焼け木杭に火がつく
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法廷に生田伊次郎が現れた。
観衆のざわめきが法廷のいたるところでされている。
カンッと小槌の音に、観衆からの音がピタリと止まった。
タイミングを見計らって、伊次郎は口を開く。
「これはどういうことでしょうか。サイバンチョ」
「西山運、改め生田佐平さんからあなたのことをお聞きしました。
彼の証言からあなたも容疑者である可能性が浮上したのです。
よって、証言をしていただきたい」
裁判長の言葉に伊次郎は、軽く笑う。
「素性も知らない男の言葉を信じるのですか?
さきほどのやり取りを傍聴していましたが、地下室があったなんて知りませんでしたよ。
その存在を知っているのは、八百谷家の当主である奈々子だけだ。
だから、自分は関係ありません」
「それでは、それを法廷でお話したらどうでしょう」
少女姿の鬼風がじっと伊次郎を見据える。
「仕方ありません。僕の身の安全は自分で保証するしかないようですね」
そもそも僕は只野さんを殺す理由がありません。
元カノだから?
今はもう彼女とは連絡を一切取っていません
なんなら携帯をお見せしましょうか?
一年前のメールをして以来、やり取りはありません。
オドロキの大音声が法廷に響き渡る。
「只野さんと連絡を取り合っていなかったと?」
「ええ、そうです」
「あなたの携帯には確かに彼女との通話記録は残っていませんでした」
「当たり前ですよ」
「ですが、只野さんのケータイにはあなたとの通話記録が残っていたようですが」
「!」
「それも一度や二度ではありません。ここ一ヶ月ほど通話をしていたようでしたが」
オドロキは手元の書類を見ながら、そう尋ねた。
サイバンチョが証拠品を見て、証人に不審な視線を送る。
「証人。証言と食い違っているようですが?どういうことでしょう」
伊次郎はくっと歯を軽く軋ませ、顔を伏せる。
「すみません、本当は彼女とは確かに会っていました。
あらぬ疑いをかけられるのが怖くて、つい会っていないと言ってしまいました」
「では、そのときのことを証言してください」
只野とはたしかに会った。
でも、立ちながら仕事の要点だけを伝えて、それから夕方の五時にはお互い別れたよ
それからネットでチェスの対戦をしていました。
アリバイならありますよ。
自室のパソコンに対戦記録が残っているはずですから。
火事に気付くまでその対戦に集中していました」
「事件が発生したとき、確かにあなたの部屋のパソコンに、ネット対戦をしたという記録が残されていました」
「当然です」
「けど、それはあなたが対戦したという記録ではありません」
「なっ」
「事件当日に、あなたの部屋に泥棒が入ったそうですね。
あなたは窃盗のことを黙っている代わりにネットの対戦をしてくれと
泥棒に頼んでいたことは本人から聞いていますよ」
「くっ」
「あなたはあの日、屋敷に侵入するのは可能だったんです」
「待て。聞いてくれ」
伊次郎が声を張り上げる。
「可能性の話だ。けど、動機から見て、私が奈々子を殺すことなんてありえません」
「それではそのことを証言してもらいましょう」
「心外だ。
私は奈々子の婚約者だ。
大事な婚約者を危険にさらすようなことをするはずがない。
仮に、仮にです。
只野を殺そうとするなら、どうして奈々子まで危険になるようなリスクを負うんですか。
彼女を危険な目に合わせてまで、元カノを殺そうとなんてしませんよ」
「あなたは奈々子さんも殺すつもりだったんです。そして、彼女にすべての罪を着せるつもりだった」
「なにをばかな!」
「この八百谷さんの両親からの遺書には、娘の奈々子とその旦那に財産を譲る。
どちらかが死亡した場合、その財産はその人だけのものになると書かれているんです」
伊次郎は汗を流し、顔を歪ませる。
「あの日、あなたは只野さんを殺すところまでは予定どおりだったんでしょう。
けれど、あの日奈々子さんが屋敷にやってきてしまった。
焦ったあなたは彼女を待ち伏せして、彼女を殺そうと襲い掛かる。
彼女の頭を殴り、部屋に灯油をまき、火をつけた。
しかし、彼女は運良く佐平さんが助け出されてしまった」
ふうと伊次郎は前髪をくしゃりとかき混ぜ、顔をあげた。
「もう、嘘を吐き通すのはやめます。これは彼女のためにならない。
そうです。本当の犯人は彼女です」
奈々子が婚約者の言葉に声を失う。
「大事な人を殺人犯などにしたくない。けれど、嘘で守ることはやはりいけないことですよね」
オドロキは机の上の拳をブルブルと震わせる。
彼の態度に、眉間に固い皺をつくり、きつく睨みつけた。
わざとらしく大袈裟に言う偽りの言葉に、虫唾が走った。
ちっと隣から舌打ちが聞こえる。
オドロキと同じように、隣の泥棒が汚物をみるかのように目を細めていた。
「アンタ!アンタ!アンタって子は!」
今にも証言台のイジロウに掴みかかろうとする大野をカカリカンが押さえている。
「ナナちゃんを思ってる?このホラ吹き男!ナナちゃんの財産が目当てなくせに!」
「それはあくまであの弁護士が提示した可能性にすぎません。私は奈々子のことをきちんと愛していますよ」
その言葉に、大野は真っ赤になった顔をしかめた。
「おどき!」
カカリカンの腕を払い、大野がサイバンチョの近くによる。
「私は出すよ!この決定的写真を!」
キッと大野は弁護席に真剣な眼差しを送る。
「弁護士ちゃん!」
「わたしはアンタたちを信じるよ!
提出してない写真!出すわ!」
「……いいんですか。大野さん。」
イジロウが大野に向かって言う。
「その写真を出してしまって?」
「お黙り!ナナちゃんを利用してた輩の言うことなんてもう聞かないよ!」
ばんっと法廷に大野の写メが表示される。
そこには、奈々子らしき赤い着物の女性と被害者が屋敷の扉にいる写メだった。
オドロキはその証拠写真に呆然とした。
伊次郎がはぁーと大袈裟にため息を吐きだした。
「これで証明されてしまった訳だね。
被告人と被害者、そして新たな被告人以外にあの屋敷に入った人はいないということが」
この屋敷には3人しか入っていない。
只野以外に殺せた可能性があるのはサヘイとナナコの2人だけ。
最悪だ。
「あんな写真が出ちまったんじゃ」
ダンッとオドロキが両手の拳を机に叩きつけ、机に顔を伏せた。
「どうやら……ここまで、のようですな。」
カンッと木槌の音がした。
(……もう……)
「……被告人に判決を言い渡します」
(……ダメなのか……)
オドロキは目の前が真っ暗になった。
拳を机に叩きつけたまま、顔を上げられずにいる。
叩きつけた拳はブルブルと震えている。
裁判長が木槌を振り上げた。
カッカッと足音が法廷に響く。
裁判長、
検察側、
証言台、
傍聴席、
皆は足音の人物に視線を奪われた。
その人物は弁護席の前に来ると、ピタッと足を止める。
観衆のざわめきが法廷のいたるところでされている。
カンッと小槌の音に、観衆からの音がピタリと止まった。
タイミングを見計らって、伊次郎は口を開く。
「これはどういうことでしょうか。サイバンチョ」
「西山運、改め生田佐平さんからあなたのことをお聞きしました。
彼の証言からあなたも容疑者である可能性が浮上したのです。
よって、証言をしていただきたい」
裁判長の言葉に伊次郎は、軽く笑う。
「素性も知らない男の言葉を信じるのですか?
さきほどのやり取りを傍聴していましたが、地下室があったなんて知りませんでしたよ。
その存在を知っているのは、八百谷家の当主である奈々子だけだ。
だから、自分は関係ありません」
「それでは、それを法廷でお話したらどうでしょう」
少女姿の鬼風がじっと伊次郎を見据える。
「仕方ありません。僕の身の安全は自分で保証するしかないようですね」
そもそも僕は只野さんを殺す理由がありません。
元カノだから?
今はもう彼女とは連絡を一切取っていません
なんなら携帯をお見せしましょうか?
一年前のメールをして以来、やり取りはありません。
オドロキの大音声が法廷に響き渡る。
「只野さんと連絡を取り合っていなかったと?」
「ええ、そうです」
「あなたの携帯には確かに彼女との通話記録は残っていませんでした」
「当たり前ですよ」
「ですが、只野さんのケータイにはあなたとの通話記録が残っていたようですが」
「!」
「それも一度や二度ではありません。ここ一ヶ月ほど通話をしていたようでしたが」
オドロキは手元の書類を見ながら、そう尋ねた。
サイバンチョが証拠品を見て、証人に不審な視線を送る。
「証人。証言と食い違っているようですが?どういうことでしょう」
伊次郎はくっと歯を軽く軋ませ、顔を伏せる。
「すみません、本当は彼女とは確かに会っていました。
あらぬ疑いをかけられるのが怖くて、つい会っていないと言ってしまいました」
「では、そのときのことを証言してください」
只野とはたしかに会った。
でも、立ちながら仕事の要点だけを伝えて、それから夕方の五時にはお互い別れたよ
それからネットでチェスの対戦をしていました。
アリバイならありますよ。
自室のパソコンに対戦記録が残っているはずですから。
火事に気付くまでその対戦に集中していました」
「事件が発生したとき、確かにあなたの部屋のパソコンに、ネット対戦をしたという記録が残されていました」
「当然です」
「けど、それはあなたが対戦したという記録ではありません」
「なっ」
「事件当日に、あなたの部屋に泥棒が入ったそうですね。
あなたは窃盗のことを黙っている代わりにネットの対戦をしてくれと
泥棒に頼んでいたことは本人から聞いていますよ」
「くっ」
「あなたはあの日、屋敷に侵入するのは可能だったんです」
「待て。聞いてくれ」
伊次郎が声を張り上げる。
「可能性の話だ。けど、動機から見て、私が奈々子を殺すことなんてありえません」
「それではそのことを証言してもらいましょう」
「心外だ。
私は奈々子の婚約者だ。
大事な婚約者を危険にさらすようなことをするはずがない。
仮に、仮にです。
只野を殺そうとするなら、どうして奈々子まで危険になるようなリスクを負うんですか。
彼女を危険な目に合わせてまで、元カノを殺そうとなんてしませんよ」
「あなたは奈々子さんも殺すつもりだったんです。そして、彼女にすべての罪を着せるつもりだった」
「なにをばかな!」
「この八百谷さんの両親からの遺書には、娘の奈々子とその旦那に財産を譲る。
どちらかが死亡した場合、その財産はその人だけのものになると書かれているんです」
伊次郎は汗を流し、顔を歪ませる。
「あの日、あなたは只野さんを殺すところまでは予定どおりだったんでしょう。
けれど、あの日奈々子さんが屋敷にやってきてしまった。
焦ったあなたは彼女を待ち伏せして、彼女を殺そうと襲い掛かる。
彼女の頭を殴り、部屋に灯油をまき、火をつけた。
しかし、彼女は運良く佐平さんが助け出されてしまった」
ふうと伊次郎は前髪をくしゃりとかき混ぜ、顔をあげた。
「もう、嘘を吐き通すのはやめます。これは彼女のためにならない。
そうです。本当の犯人は彼女です」
奈々子が婚約者の言葉に声を失う。
「大事な人を殺人犯などにしたくない。けれど、嘘で守ることはやはりいけないことですよね」
オドロキは机の上の拳をブルブルと震わせる。
彼の態度に、眉間に固い皺をつくり、きつく睨みつけた。
わざとらしく大袈裟に言う偽りの言葉に、虫唾が走った。
ちっと隣から舌打ちが聞こえる。
オドロキと同じように、隣の泥棒が汚物をみるかのように目を細めていた。
「アンタ!アンタ!アンタって子は!」
今にも証言台のイジロウに掴みかかろうとする大野をカカリカンが押さえている。
「ナナちゃんを思ってる?このホラ吹き男!ナナちゃんの財産が目当てなくせに!」
「それはあくまであの弁護士が提示した可能性にすぎません。私は奈々子のことをきちんと愛していますよ」
その言葉に、大野は真っ赤になった顔をしかめた。
「おどき!」
カカリカンの腕を払い、大野がサイバンチョの近くによる。
「私は出すよ!この決定的写真を!」
キッと大野は弁護席に真剣な眼差しを送る。
「弁護士ちゃん!」
「わたしはアンタたちを信じるよ!
提出してない写真!出すわ!」
「……いいんですか。大野さん。」
イジロウが大野に向かって言う。
「その写真を出してしまって?」
「お黙り!ナナちゃんを利用してた輩の言うことなんてもう聞かないよ!」
ばんっと法廷に大野の写メが表示される。
そこには、奈々子らしき赤い着物の女性と被害者が屋敷の扉にいる写メだった。
オドロキはその証拠写真に呆然とした。
伊次郎がはぁーと大袈裟にため息を吐きだした。
「これで証明されてしまった訳だね。
被告人と被害者、そして新たな被告人以外にあの屋敷に入った人はいないということが」
この屋敷には3人しか入っていない。
只野以外に殺せた可能性があるのはサヘイとナナコの2人だけ。
最悪だ。
「あんな写真が出ちまったんじゃ」
ダンッとオドロキが両手の拳を机に叩きつけ、机に顔を伏せた。
「どうやら……ここまで、のようですな。」
カンッと木槌の音がした。
(……もう……)
「……被告人に判決を言い渡します」
(……ダメなのか……)
オドロキは目の前が真っ暗になった。
拳を机に叩きつけたまま、顔を上げられずにいる。
叩きつけた拳はブルブルと震えている。
裁判長が木槌を振り上げた。
カッカッと足音が法廷に響く。
裁判長、
検察側、
証言台、
傍聴席、
皆は足音の人物に視線を奪われた。
その人物は弁護席の前に来ると、ピタッと足を止める。