親の心子知らず
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「ところで、あのガキんちょは?」
「浩太くんはさっきまで暴れてたんですけど、疲れたのか寝ちゃいました」
「……ある意味大物だな、あのガキんちょ……」
モミジは呆れたように半目になった。
いくら命を狙われてないとはいえ、仮にも誘拐犯のアジトで寝れる図太い神経に鬼風はある意味感心した。
「つーか、卵ちゃん。君、ここに居座るつもりか?」
「浩太くんを返してくれるまでみぬきは帰りません!」
「命まで取る気はねえし、絶間姫さえ頂ければガキんちょはすぐ返すっつーの」
モミジはそう言うが、イマイチ信用されていないようでみぬきは警戒心を解く様子はない。
「どうして鬼風さんは"金山"って人の作品ばかり狙うんですか?」
「おしゃべりな子だなぁ。というかさっきから質問ばっかだな」
「だって、鬼風さんは謎が多過ぎるんです」
鬼風はめんどくさそうな顔をする。
「別に犯罪者の情報なんてどうでもいいだろ」
「みぬきは興味あります!謎多きカッコイイ男の子のことを知りたいと思うのは当然ですよ!」
モミジはズルッと肩を落とした。
顔からずれた眼鏡のブリッジを指で持ち上げる。
「……私は"男の子"って年ではねえぞ」
「いくつなんですか?」
「83歳」
「えーーーー!?」
少女は口を開けて驚きの声をあげたが、すぐに目尻を吊り上げる。
「って、それ嘘でしょ!」
ふっと笑みを浮かべながら、鬼風はその涼しい目元で少女に秋波を送る。
「いくつだと思う?」
「うーん……30……36歳?」
「……なっナルホドくんより年上に見えるのかよ……」
ずーんと鬼風はショックを受けたが、すぐに顔をあげる。
「オドロキくんより年上で、ナルホドくんより年下とだけ言っておくよ」
「教えてくれないんですか?」
「世の中、わからない方が楽しいことだってあるだろ」
モミジは片目を閉じる。
「……それは、そうですけど……」
突如、ガタンッという音が響く。
喚き声が聞こえ、鬼風が額を押さえた。
「小さな怪獣が起きちまったみてぇだな」
「みぬき、様子見てきます」
「あっおい!」
みぬきが浩太のいる部屋に一目散に駆けていき、はぁと鬼風はため息を吐きそれに続こうとした。
鬼風のイヤリングからコール音が鳴り響く。
「どうした?杏理」
『交渉にトラブル発生だぜー』
「トラブル?」
『"雲の絶間姫を予告の時間に、人質と交換する"ってメールで送ったんだが、反応がない』
「はぁ?ちゃんと届いてないだけじゃねえの?」
『このアタシがミスるかよ。まぁ、一応電話でも同じ要求をしたんだが、ヤッコさん途中で切りやがった』
それを聞き、鬼風が怒気を含んだ口調で口を開く。
「てめえのガキんちょだろ。なんで交渉に乗ってこねえ」
『さぁな。慎重というには犯人からの電話を切るっつー軽率なことをするし
こうなったら……警察の方に知らせるしかなさそうだ』
「まさか警察に頼るはめになるとは」
鬼風は杏理から聞いた冨士井屋敷の人たちの対応が気に入らなかった。
《跡取り息子と絶間姫を交換する。
息子の命が惜しくば絶間姫を持ってこい》
これがテロなら政府は絶対に応じることはないだろう。
だが、民間人が、大事な倅を人質に取られて要求に応じないとはおかしい。
鬼風は富士井屋敷の奥方の胸の内を確信した。
……どうやらあのアバズレは子どもよりお姫様の方が大事らしい。
『あの警部さんに連絡しとけば?
私らのせいで減給されてるみたいだから、ここらで活躍させてやらんとね』
鬼風が杏里と会話しながら人質の居る部屋に入ると、鬼の腹に子どもが飛びついてきた。
うっと思わず鬼はよろける。
みぬきが子どもの拘束を解いてしまったようで、子どもがその状態でメチャクチャに鬼風の体を殴る。
「どろぼう!ぼくにひどいことしたらママがゆるさないんだからな!」
いてぇなこの野郎と思いつつ、鬼風は腹に足だけでしがみつく子どもを見下ろす。
事実を言ってやるべきかと思ったが、まだ言うべきじゃないかと口を閉じる。
子どもの言葉をしばらく黙って聞いていたが、とうとうモミジは我慢できなくなって子どもの首根っこをがしっと掴んだ。
「おい、クソガキ」
鬼風の低い声と暴言に、ピタッと浩太が固まる。
「くっくそがきってぼくのことか!?」
「てめえ以外に誰がいるんだ。あぁ?」
そこいらの凶悪犯ですらしないような、凶暴な顔で浩太を見下ろす。
「大した力もねえくせに、お家の力をさも自分の力のように使って、
威張ってる奴はクソガキで充分なんだよ」
子どもはよほど甘やかされてきたのか、鬼風の暴言に呆然として何も言えずにいる。
涙を浮かべながら、子どもが何か言い返そうと口を開く。
パンッパパパパ!
「!」
破裂音の方角にモミジは振り返る。
―――――銃撃!?
隠れ家の入り口から銃声が聞こえ、瞬時に鬼風は頭の中の逃走プランを実行する。
鬼風は子どもを脇に抱え、少女の手を引っ張った。
「杏里!ナビ頼む!」
鬼風が壁を叩くと、回転扉のようなものが回り、別の部屋の空間につながる。
ガレージにぽつんと佇む、スリムなスポーツバイクに浩太を叩きつけるように乗せた。
モミジはバイクに跨り、浩太を前に押さえつけるように乗せた。
「後ろに……」
鬼風が言う前にひらりと空色の少女が後ろに跨った。
泥棒は浩太の頭にヘルメットを被せる。
次に、少女のシルクハットを掠め取り、みぬきの頭にヘルメットを被せた。
「わっ」
勢いのよさにみぬきの頭が下がる。
モミジはシルクハットを少女の胸元に放った。
「しっかり掴まってろよ!」
モミジは床に置かれたフルフェイスヘルメットを足先で器用に手元までクルクルと飛ばす。
浮き上がったフルフェイスを手早くかぶり、レバーをキックしエンジンを吹かした。
アクセルを入れ、バイクを走らす。
「クソッタレ!銃ぶっ放しやがって!!」
『おい、モミジ』
「なに!?」
『このマヌケ』
「はぁ!?」
『はぁ、じゃねえ。発信機つけられてるだろ。ヤッコさんに位置がバレてるぜ』
「なっ!?」
体を見渡しペタペタ触ると、ちょうど自分から死角になる位置に小型の機械がつけられていた。
鬼風は自分の馬鹿さ加減に顔をしかめた。
イラ立ちをぶつけるように機械を地面に叩き捨てる。
子どもの方は念のために調べて潰したが、ドジった。
自分の方につけられていたとは。
だぁあああ!うっかり属性とか最悪だ!
両手で頭を掻きむしりたくなる衝動を抑えながら、鬼風はハンドルを握り直す。
奇襲される前に、なんとか道路に出ることができた。
バイクの後ろで銃声が聞こえる。
だが
「はやくたすけろ!ぼくはここだ!」
「バカッ!」
浩太が顔を出し、叫んだ。
鬼風はバックミラー越しにガレージから、黒ずくめの男がこちらに銃口を向けているのが見えた。
その狙いに気づいた鬼風は、顔を出していた浩太を引っ張る。
子どもの頭があったところに銃弾が抜けていく。
モミジの中で、おかしいと思ったことが確信に変わった。
相手さん、この坊ちゃんをこの状況で殺そうとしている。
さて、とりあえずはこの卵ちゃんをなんとかしないとな……。
「浩太くんはさっきまで暴れてたんですけど、疲れたのか寝ちゃいました」
「……ある意味大物だな、あのガキんちょ……」
モミジは呆れたように半目になった。
いくら命を狙われてないとはいえ、仮にも誘拐犯のアジトで寝れる図太い神経に鬼風はある意味感心した。
「つーか、卵ちゃん。君、ここに居座るつもりか?」
「浩太くんを返してくれるまでみぬきは帰りません!」
「命まで取る気はねえし、絶間姫さえ頂ければガキんちょはすぐ返すっつーの」
モミジはそう言うが、イマイチ信用されていないようでみぬきは警戒心を解く様子はない。
「どうして鬼風さんは"金山"って人の作品ばかり狙うんですか?」
「おしゃべりな子だなぁ。というかさっきから質問ばっかだな」
「だって、鬼風さんは謎が多過ぎるんです」
鬼風はめんどくさそうな顔をする。
「別に犯罪者の情報なんてどうでもいいだろ」
「みぬきは興味あります!謎多きカッコイイ男の子のことを知りたいと思うのは当然ですよ!」
モミジはズルッと肩を落とした。
顔からずれた眼鏡のブリッジを指で持ち上げる。
「……私は"男の子"って年ではねえぞ」
「いくつなんですか?」
「83歳」
「えーーーー!?」
少女は口を開けて驚きの声をあげたが、すぐに目尻を吊り上げる。
「って、それ嘘でしょ!」
ふっと笑みを浮かべながら、鬼風はその涼しい目元で少女に秋波を送る。
「いくつだと思う?」
「うーん……30……36歳?」
「……なっナルホドくんより年上に見えるのかよ……」
ずーんと鬼風はショックを受けたが、すぐに顔をあげる。
「オドロキくんより年上で、ナルホドくんより年下とだけ言っておくよ」
「教えてくれないんですか?」
「世の中、わからない方が楽しいことだってあるだろ」
モミジは片目を閉じる。
「……それは、そうですけど……」
突如、ガタンッという音が響く。
喚き声が聞こえ、鬼風が額を押さえた。
「小さな怪獣が起きちまったみてぇだな」
「みぬき、様子見てきます」
「あっおい!」
みぬきが浩太のいる部屋に一目散に駆けていき、はぁと鬼風はため息を吐きそれに続こうとした。
鬼風のイヤリングからコール音が鳴り響く。
「どうした?杏理」
『交渉にトラブル発生だぜー』
「トラブル?」
『"雲の絶間姫を予告の時間に、人質と交換する"ってメールで送ったんだが、反応がない』
「はぁ?ちゃんと届いてないだけじゃねえの?」
『このアタシがミスるかよ。まぁ、一応電話でも同じ要求をしたんだが、ヤッコさん途中で切りやがった』
それを聞き、鬼風が怒気を含んだ口調で口を開く。
「てめえのガキんちょだろ。なんで交渉に乗ってこねえ」
『さぁな。慎重というには犯人からの電話を切るっつー軽率なことをするし
こうなったら……警察の方に知らせるしかなさそうだ』
「まさか警察に頼るはめになるとは」
鬼風は杏理から聞いた冨士井屋敷の人たちの対応が気に入らなかった。
《跡取り息子と絶間姫を交換する。
息子の命が惜しくば絶間姫を持ってこい》
これがテロなら政府は絶対に応じることはないだろう。
だが、民間人が、大事な倅を人質に取られて要求に応じないとはおかしい。
鬼風は富士井屋敷の奥方の胸の内を確信した。
……どうやらあのアバズレは子どもよりお姫様の方が大事らしい。
『あの警部さんに連絡しとけば?
私らのせいで減給されてるみたいだから、ここらで活躍させてやらんとね』
鬼風が杏里と会話しながら人質の居る部屋に入ると、鬼の腹に子どもが飛びついてきた。
うっと思わず鬼はよろける。
みぬきが子どもの拘束を解いてしまったようで、子どもがその状態でメチャクチャに鬼風の体を殴る。
「どろぼう!ぼくにひどいことしたらママがゆるさないんだからな!」
いてぇなこの野郎と思いつつ、鬼風は腹に足だけでしがみつく子どもを見下ろす。
事実を言ってやるべきかと思ったが、まだ言うべきじゃないかと口を閉じる。
子どもの言葉をしばらく黙って聞いていたが、とうとうモミジは我慢できなくなって子どもの首根っこをがしっと掴んだ。
「おい、クソガキ」
鬼風の低い声と暴言に、ピタッと浩太が固まる。
「くっくそがきってぼくのことか!?」
「てめえ以外に誰がいるんだ。あぁ?」
そこいらの凶悪犯ですらしないような、凶暴な顔で浩太を見下ろす。
「大した力もねえくせに、お家の力をさも自分の力のように使って、
威張ってる奴はクソガキで充分なんだよ」
子どもはよほど甘やかされてきたのか、鬼風の暴言に呆然として何も言えずにいる。
涙を浮かべながら、子どもが何か言い返そうと口を開く。
パンッパパパパ!
「!」
破裂音の方角にモミジは振り返る。
―――――銃撃!?
隠れ家の入り口から銃声が聞こえ、瞬時に鬼風は頭の中の逃走プランを実行する。
鬼風は子どもを脇に抱え、少女の手を引っ張った。
「杏里!ナビ頼む!」
鬼風が壁を叩くと、回転扉のようなものが回り、別の部屋の空間につながる。
ガレージにぽつんと佇む、スリムなスポーツバイクに浩太を叩きつけるように乗せた。
モミジはバイクに跨り、浩太を前に押さえつけるように乗せた。
「後ろに……」
鬼風が言う前にひらりと空色の少女が後ろに跨った。
泥棒は浩太の頭にヘルメットを被せる。
次に、少女のシルクハットを掠め取り、みぬきの頭にヘルメットを被せた。
「わっ」
勢いのよさにみぬきの頭が下がる。
モミジはシルクハットを少女の胸元に放った。
「しっかり掴まってろよ!」
モミジは床に置かれたフルフェイスヘルメットを足先で器用に手元までクルクルと飛ばす。
浮き上がったフルフェイスを手早くかぶり、レバーをキックしエンジンを吹かした。
アクセルを入れ、バイクを走らす。
「クソッタレ!銃ぶっ放しやがって!!」
『おい、モミジ』
「なに!?」
『このマヌケ』
「はぁ!?」
『はぁ、じゃねえ。発信機つけられてるだろ。ヤッコさんに位置がバレてるぜ』
「なっ!?」
体を見渡しペタペタ触ると、ちょうど自分から死角になる位置に小型の機械がつけられていた。
鬼風は自分の馬鹿さ加減に顔をしかめた。
イラ立ちをぶつけるように機械を地面に叩き捨てる。
子どもの方は念のために調べて潰したが、ドジった。
自分の方につけられていたとは。
だぁあああ!うっかり属性とか最悪だ!
両手で頭を掻きむしりたくなる衝動を抑えながら、鬼風はハンドルを握り直す。
奇襲される前に、なんとか道路に出ることができた。
バイクの後ろで銃声が聞こえる。
だが
「はやくたすけろ!ぼくはここだ!」
「バカッ!」
浩太が顔を出し、叫んだ。
鬼風はバックミラー越しにガレージから、黒ずくめの男がこちらに銃口を向けているのが見えた。
その狙いに気づいた鬼風は、顔を出していた浩太を引っ張る。
子どもの頭があったところに銃弾が抜けていく。
モミジの中で、おかしいと思ったことが確信に変わった。
相手さん、この坊ちゃんをこの状況で殺そうとしている。
さて、とりあえずはこの卵ちゃんをなんとかしないとな……。