焼け木杭に火がつく
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1月26日 午前10時11分
成歩堂なんでも事務所
「それじゃ、留守番を頼むよ。」
「はいっ!任せてください!」
「いってらっしゃい!」
事務所を出ていく所長を、オドロキと心音は元気に送り出す。
「ナルホドウさん。久しぶりの弁護の依頼だから、張り切ってますね。
……けど、やっぱり私も弁護の仕事をしたかったなぁ」
がっくりと肩を落とす心音に、オドロキが慰める。
「依頼人が成歩堂さんを指名してるんだから仕方がないよ。」
「早く私も"希月弁護士にお願いしたいんです"って言われるようになりたいです!」
拳を固め、くっと悔しそうに心音は顔を仰ぐ。
「とりあえず、俺たちは"なんでも事務所"の方に来た仕事を片付けて、すぐに成歩堂さんの方を手伝おう」
「はいっ!」
「えっと、まずは……あれ?」
オドロキは机に散らばった文房具を見渡すが、お目当ての物が見つからない。
「希月さん?ハサミ知らない?」
「ハサミなら、確か成歩堂さんが使っていたのを見ましたよ」
「……あの人、使ったら絶対元に戻さないからな」
自分もたまにやることを棚に上げ、オドロキはぼやいた。
心音は給湯室でお茶を入れてる春美の元へ向かう。
「ハルミちゃん!ハサミ、見なかった?」
やかんでお湯を沸かしていたらしい春美は、読んでいた新聞から顔をあげる。
「ハサミですか?それなら引き出しに片付けましたよ」
「それ、今朝の新聞?」
「ええ。たまたま一面が気になったので……」
「あっ!それわたしにも見せて!」
心音は春美から新聞を渡され、一面の見出しを口に出す。
「"≪またも現れる傾奇者≫
今月17日にちゅらら水族館で怪盗鬼風が出没。
火災探知機の誤作動や地下の爆発などは彼の犯行と断定。
しかし、怪我人はおらず、盗まれた物もなかったため
果たして鬼風の仕業かと疑念を抱かれて……"」
「この泥棒さん。最近ニュースでよく見かけますね。
確かこの前も、テレビで鬼風がどのように80階建て高層ビルの窓から侵入したかを
解説していましたよ」
「希月さん!ハサミの場所わかった?」
戻ってくるのが遅い後輩を急かしに、オドロキが給湯室を覗く。
「って、油売ってないでこっちを手伝ってくれよ」
「センパイ!見てください!これ!」
「新聞?……うっ!」
見出しの文字を見て、オドロキは顔を引きつらせた。
「鬼寺で出会ったあの泥棒!また出たみたいですよ!」
「そうっ……みたい、だね……」
オドロキは前髪を垂らしながら、あさっての方向を向く。
「けど、この泥棒さんは変な泥棒さんなんですよね」
「そうそう。なんでも宝石とお金とかは盗まないで、価値のある“人形”しか盗まないんだって。あのお寺でも木彫りの像を盗もうとしてたし」
「そういえば、ココネさんたちはこの泥棒さんにお会いしたことがあるんですよね」
「うん。11月に九尾村に行ったときにね。そこの鬼寺で強盗集団に襲われたとき
私たちを助けてくれたの。」
「それなら悪い方ではないのでしょうか」
「……泥棒なんだし良い人でもないと思うよ」
「オドロキセンパイだって助けてもらったじゃないですか」
「そっ……そうだけど……そっそれより!早く仕事に戻る!!」
大声でそう言って、オドロキは戻っていった。
「どうしたのですか?オドロキさん」
オドロキの様子に首をかしげながら、春美は心音の方に顔を向けた。
「なんだかセンパイ、あまり鬼風の話をしたくないみたい」
声から感情を読み取れる心音は、鬼風のことを話すオドロキの心を察していた。
「あの人の話をするとセンパイから怒りの感情が聞こえるの」
「オドロキさんからは何か聞いてないのですか?」
「聞いてみたけど、大丈夫!の一言で何も話してくれなくて」
「そうですか」
はぁとため息を吐く二人の元に、訪問者を告げるドアの音が響く。
…………。
ドアを開いたのは薄汚れた緑のジャンパーを羽織った男だった。
「あの……成歩堂弁護士はいますか?」
オドロキは突然の来訪者に驚きつつも、客を迎え入れた。
「成歩堂ですか?申し訳ありません、所長は事件の調査をしていて不在です」
「……そうですか」
「弁護の依頼なら、成歩堂以外にも二人ほど弁護士がおりますが」
「では、その弁護士たちにお願いします」
男は上着のポケットから写真を取り出し、机の上に置いた。
「……この人の弁護をお願いしたいんです」
その写真には、長い黒髪の女性が映っていた。
今時珍しいおかっぱで、ぬばたまの黒髪が艶々と輝いている。
「えっと、彼女は?」
「八百屋 奈々子(ヤオヤ ナナコ)。御条短期大学1年生です。」
「恋人ですか?」
男が目線を横にそらす。
「……いえ、ただの知り合いです」
「事件の内容をおうかがいしてもいいですか?」
「その……放火です。」
「放火?」
「はい。彼女が自分の屋敷に火をつけたので、それを弁護してほしいんです」
「なるほど。わかりました。」
「依頼状はここに。私はこれで」
白い封筒を机に置くと男は立ち上がり、事務所の扉へと向かってしまう。
「へ?ちょっちょっと!」
オドロキが制止の声をかけるが、男は扉から出て行ってしまった。
慌てて追いかけて扉を開けるが、男の姿はすでになくなっていた。
「行っちまった……なんなんだ?」
「オドロキセンパイ!もしかして弁護の依頼ですか!?」
ドアの開閉の音を聞き、心音が給湯室から飛んできた。
「あぁ。うん。」
「どんな事件の弁護ですか?」
「放火だよ」
「放火?」
「それ以外に詳しいことは聞かされてないんだ。聞く前に依頼人が帰っちゃって」
「もう!なにしてるんですか!詳しいことを聞くまでは帰さないようにしなきゃ!」
「うっ」
正論を言われ、少しだけ凹むオドロキ。
「とっとりあえず、依頼状はあるから、留置所に行ってみよう。
春美ちゃんは留守番をお願い。」
「お任せください」
腕まくりをしながら春美はオドロキに返事をした。
成歩堂なんでも事務所
「それじゃ、留守番を頼むよ。」
「はいっ!任せてください!」
「いってらっしゃい!」
事務所を出ていく所長を、オドロキと心音は元気に送り出す。
「ナルホドウさん。久しぶりの弁護の依頼だから、張り切ってますね。
……けど、やっぱり私も弁護の仕事をしたかったなぁ」
がっくりと肩を落とす心音に、オドロキが慰める。
「依頼人が成歩堂さんを指名してるんだから仕方がないよ。」
「早く私も"希月弁護士にお願いしたいんです"って言われるようになりたいです!」
拳を固め、くっと悔しそうに心音は顔を仰ぐ。
「とりあえず、俺たちは"なんでも事務所"の方に来た仕事を片付けて、すぐに成歩堂さんの方を手伝おう」
「はいっ!」
「えっと、まずは……あれ?」
オドロキは机に散らばった文房具を見渡すが、お目当ての物が見つからない。
「希月さん?ハサミ知らない?」
「ハサミなら、確か成歩堂さんが使っていたのを見ましたよ」
「……あの人、使ったら絶対元に戻さないからな」
自分もたまにやることを棚に上げ、オドロキはぼやいた。
心音は給湯室でお茶を入れてる春美の元へ向かう。
「ハルミちゃん!ハサミ、見なかった?」
やかんでお湯を沸かしていたらしい春美は、読んでいた新聞から顔をあげる。
「ハサミですか?それなら引き出しに片付けましたよ」
「それ、今朝の新聞?」
「ええ。たまたま一面が気になったので……」
「あっ!それわたしにも見せて!」
心音は春美から新聞を渡され、一面の見出しを口に出す。
「"≪またも現れる傾奇者≫
今月17日にちゅらら水族館で怪盗鬼風が出没。
火災探知機の誤作動や地下の爆発などは彼の犯行と断定。
しかし、怪我人はおらず、盗まれた物もなかったため
果たして鬼風の仕業かと疑念を抱かれて……"」
「この泥棒さん。最近ニュースでよく見かけますね。
確かこの前も、テレビで鬼風がどのように80階建て高層ビルの窓から侵入したかを
解説していましたよ」
「希月さん!ハサミの場所わかった?」
戻ってくるのが遅い後輩を急かしに、オドロキが給湯室を覗く。
「って、油売ってないでこっちを手伝ってくれよ」
「センパイ!見てください!これ!」
「新聞?……うっ!」
見出しの文字を見て、オドロキは顔を引きつらせた。
「鬼寺で出会ったあの泥棒!また出たみたいですよ!」
「そうっ……みたい、だね……」
オドロキは前髪を垂らしながら、あさっての方向を向く。
「けど、この泥棒さんは変な泥棒さんなんですよね」
「そうそう。なんでも宝石とお金とかは盗まないで、価値のある“人形”しか盗まないんだって。あのお寺でも木彫りの像を盗もうとしてたし」
「そういえば、ココネさんたちはこの泥棒さんにお会いしたことがあるんですよね」
「うん。11月に九尾村に行ったときにね。そこの鬼寺で強盗集団に襲われたとき
私たちを助けてくれたの。」
「それなら悪い方ではないのでしょうか」
「……泥棒なんだし良い人でもないと思うよ」
「オドロキセンパイだって助けてもらったじゃないですか」
「そっ……そうだけど……そっそれより!早く仕事に戻る!!」
大声でそう言って、オドロキは戻っていった。
「どうしたのですか?オドロキさん」
オドロキの様子に首をかしげながら、春美は心音の方に顔を向けた。
「なんだかセンパイ、あまり鬼風の話をしたくないみたい」
声から感情を読み取れる心音は、鬼風のことを話すオドロキの心を察していた。
「あの人の話をするとセンパイから怒りの感情が聞こえるの」
「オドロキさんからは何か聞いてないのですか?」
「聞いてみたけど、大丈夫!の一言で何も話してくれなくて」
「そうですか」
はぁとため息を吐く二人の元に、訪問者を告げるドアの音が響く。
…………。
ドアを開いたのは薄汚れた緑のジャンパーを羽織った男だった。
「あの……成歩堂弁護士はいますか?」
オドロキは突然の来訪者に驚きつつも、客を迎え入れた。
「成歩堂ですか?申し訳ありません、所長は事件の調査をしていて不在です」
「……そうですか」
「弁護の依頼なら、成歩堂以外にも二人ほど弁護士がおりますが」
「では、その弁護士たちにお願いします」
男は上着のポケットから写真を取り出し、机の上に置いた。
「……この人の弁護をお願いしたいんです」
その写真には、長い黒髪の女性が映っていた。
今時珍しいおかっぱで、ぬばたまの黒髪が艶々と輝いている。
「えっと、彼女は?」
「八百屋 奈々子(ヤオヤ ナナコ)。御条短期大学1年生です。」
「恋人ですか?」
男が目線を横にそらす。
「……いえ、ただの知り合いです」
「事件の内容をおうかがいしてもいいですか?」
「その……放火です。」
「放火?」
「はい。彼女が自分の屋敷に火をつけたので、それを弁護してほしいんです」
「なるほど。わかりました。」
「依頼状はここに。私はこれで」
白い封筒を机に置くと男は立ち上がり、事務所の扉へと向かってしまう。
「へ?ちょっちょっと!」
オドロキが制止の声をかけるが、男は扉から出て行ってしまった。
慌てて追いかけて扉を開けるが、男の姿はすでになくなっていた。
「行っちまった……なんなんだ?」
「オドロキセンパイ!もしかして弁護の依頼ですか!?」
ドアの開閉の音を聞き、心音が給湯室から飛んできた。
「あぁ。うん。」
「どんな事件の弁護ですか?」
「放火だよ」
「放火?」
「それ以外に詳しいことは聞かされてないんだ。聞く前に依頼人が帰っちゃって」
「もう!なにしてるんですか!詳しいことを聞くまでは帰さないようにしなきゃ!」
「うっ」
正論を言われ、少しだけ凹むオドロキ。
「とっとりあえず、依頼状はあるから、留置所に行ってみよう。
春美ちゃんは留守番をお願い。」
「お任せください」
腕まくりをしながら春美はオドロキに返事をした。