親の心子知らず
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「じゃあひとつ私も教えてやるよ」
鬼風はそばに置いてあった赤い鬼の仮面をヒョイッと摘み上げる。
「私の仮面も……」
恐ろしい形相の異形の面を魔術師に見えるように持ち変える。
「……実は小宇宙なのさ」
マジックパンツで消えたはずの写真が、鬼風の仮面から出てくる。
「えっ」
魔術師の笑顔が消え、本来の少女の表情が驚倒の色を浮かべた。
「ウソっ!?ない!」
表情をすぐに消し、険しくなった目が鬼の青年の顔に注がれた。
「大魔術師の道はまだまだ遠いな。卵ちゃん」
鬼の青年は意地悪く口元を釣り上げ、鬼の仮面から取り出した写真を少女に返した。
ぐっと白い手袋に包まれた手を固く握りしめながら、少女が訊ねる。
「……いつ盗んだんですか?」
「言ったろ。私の仮面も小宇宙って」
少女は固い声色で問い続ける。
「言い方、変えます。どうしてマジックの"タネ"を知ってるんですか?」
その言葉に鬼風から表情が消える。
「私の目にかかれば簡単に見抜けるさ」
少女は悲痛の色を奥に隠し、顔を俯かせるとシルクハットで目元が見えなくなる。
白い手袋の拳を胸に当てた。
「……これ。パパが教えてくれたマジックなんです」
「パパ……ね……」
その言葉を発するとき、モミジの表情に翳がかかる。
うす暗いものが鬼の顔に浮かんだ。
重い沈黙が永遠に感じられるように落ちる。
その沈黙に耐えられなかったのは鬼風だった。
「……昔、教えてもらったんだよ。君と……よく似た人から」
静かな声色で答え、追想するようにぼんやりと薄闇色の瞳の先が空を漂っていた。
みぬきはさらに追及しようとしたが、泥棒を見て口を閉ざす。
雨が降る前の曇り空のような哀感を含んだ鬼の雰囲気に、それ以上問い質すことができなかった。
顔にほろ苦いものを浮かべている泥棒に、みぬきは別の質問を口にする。
「どうして、鬼風さんは魔術師が嫌いなんですか?」
「別に嫌いじゃねえよ」
鬼から暗鬱とした表情が消え、いつもの調子に戻った。
「じゃあ、どうして魔術師をペテン師って言うんですか?」
「私がそう思ってるからそう言ってるだけさ」
しゅんっと顔を俯かせるみぬきに青年は戸惑いの表情を浮かべる。
「なっ泣くなよ」
みぬきはちっとも泣いていないのだが、みぬきの雰囲気にメガネの青年はおろおろし始めた。
鬼風がぎこちなく言葉を紡ぐ。
「あー……ちょっと過去に奇術師と嫌なことがあったんだよ。それでそのなんとなく嫌いなだけだ」
「みぬき泣いてませんよ?」
「なんだよ紛らわしい……」
ふと、泣き落としだったら人質を解放してくれたのだろうかとみぬきは思いついた。
だが、さきほどの交渉の結果から、誘拐犯の考えは変わらないだろうとその考えをすぐに頭から捨てる。
「鬼風さんはオドロキさんのことが好きなんですか?」
「また唐突な……好きだって言ったらどうするんだ?」
「やっぱり」
「君の前でそんなにわかりやすく態度に出した覚えはないんだかね」
「見てればわかりますよ。」
「どうして見ればわかるんだよ」
「女の勘です」
「あのなぁ」
「なーんて。ちょっと嘘吐きました。」
みぬきはこつんと自分の手で頭を叩く。
「オドロキさんを見かけたとき嬉しそうにしてるから」
鬼の青年は、目を丸くしてぽかんと口を開け、間抜け面を晒す。
その言葉を聞き、鬼風は忌々しそうにみぬきを見た。
「……やっぱ、あのじいさんの孫だわ」
「なにか言いましたか?」
「大魔術師の卵を侮っちゃいけねえなって言っただけさ」
「えへへ」
その笑顔を見て、モミジはふうと息を吐く。
「あっ鬼風さん」
「人質なら解放しねえぞ」
「女装写真も返してください」
「…………」
眼鏡のレンズが逆光して、モミジの瞳が見えなくなる。
よく見ると青年のこめかみにうっすらと汗が浮き出ていた。
「返してください」
「…………」
「か・え・し・て・く・だ・さ・い」
少女から笑顔で一字ずつ区切りながら言われ、鬼風はダラダラと冷や汗を流した。
鬼風はそばに置いてあった赤い鬼の仮面をヒョイッと摘み上げる。
「私の仮面も……」
恐ろしい形相の異形の面を魔術師に見えるように持ち変える。
「……実は小宇宙なのさ」
マジックパンツで消えたはずの写真が、鬼風の仮面から出てくる。
「えっ」
魔術師の笑顔が消え、本来の少女の表情が驚倒の色を浮かべた。
「ウソっ!?ない!」
表情をすぐに消し、険しくなった目が鬼の青年の顔に注がれた。
「大魔術師の道はまだまだ遠いな。卵ちゃん」
鬼の青年は意地悪く口元を釣り上げ、鬼の仮面から取り出した写真を少女に返した。
ぐっと白い手袋に包まれた手を固く握りしめながら、少女が訊ねる。
「……いつ盗んだんですか?」
「言ったろ。私の仮面も小宇宙って」
少女は固い声色で問い続ける。
「言い方、変えます。どうしてマジックの"タネ"を知ってるんですか?」
その言葉に鬼風から表情が消える。
「私の目にかかれば簡単に見抜けるさ」
少女は悲痛の色を奥に隠し、顔を俯かせるとシルクハットで目元が見えなくなる。
白い手袋の拳を胸に当てた。
「……これ。パパが教えてくれたマジックなんです」
「パパ……ね……」
その言葉を発するとき、モミジの表情に翳がかかる。
うす暗いものが鬼の顔に浮かんだ。
重い沈黙が永遠に感じられるように落ちる。
その沈黙に耐えられなかったのは鬼風だった。
「……昔、教えてもらったんだよ。君と……よく似た人から」
静かな声色で答え、追想するようにぼんやりと薄闇色の瞳の先が空を漂っていた。
みぬきはさらに追及しようとしたが、泥棒を見て口を閉ざす。
雨が降る前の曇り空のような哀感を含んだ鬼の雰囲気に、それ以上問い質すことができなかった。
顔にほろ苦いものを浮かべている泥棒に、みぬきは別の質問を口にする。
「どうして、鬼風さんは魔術師が嫌いなんですか?」
「別に嫌いじゃねえよ」
鬼から暗鬱とした表情が消え、いつもの調子に戻った。
「じゃあ、どうして魔術師をペテン師って言うんですか?」
「私がそう思ってるからそう言ってるだけさ」
しゅんっと顔を俯かせるみぬきに青年は戸惑いの表情を浮かべる。
「なっ泣くなよ」
みぬきはちっとも泣いていないのだが、みぬきの雰囲気にメガネの青年はおろおろし始めた。
鬼風がぎこちなく言葉を紡ぐ。
「あー……ちょっと過去に奇術師と嫌なことがあったんだよ。それでそのなんとなく嫌いなだけだ」
「みぬき泣いてませんよ?」
「なんだよ紛らわしい……」
ふと、泣き落としだったら人質を解放してくれたのだろうかとみぬきは思いついた。
だが、さきほどの交渉の結果から、誘拐犯の考えは変わらないだろうとその考えをすぐに頭から捨てる。
「鬼風さんはオドロキさんのことが好きなんですか?」
「また唐突な……好きだって言ったらどうするんだ?」
「やっぱり」
「君の前でそんなにわかりやすく態度に出した覚えはないんだかね」
「見てればわかりますよ。」
「どうして見ればわかるんだよ」
「女の勘です」
「あのなぁ」
「なーんて。ちょっと嘘吐きました。」
みぬきはこつんと自分の手で頭を叩く。
「オドロキさんを見かけたとき嬉しそうにしてるから」
鬼の青年は、目を丸くしてぽかんと口を開け、間抜け面を晒す。
その言葉を聞き、鬼風は忌々しそうにみぬきを見た。
「……やっぱ、あのじいさんの孫だわ」
「なにか言いましたか?」
「大魔術師の卵を侮っちゃいけねえなって言っただけさ」
「えへへ」
その笑顔を見て、モミジはふうと息を吐く。
「あっ鬼風さん」
「人質なら解放しねえぞ」
「女装写真も返してください」
「…………」
眼鏡のレンズが逆光して、モミジの瞳が見えなくなる。
よく見ると青年のこめかみにうっすらと汗が浮き出ていた。
「返してください」
「…………」
「か・え・し・て・く・だ・さ・い」
少女から笑顔で一字ずつ区切りながら言われ、鬼風はダラダラと冷や汗を流した。