焼け木杭に火がつく
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同日 某時刻
地方裁判所 被告人第2控え室
「ちょっオドロキセンパイ!どうしたんですか!?」
「いいから!」
休廷と告げられ、オドロキはすぐさま心音の腕を取り、控え室へと入った。
オドロキが乱暴に扉を閉めると、じっと心音を睨む。
「……詳しい話を聞かせてくれるかな?」
「私がどうして無事かっていう理由ですか」
「それもあるけど」
オドロキは警戒しているように、相手を睨む。
「……君がどうして嘘を吐いてるかっていうことさ」
「わっ私、嘘なんて吐いてませんよ。ほらっ、怪我も隠したりしてませんし」
「それじゃ、聞くけど……モニタくんはどうしたの?」
心音の首にいつもある青い丸顔のペンダントがなかった。
「連れ去られたときに故障してしまったんです。」
はぁとオドロキは息を大きく吐いた。
「……それじゃ、もう一つ聞くけど。今の俺からはどんな感情が"聞こえる"?」
「…………怒りの感情ですよね」
「あぁ、そうだよ。」
オドロキは心音を壁に突き飛ばし、胸倉を掴みあげる。
がはっと喉を叩かれ、弁護士の少女はゴホッと激しくむせる。
「なにす「希月さんをどうしたかって聞いてんだよ!!」
青年は両手がブルブルと震えるぐらい強く胸倉のシャツを握り、鼻先がぶつかりそうな至近距離で少女を怒鳴りつけた。
「センパ」
「なんでアンタが、"怪盗鬼風"が後輩の恰好して俺の前に現れたんだよ!?
希月さんは無事なのか!?」
心音は怯えた表情でオドロキを見つめていた。
彼女が顔を俯かせると、はぁーと大きなため息を吐いた。
少女がすっと顔をあげる。
鋭く目を細め、瞳の奥を隠す翳のある目でオドロキを見上げる。
後輩と同じ顔だが、その上に浮かぶ表情は別人であった。
「……無事じゃなかったら、君の前にこうして現れたりするかよ」
後輩の口から、低い男の声が聞こえてくる。
心音の姿をしている鬼風はオドロキの手を軽く払い、乱れた胸元を直しながら話し始めた。
犯人が誰か探るため裁判の様子を見に来たこと、一酸化中毒で心音が弱っていたのを見つけたこと
鬼風は少女の姿を借りて、オドロキに説明した。
「最初、彼女は法廷に出るってきかなかったけど、なんとか静かにさせたよ。今は、魔術師のたまごちゃんのそばで寝てる」
「よかったぁー……」
後輩の身が保証され、全身の力が抜けたオドロキは椅子にへたり込む。
少女姿のオニカゼは胸元を整え、くるっとオドロキの方へ体をむけた。
「しかし、こうも早く見破られるとはね……ほんっと君らの能力って厄介だよな」
「その能力もあんまり法廷じゃ役に立ちませんけどね」
「まぁ、証拠がすべての法廷じゃ聴衆への説得力はないけどな。だが、お腹の中に大事な真実を隠してる犯人たちには天敵だろうよ」
コンコンとドアからノック音がする。
こちらの返事も聞かず、扉が開いた。
綺麗にセットされた金髪に、アイスブルーの瞳の美青年が不機嫌そうにしかめっ面で入ってくる。
「君の今日の法廷はなんだい」
すっと牙琉の前に心音姿の鬼風が立ちふさがる。
「オドロキ先輩を責めないでください。先輩は私を助けようとしていたんです!」
「どういうことだい?」
心音姿の鬼風は牙琉に、自分について隠しながら詳細を説明した。
「…………なるほどね。それで被告人を有罪にしようとしてたわけか」
「違います!オドロキ先輩は時間を稼いでいただけです!被告人も私も助けようと頑張っていたんです!」
じっと心音が牙琉を睨む。
一瞬だけ牙琉の顔が歪むが、前髪をかきあげる。
「やれやれ。羨ましいね。こんな先輩想いな後輩がいるなんて。
ボクが意見しただけでこんなふうに庇うとはさ」
牙琉が腰に手を当て、背をかがめる。
油断ならない微笑を浮かべ、心音に顔を近づける。
「……希月弁護士くん。だっけ?」
「はい?」
とんとんっと牙琉が自分の鎖骨を指で叩く。
「ペンダントをつけてないなら、胸元のボタンを閉めるのをおすすめするよ」
心音はバッと胸元を両手で隠す。
「どうせつけるなら、ペンダントよりもブレスレットをボクはオススメするよ」
「ブレスレット……?」
「そう。君の可憐な両手首に、そこのおデコくんと対称的なシルバーとか……ね」
「先輩とおそろいですか」
ニコッと心音が笑顔を浮かべると、牙琉も目を細めてニコッと返す。
笑顔で見つめ合うが、周りの空気は電流が走ってるようにピリピリとしていた。
「……それじゃ、ボクはそろそろもどるよ」
控室の扉が閉まり、少女の顔が泥棒の顔へと戻る。
オドロキは冷や汗を流しながら、扉を睨む。
「……あれ、気づいてますよね」
「……私の気のせいかしらん?
今、あのアイドル検事から
"裁判をめちゃくちゃにしたら、ただじゃおかねえぞコソ泥"
と脅された気がするんだが」
「たぶん……間違ってないですよ」
「はぁー……とっても優しい検事さんで私は嬉しいよ」
心音姿の鬼は去っていった扉に殺気の混ぜられた視線を向ける。
オドロキは鬼の様子を見て、声をかけた。
「なんだか、検事のことやけに意識してますね」
「当たり前だ!
私を逮捕するために手錠を常備してるようなジャラジャラ検事だぞ!?
警戒もするっつうの!」
焦っている鬼風を見て、いつもからかわれているオドロキは妙な優越感を得る。
「いいんじゃないですか。ほら、ガリュー検事みたいな有名人に注目されて」
オドロキが意地の悪い顔で鬼風にそう言う。
「冗談!あんなイケメン野郎と一緒に居たらグチグチと言われるから嫌だね!
それに逮捕されるなら私は君がいい!!」
軽蔑をこめた視線でオドロキは無言の攻撃をくりだした。
だが、鬼風が頬を染めてウルウルした目でこちらを見つめ返したので、オドロキは悪寒を感じ顔を反対へとそらした。
鬼風は法廷室にかけられた時計を見上げる。
「休憩があと5分で終わる。そろそろ行くぞ」
「え?」
オドロキはそらしていた顔を元に戻す。
「ちょっ!待てよ!まさかアンタまだ法廷に出るのか!?」
「当たり前だろ。こっちは犯人に用があるんだ。
弁護側の君に犯人を引きずりだして欲しいんだよ。
それに、犯人がこの希月ちゃんが出るとマズイからあんな方法を取ったんだ。
彼女の姿があるだけで、犯人の脅しとしては効果的だろ。……それと」
びしッとオドロキの鼻先に指をつきつけ、無意識にオドロキは顔を後ろに下げた。
「癖だったら君ほどじゃないけど、私なりに怪しいところを指摘してあげるよ。
みぬく場所がわからなかったら、相談すればいつでも教えてあげる」
「……はい。そうですか。と信用するとでも?」
オドロキの険のある回答に、予想していたのか鬼風は口の端を吊り上げた。
「信用はしなくていいさ。だが、これだけは信じて欲しい。君の裁判の邪魔はしない」
弁護士の人の本性を見透かす鋭利な視線を、悪党は挑発的な笑みで迎える。
「……あんたは犯人がわかってるんですか?」
「まぁ、目星はついてる」
オドロキが口を開く前に、少女姿の鬼風は言う。
「言っとくけど、犯人がわかっても
それを証明する証拠もない状態じゃ、犯人を指摘してもサイバンチョや検察は納得しちゃくれないだろう」
「……確かに」
「だから、君が証明してくれよ。弁護士くん」
「……邪魔をしたら、叩きだしますから」
オドロキの言葉に泥棒は満足そうに笑う。
「それより、あのカギ本物ですよね?」
「バッチリ。人形屋敷の管理小屋の近くに落ちていたものさ
だから、捏造とかではないから安心して」
泥棒の言葉から嘘は感じられなかった。
むっとオドロキは眉間に皺をつくる。
「やっぱり隠してやがった……」
鬼風はすべてしゃべったと昨日の調査では言っていたが、昨日の法廷でこの鍵は出てこなかった。
「なに言ってんだよ。切り札は最後まで取っておくものだろ」
じろっとオドロキは鬼風を睨む。
「あ!」
「まだなにか?」
「そうそう。一応、これも渡しておくよ」
「?なんですかこれ?」
渡されたのは焦げている赤い布の切れ端だった。
「地下室で見つけたもう一つの証拠品さ。地下室にあった七姫の着物の切れ端さ」
「えっ」
「……私が探していた北部屋の七姫は地下室に置かれていたんだよ」
オドロキがなにか言おうとした瞬間
「まもなく開廷です!すぐに準備してください」
「さぁ行きましょう!センパイ!」
カカリカンが入ってきた瞬間、鬼風は瞬時に後輩の仮面を張り付けた。
地方裁判所 被告人第2控え室
「ちょっオドロキセンパイ!どうしたんですか!?」
「いいから!」
休廷と告げられ、オドロキはすぐさま心音の腕を取り、控え室へと入った。
オドロキが乱暴に扉を閉めると、じっと心音を睨む。
「……詳しい話を聞かせてくれるかな?」
「私がどうして無事かっていう理由ですか」
「それもあるけど」
オドロキは警戒しているように、相手を睨む。
「……君がどうして嘘を吐いてるかっていうことさ」
「わっ私、嘘なんて吐いてませんよ。ほらっ、怪我も隠したりしてませんし」
「それじゃ、聞くけど……モニタくんはどうしたの?」
心音の首にいつもある青い丸顔のペンダントがなかった。
「連れ去られたときに故障してしまったんです。」
はぁとオドロキは息を大きく吐いた。
「……それじゃ、もう一つ聞くけど。今の俺からはどんな感情が"聞こえる"?」
「…………怒りの感情ですよね」
「あぁ、そうだよ。」
オドロキは心音を壁に突き飛ばし、胸倉を掴みあげる。
がはっと喉を叩かれ、弁護士の少女はゴホッと激しくむせる。
「なにす「希月さんをどうしたかって聞いてんだよ!!」
青年は両手がブルブルと震えるぐらい強く胸倉のシャツを握り、鼻先がぶつかりそうな至近距離で少女を怒鳴りつけた。
「センパ」
「なんでアンタが、"怪盗鬼風"が後輩の恰好して俺の前に現れたんだよ!?
希月さんは無事なのか!?」
心音は怯えた表情でオドロキを見つめていた。
彼女が顔を俯かせると、はぁーと大きなため息を吐いた。
少女がすっと顔をあげる。
鋭く目を細め、瞳の奥を隠す翳のある目でオドロキを見上げる。
後輩と同じ顔だが、その上に浮かぶ表情は別人であった。
「……無事じゃなかったら、君の前にこうして現れたりするかよ」
後輩の口から、低い男の声が聞こえてくる。
心音の姿をしている鬼風はオドロキの手を軽く払い、乱れた胸元を直しながら話し始めた。
犯人が誰か探るため裁判の様子を見に来たこと、一酸化中毒で心音が弱っていたのを見つけたこと
鬼風は少女の姿を借りて、オドロキに説明した。
「最初、彼女は法廷に出るってきかなかったけど、なんとか静かにさせたよ。今は、魔術師のたまごちゃんのそばで寝てる」
「よかったぁー……」
後輩の身が保証され、全身の力が抜けたオドロキは椅子にへたり込む。
少女姿のオニカゼは胸元を整え、くるっとオドロキの方へ体をむけた。
「しかし、こうも早く見破られるとはね……ほんっと君らの能力って厄介だよな」
「その能力もあんまり法廷じゃ役に立ちませんけどね」
「まぁ、証拠がすべての法廷じゃ聴衆への説得力はないけどな。だが、お腹の中に大事な真実を隠してる犯人たちには天敵だろうよ」
コンコンとドアからノック音がする。
こちらの返事も聞かず、扉が開いた。
綺麗にセットされた金髪に、アイスブルーの瞳の美青年が不機嫌そうにしかめっ面で入ってくる。
「君の今日の法廷はなんだい」
すっと牙琉の前に心音姿の鬼風が立ちふさがる。
「オドロキ先輩を責めないでください。先輩は私を助けようとしていたんです!」
「どういうことだい?」
心音姿の鬼風は牙琉に、自分について隠しながら詳細を説明した。
「…………なるほどね。それで被告人を有罪にしようとしてたわけか」
「違います!オドロキ先輩は時間を稼いでいただけです!被告人も私も助けようと頑張っていたんです!」
じっと心音が牙琉を睨む。
一瞬だけ牙琉の顔が歪むが、前髪をかきあげる。
「やれやれ。羨ましいね。こんな先輩想いな後輩がいるなんて。
ボクが意見しただけでこんなふうに庇うとはさ」
牙琉が腰に手を当て、背をかがめる。
油断ならない微笑を浮かべ、心音に顔を近づける。
「……希月弁護士くん。だっけ?」
「はい?」
とんとんっと牙琉が自分の鎖骨を指で叩く。
「ペンダントをつけてないなら、胸元のボタンを閉めるのをおすすめするよ」
心音はバッと胸元を両手で隠す。
「どうせつけるなら、ペンダントよりもブレスレットをボクはオススメするよ」
「ブレスレット……?」
「そう。君の可憐な両手首に、そこのおデコくんと対称的なシルバーとか……ね」
「先輩とおそろいですか」
ニコッと心音が笑顔を浮かべると、牙琉も目を細めてニコッと返す。
笑顔で見つめ合うが、周りの空気は電流が走ってるようにピリピリとしていた。
「……それじゃ、ボクはそろそろもどるよ」
控室の扉が閉まり、少女の顔が泥棒の顔へと戻る。
オドロキは冷や汗を流しながら、扉を睨む。
「……あれ、気づいてますよね」
「……私の気のせいかしらん?
今、あのアイドル検事から
"裁判をめちゃくちゃにしたら、ただじゃおかねえぞコソ泥"
と脅された気がするんだが」
「たぶん……間違ってないですよ」
「はぁー……とっても優しい検事さんで私は嬉しいよ」
心音姿の鬼は去っていった扉に殺気の混ぜられた視線を向ける。
オドロキは鬼の様子を見て、声をかけた。
「なんだか、検事のことやけに意識してますね」
「当たり前だ!
私を逮捕するために手錠を常備してるようなジャラジャラ検事だぞ!?
警戒もするっつうの!」
焦っている鬼風を見て、いつもからかわれているオドロキは妙な優越感を得る。
「いいんじゃないですか。ほら、ガリュー検事みたいな有名人に注目されて」
オドロキが意地の悪い顔で鬼風にそう言う。
「冗談!あんなイケメン野郎と一緒に居たらグチグチと言われるから嫌だね!
それに逮捕されるなら私は君がいい!!」
軽蔑をこめた視線でオドロキは無言の攻撃をくりだした。
だが、鬼風が頬を染めてウルウルした目でこちらを見つめ返したので、オドロキは悪寒を感じ顔を反対へとそらした。
鬼風は法廷室にかけられた時計を見上げる。
「休憩があと5分で終わる。そろそろ行くぞ」
「え?」
オドロキはそらしていた顔を元に戻す。
「ちょっ!待てよ!まさかアンタまだ法廷に出るのか!?」
「当たり前だろ。こっちは犯人に用があるんだ。
弁護側の君に犯人を引きずりだして欲しいんだよ。
それに、犯人がこの希月ちゃんが出るとマズイからあんな方法を取ったんだ。
彼女の姿があるだけで、犯人の脅しとしては効果的だろ。……それと」
びしッとオドロキの鼻先に指をつきつけ、無意識にオドロキは顔を後ろに下げた。
「癖だったら君ほどじゃないけど、私なりに怪しいところを指摘してあげるよ。
みぬく場所がわからなかったら、相談すればいつでも教えてあげる」
「……はい。そうですか。と信用するとでも?」
オドロキの険のある回答に、予想していたのか鬼風は口の端を吊り上げた。
「信用はしなくていいさ。だが、これだけは信じて欲しい。君の裁判の邪魔はしない」
弁護士の人の本性を見透かす鋭利な視線を、悪党は挑発的な笑みで迎える。
「……あんたは犯人がわかってるんですか?」
「まぁ、目星はついてる」
オドロキが口を開く前に、少女姿の鬼風は言う。
「言っとくけど、犯人がわかっても
それを証明する証拠もない状態じゃ、犯人を指摘してもサイバンチョや検察は納得しちゃくれないだろう」
「……確かに」
「だから、君が証明してくれよ。弁護士くん」
「……邪魔をしたら、叩きだしますから」
オドロキの言葉に泥棒は満足そうに笑う。
「それより、あのカギ本物ですよね?」
「バッチリ。人形屋敷の管理小屋の近くに落ちていたものさ
だから、捏造とかではないから安心して」
泥棒の言葉から嘘は感じられなかった。
むっとオドロキは眉間に皺をつくる。
「やっぱり隠してやがった……」
鬼風はすべてしゃべったと昨日の調査では言っていたが、昨日の法廷でこの鍵は出てこなかった。
「なに言ってんだよ。切り札は最後まで取っておくものだろ」
じろっとオドロキは鬼風を睨む。
「あ!」
「まだなにか?」
「そうそう。一応、これも渡しておくよ」
「?なんですかこれ?」
渡されたのは焦げている赤い布の切れ端だった。
「地下室で見つけたもう一つの証拠品さ。地下室にあった七姫の着物の切れ端さ」
「えっ」
「……私が探していた北部屋の七姫は地下室に置かれていたんだよ」
オドロキがなにか言おうとした瞬間
「まもなく開廷です!すぐに準備してください」
「さぁ行きましょう!センパイ!」
カカリカンが入ってきた瞬間、鬼風は瞬時に後輩の仮面を張り付けた。