可愛い子には旅をさせよ
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「あの、鬼風さん」
みぬきが何か言おうとした瞬間
「すみませーん。成歩堂みぬきさーん」
ステージのスタッフが駆け寄ってきた。
「さきほどのステージの出演で少し質問がありまして、お時間よろしいですか?」
「あっはい。わかりました」
みぬきは立ち上がる。
「オドロキさん、鬼風さん、ちょっと行ってきますね」
「いってらっしゃーい」
鬼風はひらひらと手を振って、みぬきを送り出す。
みぬきの姿が見えなくなってから、王泥喜が口を開いた。
「どうして“嘘”ばっかり吐くんですか」
「……なんの話だ?」
はぁと王泥喜がため息を吐く。
「あなたは嘘ばかりだ。さっきのラミロアさんのことも嘘だった」
鬼風は目をきつく細めた。
「またその“腕輪”ね。……そんなにいちいち人の“嘘”に反応して疲れないか?」
「……この腕輪のことはどうでもいいでしょ」
「その腕輪を通してでしか、私を見れないってことかい?」
王泥喜は黙って鬼風をじっと見つめている。
王泥喜の視線に根負けして、鬼風は頬杖をつきながらしゃべりだした。
「嘘を吐く理由だっけ?」
鬼風の鼻から、ふっと息が漏れた。
「そんなの決まってるだろ。……壊したくないからさ」
王泥喜は眉間にシワを寄せる。
そんな王泥喜を知ってから知らずか鬼風は続けた。
「社会が求めている“嘘”を纏わなければ、生きていることを許されない」
さらに怪訝な表情で王泥喜は鬼風を見据える。
「言ってることがよくわかりませんけど……それが、あなたが嘘を吐く理由ですか?」
王泥喜の質問に鬼風はただ微笑むだけである。
鬼風の深い黒瞳が王泥喜を飲み込む。
瞬間、王泥喜の胃に氷が流しこまれたような悪寒が走る。
身体中から警報がガンガン鳴り響く。
“危険”だと。
じわりと汗ばんだワイシャツが王泥喜の身体に張り付く。
無意識に王泥喜はごくりと唾を飲み込んでいた。
「君は、“真実”のために“命”をかけられるか?」
鬼風の問いかけは抽象的過ぎて意味がわからない。
命をかけるような真実とはいったい何だ?
そう問い返したいのに、王泥喜はためらってしまう。
なぜなら、そのときの鬼風の顔は怖いくらい真剣だったから。
「オドロキさぁーん!鬼風さぁーん!お待たせしましたぁー!」
突如、みぬきの声が聞こえ王泥喜はハッとした。
ふっと切れ上がった黒瞳を鬼風は柔らかく細める。
王泥喜は相手の笑みを見て、今度は特に何も感じなかった。
鬼風が安心したような顔をして、苦笑いを浮かべる。
「……ごめんな、変なこと聞いて。今のは忘れてくれ」
ほっと王泥喜は息を吐き出す。
そこでやっと呼吸を止めていたことに彼は気づいた。
「はぁー。今度こそ、お仕事終わりました。何に乗りますか?」
「何に乗ろうか」
王泥喜が座ったままでいるのを見て、立ち上がった鬼風は手を差し出す。
「さぁ、アトラクション。制覇するんだろ?」
王泥喜はその手を睨んでから、ゆっくりと手を伸ばし相手の手を掴んだ。
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