可愛い子には旅をさせよ
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………………。
同日 午後 15時 48分
「なーにが、“俺”を盗んでみせる!ですか!!」
王泥喜はバンとテーブルを叩く。
鬼風がジュースをストローで吸いながら、えーなんのことかなぁーとしらを切っていた。
「ちゃんと盗んで箱の中に“君”を登場させたじゃんか」
「よく言いますよ。俺に“変装”しただけのくせに」
ぶうたれる王泥喜に鬼風はきつく目を細める。
「おいおい大魔術師のアシスタントがネタを言っちゃ、おまんまくいっぱぐれちまうぞ」
「みぬきも焦っちゃいましたよ。鬼風さんなかなか出てきてくれないんですもの」
「あれは王泥喜くんが悪いだろ」
心当たりがある王泥喜はぎくっとわかりやすく肩を跳ねさせた。
「タマゴちゃんがうまく観客の視線を誘導してくれたからよかったものの、もうちょっとでネタバレするところだったんだからな」
「じゃあ、鬼風さんがわざと大きな音を出して箱を揺らして見せたのは?」
みぬきはなんとなく鬼風の意図はわかっていたが、改めて尋ねてみた。
「王泥喜くんの居場所を観客に悟らせないためさ。音での視線誘導は効果的だしな」
「だそうですよ。王泥喜さん」
「…………」
「消える最中にこけて大きな音を出すなんてアシスタントとしてはまだまだだな」
「だから俺は弁護士ですってば!!……言わせてもらいますけど。鬼風さん、あなたもミスをしてますよね」
鬼の泥棒は、右手を肩に置きながら王泥喜に片頬を吊り上げた笑みを見せる。
「ふっ。自分が失敗したのを紛らわすために人の粗探しとは、ずいぶんとせこい真似を覚えたな。王泥喜くん」
「“失敗”と発言したときにあなたは肩を触りましたね。なにかやましいことがあるんじゃないですか」
「それだけでやましいことがあるなんてのは無理がありすぎじゃないかな?弁護人?」
「ええ、そうですね。でも、あなたは“俺の姿”になったとき、一つ重大なミスを犯しました」
「なんだと?」
眉を跳ね上げ、鬼風が王泥喜を見る。
「あっ。それ、みぬきも思いました」
「げっ!?タマゴちゃんも!?……そっそれは一体!?」
とある証拠品を王泥喜がつきつける。
「こっこれは……!?
……なぜかゲームで“つきつける”と大体の確率でコメントしてもらえる“弁護士バッジ”じゃないか」
「なんの話ですか?」
こてんっとみぬきが鬼風の言葉に首を傾げる。
「メタな話だから気にしないでおくれ」
「ちょっと!つきつけたんですから真面目に答えてください!」
「おっと。“つきつけた”だけじゃ、答えられないなぁ弁護人。
きちんと、それがどうして、私の失敗に繋がるかという“理由”も説明してもらえないと」
「簡単な話ですよ。さっき俺に変装して箱から出てきたあなたは弁護士バッジを付けていなかった!」
「……勘の良い弁護人は嫌いだよ」
「さぁ!白状してください!あなたは俺の変装で失敗をしたと!」
はぁーと大きなため息を吐いて、鬼風は顔を俯かせる。
「たくっ。そうだよ。箱の中に入ったとき、王泥喜くんの変装がギリギリ間に合わなくて弁護士バッジ……まぁ偽物だけど。をつけるのを忘れましたよーだ」
開き直ったように鬼の青年は自分のミスを素直に認めた。
「でも、普通そこまで気づくか?」
「王泥喜さんをバカにしないでください!ラミロアさんの移動マジックでブローチに気づいた人なんですから!」
「あぁ、あの歌姫ね……」
顔をしかめる鬼風にみぬきはしゅんとした顔で問いかける。
「ラミロアさん、嫌いなんですか?鬼風さんは」
少しためらってから、鬼の青年は口を開く。
「……別に。あまり、興味がないだけさ」
素っ気ない言葉を返して、鬼風は彼女の紺瞳の双眸から顔をそらした。