可愛さ余って憎さ百倍
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「ちなみに、それ。自分も巻き込まれるってわかってるんだよな?」
「そっそう!あなたも死にますよ!そんなことしたらっ!」
それに男は微笑むだけ。
「彼女のせいで、ここの居る人たちが死んだって知ったらどんな顔するかなぁ」
嬉しそうに男が笑う。
「彼女がいなければ僕は恋はできなかった。僕のようなちっぽけな存在でも彼女自身にその記憶を刻むことができるなら本望だね」
心音は理解ができなかった。
同じ言語を話しているはずなのに、相手の話している内容を理解することができなった。
心音は何も言葉を紡ぐことができなかった。
はっはははは!!
突如、オニカゼが笑い出した。
長い時間かけてオニカゼの狂ったような笑い声が響く。
状況についていけず呆然としている心音だったが、耳に走る痛みによって現実に引き戻された。
「……なにがおかしい?」
男が初めて不快な感情を顔に浮かべた。
「だって、笑えるだろ」
「だから、なにがだ」
男がオニカゼを睨む。
「まるで恋に夢見る乙女のようだ。いい年こいた野郎が幸せで羨ましくてつい笑ってしまった」
ちっと男が鋭く舌打ちする。
「あぁ、そうだ。僕は恋をした。恋のおかげで僕は生きる喜びができたんだ!お前のような恋もしたことない奴にわかるものかっ!」
「恋をしたことがあるかって?あぁ、あるとも」
男が言い返す前にオニカゼが鋭く言葉を発する。
「最っ高に不快で最っ高に鬱陶しくて最っ高に虫唾が走るそんな気味の悪い感情が身体中を這い回るような感覚をな」
「っつ」
心音は強いノイズに鼓膜が痺れるように痛んだ。
小さい頃だってここまで強いノイズを聞いたことがなかった。
「恋は幸せなものだっ!」
「だから、おめでたいんだっ。てめえは。いいか?教えてやるよ。恋とはなにか?
"呪い”だ。
自分が自分でなくなる。相手が居る限りなにもかもの自由をすべて奪われる拘束。わかるか?わからねえよなぁ?てめえらは、赤の他人のために自分の感情が意思が自由がすべて奪われて醜くなるそんな感情抱くことなんかないもんなぁつ!」
オニカゼの心が心音の鼓膜に痛みとして伝わっていく。
「私はっ私はっ!!」
「オニカゼさんっ!」
心音に呼ばれて、ハッとするオニカゼ。
苦しそうに顔を歪める心音に、オニカゼは下唇を噛んだ。
「……ごめん」
小さい呟きだったが、心音の耳にかろうじて届いた。