赤いビロードの絨毯が敷かれた廊下の両側には多くのドアが置かれて、廊下の先は遠くの方にある。

そんな西洋風のお屋敷の廊下で、パリンと透明な大音量が響く。

「誰ですか！！今、皿を割ったのは！」

鋭くかん高い大声に、三つ編みのメイドの肩が大きく跳ねた。

彼女は足元の皿の原型がない磁器の破片を見て、青い顔になる。

「もっ申し訳ありません！メイド長！」

三つ編みのメイドは、そのまま額を床の赤い絨毯に擦りつける勢いで相手に頭を下げた。

彼女が頭を下げた相手は、30代半ばの女性のメイドだった。

メイド長と呼ばれた女性は、前髪をきっちり真ん中で分け、編み込みを後頭部にお団子として結い上げている。

眼鏡の奥からは神経質そうな細い目が三つ編みのメイドを睨むように見つめている。

三つ編みメイドは、青い炎のような激しさの中にどこか冷たさが混ざった眼差しがこちらに向けられ、震えている。

「この屋敷のメイドとしての自覚が足りないのではありませんか。そもそもここの掃除だって……」

それを遠くから眺めていた二人の若いメイドがあーあと声を上げる。

「今日はメイド長の機嫌がかなり悪いのに、ドジなんてするから」

「なんでも、泥棒から犯行予告が来たからあんなに機嫌が悪いんですって？」

「そーそー」

ヒソヒソと声を潜めて、手元のお盆で口元を隠しながらおしゃべりに花を咲かす。

「そこ！！」

鋭い声に若い二人のメイドは床から跳び上がる。

「なにをぐずぐずしているんです！片づけは終わったのですか！？」

若いメイドたちが逃げるように、自分たちの持ち場に戻っていく。

「あなたも、それを片したらすぐにわたくしの元へ来るように」

「はっはい」