焼け木杭に火がつく
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1月28日 午前9時25分
地方裁判所 被告人第2控え室
「オドロキさん」
少女が空色のマントをなびかせ、控え室に入ってきた。
資料に目を通していたオドロキは、顔を上げる。
「みぬきちゃん。来てたんだ」
「二人がしっかりやってるか気になって来ちゃいました」
みぬきはキョロキョロと部屋を見回す。
「あれ?八百谷さんはどうしたんですか?姿が見えませんけど」
「あぁ、彼女には先に法廷に行ってもらったんだ」
「そうですか。……あの」
みぬきが不安げにオドロキに視線を向ける。
「本当に大丈夫なんですか?オドロキさん」
「あぁ。平気さ。殴られたとこが少し痛むぐらいで、医者からも問題ないって」
「無理しないでくださいね。
でも、オドロキさんも弁護士らしくなってきましたね。
パパも昔、消火器で殴られたり、怖い人たちに囲まれたり、火の橋を渡ったりしたらしいですから」
「……それはあまり弁護士と関係ないような……」
というか、それ運の悪さが似てきただけじゃないのか?
オドロキはそう心の中でつぶやいた。
「オドロキさんが無事なのも、あの鬼風さんのおかげですね」
オドロキが盛大に顔をしかめた。
「……」
「オドロキさん。あの泥棒さんの話になるといつも固まりますよね」
「そっそんなことはないよ!」
「なにかあったんですか?」
「なっなんでもないよ」
「それならなんで鬼風さんの話になると固まるんですか?」
「それは……」
マジシャンの少女は首をかしげながらオドロキの返答を待つ。
「おっ大人の事情ってやつだよ!」
「えええ!?なんですかそれ!?」
「それよりも!希月さんはどうしたんだよ!」
「えっオドロキさんと一緒じゃないんですか?」
「書類出してくるって行ったきり帰ってきてない……」
その瞬間、オドロキの背中に冷気が滑る。
ノックの音がして、オドロキは返事をした。
カカリカンが入室してくる。
「オドロキ弁護士、希月弁護士から手紙を預かってきました」
「……手紙?」
オドロキは肺に氷を詰められたような、嫌な悪寒が身体を駆け巡った。
まさか……!
心臓が嫌な跳ね方をする。
白い封筒を渡すと、カカリカンはすぐに出ていく。
用事があるなら、直接伝えにくるはずだ。
それなのに……
オドロキは白い封筒から二つに折りたたまれた便箋を取り出す。
「なっ!?」
オドロキの手がぐしゃっと便箋に皺をつくる。
みぬきが手紙の内容を見て、口元を押さえた。
"弁護をやめて、八百谷を有罪にしろ。
さもなくば希月弁護士の命はないと思え。
また、このことを警察に知らせたら
どうなるかわかっているな?"
「クソッ!!!!」
こみ上げた怒りとやりきれなさに、オドロキは拳を壁に叩きつけた。
自分ではなく今度は後輩を狙ってきやがった……!
「そんな心音さんが!」
どうする?もう裁判が始まっちまうぞ。
このままじゃ
バァン!!
「みかちゅうぁ~~~~~ん!オレの応援のために来てくれたんやてぇ~~~~!」
突如開いた扉の方向に、みぬきとオドロキがバッと振り向いた。
だが、出てきた人物の言動に訳がわからず固まる。
「あれ?なんで童貞弁護士がみかちゃんとこにおるん?」
「どっ!?」
いや、今はこんなのに構ってる暇はない。
オドロキは沸き起こった憤怒を瞬時に押し込め、早口に言い放つ。
「ここにはオレとみぬきちゃんしかいません。すいません。急いでるんでまたあと「うおおおお!可愛ええええ!美少女マジシャン!」
オドロキの額にビシッと青筋が浮かんだ。
目ざとくみぬきの存在に気づいた紗針が、彼女に遠慮なく近寄る。
「なぁなぁそれステージ衣装?もしかして今日どっかでショーやる予定?」
「どいてください!今みぬきたち忙しいんです!」
みぬきが怒り、ちょっと押される紗針。
ふと、彼はオドロキの持ってる手紙に気づく。
「なんやこれ?」
「返してください!」
男は目と鼻をテキトーに置いたような締まりのない顔をしていたが、手紙を見た瞬間、真面目な顔に変わる。
「おい包×弁護士!」
「王泥喜法介です!」
怒りと羞恥で顔を真っ赤にしながら、オドロキは怒鳴った。
「ほーけいってなんですか?」
みぬきの言葉をオドロキは全力でスルーした。
「心音ちゃんがさらわれたんか!なにしてんのやお前!大事な後輩やろ!」
「オドロキさんを責めないでください!」
みぬきがオドロキとサハリの間に割って入る。
「……せやな。今はアンタを責めてもしょうがない」
「くそっ。一体誰が!」
「そら、もちろん。犯人さんに決まっとるやろ。やっこさんよっぽどあのお嬢ちゃんに罪を擦りつけたいみたいやな」
「法廷が始まるのは時間の問題だ。それまでに希月さんを探し出すなんて」
「まぁ、待てって。青少年」
オドロキが自慢の前髪をぐしゃぐしゃとかきまわしていると、紗針が言葉を発した。
「法廷を弁護士がボイコットなんかしても相手の思う壺や。お前は予定通り法廷に立ちぃや」
「でも!そしたら希月さんの身が危険になるだけじゃないですか!」
「別に弁護士が弁護をやめても代わりの弁護士が立つだけや。それならなんでわざわざ有罪にしろなんて命令するんや。やっこさんはお前さんに法廷に立ってもらわないといけないからやろ?」
「じゃあ、希月さんを探すにはどうしたら」
「任せとき!カワイイ女の子のためなら例え火の中水の中!この紗針さまが助けにいくで!」
「でも、警察に知られたら……」
「おっと勘違いしてもらっちゃ困るで」
オドロキの言葉を遮り、サハリは彼の顔に手の平を向ける。
「今のわいはイケてる警察の紗針やない。可愛いあの子のハートを狙う……恋泥棒の若くんや!」
オドロキは眩暈がした。
大事な後輩をこいつに任せて良いのか……!?オドロキホースケ!!
「それにわい一人だけなら警察とは言わんやろ!」
しかし、頼れるのはこの頭のネジの外れた男一人という状況。
オドロキは葛藤しながら、頼りない刑事を見つめる。
「あっ!自分信用してへんやろ!
わいは仕事に関しては10%の能力しか出せへんけど、女の子に関しては120%の力を発揮できる男やで!」
「はぁ……」
「みぬきだって心音さんを探します!だから、任せてください!」
みぬきの言葉でオドロキはやっと、心音捜索を任せる決心がついた。
「よし、オドロキくんは法廷に出てとりあえず犯人に従うフリしといてなぁ。
なるだけ審理を長引かせて判決を遅らせるんや」
「頼みましたよオドロキさん!」
地方裁判所 被告人第2控え室
「オドロキさん」
少女が空色のマントをなびかせ、控え室に入ってきた。
資料に目を通していたオドロキは、顔を上げる。
「みぬきちゃん。来てたんだ」
「二人がしっかりやってるか気になって来ちゃいました」
みぬきはキョロキョロと部屋を見回す。
「あれ?八百谷さんはどうしたんですか?姿が見えませんけど」
「あぁ、彼女には先に法廷に行ってもらったんだ」
「そうですか。……あの」
みぬきが不安げにオドロキに視線を向ける。
「本当に大丈夫なんですか?オドロキさん」
「あぁ。平気さ。殴られたとこが少し痛むぐらいで、医者からも問題ないって」
「無理しないでくださいね。
でも、オドロキさんも弁護士らしくなってきましたね。
パパも昔、消火器で殴られたり、怖い人たちに囲まれたり、火の橋を渡ったりしたらしいですから」
「……それはあまり弁護士と関係ないような……」
というか、それ運の悪さが似てきただけじゃないのか?
オドロキはそう心の中でつぶやいた。
「オドロキさんが無事なのも、あの鬼風さんのおかげですね」
オドロキが盛大に顔をしかめた。
「……」
「オドロキさん。あの泥棒さんの話になるといつも固まりますよね」
「そっそんなことはないよ!」
「なにかあったんですか?」
「なっなんでもないよ」
「それならなんで鬼風さんの話になると固まるんですか?」
「それは……」
マジシャンの少女は首をかしげながらオドロキの返答を待つ。
「おっ大人の事情ってやつだよ!」
「えええ!?なんですかそれ!?」
「それよりも!希月さんはどうしたんだよ!」
「えっオドロキさんと一緒じゃないんですか?」
「書類出してくるって行ったきり帰ってきてない……」
その瞬間、オドロキの背中に冷気が滑る。
ノックの音がして、オドロキは返事をした。
カカリカンが入室してくる。
「オドロキ弁護士、希月弁護士から手紙を預かってきました」
「……手紙?」
オドロキは肺に氷を詰められたような、嫌な悪寒が身体を駆け巡った。
まさか……!
心臓が嫌な跳ね方をする。
白い封筒を渡すと、カカリカンはすぐに出ていく。
用事があるなら、直接伝えにくるはずだ。
それなのに……
オドロキは白い封筒から二つに折りたたまれた便箋を取り出す。
「なっ!?」
オドロキの手がぐしゃっと便箋に皺をつくる。
みぬきが手紙の内容を見て、口元を押さえた。
"弁護をやめて、八百谷を有罪にしろ。
さもなくば希月弁護士の命はないと思え。
また、このことを警察に知らせたら
どうなるかわかっているな?"
「クソッ!!!!」
こみ上げた怒りとやりきれなさに、オドロキは拳を壁に叩きつけた。
自分ではなく今度は後輩を狙ってきやがった……!
「そんな心音さんが!」
どうする?もう裁判が始まっちまうぞ。
このままじゃ
バァン!!
「みかちゅうぁ~~~~~ん!オレの応援のために来てくれたんやてぇ~~~~!」
突如開いた扉の方向に、みぬきとオドロキがバッと振り向いた。
だが、出てきた人物の言動に訳がわからず固まる。
「あれ?なんで童貞弁護士がみかちゃんとこにおるん?」
「どっ!?」
いや、今はこんなのに構ってる暇はない。
オドロキは沸き起こった憤怒を瞬時に押し込め、早口に言い放つ。
「ここにはオレとみぬきちゃんしかいません。すいません。急いでるんでまたあと「うおおおお!可愛ええええ!美少女マジシャン!」
オドロキの額にビシッと青筋が浮かんだ。
目ざとくみぬきの存在に気づいた紗針が、彼女に遠慮なく近寄る。
「なぁなぁそれステージ衣装?もしかして今日どっかでショーやる予定?」
「どいてください!今みぬきたち忙しいんです!」
みぬきが怒り、ちょっと押される紗針。
ふと、彼はオドロキの持ってる手紙に気づく。
「なんやこれ?」
「返してください!」
男は目と鼻をテキトーに置いたような締まりのない顔をしていたが、手紙を見た瞬間、真面目な顔に変わる。
「おい包×弁護士!」
「王泥喜法介です!」
怒りと羞恥で顔を真っ赤にしながら、オドロキは怒鳴った。
「ほーけいってなんですか?」
みぬきの言葉をオドロキは全力でスルーした。
「心音ちゃんがさらわれたんか!なにしてんのやお前!大事な後輩やろ!」
「オドロキさんを責めないでください!」
みぬきがオドロキとサハリの間に割って入る。
「……せやな。今はアンタを責めてもしょうがない」
「くそっ。一体誰が!」
「そら、もちろん。犯人さんに決まっとるやろ。やっこさんよっぽどあのお嬢ちゃんに罪を擦りつけたいみたいやな」
「法廷が始まるのは時間の問題だ。それまでに希月さんを探し出すなんて」
「まぁ、待てって。青少年」
オドロキが自慢の前髪をぐしゃぐしゃとかきまわしていると、紗針が言葉を発した。
「法廷を弁護士がボイコットなんかしても相手の思う壺や。お前は予定通り法廷に立ちぃや」
「でも!そしたら希月さんの身が危険になるだけじゃないですか!」
「別に弁護士が弁護をやめても代わりの弁護士が立つだけや。それならなんでわざわざ有罪にしろなんて命令するんや。やっこさんはお前さんに法廷に立ってもらわないといけないからやろ?」
「じゃあ、希月さんを探すにはどうしたら」
「任せとき!カワイイ女の子のためなら例え火の中水の中!この紗針さまが助けにいくで!」
「でも、警察に知られたら……」
「おっと勘違いしてもらっちゃ困るで」
オドロキの言葉を遮り、サハリは彼の顔に手の平を向ける。
「今のわいはイケてる警察の紗針やない。可愛いあの子のハートを狙う……恋泥棒の若くんや!」
オドロキは眩暈がした。
大事な後輩をこいつに任せて良いのか……!?オドロキホースケ!!
「それにわい一人だけなら警察とは言わんやろ!」
しかし、頼れるのはこの頭のネジの外れた男一人という状況。
オドロキは葛藤しながら、頼りない刑事を見つめる。
「あっ!自分信用してへんやろ!
わいは仕事に関しては10%の能力しか出せへんけど、女の子に関しては120%の力を発揮できる男やで!」
「はぁ……」
「みぬきだって心音さんを探します!だから、任せてください!」
みぬきの言葉でオドロキはやっと、心音捜索を任せる決心がついた。
「よし、オドロキくんは法廷に出てとりあえず犯人に従うフリしといてなぁ。
なるだけ審理を長引かせて判決を遅らせるんや」
「頼みましたよオドロキさん!」