して立ち尽くす子どもに、メイド長が近寄る。
腕を振り上げ、パァンと乾いた音が響く。
子どもが頬を押さえると、メイド長が子どもの両肩を掴んだ。
「早くいきなさい!ここは私がなんとかいたしますから!」
「まだ状況がよくわかってないみたいね」
パチンと妙子が指を鳴らす。
ずらっと黒服の男が現れる。
その数は約百人。
そのうちの一人が拳銃を拾い、奥方に手渡す。
威圧感のある男たちに囲まれ、鉄のように堅いメイド長の顔に怯えの影が差し込む。
だが彼女は、立ち竦みぶるぶると体を震わす子どもを見て、表情を引き絞る。
メイド長が動けずにいる浩太をその胸に抱き寄せた。
「メイドちょう……」
「大丈夫です。命に代えても、あなたをお守りいたします」
安心させるように、小さな頭を撫でて浩太を妙子から隠すように抱き込んだ。
妙子はその美貌に酷薄な笑みを浮かべる。
「あんたたちの味方なんてとっくにいないのよ」
富士井屋敷 庭園
夕日が沈み、夜になった。
屋敷の庭園で投光器が光る。
奥方である富士井 妙子とメイド長がその中心で相手が来るのを待っていた。
薄闇の中から赤い般若の面が浮き上がり、彼女たちの前に異形の泥棒が現れる。
「約束のお姫様は?」
「実は、「―――ご心配なく。こちらに」
奥方は背後を振り返り、目を剥く。
話し始めようとした奥方の言葉を遮り、後ろに控えていたメイド長が赤と白の着物を着た人形を抱えていた。
「よし。それなら同時に交換だ。前に出ろ」
坊ちゃんのぐるぐる巻きから垂れた縄を持ちながら、赤い面の泥棒がゆっくりと足を進める。
それに合わせて、メイド長も泥棒に向かって足を踏み出す。
お互いあと数歩という距離まで近づいた瞬間
フライングで鬼風が先に動いた。
メイド長の肩を抱き、横に倒れようとした瞬間
パァンと重く乾いた音と共に、鬼風のこめかみから彼岸花のような赤い花が咲きこぼれる。
赤い仮面が宙を舞い、地面に落下した。
メイド長の顔に鬼のこめかみから溢れた赤い液体が飛び散る。
彼女が背後を振り返ると、微かに煙を燻らせた銃口を妙子が彼女たちに向けていた。
胸の谷間に隠し持っていた拳銃で奥方が発砲したのだ。
そこには目を吊り上げ悪鬼のような形相をしながら、荒々しい息遣いをしている女が居た。
「散々、邪魔しやがって。このクソ泥!」
妙子は鬼の泥棒に近寄り、動かない鬼をゴミ袋のように蹴飛ばす。
ぐったりとして物と化した鬼をメイド長が呆然と目で追っていると、奥方から銃口を突きつけられた。
「なっなんのつもりで「あんたも余計なことしてくれたわね」
邪魔者を始末したおかげか、奥方の顔から怒りによる赤味が引いていた。
「全部こいつのせいにする計画だったのに、あんたが人形なんか持ってくるから計画が狂ったじゃない」
「どういうことですか!?相手は人形を渡せば浩太様を返すと」
「それが余計なのよ」
妙子は撃鉄を起こし、引き鉄に指をかける。
「やっやめて、ママ」
妙子が銃身の先を鬼の泥棒に向けていると、浩太が制止の声をあげる。
だが、彼女のの目はいつもの息子を見る眼差しではなかった。
「あぁ、アンタから先でいいわ」
感情の消えた声色で、女は銃口を浩太の額に突きつける。
「ま……マ」
「ママ、ママってうざったかったのよ」
浩太の前にメイド長が飛び出る。
「あなた……やっぱり旦那様の遺産が目当てで浩太様を!」
「そりゃそうよ。こいつに気に入られれば好きなように買い物ができるのよ。
しかも、あれには子どもはこいつだけ。
相続権はこいつと私の二人なら、こいつを殺せばお金は私のもの」
メイド長が奥方の手から銃を奪い、それを素早く遠くへ蹴とばす。
「浩太様!早くお逃げください!外に出れば警察がいるはずです!」
「うっうそ……だ……だって……ママ……もとにもどってよ」
「だーかーらー、全部嘘なんだってば」
「うそだ……」
子どもの顔から血の気が引き、声が潤む。
愕然して立ち尽くす子どもに、メイド長が近寄る。
腕を振り上げ、パァンと乾いた音が響く。
子どもが頬を押さえると、メイド長が子どもの両肩を掴んだ。
「早くいきなさい!ここは私がなんとかいたしますから!」
「まだ状況がよくわかってないみたいね」
パチンと妙子が指を鳴らす。
ずらっと黒服の男が現れる。
その数は約百人。
そのうちの一人が拳銃を拾い、奥方に手渡す。
威圧感のある男たちに囲まれ、鉄のように堅いメイド長の顔に怯えの影が差し込む。
だが彼女は、立ち竦みぶるぶると体を震わす子どもを見て、表情を引き絞る。
メイド長が動けずにいる浩太をその胸に抱き寄せた。
「メイドちょう……」
「大丈夫です。命に代えても、あなたをお守りいたします」
安心させるように、小さな頭を撫でて浩太を妙子から隠すように抱き込んだ。
妙子はその美貌に酷薄な笑みを浮かべる。
「あんたたちの味方なんてとっくにいないのよ」