焼け木杭に火がつく
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同日 午前10時02分
地方裁判所 第2法廷
「これより八百谷奈々子の審理を開始します。」
「弁護側っじゅ準備完了しています」
オドロキはいつもの法廷とは違う緊張感でいっぱいだった。
希月さんはみぬきちゃんに任せよう。
オレはこの裁判をなんとかするしかない。
「さて、昨日の法廷での事件により夕神検事は謹慎を言い渡され、新たに担当になった牙琉検事ですが」
そう言って、サイバンチョが牙琉検事に目を向ける。
だが、牙琉検事は険しい顔つきをしていた。
「サイバンチョ。検察側はある人物を召喚するよ」
「いや、しかし、まだ事件の内容が」
「説明はその人物にしてもらう。できれば、僕の言う通りにしてほしい」
「はぁ、わかりました。それではその重要人物を召喚してください」
オドロキは訝しげに検察側を見る。
どうしたんだ?ガリュウのやつ。
だが、オドロキの疑問は出てきた人物によって消えた。
ひょろっとくたびれた男が証言台に立った。
あの人は!
それは事務所で八百谷の依頼をしてきた緑ジャンパーの男だった。
「牙琉検事。この人物は?」
「……彼は」
「検事さん。自分で証言させてくれ」
男が証言台に一歩近づく。
「オレは西川 運(ニシカワ メグル)。
職業はフリーター。
そして、オレが只野を殺して、屋敷に火をつけた」
その言葉に検察以外の法廷中の人間が驚愕した。
「なっ!?」
ざわざわざわざわと人々の声が法廷に響く。
「静粛に。静粛に!」
「どっどういうことですか!?」
オドロキは机を叩きながら、前のめりになった。
「……つまり、オレがこの放火殺人事件の犯人だ」
……まずいぞ。
オドロキの体から嫌な汗が流れていた。
これじゃ、希月さんが見つかる前に裁判が終わってしまう……!
もちろん、オドロキにナナコを有罪にするつもりは毛頭なかった。
精々審理を長引かせて判決を明日に持ち越しすることを考えていたが、この男の自首によりオドロキにとって最悪な展開になったのだ。
けど、ひとつだけオドロキには今の状況を打破しうる可能性があった。
それは、彼の左手首の痛みだ。
その締め付けが、オドロキの意識をハッキリさせる。
……あの人は犯人じゃない。
腕輪の反応から、彼が嘘を吐いてるのはわかった。
この裁判で彼が犯人ということが嘘だと証明できれば、八百谷の裁判に戻すことができる。
だが、すでに自白してしまった彼をどうやって尋問すればいい?
尋問ができなければ、弁護側からでは何もできない。
"なるだけ審理を長引かせて判決を遅らせるんや"
どうすればいいんだ。
「それじゃ、おデコくん。尋問をお願いするよ。」
「えっ」
牙琉からの言葉にオドロキは目を丸くした。
「検事さん!言ったはずだ!オレが犯人だって!」
睨みつけてくる証人の視線を、指をパチンと鳴らしながら牙琉は受け流す。
「確かに君は自白した。けど、それが本当かどうかはこの法廷で決めるよ。
あくまでこの裁判は"八百谷奈々子"が犯人かどうかを決める審理だ。
あらゆる可能性を模索し、真実を見つけ出す。
そのための裁判だろ」
牙琉はオドロキの方に視線を向ける。
「まさか勝てるからと言って逃げようだなんて思ってないよね?」
オドロキはこのとき、事情を知らないだろう牙流に心の中で感謝の言葉を述べた。
「……わかりました」
この人が相手でよかった。
「それでは弁護人。尋問をお願いします」
泥棒のオレはちょうどあの屋敷をターゲットにしていた。
そして、オレはあの日、屋敷に忍び込んだ。
崖になっている北部屋の窓から入ったんだ。
北部屋に七姫はなかった。
さらに、運が悪いことに俺の姿をタダノに見られた。
口封じに殺したら、今度はあのお嬢さんがやってきた。
幸いオレには気づかなかったから、そのまま殴って気絶させた。
地方裁判所 第2法廷
「これより八百谷奈々子の審理を開始します。」
「弁護側っじゅ準備完了しています」
オドロキはいつもの法廷とは違う緊張感でいっぱいだった。
希月さんはみぬきちゃんに任せよう。
オレはこの裁判をなんとかするしかない。
「さて、昨日の法廷での事件により夕神検事は謹慎を言い渡され、新たに担当になった牙琉検事ですが」
そう言って、サイバンチョが牙琉検事に目を向ける。
だが、牙琉検事は険しい顔つきをしていた。
「サイバンチョ。検察側はある人物を召喚するよ」
「いや、しかし、まだ事件の内容が」
「説明はその人物にしてもらう。できれば、僕の言う通りにしてほしい」
「はぁ、わかりました。それではその重要人物を召喚してください」
オドロキは訝しげに検察側を見る。
どうしたんだ?ガリュウのやつ。
だが、オドロキの疑問は出てきた人物によって消えた。
ひょろっとくたびれた男が証言台に立った。
あの人は!
それは事務所で八百谷の依頼をしてきた緑ジャンパーの男だった。
「牙琉検事。この人物は?」
「……彼は」
「検事さん。自分で証言させてくれ」
男が証言台に一歩近づく。
「オレは西川 運(ニシカワ メグル)。
職業はフリーター。
そして、オレが只野を殺して、屋敷に火をつけた」
その言葉に検察以外の法廷中の人間が驚愕した。
「なっ!?」
ざわざわざわざわと人々の声が法廷に響く。
「静粛に。静粛に!」
「どっどういうことですか!?」
オドロキは机を叩きながら、前のめりになった。
「……つまり、オレがこの放火殺人事件の犯人だ」
……まずいぞ。
オドロキの体から嫌な汗が流れていた。
これじゃ、希月さんが見つかる前に裁判が終わってしまう……!
もちろん、オドロキにナナコを有罪にするつもりは毛頭なかった。
精々審理を長引かせて判決を明日に持ち越しすることを考えていたが、この男の自首によりオドロキにとって最悪な展開になったのだ。
けど、ひとつだけオドロキには今の状況を打破しうる可能性があった。
それは、彼の左手首の痛みだ。
その締め付けが、オドロキの意識をハッキリさせる。
……あの人は犯人じゃない。
腕輪の反応から、彼が嘘を吐いてるのはわかった。
この裁判で彼が犯人ということが嘘だと証明できれば、八百谷の裁判に戻すことができる。
だが、すでに自白してしまった彼をどうやって尋問すればいい?
尋問ができなければ、弁護側からでは何もできない。
"なるだけ審理を長引かせて判決を遅らせるんや"
どうすればいいんだ。
「それじゃ、おデコくん。尋問をお願いするよ。」
「えっ」
牙琉からの言葉にオドロキは目を丸くした。
「検事さん!言ったはずだ!オレが犯人だって!」
睨みつけてくる証人の視線を、指をパチンと鳴らしながら牙琉は受け流す。
「確かに君は自白した。けど、それが本当かどうかはこの法廷で決めるよ。
あくまでこの裁判は"八百谷奈々子"が犯人かどうかを決める審理だ。
あらゆる可能性を模索し、真実を見つけ出す。
そのための裁判だろ」
牙琉はオドロキの方に視線を向ける。
「まさか勝てるからと言って逃げようだなんて思ってないよね?」
オドロキはこのとき、事情を知らないだろう牙流に心の中で感謝の言葉を述べた。
「……わかりました」
この人が相手でよかった。
「それでは弁護人。尋問をお願いします」
泥棒のオレはちょうどあの屋敷をターゲットにしていた。
そして、オレはあの日、屋敷に忍び込んだ。
崖になっている北部屋の窓から入ったんだ。
北部屋に七姫はなかった。
さらに、運が悪いことに俺の姿をタダノに見られた。
口封じに殺したら、今度はあのお嬢さんがやってきた。
幸いオレには気づかなかったから、そのまま殴って気絶させた。