可愛さ余って憎さ百倍
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「爆弾を止める奴がいなくてどうする」
「危険です!!」
心音は目を吊り上げ、叫ぶ。
「爆発したら……巻き込まれたら、あなたはっ!」
その先に続く言葉を、オニカゼは片手で遮った。
「私を誰だと思ってる?」
不敵な笑みが、その唇に浮かぶ。
「私は怪盗鬼風。あいつが与えるべき恐怖だって、残さず盗み出してみせるさ」
そう言うと、わざとらしく、はあ、と息を吐き出した。
「それに、君がここにいても邪魔だ。それなら観客の避難や誘導に回ってくれた方が、よっぽど役に立つ」
心音は言い返そうと口を開き、そして、閉じた。
酷い言い草だったが、その声の微かな”ノイズ”からオニカゼの気遣いに気づいてしまったからだ。
――お前は死ぬな。
そう言っているのだと。
オニカゼがもう止まらないことを、心音は薄々悟っていた。「絶対、無事に生きててくださいね!」
それだけを絞り出すように告げると、心音は背を向けて部屋を飛び出していった。
◇◇◇
静寂が戻った部屋で、オニカゼはぽつりと言葉をこぼした。「私が死んだら……どうなるんだろうな」
たまに、すべてを放り投げたくなる。
しがらみも、忌まわしいこの想いも、託された願いも。
なにもかも、すべてを。
「……ふっ」
すぐに自嘲の笑みが漏れた。
バカなことを、と頭を振る。
例え自分が消えたところで、この“重石”が別の誰かに移るだけだ。
「わかってんだよ。なにもかも……」
爆弾のカバーを外すと、目の前に現れたのは“赤”と“青”のコードだった。
「……ベタ過ぎねえか」
場違いな苦笑が漏れる。
赤か、青か。
どうせわからないなら、いっそ好きな方を選ぶか?
私はふと赤のコードを見る。
そのコードにニッパーを宛てがい、力を込めようとした――その瞬間。
(――あぁ、そうか)
電撃が走ったかのように、犯人の本当の意図に気づく。
なぜ解ったのかは、自分でもわからない。
けれど、あえて理由をつけるとするならば。
似ているからだ。
あいつと、私は。
オニカゼは、コードに挟んでいたニッパーを床へと叩きつけた。
金属製の工具は、鈍く嫌な音を立てて砕け散った。
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