親の心子知らず
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#mtr29#
茶色く大胆にカールさせた巻き髪の垂れ目な女性が、顔を真っ赤にさせ、近くの花瓶を床に叩きつけた。
零れ落ちそうな谷間に、きゅっとしまった細いウエスト、丸く盛り上がったヒップ。
グラマラスなボディを赤いイノセントドレスに包んでいる。
首には白い毛皮を巻いていた。
「雲の絶間姫(くものたえまのひめ)を頂くですって…!」
彼女はテーブルに投げ捨てた予告状を睨む。
「主人の宝を渡しはしないわ」
テーブルの予告状を手に取り、怒りに任せてそれを引き裂いた。
「警察曰く、二月四日にこの泥棒は現れる。
冨士井家から絶間姫を奪われる前に、必ず捕まえてやるわ」
破れた紙の破片を床に捨て、その上にガッとハイヒールを振り下ろす。
グリグリと憎しみを込めるように紙を踏みつぶす。
しばらくして、気が済んだのか、奥方である冨士井 妙子はパンパンと手を叩く。
「奥様。お呼びでしょうか」
ドアから三つ編みのメイドがすっと現れる。
「これ、片しておきなさい」
妙子は床に散らばった花瓶の破片を顎でしめす。
「かしこまりました」
メイドは手の平を腹に当て、腰からきっちり礼と取った。
三つ編みのメイドが、取り出したちりとりと箒でさっとガラスの破片を片づける。
それが終わると、メイドは部屋をすぐに退出した。
扉を閉め、メイドが微かに肩をすくめる。
やれやれ。もう泥棒が入り込んでるとも知らないで、呑気な奥さんだな。
表情はぴくりとも動かさず心の中で三つ編みメイド――――――鬼風が心の中でつぶやく。
警備体制を調べるために鬼風はすでに屋敷のメイドとして潜入済みであったのだ。
彼女は床に引かれた赤い絨毯の上を歩く。
ふと目線を足元に落とし、はぁとため息をこぼす。
だが、鬼風はぶんぶんと何やら脳内の思考を振り落とすかのように頭を振る。
『モミジ。警備の状況は』
耳元のイヤリングから聞こえた音声に対し、周囲に目を走らせてから、鬼風は腕時計に向かって小さく話す。
「前日だからまだ薄いけど、明日になれば三倍に増やすってさ」
『ククッ。数が増えても木偶の棒が増えるだけだろうけどねー。そのほかになにか情報はあるかい?』
「あぁ、そうだ。重要なこと忘れてた」
『ほう。くわしく聞かせな』
「あぁ、驚くなよ。ここの夫人は
……額の形が汚い」
『死ね』
「ひでぇ!ちょっここは重要だぞ!額の形が汚いって言ったけど、ストレート額が汚いってわけじゃなくて」
『死ね』
「待って!もっと重要なことがあるんだ!だから、ちゃんと聞いてくれよ!」
『今度はちゃんとしてくれよー』
「実はな。ここのメイド長めっちゃ綺麗な富士額な『もうそろそろ交代時間になるんだろすぐにあがってこっちに来い』
杏里は相方の言葉を無視して、ノンブレスで淡々と要件を伝えた。
あっちょっ、とモミジが制止をかける前に、ブチッと通信が無遠慮に切られる。
「なにさ……別におデコフェチってわけじゃないんだぞ……これにはそれなりに理由があってだな……。
というかなんなんだよあの夫人のつまらないストレートな額は!顔が良くても額ですべてが台無しじゃないか!
死んだ旦那もまっすぐなつまらない額だったし…。
あぁもう!すべての人類が富士額になればいいのに!
そうすれば私の脳内にはいつだって彼のことを思い出せるのに!」
ふうと息を吐き、鬼風は再び赤い絨毯を見つめる。
突如、ばっと地面にしゃがみこむ。
そして唇をかみしめた後、絞り出したような声を出す。
「オドロキくんに会いたい……!」
この前会ったのは昨日の午後3時でいつものように仕事がなくて暇なのか掃除してたなさすがに今日はなにかしらの雑用が入ってるだろでもあそこ儲かってないみたいだし
もやもやとした思いを抱えながら、頭の中で昨日の事務所の光景を鮮明に思い出すモミジ。
ここで訂正しておくと、本人はオドロキに会うと称しているが、実際は外から事務所の窓を双眼鏡で覗いているだけである。
「あー……あの丸くて白い綺麗なおデコにキスしたい……」
一つため息を吐きだすと、すくっと勢いよくメイド姿のモミジが立ち上がる。
いや、いけないいけない。明日は本番。今日は我慢して出来るだけ下調べをしなければ。
ふと、廊下のドアから小さな子どもが出てくる。
すぐにモミジはメイドの顔に戻り、脳内に屋敷の見取り図を浮かべる。
確か、あのドアは子ども部屋……てことはここの坊ちゃんか。
初めて見るここの主人の忘れ形見をモミジはじっと見つめる。
「おい!そこのブス!」
ビキッとモミジのこめかみに青筋が浮かぶ。
女性に向かってブスとはどういう教育受けてんだこのじゃがいも頭は!!
「浩太様。そのような下劣な言葉はおやめくださいと申したはずですが」
分厚いレンズに綺麗に切り揃えられた頭をきっちりと結い上げた中年の女性が蝶ネクタイ姿の男児に厳しい声で告げる。
「うっうるさい!僕に命令するな!」
「ワタクシは、あなたの教育係です。あなたを立派な当主にする義務があるのですよ」
騒がしい声に、部屋に居た奥方がドアから出てくる。
「なに、今の声は」
「ママ!」
「あらあら浩ちゃんどうしたのぉー?」
奥方はでれでれに顔を崩しながら、赤ちゃん言葉で男児に話しかける。
「メイドがまた僕をいじめたんだ!」
「いじめているのではありません。ごく一般な注意をしたまでです」
メイド長の答えに奥方は前髪をかきあげながら、はぁーとだるそうなため息を吐いた。
「メイド長。まだ浩太は子どもなのだから厳しくするのは止めてって言ってるでしょ」
「しかし、奥様!」
メイド長が抗議しようとしたが、奥方はそれを無視して、浩太に話しかける。
「あなたは気にしなくていいのよコウちゃん。ところでお勉強はどうしたの?」
「かていきょうしがつまらなかったから、やめた」
「浩太様!また」
「あらあら、そうだったの。それじゃ今度はもっと面白い家庭教師を用意するわね」
「勉強したくない」
「それなら雇うのはもうやめましょう」
その会話を聞き、鬼風は心の中で顔をしかめさせた。
うわー……ゲロゲロに甘やかされてら
ありゃあのガキんちょ碌な大人にならねえなぁ
奥方とメイド長が言い争ってる隙に、鬼風はその場から離れた。
茶色く大胆にカールさせた巻き髪の垂れ目な女性が、顔を真っ赤にさせ、近くの花瓶を床に叩きつけた。
零れ落ちそうな谷間に、きゅっとしまった細いウエスト、丸く盛り上がったヒップ。
グラマラスなボディを赤いイノセントドレスに包んでいる。
首には白い毛皮を巻いていた。
「雲の絶間姫(くものたえまのひめ)を頂くですって…!」
彼女はテーブルに投げ捨てた予告状を睨む。
「主人の宝を渡しはしないわ」
テーブルの予告状を手に取り、怒りに任せてそれを引き裂いた。
「警察曰く、二月四日にこの泥棒は現れる。
冨士井家から絶間姫を奪われる前に、必ず捕まえてやるわ」
破れた紙の破片を床に捨て、その上にガッとハイヒールを振り下ろす。
グリグリと憎しみを込めるように紙を踏みつぶす。
しばらくして、気が済んだのか、奥方である冨士井 妙子はパンパンと手を叩く。
「奥様。お呼びでしょうか」
ドアから三つ編みのメイドがすっと現れる。
「これ、片しておきなさい」
妙子は床に散らばった花瓶の破片を顎でしめす。
「かしこまりました」
メイドは手の平を腹に当て、腰からきっちり礼と取った。
三つ編みのメイドが、取り出したちりとりと箒でさっとガラスの破片を片づける。
それが終わると、メイドは部屋をすぐに退出した。
扉を閉め、メイドが微かに肩をすくめる。
やれやれ。もう泥棒が入り込んでるとも知らないで、呑気な奥さんだな。
表情はぴくりとも動かさず心の中で三つ編みメイド――――――鬼風が心の中でつぶやく。
警備体制を調べるために鬼風はすでに屋敷のメイドとして潜入済みであったのだ。
彼女は床に引かれた赤い絨毯の上を歩く。
ふと目線を足元に落とし、はぁとため息をこぼす。
だが、鬼風はぶんぶんと何やら脳内の思考を振り落とすかのように頭を振る。
『モミジ。警備の状況は』
耳元のイヤリングから聞こえた音声に対し、周囲に目を走らせてから、鬼風は腕時計に向かって小さく話す。
「前日だからまだ薄いけど、明日になれば三倍に増やすってさ」
『ククッ。数が増えても木偶の棒が増えるだけだろうけどねー。そのほかになにか情報はあるかい?』
「あぁ、そうだ。重要なこと忘れてた」
『ほう。くわしく聞かせな』
「あぁ、驚くなよ。ここの夫人は
……額の形が汚い」
『死ね』
「ひでぇ!ちょっここは重要だぞ!額の形が汚いって言ったけど、ストレート額が汚いってわけじゃなくて」
『死ね』
「待って!もっと重要なことがあるんだ!だから、ちゃんと聞いてくれよ!」
『今度はちゃんとしてくれよー』
「実はな。ここのメイド長めっちゃ綺麗な富士額な『もうそろそろ交代時間になるんだろすぐにあがってこっちに来い』
杏里は相方の言葉を無視して、ノンブレスで淡々と要件を伝えた。
あっちょっ、とモミジが制止をかける前に、ブチッと通信が無遠慮に切られる。
「なにさ……別におデコフェチってわけじゃないんだぞ……これにはそれなりに理由があってだな……。
というかなんなんだよあの夫人のつまらないストレートな額は!顔が良くても額ですべてが台無しじゃないか!
死んだ旦那もまっすぐなつまらない額だったし…。
あぁもう!すべての人類が富士額になればいいのに!
そうすれば私の脳内にはいつだって彼のことを思い出せるのに!」
ふうと息を吐き、鬼風は再び赤い絨毯を見つめる。
突如、ばっと地面にしゃがみこむ。
そして唇をかみしめた後、絞り出したような声を出す。
「オドロキくんに会いたい……!」
この前会ったのは昨日の午後3時でいつものように仕事がなくて暇なのか掃除してたなさすがに今日はなにかしらの雑用が入ってるだろでもあそこ儲かってないみたいだし
もやもやとした思いを抱えながら、頭の中で昨日の事務所の光景を鮮明に思い出すモミジ。
ここで訂正しておくと、本人はオドロキに会うと称しているが、実際は外から事務所の窓を双眼鏡で覗いているだけである。
「あー……あの丸くて白い綺麗なおデコにキスしたい……」
一つため息を吐きだすと、すくっと勢いよくメイド姿のモミジが立ち上がる。
いや、いけないいけない。明日は本番。今日は我慢して出来るだけ下調べをしなければ。
ふと、廊下のドアから小さな子どもが出てくる。
すぐにモミジはメイドの顔に戻り、脳内に屋敷の見取り図を浮かべる。
確か、あのドアは子ども部屋……てことはここの坊ちゃんか。
初めて見るここの主人の忘れ形見をモミジはじっと見つめる。
「おい!そこのブス!」
ビキッとモミジのこめかみに青筋が浮かぶ。
女性に向かってブスとはどういう教育受けてんだこのじゃがいも頭は!!
「浩太様。そのような下劣な言葉はおやめくださいと申したはずですが」
分厚いレンズに綺麗に切り揃えられた頭をきっちりと結い上げた中年の女性が蝶ネクタイ姿の男児に厳しい声で告げる。
「うっうるさい!僕に命令するな!」
「ワタクシは、あなたの教育係です。あなたを立派な当主にする義務があるのですよ」
騒がしい声に、部屋に居た奥方がドアから出てくる。
「なに、今の声は」
「ママ!」
「あらあら浩ちゃんどうしたのぉー?」
奥方はでれでれに顔を崩しながら、赤ちゃん言葉で男児に話しかける。
「メイドがまた僕をいじめたんだ!」
「いじめているのではありません。ごく一般な注意をしたまでです」
メイド長の答えに奥方は前髪をかきあげながら、はぁーとだるそうなため息を吐いた。
「メイド長。まだ浩太は子どもなのだから厳しくするのは止めてって言ってるでしょ」
「しかし、奥様!」
メイド長が抗議しようとしたが、奥方はそれを無視して、浩太に話しかける。
「あなたは気にしなくていいのよコウちゃん。ところでお勉強はどうしたの?」
「かていきょうしがつまらなかったから、やめた」
「浩太様!また」
「あらあら、そうだったの。それじゃ今度はもっと面白い家庭教師を用意するわね」
「勉強したくない」
「それなら雇うのはもうやめましょう」
その会話を聞き、鬼風は心の中で顔をしかめさせた。
うわー……ゲロゲロに甘やかされてら
ありゃあのガキんちょ碌な大人にならねえなぁ
奥方とメイド長が言い争ってる隙に、鬼風はその場から離れた。