パソコンのディプレイや電子機器により青白い光が充満する薄暗い部屋。

その中で色素の薄い髪を後ろに束ね、白衣を着たメガネの女性――――杏里があるボタンを押す。

『もしもし』

「アタシの計画通りに進めろと言ったはずだがどうなってんだい？怪盗鬼風？」

コツコツと杏里が机を指先で叩く。

『あーーー……』

杏里はなかなか答えない相手に、痺れを切らし口を開く。

「……なにがあった？」

『じ……』

鬼風が少し間を置いてから、第一声を発した。

その瞬間。

『おいっ。なにしてんだ！どろぼう！』

通信機から鬼風以外の声が聞こえ、杏理の眉間に深い皺が刻まれる。

『……子ども盗んできちゃった』

「黙れ犯罪者」

えへっとブリっ子をした泥棒に、容赦なく杏里は言葉の刃物を射出した。

『はっ犯罪者だけどっ！』

「あー間違えた。近づかないでくださいペド○ィリア」

『誤解だっ！！！！』

杏里はハァーと額を押さえた。

「で？なんで人形を盗むはずが坊ちゃんを誘拐してんだよ」

『いや、その大変言いにくいのですが』

ハ？と鬼風の言葉に杏里がさらに眉間の皺を深くした。

『誰と話してるんですか？鬼風さん？』

鬼風は声だけで受話器の向こうで、杏里がしかめっ面をしたのは察した。

『……人質は屋敷の坊ちゃんプラス……魔術師の卵ちゃんです』