焼け木杭に火がつく
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煙が充満してだんだんと部屋が見えなくなっていく。
視界の悪さのせいで、鬼風はなかなか地下室への秘密の扉を見つけることができずにいた。
考えろ!
私は事件当日の夜に、あの着物の女が消えたのを窓から見た。
ってことは、この部屋に必ず地下室に通じる扉があるはずだ。
考えながら鬼風は腰のポケットから鍵を取り出す。
あのとき拾った鍵ならある。
あとは扉だけなんだ!
鬼風はちらっと床を見て、壊してしまえば手っ取り早いかと思ったが、床の材質や厚さなどを考えて無理だと判断した。
「くそっ!ブッ壊せねえよななやっぱ!」
もう空気も残り少ない、ぼんやりとし始めた意識の中で必死に思考を巡らす。
窓から見える位置に必ずあるはずなんだ!
ふと部屋を見回していたオニカゼは暖炉が目についた。
南部屋にストーブ、
北部屋に暖炉。
思考というよりも、オニの第六感のようなものが体を動かしていた。
オニカゼは暖炉を肩で押してみる。
ズルズルと動く音がして、鬼風はそのまま押す。
「……あった!!」
どかした暖炉の下から鍵穴がついた扉がでてくる。
鍵を穴に差し、回す。
ごごごごごと音がして、扉が動く。
地下室への階段を下り、煙の発生源へと突っ込む。
階段の近くの床で赤いモノが見える。
「ホースケ!!」
オニカゼは倒れているオドロキを見つけると、瞬時に駆け寄り彼を抱き上げる。
熱で変装のマスクが溶けかけていたので、鬼風は顔のマスクを剥がし捨てた。
がらがらと鬼風の背後がくずれ、階段が崩れた瓦礫のせいで、通れなくなりかけていた。
オドロキの体をぎゅっと胸に押し付け、足裏に力を入れる。
崩れてくる瓦礫を避け、階段を一気に駆けあがった。
切れ長の目をした泥棒は地上にでると、そのまま窓から外へ出る。
オニカゼは窓からナナツバキの生えている崖へと降りた。
「おいホースケ!ホースケ!」
横にしたオドロキを、鬼風が切羽詰まった声で呼ぶ。
頬を叩くが、彼は起きない。
オドロキの口に鬼風は耳を当てる。
「呼吸が……」
切れ長の目の青年はオドロキの顎をあげ、顔を近づける。
唇の先が微かに擦れ合った瞬間、オドロキの瞼が持ち上がった。
「あれ?起きちゃった?」
「は?」
オドロキの目が大きく見開かれ、鬼風は唇を尖らせながら顔を離す。
「ちぇっ。セカンドキスは奪えなかったか」
「なっ!なんで、」
「あっそっちは」
「えっうわ、わわわ!」
がくんっとオドロキの尻にあった岩がなくなり、彼は背中から奈落へと落ちそうになる。
「よっと」
そんなオドロキの腕を掴み、鬼風は自分の方へと引き寄せる。
「よしよし怖かったね。あっもしやその興奮は私への恋心だと錯覚なんかしちゃったりして?」
「ぶっ飛ばすぞてめえ」
キャラ崩壊寸前の乱暴な口調で、オドロキは相手を射殺すばかりに睨む。
そんな彼を見て、鬼風は微笑んだ。
彼の頭に手を乗せる。
「暴言吐く元気はあるみたいだね」
オニカゼはいつもの人を食ったような笑みではなく、木漏れ日のような穏やかな笑みを浮かべていた。
「……よかった」
ポツリと小さくつぶやかれた声は、安心しているようだった。
意外な一面にオドロキは虚を突かれる。
「さて、とりあえず助かったけど、君たちにとっては最悪な状況になっちゃったね」
「え?」
「……犯人の殺害現場が崩れちゃっただろ」
「あっ」
本当の殺害現場と思われる地下室は崩れてしまい、もはや調べることはできなくなってしまった。
「くそっ」
「まぁ、七姫も無くなったし、私はここで手を引くよ」
オドロキは俯く。
「――――――のはずだったけど」
ここにいない犯人に向けているように、オニが空を鋭く睨む。
「気が変わった」
ひやりとその場の温度が下がった。
「私の大事なお宝に傷をつけたんだ。ただじゃ終わらせねえよ」
この人、よっぽど七姫を壊されたのが悔しかったんだな。
オニカゼの不穏な空気を見て、オドロキは背筋が寒くなった。
「それより、早く後輩ちゃんに無事ってことを連絡しないとな」
差し出されたケータイを見て、オドロキはあっと口を開けた。
「おっオレのケータイ!?」
「ほいっ」
『オドロキ先輩!?』
「希月さん!?」
『よかった!無事だったんですね!もう!なんで毎回毎回襲われたりするんですか!』
「ごめん、心配させて……」
オドロキの手から、携帯を奪うと、鬼風が話し始める。
「そういう訳で、君の先輩は無事だよ。あぁ、今はナナツバキの下に避難してる」
電話でこちらの場所を伝えて、迎えを要請すると、鬼風は電話を切った。
その携帯電話をオドロキに返す。
「それじゃ、連絡もすんだし、君を助けた報酬はありがたくいただくね」
「報酬?」
オドロキは首を傾げる。
彼は鬼風からなにか物を盗られた覚えはなかった。
「じゃあね。ダーリン」
その言葉を聞き、ぞわっと背筋に嫌な悪寒が走り、オドロキの全身に鳥肌が立った。
オドロキがなにか言おうとした瞬間、鬼風が崖から飛び下りた。
驚きの絶叫をあげて、オドロキは崖から顔を出す。
だが、鬼風の姿は消えていた。
―――ここから落ちて無事で済むわけ
落ちても大丈夫だからこそ、鬼の泥棒は飛び下りたと頭ではわかっていても、オドロキは脳内に鬼風が地面に叩きつけられる映像が浮かぶ。
すると、彼の携帯から音楽が流れ始めた。
その場に恋するギターのセレナードの着メロが流れる。
「メール?……げ!!!!」
『携帯番号確かに頂きやしたvvv』
オドロキの心中を気にせず、呑気な文章がメールで送られてきた。
もちろん、送り主は鬼風だった。
「報酬ってこれか……というかあいつ、一体いつ携帯番号登録したんだよ」
ご丁寧にハートマークまでついた文章に、オドロキは顔を片手で覆う。
「……携帯、解約しようかな……」
~つづく~
視界の悪さのせいで、鬼風はなかなか地下室への秘密の扉を見つけることができずにいた。
考えろ!
私は事件当日の夜に、あの着物の女が消えたのを窓から見た。
ってことは、この部屋に必ず地下室に通じる扉があるはずだ。
考えながら鬼風は腰のポケットから鍵を取り出す。
あのとき拾った鍵ならある。
あとは扉だけなんだ!
鬼風はちらっと床を見て、壊してしまえば手っ取り早いかと思ったが、床の材質や厚さなどを考えて無理だと判断した。
「くそっ!ブッ壊せねえよななやっぱ!」
もう空気も残り少ない、ぼんやりとし始めた意識の中で必死に思考を巡らす。
窓から見える位置に必ずあるはずなんだ!
ふと部屋を見回していたオニカゼは暖炉が目についた。
南部屋にストーブ、
北部屋に暖炉。
思考というよりも、オニの第六感のようなものが体を動かしていた。
オニカゼは暖炉を肩で押してみる。
ズルズルと動く音がして、鬼風はそのまま押す。
「……あった!!」
どかした暖炉の下から鍵穴がついた扉がでてくる。
鍵を穴に差し、回す。
ごごごごごと音がして、扉が動く。
地下室への階段を下り、煙の発生源へと突っ込む。
階段の近くの床で赤いモノが見える。
「ホースケ!!」
オニカゼは倒れているオドロキを見つけると、瞬時に駆け寄り彼を抱き上げる。
熱で変装のマスクが溶けかけていたので、鬼風は顔のマスクを剥がし捨てた。
がらがらと鬼風の背後がくずれ、階段が崩れた瓦礫のせいで、通れなくなりかけていた。
オドロキの体をぎゅっと胸に押し付け、足裏に力を入れる。
崩れてくる瓦礫を避け、階段を一気に駆けあがった。
切れ長の目をした泥棒は地上にでると、そのまま窓から外へ出る。
オニカゼは窓からナナツバキの生えている崖へと降りた。
「おいホースケ!ホースケ!」
横にしたオドロキを、鬼風が切羽詰まった声で呼ぶ。
頬を叩くが、彼は起きない。
オドロキの口に鬼風は耳を当てる。
「呼吸が……」
切れ長の目の青年はオドロキの顎をあげ、顔を近づける。
唇の先が微かに擦れ合った瞬間、オドロキの瞼が持ち上がった。
「あれ?起きちゃった?」
「は?」
オドロキの目が大きく見開かれ、鬼風は唇を尖らせながら顔を離す。
「ちぇっ。セカンドキスは奪えなかったか」
「なっ!なんで、」
「あっそっちは」
「えっうわ、わわわ!」
がくんっとオドロキの尻にあった岩がなくなり、彼は背中から奈落へと落ちそうになる。
「よっと」
そんなオドロキの腕を掴み、鬼風は自分の方へと引き寄せる。
「よしよし怖かったね。あっもしやその興奮は私への恋心だと錯覚なんかしちゃったりして?」
「ぶっ飛ばすぞてめえ」
キャラ崩壊寸前の乱暴な口調で、オドロキは相手を射殺すばかりに睨む。
そんな彼を見て、鬼風は微笑んだ。
彼の頭に手を乗せる。
「暴言吐く元気はあるみたいだね」
オニカゼはいつもの人を食ったような笑みではなく、木漏れ日のような穏やかな笑みを浮かべていた。
「……よかった」
ポツリと小さくつぶやかれた声は、安心しているようだった。
意外な一面にオドロキは虚を突かれる。
「さて、とりあえず助かったけど、君たちにとっては最悪な状況になっちゃったね」
「え?」
「……犯人の殺害現場が崩れちゃっただろ」
「あっ」
本当の殺害現場と思われる地下室は崩れてしまい、もはや調べることはできなくなってしまった。
「くそっ」
「まぁ、七姫も無くなったし、私はここで手を引くよ」
オドロキは俯く。
「――――――のはずだったけど」
ここにいない犯人に向けているように、オニが空を鋭く睨む。
「気が変わった」
ひやりとその場の温度が下がった。
「私の大事なお宝に傷をつけたんだ。ただじゃ終わらせねえよ」
この人、よっぽど七姫を壊されたのが悔しかったんだな。
オニカゼの不穏な空気を見て、オドロキは背筋が寒くなった。
「それより、早く後輩ちゃんに無事ってことを連絡しないとな」
差し出されたケータイを見て、オドロキはあっと口を開けた。
「おっオレのケータイ!?」
「ほいっ」
『オドロキ先輩!?』
「希月さん!?」
『よかった!無事だったんですね!もう!なんで毎回毎回襲われたりするんですか!』
「ごめん、心配させて……」
オドロキの手から、携帯を奪うと、鬼風が話し始める。
「そういう訳で、君の先輩は無事だよ。あぁ、今はナナツバキの下に避難してる」
電話でこちらの場所を伝えて、迎えを要請すると、鬼風は電話を切った。
その携帯電話をオドロキに返す。
「それじゃ、連絡もすんだし、君を助けた報酬はありがたくいただくね」
「報酬?」
オドロキは首を傾げる。
彼は鬼風からなにか物を盗られた覚えはなかった。
「じゃあね。ダーリン」
その言葉を聞き、ぞわっと背筋に嫌な悪寒が走り、オドロキの全身に鳥肌が立った。
オドロキがなにか言おうとした瞬間、鬼風が崖から飛び下りた。
驚きの絶叫をあげて、オドロキは崖から顔を出す。
だが、鬼風の姿は消えていた。
―――ここから落ちて無事で済むわけ
落ちても大丈夫だからこそ、鬼の泥棒は飛び下りたと頭ではわかっていても、オドロキは脳内に鬼風が地面に叩きつけられる映像が浮かぶ。
すると、彼の携帯から音楽が流れ始めた。
その場に恋するギターのセレナードの着メロが流れる。
「メール?……げ!!!!」
『携帯番号確かに頂きやしたvvv』
オドロキの心中を気にせず、呑気な文章がメールで送られてきた。
もちろん、送り主は鬼風だった。
「報酬ってこれか……というかあいつ、一体いつ携帯番号登録したんだよ」
ご丁寧にハートマークまでついた文章に、オドロキは顔を片手で覆う。
「……携帯、解約しようかな……」
~つづく~