可愛い子には旅をさせよ
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同日 午後16時54分
「あー!楽しかったあー!」
大きく伸びをしているみぬきの背を見ながら、王泥喜と鬼風は苦笑していた。
「たまごちゃんには敵わないなぁ」
「オレ、もう絶叫はこりごりです」
「私も一生分乗ったよ」
「2人ともだらしないですね」
みぬきがむっとしながら、こちらを振り返って指を突きつける。
だが、ふっと顔を緩めた。
「ふふっははは」
星空色の紺瞳を輝かせながら、笑う。
「みぬき、また鬼風さんともショーをやりたいなぁ」
「オレはもう勘弁してほしい」
「いいじゃないですか。マジックの幅だって広がるし、鬼風さんとならきっと色んな大魔術ができますよ」
「オレの精神が色々と削られるから嫌だっ」
「もう。それくらい我慢しましょうよ。みぬきの魔術研究のための生贄になってください」
「なんだよ生贄って!」
「鬼風さんもなんとか言ってやってくだひゃっ!」
「うおっ」
鬼風が両腕で二人を抱きしめる。
その腕の中で器用に王泥喜とみぬきの髪をぐしゃぐしゃとかき回した。
「ちょっなにするんですか!」
「ああんもう!」
二人が不満の声をあげると、鬼風が彼らから離れる。
彼らが乱れた髪を直しているのを見て、鬼風が笑う。
「いきなりなにするんですか!」
「やるなら王泥喜さん一人にしてください」
「ははっ。ごめんごめん」
そう謝ってから、鬼風は遊園地の時計を指差す。
「それより、時間だよ」
「もうそんな時間ですか?」
みぬきが残念そうに唇を尖らせる。
「楽しい時間は、いつだってあっという間に過ぎるものなんだよ」
夕焼けの中に立つ鬼の盗人は、真っ赤な夕日を背負いながら秋風のような微笑を浮かべる。
「……どうして、こんなに短いんだろうな……」
鬼の盗人から出た呟きは小さくて、王泥喜の耳には聞き取れなかった。
「鬼風さん?なんか言いましたか?」
「遊園地から帰るといつだってさみしいと思ってしまうなって」
「また遊びに来ましょうよ。三人で!」
みぬきが鬼風と王泥喜の手を掴んでそう言った。
意を突かれたようにポカンとしたマヌケな表情を浮かべる鬼風。
だが、その顔が一瞬曇り、すぐに笑みを貼り付けた。
「そうだな、今度はどこにデートしに行こうか」
「……今度はもっと良い所にしてくださいね」
王泥喜は嫌そうに顔をしかめて、鬼の盗人は目を大きく開く。
そして、
「王泥喜くんがデートのお誘いをしてくれた……!」
「ちがう」
口元を両手で押さえながら涙をこぼす鬼風に、王泥喜は瞬時に否定の言葉を投げた。
幻だよな。あんな鬼風さん。
一瞬だけ見えた、悲し気な表情は蜃気楼かなにかだと王泥喜はそう思うことにした。